大澤真幸のレビュー一覧
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元気と言えば、「元気ですか~」のあの赤いマフラーをした萌える闘魂が浮かんでくる。とはいっても本書にあの人は登場しない。日本人のルーツと価値観や行動様式はどうなのかと言ったことを探っていくことで「二十一世紀を生きる日本人、元気の源」を見ていこうという趣旨で書いたそうだ。
読んでいくと不思議に思っていたことが次々と出ている。日本の土器は、世界で一番古いのか、大きな古墳が造られたのか、貴族なるものが存在するのか、など。
新書の割には分厚いが、読み進むのに苦労はしない。『歴史上の出来事を、社会学の方法で、日本のいまと関連させるsディかtが出掘り下げた」とあるので、カビの生えた歴史には -
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『ふしぎなキリスト教』でおなじみの橋爪氏・大澤氏の対談。古代から幕末に至る日本史の特色を語りつくす。
興味深い内容が多いが、僕が特に印象に残った点をいくつか列挙したい。
1、武士とは馬を飼い、操る技術に習熟した人々であったという事。そのような人々が荷役や商人の護衛をしつつ実力をつけていった、という説。「馬」という動物を中心にす据えて武士を論じるというのは新しい視点だと感じた。
2、藤原薬子の乱は貴族が武器を取って戦った最後の戦いであること。承久の乱は天皇と武士が真っ向からぶつかった初めての戦いで、武士が勝利したという意味で画期的だった・・・等々。歴史に関する知識を増やすことができた。
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【あくまで論として、自由対談として読まれるのがベターです】
「ふしぎなキリスト教」がベストセラーとなった社会学者の橋爪大三郎氏と大澤真幸氏のタッグが、今回は日本の歴史をテーマに対談形式で論じ合った本です。橋爪氏と大澤氏が、日本の歴史にまつわる18の疑問トピックについて、互いの領域の知識・アイデアを総動員して解剖していきます。話題は縄文・弥生時代から平安・戦国、そして江戸・明治時代までと、広くカバーされています。なぜ大きな古墳が作られたのか?なぜ日本には幕府が存在したか?なぜ信長は安土城を立てたか?など、選ばれているトピックもシンプル明快で、全編通して知的好奇心をくすぐるやりとりが進んでいきます -
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社会学者大澤真幸さんと憲法学者木村草太さんの対談で、新書ということもあり、ライトな語り口、難解なところなど全く無く、余り本を読まない人でもすんなりと一気に読めるだろう。
大澤さんのいつもの心理学的な視点や独特のキーワードも冴えており、本書では特に中核となる「法の支配/人の支配」という二項対立を提起し、一貫して言及される。
日本人にはいまだに「法の支配」という近代社会の原則がなじめない。「法」を外部からの介入としてしか感じ取れないのだ。その上、戦争の責任者を結局うやむやにして過ごしてしまった点、ドイツとは真逆である。日本人は自らが引き起こした戦争を、あたかも天災か何かのように、まるで自分たちが被 -
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3人の社会学者が、中国とは何か、近代中国と毛沢東、日中歴史問題、中国と日本のこれからの4テーマを語り合う。興味深い切り口をテーマとしているので、中国の入門書としてよい。
古代に鉄が登場すると、農業の生産力が向上し、農民が武装して対抗できるようになったため、貴族が没落して春秋戦国時代になった(マクニール「戦争の世界史」)。春秋戦国時代には、諸子百家が生まれて様々な政策的選択肢を提供した。秦は法家を採って儒家を退けたが短命で終わった。漢は儒家を採って法家を隠し味にした。唐は儒教を相対化するために仏教と道教も採り入れた。宋は儒教に純化した。法家には、税金を払わなければ罰するという論理しかない。儒家 -
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大澤真幸さんの本は初めて読んだが、非常に面白かった。
社会学内の「社会哲学」という分野のようだが、じゅうぶんに哲学としての深みがあり、意想外の視点からどんどん事象の解読を進めていく有様はほんとうにスリリングだ。
中身の主張については必ずしも同意できないとしても、この知的刺激のスパイシー度は並みのものではない。「私は花火師である」と語ったフーコーに近いと言えるほどに、知的興奮の導火線に急接近する炎の塊のような論述だ。
本書は2001.9.11の米国で起きたテロ事件をめぐるものだ。それに「2011.3.11/Japan」の事件(震災と原発事故)についての補章が最後にくっつけられている。
テロに関し -
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対談本という性質上、ある事柄について体系的な知識を学べるというようなものではなかったが、憲法学者と社会学者が、特定のテーマについてそれぞれの専門分野からの知見を述べ合っており、刺激的な内容だった。政治や法律に関心のある人なら何かしらの考えるヒントが得られるはず。
個人的にこれはと思った部分を以下に引用する。
木村「憲法研究者ではない一般の人から見れば、憲法というのは国の物語の象徴としての役割のほうが重要なのではないかと思います。それがどのよに誕生したのかという物語と不可分に結び付いている。……ところが、日本国憲法の場合には、大多数の国民が共有できるような、よりどころとしての具体的な歴史的物 -
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社会学者大澤真幸先生と憲法学者木村草太先生の対談をまとめたもの。
そもそも、法の支配とは何か?
法に書かれているものは絶対神の言葉であり妥協が存在しないイスラム教。法の上に皇帝が君臨し、法を支配する中国。そして、人間が法を作り、その法に人間が支配されるという形での法の支配。
日本国憲法の成立、意義、そして国民感情の成り立ちなど鋭い切り口で明快に分析される。
具体的各論についても、非常に明解である。集団的自衛権はなぜ違憲か、そしてあるいみ明確に違憲である自衛隊の存在と、生存権の関係。法解釈についての議論など、非常に面白く、また気づかされることが多い。
憲法について考えるということだけでなく、法と -
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腑に落ちたところも、「?」のところもあったけれど、総じて面白かった。
第一部は、中国が何をアイデンティティにして成り立つ国家なのかという話。
儒教や漢字が大きく作用していて、それは軽く民族や王朝といった枠組みを越えてしまうとのことだった。
第二部は毛沢東の「権力」とはどのようなものだったかの話。
フーコーなどの社会理論が当てはまる部分、当てはまらない部分が列挙されていた。
こういうところが「反知性」の立場の人からは、知的遊戯というか、まだるっこしく見えるんだろうなあ、と思う。
ただ、私は理論を使いこなすというのは、こういうことなのかなあ、とむしろ好意的に読んだ。
第三部は歴史問題をどう考 -
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これからの千年を人類はどう生きるべきか?千年の射程で人類のビジョンを示す、日本を代表する社会学者による奇蹟の対談集。
私の『社会と思想』に関わる思考の基礎は、見田さんとの出会い、見田さんの本から出来ていると思う。
そんな見田さんの対談集。全てを読み込むことは出来ていないけど、見田さんの思考の一部が、私の中に溶け込んでくる感覚が堪らなく好きだ。
『気流の鳴る音』、『現代社会の理論』、『社会学入門』…にして、何度も何度も読み返す中で、体に馴染んできたように思う。
この本も、何度か読み返しながら…『時間の比較社会学』、『自我の起源』も少しずつ読み進めたいとは、思っている…自分の思考の基礎を