大澤真幸のレビュー一覧

  • 西洋近代の罪 自由・平等・民主主義はこのまま敗北するのか

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    民主主義と資本主義が離反してきているのではないかという問いかけをスタートに、様々な論点から現代社会を考察している.植民地主義と人種主義がガザ戦争に深く関与しているという考察、社会構想論をベースとした交響圏とルール圏の議論など表面的な理解しかできなかったが、興味ある分野でもあり楽しめた.イスラエルとパレスチナの戦争について仲介役を日本が行ったらどうかという提案.面白いと思った.政府と民間レベルでのアプローチを例示している.政府はパレスチナを正式国家として承認し、民間は双方の側の批判的な抵抗勢力をさまざまな方法で結び付ける.実現出来たら素晴らしいことになるだろう.トランプの登場を冷静に考察している

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    2025年10月03日
  • 極限の思想 ニーチェ 道徳批判の哲学

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    ニーチェの『道徳の系譜』を読み解く上で非常に参考になった。『道徳の系譜』初読の時点では全く見えなかった景色が、この本を足がかりに見えた。ニーチェ初心者は、できれば『道徳の系譜』とこの本を交互に理解しながら読み進めるのがいいのではないと思う。

    しかしこの本で解説される部分は、『道徳の系譜』の特に大事なところ、要点に絞られるので、ところどころは自分自身で、あるいは他の解説書を参考にして読まなければいけないところもある。
    また、『道徳の系譜』では触れられていないニーチェの思想も四章で触れられるが、『道徳の系譜』のみの解説で良い人には二章と三章で十分だろう。

    それと、著者はニーチェが専門ではなく、

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    2025年09月04日
  • 西洋近代の罪 自由・平等・民主主義はこのまま敗北するのか

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     現在社会で、世界で起こっていることに対して、明瞭で確固とした視座を与えてくれる1冊。
     
     特にアメリカ大統領にトランプが再選された背景の分析が分かりやすかった。
     
     「このままでは、民主党は今後、永遠に勝てないだろう(中略)今後、民主党の大統領が生まれる見込みはない」(p341)との言は恐ろしいが、そうかもしれないと思わされる。

     トランプは西洋を内部から、プーチンは西洋を外部から否定しようとしている(pp340-341)という見立てにも納得させられた。

     また、アメリカ大統領選に関連して、兵庫県知事選への言及があるのも、興味深い。
     
     斎藤元彦(+立花孝志) vs 稲村和美は

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    2025年08月31日
  • 西洋近代の罪 自由・平等・民主主義はこのまま敗北するのか

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    ネタバレ

    月刊誌『一冊の本』に掲載された時事的な評論をまとめた本で、前著『この世界の問い方』の続編。今回は2022年12月~2025年2月の評論。
    主題は「西洋近代のその功罪」で、著者は、現在を大きな歴史の転換点と捉えているが、それを規定している原理や法則が何かということを、時事的な評論を通じて、理解する作業を推し進めようとしている。

    1.「離婚の危機を迎えている民主主義と資本主義」
    かつて東西冷戦を勝ち抜いたことで、西側陣営の資本主義・民主主義は最良の選択と思われ、資本主義と民主主義は車の両輪だと信じられてきた。
    それが21世紀に入り、かつての社会主義体制の生き残りの共産党一党独裁を維持してきた中国

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    2025年08月29日
  • 〈世界史〉の哲学3 東洋篇

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     社会システムの方法論を用いながら西欧の覇権を規定する論理的形式を炙り出す試み。文庫本3巻目の本著では、主にインドと中国の違いを比較しながらその共通の論理平面を探り、特に不条理な謎に満ちながらも洋の東西を問わず長きにわたり実践されてきた「贈与」の原理を参照点としながら、西欧との違いを際立たせていく。

    (以下冗長極まりない要約)

    第1章
     人々は、素数の規則性を考察する時と同様に、世界史を概観した時に「東洋と西洋の影響力の非対称性」に素朴な疑問を抱かずにはおれないだろう。なぜ西洋が東洋に対し優位性を持ったのであってその逆ではないのか。ジャレド・ダイアモンド「銃・病原菌・鉄」に準えてその直接的

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    2025年06月29日
  • ふしぎなキリスト教

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    これは宗教版の「銃・病原菌・鉄」ではないか!

