大澤真幸のレビュー一覧
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尊敬する社会学者の一人、大澤真幸さん。今回もおもしろかった。どこかでもう一度読み返したい。『不可能性の時代』と合わせて読むと、より効果的かと。
原子力を巡る「信と知の乖離」や、「例外の守備範囲の拡大」などは、多くの人が共感できると思う。また、ロールズの正義論の限界を乗り越えられる理由として、「未来の他者は、ここに、現在にー否定的な形でー存在しているからである」という点を上げ、「閉塞から逃れたいという渇望」を肯定的にとらえたこともおもしろかった。「プロレタリアート」をより広義に解釈してはどうかという提案も、こことつながるように思った。
ただ、神学とマルクスに関するあたりは、どうも慣れていなく -
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ネタバレ資本主義は普遍的なものなのか、過渡期的なものなのか?なぜ西洋〜キリスト教の下で発生したのか?国民国家と資本との関係は?
ローマから始まって、スペイン、オランダ、イギリス、アメリカ、日本、EU…。歴史上、ヘゲモニー国家は生産拡大→金融拡大→バブル→崩壊というサイクルで移行して行きます。その指標として水野氏は「利子」に注目します。そもそもキリスト教でもイスラム教でも禁じられていた「利子」を採用する事によって資本主義は生まれたといいます。その利子が10年を超えて2%以下の超低金利が続くと、既存の経済・社会システムが維持できなくなるという仮説なのですが、現在の日本は16世紀のジェノヴァの記録を40 -
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ネタバレ『夢よりも深い覚醒へ』岩波文庫・大澤真幸
正直言って自分の手には余るテーマだけれど、こういう時世だからこそあえてレビューを。3.11を受けて、原発のありかたの是非を根源的に問う哲学書。この問題設定をおこなう以前に答えは決まっている。かくも危険な存在であると分かっている原発をなぜに容認してしまうのか。
その答えは比較的簡単で、「原発はもともと相当に安全に造られているのだから、一切の原発の建設を諦めるというような極端に走らなくても、事故を起こさずに済むのではないか、と。…「われわれ」が極端に用心深くなって、原発を放棄してしまえば、「われわれ」だけが損をしてしまうのではないか、と。要するに、原発 -
購入済み
興味がある人は必読!
個人的には無宗教ですが、マイケルムーア監督の西洋社会への風刺をかいた映画を見てから、
西洋社会が政教分離できていないことに驚きと関心があったので、この本を購入。
そもそも興味がないと読まないジャンルだと思いますが、社会学、心理学的にキリスト教にせまっていて
興味のある人にとっては大変おもしろいとおもうので★5つにしました。
今の西洋に影響を与えた宗教の成り立ちを中心に書いてあり、
(第1部ユダヤ教、第2部キリストについて、第3部まとめ、な感じでした)
なぜキリスト教に人々が特にハマることになったか、など心理的な部分もフォーカスされています。
対談形式な -
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ネタバレ[ 内容 ]
9・11テロは、文明の「外敵」が引き起こした事件というだけではない。
アメリカを含む「私たち」の内にも、イスラーム原理主義に呼応する側面があるのではないか?
テロリストは、私たちの内なる欲望を映し出す鏡ではないか?
文明間の衝突は、同時に私たちの文明の内なる衝突ではなかったか?
現代世界の深層に横たわる葛藤の根源的要因を、“資本”のグローバル化との関連で鋭く読み解き、この葛藤を乗り越えるための思想的・実践的課題を模索する、著者渾身の書き下ろし。
[ 目次 ]
序章 9・11テロ、そして社会哲学の失効
第1章 文明の内的かつ外的な衝突(資本主義への攻撃か?;テロリストへの憧憬 ほ -
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201103/
ウォルター・リップマンの『世論』/
世論の形成においてエリートの存在がいかに重要か/
個々の市民は群集の中におぼれている。だから、彼らにはローカルなものしか見えていない/
エリート知識人があたかもすべてを見通しているかのように人に思われることは、世論が形成され、民主主義がうまく機能するための絶対条件/
つまり、個々の市民は自分のことしか分からない。ローカルな視野しか持っていない。でも誰かが普遍的な知を持っているという幻想が成り立つことが重要なんです。このとき初めて市民は、エリートによって自分たちが代表されていると思うことができる/
ここで重要なのは、エリートが自分の代わりに見通 -
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「あなたはすべての仮面ライダーを破壊するものです。創造は破壊からしか生まれませんからね。残念ですが…」
突然だが、この「仮面ライダーディケイド」第一話「ライダー大戦」で紅渡が主人公の門矢士に言った台詞が、やけに本書が示唆する時代背景の一面を表している。
今までいろいろ電車やバスの中でちょくちょく読んでいたものの一冊が、大澤真幸(2008)『不可能性の時代』(岩波書店[岩波新書1122])。
人は人生や社会など、身の回りのものや現象に意味づけを行いながら生きている。その意味づけを組み合わせて、大きな意味づけを作り出すことができる。
大澤は本書で1945年から現在までの様々な事象を意味 -
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まだ3ヶ月以上あるのでまだ言い切れない部分がありますが、今年一番といっても良いほどの読み応えがある本です。新書と侮るなかれ。価格と読みやすさから得られる新しい地平の広さを思えばこそ言えます。社会科学系の本において今年一番の衝撃的な指摘と解説をふくんだ本でした。恥ずかしながら著者である大澤真幸氏の名前はこの本で初めて知りました。
バブル経済崩壊後に長引き、「失われた10年」と比喩されたり、閉塞感や不景気に対して突破感をもてない戦後最長の拡大成長期をへて、たどりついた2008年という今の時代。しかし、著者・大澤真幸氏は現在の日本がなぜこうした状況にあるのかを経済の拡大か停滞かと関係なく、日本が -
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オウムに始まり、戦前・戦後・戦後後と語っていき、思想の流れを読み解く本書。決して簡単ではなく、中盤の「経験可能領域」あたりで訳がわからなくなりました。
ですが、思考方法として、この本から学ぶことは沢山あります。
ウルトラマンやエヴァンゲリオンまで持ち出して現代思想を読み解いていこうとする試みは、とても面白いと思います。
大正天皇に世俗性をおく考え方というのは賛否両論あると思いますが、思考方法としてはありなのだと思います。とても興味深い。
「二十世紀は、とりわけその後半は、冷戦の時代でした。冷戦というのは、仮想的なままに終わった第三次世界大戦です。この対戦に関して重要なことは、これは、最後 -
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大澤真幸が、911テロの問題を様々な視座から抜本的に問い直していく。
『虚構の時代の果て』でも言えることですが、やはり他者の他者性、他者としての他者、あるいは「他者」といったものが
大澤真幸を読み進めていく上で基幹となるテクニカルタームであると思う。
この「他者」という大澤氏の考えがわかると、非常に読み易いのではないだろうか。
さらにここでは、イスラームとキリスト教、そしてそこに交わる原理主義と資本主義というものを比較社会学的見地から見ていくのだが、
複雑に絡み合う中で、突破口を目指す流麗な論理の展開は見ものだが、自分でも十全に理解しているとはいえない。
しかし、高校のときに初めて大澤真幸に出