大澤真幸のレビュー一覧

  • 戦後の思想空間
    3回に渡っておこなわれた講演をまとめた本で、柄谷行人の「昭和・明治平行説」に則る形で、戦前と戦後の日本社会における超越的な審級の変容を読み解いています。

    第1章では、江藤淳や加藤典洋の議論を参照しつつ、戦後の日本がそれまでの「天皇」に代わって「アメリカ」が超越的な審級に位置づけられていたと論じられ...続きを読む
  • 不可能性の時代
    戦後という時代を「理想の時代」「虚構の時代」「不可能性の時代」の3つに区分し、それぞれの時代における「第三の審級」のあり方について考察しています。

    オウム真理教事件やオタク文化が現代の日本社会のある側面を示していることは間違いないとしても、それらに焦点化する形で戦後日本社会の総体を把握することがで...続きを読む
  • 〈世界史〉の哲学 イスラーム篇
    イスラム教に対して感じてきた疑問に、クリアーに答えられてる気がする。特に、キリスト教との対比において。

    アッラーの最大の性質は「慈愛」
    旧約聖書のヤハフェの冷酷さとは対照的。

    イスラム教では「ヨブ」はありえない。
    不幸は悪いことをした報いであるから。

    イスラム教は神の謎を消して明確化した。
    ...続きを読む
  • おどろきの中国
    著名な社会学者達の対談だけあって視点が多岐に渡っていて面白い。

    人類史の中で、他の文明とか他の文化の真似や影響なしで独自に文字をつくったところは4つしかない。メソポタミア、エジプト、マヤ、中国。
    頭の中が漢字でフォーマットされた中国人が日本を理解することは難しいという指摘は興味深い。
    また一方で、...続きを読む
  • おどろきの中国
     3人の社会学者が、中国について話し合うという本。前半は中国、中国人に関する基本的な謎について。なぜ中国人は、日本人から見ると自己主張の強い人たちに見えるのか、中国人にとっての宗教とは何か、そもそもなぜ広大な地域が国としてまとまっているのか、といった問題や、共産党と毛沢東についての話。後半は中国の歴...続きを読む
  • 憲法の条件 戦後70年から考える
    社会学者の大澤氏と憲法学者の木村氏の対談本。
    内容は興味深いが、対談形式だと、少し理解しにくい。
    個人的には、木村先生単独の作品のほうが、ギャグや小ネタが入っていて面白い。
  • 生権力の思想 ──事件から読み解く現代社会の転換
    これは生権力について語っているのだろうか。フーコーをメインに語ってるというかというと、違う。むしろいつもの大澤節というべき、猟奇犯の動機推理小説。主体の客観的同一性の自己崩壊から甘さの再措定へ。
    そこからでてくるのは、神のゾンビ。価値の生々しい否定によって別の超越的価値を復活させる錬成術。
    そして、...続きを読む
  • おどろきの中国
    橋爪大三郎、大澤真幸、宮台真司の3人が、中国をテーマに語り合った本。

    中国という国のあり方は、ヨーロッパの近代国家を基準にして作られた西洋の社会学の枠組みでは説明しきれないところがあるにも関わらず、文化左翼的な立場からの中国論者たちはポストコロニアル批評などの西洋の現代思想を当てはめることで中国を...続きを読む
  • 夢よりも深い覚醒へ 3.11後の哲学
     最低限、同著者の『不可能性の時代』(岩波新書)を読んでいないと、まったく理解できないと思われる。相変わらずの衒学趣味とアクロバットな力技には辟易させられることもあるが、さまざまな社会問題に対するちまちました対症療法の繰り返しにうんざりしている向きには魅力的な問題提起ではある。少なくとも第3章と第5...続きを読む
  • 近代日本思想の肖像
    「思想のケミストリー」に新項目が加えられたもの。

    加えられたのは、「丸山眞男」と「丸山眞男と太宰治」についての論文。
  • おどろきの中国
    隣国でもあり分かっているつもりでいるので、積極的に理解しようとしない。実際には知らないことばかり。我々にとって中国とはそんな国なのではないでしょうか。
    三国志は読んだことあるけど、文化大革命についてはよく知らない・・・私もそんな状態でした。

    中華という思想、儒教と文化大革命、国家というよりも共...続きを読む
  • 生権力の思想 ──事件から読み解く現代社会の転換
    規律訓練型の権力から逃れるために、むしろその権力が自己否定的な結果をもたらす程度まで徹底的に作動させること。

    規律訓練型権力から管理型の生権力への変容を内在的に後付ることによって、権力に対する抵抗の足がかりを見出す。管理され尽くされること自体がその権力関係を内側から食い破っていく。

    この論点はわ...続きを読む
  • 不可能性の時代
    アメリカに管理され、高度経済成長を理想の時代から
    凶悪な犯罪事件などに代表される虚構の時代を経て、
    不可能性の時代に突入した今。

    不可能性の時代とは、「現実への回帰」と「虚構への耽溺」という、
    2つのベクトルを持つ時代という。
    政治の世界でいえば、
    「現実への回帰」は原理主義
    「虚構への耽溺」は多...続きを読む
  • 不可能性の時代
    オビの文句「なぜこんなにも息苦しいのか?」と「不可能性の時代」というタイトル。これらにある種の救いを得ようと本書を手に取る人も多いのではないかと思う。しかし個人的には、「理想の時代」、「虚構の時代」そして「不可能性の時代」という戦後を3期に区分する発想と、その画期としての1970、1995という年を...続きを読む
  • 資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか
     資本主義の来歴と現状を広範に論じた対談。「知的遊戯」としては抜群に面白いし、新自由主義経済の犯罪的本質への批判も真っ当だが、「資本主義はこのままでは破綻する」という現状認識の域を出ないため、副題の「『成長なき時代』をどう生きるか」という問いに対する具体的・実践的な指針は示されない。歴史学サイドとし...続きを読む
  • おどろきの中国
    経済的にも文化的にも大きな関わりを避けられない隣の大国のことを、自分があまりにも知らないので、読みやすそうな本書を買いました。
    政治体制が変わっても中国社会の根底にある人間関係の規範のことが何となくわかったような気がします。
  • おどろきの中国
    なかなか。
    三人の中国通対談集。
    中国は本当に国家なのか。毛沢東の間違い。鄧小平について。
    参考になった。
    少々、読み応えが有り過ぎる。
  • おどろきの中国
    中国は帮(ホウ)の世界だ、三国志の劉備の関羽・張飛の関係だ。 その中に入れば親密で親しいがその外では完全な敵となる
  • 「正義」を考える 生きづらさと向き合う社会学
    功利主義の最大の問題は「普遍性」を放棄すること。
    功利主義は。犠牲を正当化するケースからもよくわかるように、公平性に二義的な関心しか向けない。Cf. トローリー・ケース by イギリスの哲学者フィリッパ・フット p73

    【修正功利主義】p74
    「最大多数の最大幸福」のような目標を、数学ではダブルオ...続きを読む
  • 生権力の思想 ──事件から読み解く現代社会の転換
    ミシェル・フーコーが提起した「生権力」から現代社会において、生権力がなぜ、どのようにして規律訓練型から管理型へと転換したのかをオーム真理教事件、宮崎勉事件などをとりあげて説明する。私には少々難解でした。