    なぜ、中世以前まで栄えていたイスラム圏を圧倒してキリスト教圏が近代文化の覇権を握ることになったのか。
    いかに、私たち近代文化の思考の根底にキリスト教的な考えがあるか、がよくわかる。

    キリスト教は厳格な宗教法を持たなかったため、柔軟に法律を作る、変えることができ、民主主義、資本主義の発展につながった。

    解釈の余地があるということで、そこから自然科学や哲学が生まれ、科学技術の発展や産業革命に寄与した。
    あらかじめ、法則が決められていたら、考える必要もないのだ。「なぜだろう?」がどれだけ素晴らしい魔法の言葉かがよくわかる。

    さらに、人権についても

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    2025年06月17日
  • 〈世界史〉の哲学2 中世篇

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    キリスト教についてさらに詳しくわかりました。
    映画か小説なども具体例に出して説明されているので、わかりやすい部分も多くありました。
    哲学なのでわからない部分の方が多いですが、大澤さんの本はいつも読み応えがあります。
    次は3の分厚い東洋篇に行こうと思います。キリスト教は遠い存在ですが、東洋は近いので、自分がどのように感じるかも楽しみです。今後も文庫化されたら続きを読んでいきたいです。

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    2025年03月23日
  • 〈世界史〉の哲学2 中世篇

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     本書では前作に引き続き「普遍性の起源」のありかが模索される。前作では主にヘレニズム/ヘブライニズムの相補性に焦点が当てられていたが、本作はその相補性を基盤として生じた「西洋」という普遍性の生じたメカニズムに、主に「三位一体」を巡る論争を軸に迫る。前作に引き続き思索の端緒となるのは「矛盾」、特に「原因と結果の転倒」だ。「因果関係の矢があるべき向きと逆であるにもかかわらずそれを用いた論理が温存されているならば、そこには何らかの重大な意味が隠されているはずだ」と考えるのである。矛盾の起源とその定着の原因を突き止める著者の推論は刺激に満ちており、まるで安楽椅子探偵ものの推理小説を読んでいるかのような

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    2025年01月30日
  • 〈世界史〉の哲学 1 古代篇

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    大澤真幸は前から気になっていて、ならばシリーズものを読んでみようという気概で〈世界史〉の哲学を選択。

    初っ端からミステリー作品を読むかのような壮大な謎の提示。なぜキリストという特異な存在が西欧全体へと普遍的に波及したのか?その意義は?なんて、世界史を通史的に学んできた今での取り組み方とはまったく異なりとてもスリリング。

    前半はキリストに焦点を当て、後半はソクラテスとの対比を行い両者の特徴がどのような経緯で融合し得たのかを検証している。互いの「真理」の相違点、その奥に見出される類似点を暴き出していく論調は読んでいて清々しい。
    上位命題である、資本主義はなぜかくも普遍的なものになったのか?に漸

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    2025年01月25日
  • 社会学史

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    著者の論理というか、問題意識がはっきりしているおかげで、歴史上のそれぞれの思想が驚くほど生き生きと頭に入ってきた。

    以下、終盤のルーマンとフーコーの説明についての僕なりの理解。

    ある要素は、システムを前提に他の要素との関係性によって相対的に構成される。システムの複雑化に伴い複雑性の縮減は進行し、アルシーヴの可能性の地平が拡張するとともに希少化し空間内での偏りが増す。偏ったアルシーヴ内で、可能性の地平が収縮して意味が選択されるとディスクールが立ち現れる。
    一方、人間は社会を前提として他者との関係性によって相対的に構成される。社会進化に伴い生権力によるパノプティコン的支配が定着し、「告白」が常

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    2024年12月15日
  • 危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』

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    ナウシカ、エヴァ、進撃の巨人の関連性を知れた。4分の1ほどまでしか精読できていないため、3点の作品の何かを掴めたら再度読むといいだろう。
    世界、戦争、思想。

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    2024年12月02日
  • 〈自由〉の条件

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    最初の方は、どう自由と関係あるのかや、難しい考えも多かったですが、読み進めるにつれて内容も興味深かったりわかりやすかったりしてきて最後まで読めました。
    内容をしっかり理解することはできていませんが、しっかりした理論で考えられていて、とても読み応えがありました。著者の他の作品も読もうと思います。
    また心理学や映画から話される事も多く面白かったです。

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    2024年10月20日
  • この世界の問い方 普遍的な正義と資本主義の行方

