大澤真幸のレビュー一覧
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著者が、みずからの見解を織り込みつつ、社会学の歴史をいろどる主要な社会学者たちの業績を解説している本です。
600ページ頁を超える分量で、新書としてはかなりヴォリュームのある本ですが、語り下ろしということもあって、比較的やさしい語り口で説明がなされています。日本の社会学者による社会学史の著作としては、富永健一の大著『思想としての社会学―産業主義から社会システム理論まで』(2008年、新曜社)がひとつの到達点を示していると思いますが、富永が実証性を重視する立場をとっているのに対して、著者は社会学を「近代社会の自己意識の一つの表現」とみなす立場から、それぞれの社会学者たちの仕事の意味を解説してお -
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序盤は中国社会、中盤は日本との関係、終盤は将来についてが書かれている。
序盤では、宗教観についてが印象に残った。
儒教が伝統的に強いというのは知っていたが、それが権力者が統治するのに都合が良く、科挙を突破できるようなエリート向けなのに対して、イマイチどういったものか掴めなかった道教が、科挙を突破できなかったような敗者を救うもので、「裏儒教」といっていたのは今後、道教を理解するきっかけになるものと感じた。
中盤の日本との関係では、第二次世界大戦付近の話が中心だった。
例え話も含めて分かりやすかったが、耳が痛い話が多かったので、読むのが辛かった。
納得する話ではあった。 -
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Posted by ブクログ
社会学者の大澤真幸が、日本の戦後~現代を代表する社会思想家として柄谷行人と見田宗助の両名を選び、対談及び自身の解説文によって両名の思想を描き出す一冊。
両名の著作にあまり触れたことがない人でも理解できるように書かれた解説文や、大澤真幸自身の優れたインタビュアーとしての論点設定により、両名の思想の入門書として確かに良い一冊になっている。
柄谷行人については、2010年に発表された『世界史の構造』以降のテーマである交換様式論が主に解説の対象とされ、かつ自身の恩師である見田宗介の思想との接続を図る最後のパートが非常に面白い。
少なくとも研究室のメンバーで柄谷行人を読んでいなかった人は相当少ない -
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いわゆる「知的生産」や発想法について、著者自身のこれまでの仕事を振り返りながら具体的な方法が語られている本だと思って手にとったのですが、中心となっているのは社会科学、文学、自然科学のそれぞれの分野からいくつかの本を導きの糸として、大澤社会学の比較的新しい展開を語ったものになっています。
社会科学篇では、真木悠介の『時間の比較社会学』を導きの糸として、時間についての理論社会学的な考察が展開されています。時間意識のありかたが社会によって異なることを論じつつ、西洋近代における時間意識の背後に、予定説によって想定された神の位置から自己を規定するとともに、そうした自己の視点から逆に神を規定するような見 -
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資本主義の来歴と、それが現在陥っている問題、そして資本主義の後にやってくる時代の展望について、エコノミストの水野和夫と社会学者の大澤真幸が語っています。
おおむね大澤がみずからの立場を示しながら水野の考えをたずねるというかたちで議論が進められており、とくに後半ではそうした傾向を強く感じました。ただし資本主義の形成について語りあっているところでは、「蒐集」というキーワードを用いて資本主義の形成から現代の状況までをつらぬく本質を見ようとする水野に対して、大澤が資本主義の形成が世界史において逆説的な性格をもっていることを強調するなど、意見の対立が見られます。ただし、両者ともみずからの立場を提示する -
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この頃読んだ本の中では比較的面白かった。特に文学編における読解の仕方やアプローチは刺激的だったし、読みたい本も増えた。が、副題の「知的創造の方法」そのものは取り立てて一般的で、目新しさはない。ただこれに関しては本質とは得てしてそういったものだと言えるかもしれない。
あとは一冊の本としての構成がややアンバランスに感じた。骨太な1章から3章と比べて序章と終章があまりに軽すぎるのだが、「知的創造の方法」自体は主にそのふたつの章で語られている(1章から3章は、方法を実践するとこのように考えられる、という著者自らの実例だ)。方法論の章も思考実例同じくらい骨太にしろというのは無茶な要求とは思うが、何かやり -
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そもそもアメリカは、プロテスタントであるピューリタンがメイフラワー号に乗って、理想の国の建設を目的として米国はマサチューセッツ州プリマスに到着し、メイフラワー契約に基づき建国された、という前提から出発し、その歴史の中でキリスト教がどのように変遷、分派し、人々の心性に影響を与えていったかが、社会学者である二人の対話の中で語られていきます。
アメリカ独自の宗派、教会として、長老派(プレスビテリアン)、会衆派(コングリゲーショナル)、メソジスト、クウェーカー、バプテスト、ユニタリアン、ユニバーサリスト、アドベンチスト、モルモン教、クリスチャン・サイエンス、エホバの証人、などが紹介されていますが、日 -
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この話は鮮度が大事で、仮に3.11から数年を経てこの本が出されたのだとしたら大澤氏にしてはあまりに思考が浅いのでは?と思ったけど3.11から1年も経たずに出版されてたことをあとがきで知り、そのスピード感はさすがだなと思った。
震災・津波や1F事故を宗教的、哲学的観点から捉えて社会構造、意識構造を問うていくのはやはりこの人の持ち味だろうなと思う。けど『虚構の時代〜』から続けて読んできてある種「大澤ワールド」が深化してどんどん氏のフィールドの中だけで話が膨らんでいってるような印象も受ける。読み物としては面白いけど、わたしにはどこかフィクションを読んでるみたいで、実践的かと言われるとうーんと思う。と