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自明で当たり前に見えるものは錯覚である。事物の本質を古典は与えてくれる。『資本論』『意識と本質』『贈与論』『アメリカのデモクラシー』『存在と時間』『善の研究』『不完全性定理』『君主論』『野生の思考』など人文社会系の中で最も重要な50冊をレビュー。
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Posted by ブクログ
桜庭一樹さん、平田オリザさんとともにリレーする「朝日新聞」の「古典百名山」という連載のために書いた原稿に加筆したものだそうだ。 そのうち、大澤さんの選んだ本は50冊。 誰もが「古典」に選ぶと思われる著作もあるが、初めて知った本もある。 新しいものではエドゥアール・グリッサン『〈関係〉の詩学』で、19...続きを読む90年。 どれも簡単に読み通せる気がしない本ばかりだが…。 自分が読んだことがあるのは2冊。 部分的に読んだことがあったり、本書のようなブックガイドなどを通してなんとなく内容を知っていたものを数えて12冊。 研究者が一体どれだけの「古典」と現在も発表され続ける論文を読んでいるのか、と空恐ろしい気持ちになる。 さて、本書は大澤流ガイドブックである。 それぞれの著作のエッセンスを大澤流に解釈していく部分もあるため、面白い。 これまで理解していたものと別の側面を知ることができたりすることもあった。 その一例はマキャベリの『君主論』。 この本が「政治的支配のためにはどんな悪徳でも許される」という一般的な理解は不十分なものだと明かされる。 この本はマキャベリが失職中、新支配者であるメディチ家当主に顧問として自分を売り込むために書かれた本であり、個別的な状況に対しあれこれ具体的な指南を示したものだそうだ。 むしろ、マキャベリは支配者の「力量」を重視しており、神ならぬ身で統治の全責任を負うという「不可能な責任」を負うために、様々な例外が許されるというのが趣旨だった、と解説されている。 『君主論』を自ら読むことはないだろうと思っていたので、こういった視角を得られたことはとてもよかったと思う。 W.ジェイムズ『プラグラティズム』についての章も同様。 パースが提唱したプラグマティズム。 「真理であるとは、その信念が行為に対して有効であるということだ」というジェイムズの主張を通して広まっていった。 神に対する冒涜だ、主観的すぎるなどの批判もあり、パース自身もこのような形で広がったことを受け入れづらかったようで、自分の説を「プラグマティシズム」だと区別しようとした、などという話も紹介されて、ちょっと面白かったりする。 大澤さんは、パースのアブダクションについての議論を見る限り、ジェイムズの考えとそれほど違っていない、とバッサリ。 その著作の意義が同時代の文脈で確認されるため、見通しが良くなる感じがする。 あとがきに紹介された「先人の研究に縛られずに自由に考える」と標榜するものは、大概凡庸だという話がとても印象的だった。 だいぶ長く生きてきたのに、ちっともものが分かった気がしない。 そう思いながら、残された時間で読めるものを探しているのだが、さて、どうしよう。 カントローヴィチ『王の二つの身体』 フーコー『言葉と物』 バフチン『ドストエフスキーの詩学』 ロールズ『正義論』 レヴィ=ストロース『野生の思考』 三上章『象は鼻が長い』 この辺りから、どれか一冊は読み通してみたい。
大澤の読み方とタイトル付けをトレースするのは気持ちよいのだが、やはり古典は自分で読むのが一番だろうな、と思う。
それぞれの古典の解説をしているわけではないので、ヒントが書いてあるといったイメージに近い。 なので、気になった内容があったらそれぞれの古典を読むという段取りになるかと思う。 幅広い分野の古典が取り上げられているかは正直判断はつかないが、気になるトピックは見つかる程度には幅広であるのではないかと思う。
井筒さんの「意識と本質」のところだけを読んだ。あんまり参考にならなかった。難しかしいからといって安易に「要約本」にすがった私が馬鹿だった。 「意識と本質」は一篇の抒情詩だからだ。文体を味わう必要があったのだ。
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大澤真幸
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