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    戦争も人種差別もそうだけども、無関心ってのが1番の原因になりうる気がするねぇ。正しい情報を得て、そのうえで判断する。それが全て理想的社会へ繋がる気がする。我々司書はそのために人と情報を繋げる。

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    2024年10月12日
  • 〈世界史〉の哲学 1 古代篇

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     本書は、目下の世界で観察される諸事実を「こうではなかったかもしれない、他でもあり得た」偶有性として捉え直し、あえて現在の地平ではない場所から過去を眺め、「こうでもありえたのだが、なぜかそうはならなかった」のはなぜか、を探る試み。他のどの著書でも言えることなのだが、基本的に「逆説的なものが(逆説的であるにも関わらず)存在可能ならば、そこには表層からは窺い知れない意味深い構造が隠されているはずだ」という論理構成がとられている。やや過剰な「逆説探し」のにおいも嗅ぎ取れなくはないが、それでもやはり説得力はあると思わざるにはいられない。本書でも、「必然性」と「偶有性」が逆説的に結びつきながらも、まさに

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    2024年09月21日
  • ふしぎなキリスト教

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    ネタバレ

    おもしろかった。一神教の特徴や、キリスト教の疑問あれこれ、近代とキリスト教の関係などを、社会学的な視点から、橋爪先生と大澤先生が対談して分かりやすく説明してくれている。
    世界三大一神教のユダヤ教・キリスト教・イスラム教。どれも同じ神を信仰しているが、やっぱりキリスト教だけ特異だ。イエス・キリストという「神の子」の存在がやはり異色で、神の子が存在しながらそれでも一神教であるために三位一体というアクロバティックな学説を出して乗り切ろうとしている。ユダヤ教もイスラム教も預言者を通して神の言葉を聞き、その唯一の神の言葉を律法なりイスラム法なりとして守っていくことになるが、キリスト教は神の子が自らこの世

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    2024年08月28日
  • 我々の死者と未来の他者 戦後日本人が失ったもの(インターナショナル新書)

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    「人新世の資本論」以来の超大作の予感がする新書。

    地球温暖化に対して関心の低い日本人を「未来の他者」への思いがないと読み、

    その原因を、「過去の我々」=「我々の死者」に向き合えなくなった日本人に見る。

    話は「鬼滅の刃」の舞台がなぜ大正時代なのか、から始まる。

    続いて太宰治が敗戦をテーマにした小説を書いていないこと、

    朝ドラ「おしん」の夫が敗戦直後に死ななくてはいけなかった理由、

    戦国時代から明治維新までの人物を描き続けた司馬遼太郎が、

    なぜか昭和を書いていないこと。ノモンハンを描いていないこと。

    そしてそのノモンハンを描いた唯一の小説家が村上春樹のねじまき鳥クロニクル

    だった

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    2024年08月25日
  • 極限の思想 サルトル 全世界を獲得するために

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    『存在と無』を読んだあとに読んだ。当時はあれを小説を読むような態度でたのしんで、それになにしろ一年かけて読んだものだから、要約みたいなものを示すなどということはぼくには到底できなくて、それをこんなにも手際よく、コンパクトにまとめられるだなんて、まったくとんでもないことだと思った。

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    2024年07月29日
  • 危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』

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    いかに漫画版「ナウシカ」が奥深い作品かという事を様々な方が語っています。
    この本を読んでいる最中は常に、「ナウシカ」を読み返したくなってしまいます。その欲求に抗いつつなんとか読み終えました。
    …さて、漫画版「ナウシカ」を出してきますか!

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    2024年05月21日
  • おどろきのウクライナ

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    ウクライナ、ロシアのみならず中国、いわゆる西側諸国、中東、グローバルサウスに対する見方が非常に参考になった。

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    2024年05月10日
  • ふしぎなキリスト教

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    キリスト教圏の人達の底に流れる考え方を分かりやすくかみ砕いて対談形式で読むことができる。
    キリスト教も仏教も儒教も実は神を殺しているという話や、日本人は神をたくさん置いていることで寧ろ神の力を殺いでいるという話など面白い話が盛りだくさんだ。
    法律の考え方で、ユダヤ教やイスラム教はかっちりと律法が固まっている一方、キリスト教は律法がなく、「神が世界を作りその後世界からいなくなった」という世界観だから人間が頂点として法律を作っても良いという価値観であるという所も面白い。

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    2024年04月29日