大澤真幸のレビュー一覧
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「民主主義」と「権威主義」を対立軸として、そのどちらかと「資本主義」が夫婦になるという考え方は面白い。その上で、今まで良好な夫婦関係であった「民主主義」と「資本主義」が離婚の危機?にあるのだという。
そもそも民主主義は、われわれが思うほど、正しくて公平で納得感のある価値観ではないのだと思う。集団が束になり肥大化していく過程で生じる権威主義(世襲的正統化)に対し、選挙という形で門戸を開いたという程度だろう。結局、未だに世襲は多いのだ。勿論、誰しもがチャレンジできる社会を謳う理想は素晴らしい。一方で極めて単純化すれば、これは“多数決“である。
人事採用に「アルムナイ」という言葉、制度があるが、 -
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大澤真幸は、『誰でもわかるハイデガー』筒井康隆(著)の解説に、とても鋭い文章に驚いた。大澤真幸は、社会学者である。本書を読みながら、次々に広がるテーマ。それにしても、日本人は、矛盾したものを呑み込んでしまうものだ。大澤真幸の語り口の構成は素晴らしい。
2011年3月11日の津波が海岸から市街地に向かう様子をインターネットの動画で見た時、それは現実に思えなかった。私は、雲南省の昆明市のサルバドールという喫茶店にいて、見た。そして、原発が電源を喪失して、水素爆発、炉心から放射線の飛散。二つのことが同時に起こった。日本の歴史を根底から変える事件だった。そして、その被害について、膨大なニュースが -
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桜庭一樹さん、平田オリザさんとともにリレーする「朝日新聞」の「古典百名山」という連載のために書いた原稿に加筆したものだそうだ。
そのうち、大澤さんの選んだ本は50冊。
誰もが「古典」に選ぶと思われる著作もあるが、初めて知った本もある。
新しいものではエドゥアール・グリッサン『〈関係〉の詩学』で、1990年。
どれも簡単に読み通せる気がしない本ばかりだが…。
自分が読んだことがあるのは2冊。
部分的に読んだことがあったり、本書のようなブックガイドなどを通してなんとなく内容を知っていたものを数えて12冊。
研究者が一体どれだけの「古典」と現在も発表され続ける論文を読んでいるのか、と空恐ろしい気持 -
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サルトルのいう「想像力=自由」「夢中=非定立的意識」「対自存在=世界に無をもたらす主体」を私なりの表現で書き換えてみる。まさに、たった今経験したことで、書いておきたいと思った。
昼間覚醒している時の妄想。その中での登場人物の振る舞いは自他に自由で自らは脚本家とも神とも呼べる絶対的存在になれる。しかし、そこには現実の質感がない。一方、夢の中では自他に自由がなく、現実の質感があって、一喜一憂する感情まで湧き立つ。怖い夢を見た。
ここに、想像力がつくり出す「非在の世界」と、夢がもたらす「擬似的現前の世界」の対照がある。
サルトルにとってイマージュ(心像)は「ひとつの行為であって、一箇の事物では -
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並行して読んでいたハラリの本とテーマがどこかしら被る。
時代背景としてやむを得ないか。
コラム集の形をとっているため、いくつかの塊に分かれる。
1部は民主主義と資本主義が離婚思想、、、全体主義のせい
2部はおたくがテーマ。そこからなぜかジブリ映画「君たちはどう生きるか」の話に。
映画館で観る気はせず、でも日テレの放送は録画して、そのうち観ようと思ってた。
上映中はネタばれ絶対禁止だったし、その後もそうだと思っていたが、
この本で思い切りネタバレしてる。核心まで。観る気が半分失せた、、、
3部はガザ進行。ジェノサイドと言い切る。私もそう思う。
しかしアメリカはそう思わない。日本もそれにつきあう -
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わが日本の歴史において、成功した革命はただ一度しかない、それは北条泰時による法(貞永式目)の制定である、と著者は言う。この着想自体は、山本七平の「日本的革命の哲学」に依拠している。
大澤の本領は、なぜ欧米で可能であった革命が日本では不可能であったか、しかしその不可能性の中でなぜ北条泰時は革命を起こすことができたのか、を問う。
いつものことながら、ミステリー仕立ての論理運びは知的にスリリングで、一歩間違うと大澤の論理展開は知的な遊戯に堕してしまうのであるが、ここでは一定の説得力をもった議論が展開されている。
一般に革命は、その変化の意志が人民に外在する「例外的な一者」(第三者の審級)に帰せられる -
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キリスト教を通じて西洋社会の成り立ちを理解することが、現代を知る上で重要になる、という前提のもと、
•多神教と一神教の神様の違い
•イエスとは何者なのか
•科学技術や哲学との関連
•権力とキリスト教の距離について
などなど、様々な切り口からキリスト教について議論が進められていく。
対話形式なので読み易く、智の巨人たちのあそびみたいな空気を感じられて面白かったです。
同じ一神教でも、聖書を読み解く視点や見解に多様性があるキリスト教と、ムハンマドがほぼ直接神の言葉を受け取ることから聖典に多様性や多義性は入りようがないイスラム教という違いがある。
ただ、キリスト教社会が寛容かと言われればそう -
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ネタバレなんだかずっと歴史の転換点にいるという話を聞くような気もするけれどー歴史的には、その「期間」が転換「点」とされるのか…
大澤真幸さんと平野啓一郎さんのお二方は、これまでも対談を重ねてこられていたそうで、
この本に収録されているのは、2020年~2022年に4度行われた対談。
1. 平成の天皇が退位を宣言した後の2019年1月
2. コロナ禍の2020年8月
3. コロナ禍の2021年3月
4. ロシアのウクライナ侵攻後の2022年4月
あとがきでは、
_諸々の大問題を直視するならば、未来予測はどうしても悲観的になりがちだが、私が大澤さんと一致しているのは、反シニシズムであり、また、自 -
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読書会で取り扱い。他者への従属的関係であるエコノミーの外部で、「〈誰でもない者〉が〈何でもないもの〉を〈誰でもない他者〉に与える」という贈与の形式を満たす至高者のコミュニケーション。そこでは「振る舞い」や「精神状態」といった「主観性」が伝達される。しかし一方で、そうした贈与は「幸福の涙」という現象で説明される奇跡的なものであり、決して企図された行為によっては実現されえない。一方でそうした幸運の到来には、我々は世界や他者を必要とし、聖/俗・可能なもの/不可能なものといった区別は必ずしもなされない。聖なるものは、世界との親密性を取り戻した状態だが、そこでは明晰さが徹底的に突き詰められてもいるのだ。
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序章
鈴木敏夫 スタジオジプリプロデューサー
鈴木敏夫は「風の谷のナウシカ」の制作背景やそのテーマについて語っている。彼は、作品が発表された当時の社会的・環境的状況がどのように影響を与えたのかを考察し、ナウシカというキャラクターが持つ強い意志や優しさが、現代においても重要なメッセージを持っていることを強調している。
風の谷のナウシカの題材は『新諸国物語』(NHK ドラマ1952年)。
ナウシカが旅をして、見聞きしたものによって、読者が世界の秘密を知っていく。宮崎駿は「勧善懲悪」が好きで、それが「自然を守る人がいいひとで、自然を破壊するのは悪人」と言う物語にした。
赤坂憲雄の『ナウシカ