大澤真幸のレビュー一覧
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承久の乱と現代の対米従属をつなげて語るという、無理がありそうな展開をなるほどと思わせてくれるあたり、たくさん本を出している学者さんだけはあると思う。日本史の謎と言いながら、実は日本史の本ではない。現代社会の病理を考えるために、歴史に手がかりを求めるという本だ。日本では革命はただ一度を除いて成功していないという。ここでいう革命とは、社会の在り方を一変させる事象だ。万世一系という天皇をいただく日本においては、社会を一変させるなんてことはかつてなかった。ただ一度、承久の乱における北条泰時をのぞいては、という話。承久の乱が日本史においてひとつのターニングポイントになった、というのは歴史の本でも書かれていたくらいだ。それだけ大きな出来事ではあったのだろう。
本書の面白さは歴史を追求するのではなく、日本はなかなか変わりにくい国だけど、一度できたのなら、そこを分析することによって、現在日本が抱えている対米従属という病理も克服できるのではないか、という展開にある。
知的なアクロバット?という感じでね。刺激的だったし、考えさせられた。 -
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様々な学問の中でも、19世紀~20世紀になってそのディシプリンが確立された社会学は、比較的その歴史が浅い部類にあたる。しかし、歴史が浅いという点は、その学問自体の重要性とは何も関係がない。むしろ、近代において、社会学という学問がなぜ発達したのか、そして社会学とはどのようなイシューをその固有主題として成立したのか?、というごく自然な疑問に答えるのは実はなかなか難しい。
本書は、一つの学問史としてなかなか統一的なパースペクティブを描きにくい社会学の歴史にターゲットを当てた一冊である。本書では社会学固有の主題とは「社会秩序はいかにして可能か?」という1点にあることが提示された上で、社会学の始祖たるマックス・ウェーバーを中心に、社会学前史としての社会契約論やマルクス・エンゲルスらの存在と、20世紀社会学の代表格であるパーソンズやルーマンなどの学説が、大澤真幸の講義調のテキストで解説される。
近年は”歴史”に対する意識が極めて強い大澤さんの近年の本の中でも、比較的読みやすく、かつ社会学に留まらない人文社会科学の歴史を振り返る点で非常に面白く有益な一冊。 -
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資本主義の定義、歴史、現代での位置付け
・長い16世紀
利子、法人の概念の発展と宗教の役割(キリスト教の抵抗)
法人の概念により複数世代に渡る永続的な投資が可能に→イギリスの海洋権益拡大
スペインが陸を支配しようとしたのに対してイギリスは海(貿易)を支配→資本主義的支配
中国の明も航海を行ったが資本主義がなかったためアフリカ等の支配には至らなかった
オランダは固定資本で海洋拡大したがイギリスは事業ごとの資本調達→永続性
・現代
現代における資本主義の限界と永続可能性
ゼロ成長社会が示唆すること、その捉え方
「桐島部活やめるってよ」が現代社会において意味すること -
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ネタバレ同著者『虚構の時代の果て』とセットで読むのがいいと思う。『虚構の時代の果て』でまず筆者の言わんとする「虚構」の概念、枠組みを捉えた上で、「虚構」がどのようにして「不可能」へとすり替わる・移行するのか、その過程に目を向けた本『不可能性の時代』であるという印象。
実例として取り上げられているのが子供時代のわたしにも強く印象に残った(かつ多くの人も覚えているであろう)かつての少年犯罪の数々なので、理解しやすい。時代の変遷に伴い、少年犯罪の加害者の心理、動機が全く反転しているという指摘が面白かった。
「オタク」をめぐる様々な概念についても、オタクの社会の捉え方、他者との関わり方等々、言われてみれば思い当たるようなふしも多いし、自分が感じていたことや違和感を平易に言語化してもらえたようで、頭がすっきりした。
この本が出版されたのはちょうど10年前の2008年。今でも「不可能性の時代」が続いているのか、また別のフェーズに来ているのか、「今」がどんな時代である(あった)かというのはやっぱり10年くらいは待たないと解説できないものなのかな。「振り返る」形でしか社会学は機能しないものなのかと思えば限界を見るようでさみしいし、でもそれもそうだよなとも思う。難しい。 -
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営利企業に就職し、ビジネスの論理やメカニズムを学んでいく過程で僕にとっての最大の疑問は、「なぜ企業は成長を宿命づけられているのか?」という点であった。もちろんそれは上場企業であれば、株式の評価が「成長性と収益性」によって決められているということが一つの解にはなるが、だとしても次の問いは「なぜ成長性が重要なのか?」という点となり、依然として先ほどの問いは解決されない。当時の僕は、十分に社員に給与を払うことができ、事業の安定性があるのであれば、過度な成長は不要なのではないか、と思っていた。
結局のところ、その疑問に対する僕自身の現時点の答えは、資本主義とは永遠の成長を義務付けられたゲームである、と解釈して、一種の宗教として資本主義を理解することであった。社会学者である大澤真幸の本書は、「資本主義と神」、「憎悪と愛」という2つの異なるテーマについて論じられた連続講義をまとめた一冊であり、この前者が僕自身の長年の疑問と暫定的な解に一定の理論的な講釈を加えてくれるものとして、非常に興味深く読んだ。
ここで著者は資本主義と神との関係について、
・国家や企業が成長のために一定の負債を抱えつつ、実はその負債を完済するタイミングは常に延期されている
・つまり負債はほぼ未来永劫、完済されないにも関わらず、更なる成長のために負債を拡大させることができるのは、「神はデフォルトの可能性を知らない」ということを我々が共通認識にしているからである
・その共通認識があるからこそ、我々は安心して、ひたすら成長のために負債を拡大させることができる
という論理を示す。
久しぶりに読んだ著者の本だったが、講義録ということもあり、非常に分かりやすかった。久々に色々触れようかとも思う。 -
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ネタバレ社会学者として最もリスペクトしている大澤真幸さんの著書。序章の時点で気に入りすぎて付箋をいっぱい貼るほど。何よりも面白いのが、著者が本をどのように読み、いかにして思考を紡いでいくかを疑似体験できること。
各章において、社会科学・文学・自然科学の名著をどのように読み解き考えるかも述べられている。自分の専門外の部分は、正直難しいが、例えば社会科学の部分では「時間」の概念の歴史的変遷などが分かり興味深い。著者の知識の深さに驚きながら読み進めることができる。
☆心に留めたい箇所
・思考を進化させるためには、書物の力を創造的に活用する技術を持たなくてはならない
・常に自分に問いかけると良い。この理論や概念は、自分が自分の問題を考える時にはどういう表現になるだろうかと。
・自分は何かにインパクトを受けた。それは人生の中でずっと持続させたい。あるいは他人に伝わってほしい。そのためには十分考え抜いて言葉にするしかない。
思考したことを相手に伝える楽しさをこの本を通じて感じることができた。本を通して感じたことをきちんとアウトプットすることで、自分の考えを他者に伝える力を身に付けたいと思う。