大澤真幸のレビュー一覧
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メディアの功罪がいくつか語られているが、最も罪深いのが「単純化」だ。ネットの世界も同じだが、単純化しないと新聞が売れないし視聴率も取れない。「わかりやすくお伝えします」というのは紙面リニューアルやニュースの新番組で聞かれる決まり文句だが、それが良いことだという共通理解がある。とんでもない。わかりやすく伝えるという事は、細部を意図的に切り捨てていくことだ。世の中そんなにわかりやすくはできていない。こうして大多数の国民から、どんどん複雑なことを理解する能力や耐性が失われていく。メディアが単純化しているのは彼らに事実を伝える情熱が欠けている事のほかに、それが求められていないからでもある。一方的にメデ
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近代化とは西洋文明化とも言える。近代的とは西洋的ともいえる。そこで近代化を達成した我々日本人は、近代つまり西洋の世界とは何かを考える必要がある。西洋世界=キリスト教世界であるため、近代社会の問題点を見つけるにはキリスト教への理解が不可欠なのだ。本書はキリスト教の概要にとどまらずキリスト教が現在の我々の社会に与えた影響について語られているため、現在の社会問題を考えるにあたり非常に参考になる点も多い。キリスト教という宗教は一見我々の暮らしには無関係に思えるが、科学技術や資本主義など近代社会の根幹をなす部分で深い影響を受けているのだ。その近代社会に生きる我々はキリスト教を知ることで現在の社会問題をよ
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戦後から時代を「理想の時代」、「虚構の時代」、「不可能性の時代」の三つにわけてその時代の特徴や人々が何を求めていたのかを分析していました。
社会学の新書ということもあって専門的な言い回しが多く難しく感じられましたが、映画や小説、アニメや漫画など身近な作品が紹介されていて楽しく読めました。
その時代の事件から加害者の心理を分析し、生活を豊かにすることや社会的な地位などの「理想」を求める時代から、現実では起こり得ることのない「虚構」を求める時代への移行を経て、現実への逃避と極端な虚構化といった全く異なるものを求める「不可能性の時代」への疑問点を提示して、その複雑さを説明するといった内容でした。 -
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4人の論客がそれぞれ一冊ずつ名著を引用しながら議論を展開する。内容はメディアと社会の関係性、その歴史、そして今後のメディアの展望。個人的には近代小説が近代国家の解説に加担したという部分が興味深い。文語から口語へ移ると同時に、文字が知識人階級から大衆へと解放されていく。魯迅の白話運動はその典型だろうか。そういう意味で近代国家は知識人階級と大衆を同等に扱うことによって成立している仕組みとも考えられる。メディアに影響されやすい性質を内在する大衆が中心を担っている社会であるからこそ、メディアによる煽動や忖度など、社会の中に存在する危険性には注視する必要がある。
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コロナ渦において私たちが進むべき方向性は何か。コロナ渦を人類が生き延びるために国家の枠組みを超えた連帯が必要であるはずなのに現実に起こっているのはむしろ国民国家単位での利己的な闘いである。しかし、この惨事はむしろ我々が来たるべき真のコミュニズムへと進むきっかけになるのではないか?
最近よく見かけるコモンズの回復、脱成長コミュニズムがテーマになっています。グローバル資本主義にどっぷりつかった今の私たちにはなかなか実感しにくい未来像ですが、破滅に繋がらない隘路をなんとか通り抜けた先にある世界なのかもしれません。残念ながら相当な犠牲を払わないと実現しそうにありませんが・・ -
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とてもいい内容だと感じました。
私は虫が苦手ですが、内容は文句なく素晴らしいです。
表紙にある四冊が主軸で、人類の歴史と多くの人々、関連する書籍も紹介されています。
政治や体制の主義主張などを叫ぶだけの眠たいものを想像していたら、驚くほどに人の持つ陰のような部分を浮き彫りにしていました。
・服従したがる本能(生存目的)
・強烈な承認欲求
・生まれてきた不安
どれも普段は無視しできる範囲で暮らしています。
そして、本題の「ナショナリズム」。その生まれ、価値、その危険性にも堂々と切り込んで、具体的に示してくれています。私が常々「ナショナリズム」を唱えるメディアから感じる薄気味悪さの -
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先週、今週とコロナウイルスのため自宅待機を余儀なくされていることから、積読の山の切り崩しにかかった。これほどまとまった時間がなければ、手を伸ばすのはもう少し先だったかもしれない。
タイトル通り、社会学の通史である。近代以降に始まった比較的新しい学問ではあるが、よくぞこの分量を新書にまとめたものだと思う。マルクス、フロイト、レヴィ=ストロースなど、社会学の枠ではあまり語られない人を入れたのは著者の独創的なところだろう。一人が書き切っているので、通史としてはまとまりがいいが、一人であるが故に厚みの凸凹さや恣意的な表記はあるように思う。何人かの評者からは事実誤認も指摘されているようだ。
とはいえ、社 -
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「戦後思想のエッセンス」というシリーズを創刊するに当たり、第0号として、柄谷行人、見田宗介を取り上げたのが本書である。同シリーズは、一冊につき一人の戦後の思想家を取り上げて、後続の世代の書き手たちがその思想家について論じるというスタイルを取る予定だが、ここでは編者である大澤真幸が戦後思想の代表者としての二人にインタビューをする形を取っている。
インタビュー形式は、ことに聞き手が、対象の思考圏に嵌っていて(決して悪いことではない)、対抗的な異論を差し挟む余地が少ないときには、ことさら当たり障りのないものになりがちだ。至極、当たり前のことを言ったような気がするが、本書もそういった状況でのインタビ -
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読みやすかった
著者の熱意を感じた。同領域の専門家から観たら首を傾げる箇所もあるだろう。素人の私は大変楽しめたし、興味もなかった社会学をもっと知りたいなと思えた。
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購入済み
日本を見つめ直せる
キリスト教を中心に世界の宗教の根本が、簡単にさらっとわかります。
対談形式なので、気になることが質問されていたりで、とても読みやすい。
文化のベースとなっている宗教的な対外比較で、日本の独自性を再認識できる。
当たり前に理解している気になっていることが言語化された形で、改めて海外との違いの根本に気付けるナイスな新書です。 -
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承久の乱と現代の対米従属をつなげて語るという、無理がありそうな展開をなるほどと思わせてくれるあたり、たくさん本を出している学者さんだけはあると思う。日本史の謎と言いながら、実は日本史の本ではない。現代社会の病理を考えるために、歴史に手がかりを求めるという本だ。日本では革命はただ一度を除いて成功していないという。ここでいう革命とは、社会の在り方を一変させる事象だ。万世一系という天皇をいただく日本においては、社会を一変させるなんてことはかつてなかった。ただ一度、承久の乱における北条泰時をのぞいては、という話。承久の乱が日本史においてひとつのターニングポイントになった、というのは歴史の本でも書かれて