大澤真幸のレビュー一覧
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資本主義という謎 (NHK出版新書 400)
(和書)2013年10月14日 00:37
水野 和夫, 大澤 真幸 NHK出版 2013年2月7日
格差を絶えず付け続ける運動が資本主義である。
それに対し格差を解消することを目指す平等と平和の哲学がある。
資本主義の中から格差を解消する対抗運動が生まれることは考えづらい。それは資本主義自体が格差をつくる永久運動としてしか存在意義がないからである。やはり理念を明確に持つことが不可欠であると思う。
〈理念)=〈格差の解消としての平等と平和の運動又はシステム〉
柄谷行人さんの交換様式がカール・ポランニーから来ていることを知った。互酬性、再 -
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世論調査に関わっていたこともあり、「世論」、「空気の研究」は読んだことがあったが、表現が難解で最後まで読み切ることができなかった。
今回、大澤真幸さんらの解説を通じて、ようやく内容を理解することができ、爽快であった。
それと同時に、国単位での集団心理の特性は、今も昔も大きくは変わらないのだなと改めて感じた。
昔と比べると我々が接するメディアの種類は増え、かつ、メインに接するメディアも新聞TVから移り変わり始めている。
そのため、皆が同じメディアから情報を得て、同じように意見を形成していく形ではなく、それぞれがそれぞれのメディアから情報を得て、それぞれの意見を形成していくようになってきたと思 -
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社会学の大澤先生の思考論。
考えるにあたり、書物の力を媒介とする点は、編集工学の「探究型読書」と似ている。
以下が主な命題。
・何を、いつ、どこで、いかに、なぜ考えるか
・ショックがあった思考が起動する・・・ジル・ドゥルーズの「不法侵入」
・が、常識の壁を破るのはなかなかに難しい
・思考を化学反応ととらえると触媒となるのは、他者と書物
・書物の力をいかに創造的に活用するかがテーマ
読んで考える、という観点で、テーマごとに下記の書物が取り上げられている。いずれも考え甲斐があるのは間違いない。また思考の共鳴を促すようにも編集されている。
社会科学:主題 時間・・・真木悠介「時間の比較社会 -
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なかなか骨太の内容の本なんだが、とても読みやすい。
4名の論客が、マスコミとメディアと世論の関係について、実に刺激的に論理を進めてくれている。しかも、その論理を進める際に引用しているのが、ちょいと昔の本なのだから、おもしろい。
・ハルバースタム著『メディアの権力』
・トクヴィル著『アメリカのデモクラシー』
・ベネディクト・アンダーソン著『想像の共同体』
・ブラッドベリ『華氏451』
それぞれの方の文章の後には、その内容に関する座談会の様子も収録されていて、これもまた私たちの理解を助けてくれる。
ここにあげられている本も読みたくなったなあ。
まったく本書の内容の紹介にはなっていないな -
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新書にして630ページの厚み。でも94册分(たぶん…巻末の索引で引用文献、数えてみました。)の社会学を巡る膨大な文献をエッセンスを詰め込みながら超コンパクトに社会学の歴史をツアーするガイドブックです。それは「社会学の歴史」こそが「社会学とは何か?」の答えになる、という学問だから。序文でも「社会学の歴史はそれ自体が社会学になる。そこに社会学という学問の特徴があるわけです。」と語っています。なるほど、ノーベル賞でも分野の確立している学問、例えば、物理学って何?とか経済学って何?とかは敢えて問わなくてもいいような気がしますが、社会学って何?についての答えは持っていないような気がして手にしました。出版
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どうやら社会学がブームのようだ。著者をはじめ古市憲寿氏や小熊英二氏等、若くてしかもテレビ映えのする学者が多く台頭してきている。書店の新書の棚を眺めても、「社会学」の文字は以外に目につく。政治学や 経済学に比べイデオロギー論にすり替わりにくく、哲学よりはとっつきやすい。手軽さ・気楽さと程よいアカデミックさが求められる新書のようなメディアにとってはうってつけの題材なのだろう。本書のボリュームは600ページ、価格は1,500円を超え、その意味では新書の枠を踏み越えてはいるが既に4版を重ねている。売れているのだ。なお本書は3年ほど前に出たちくま新書「社会学講義」中、著者が担当した第2章「理論社会学」の
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三島由紀夫の自決については、あたかも腫れ物にさわるかのように、多くの識者が口をつぐんだままである。そんな中でこの問題に正面から取り組んだ大澤真幸の勇気にまずは拍手を送りたい。
冒頭で大澤はタイトルにもある「ふたつの謎」を提示する。一つ目はもちろん三島由紀夫の自決である。なぜあんな死に方をしたのか。二つ目は最後の作品となった『豊饒の海』四部作の不可解なエンディングである。どうしてあのような、それまでのストーリーを全て台無しにするかのような、自己否定的な結末に至ったのか。両者は同じ日付を刻印されており、それだけに無関係ではないはずだと大澤は推理する。
まず一つ目の謎について。1970年11月 -
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哲学とは疑うことである。常識を疑い、道徳を疑い、科学を疑い、人間を疑う。要するにありとあらゆる先入観を哲学は疑う。だが言うまでもなく、社会に深く根付いている先入観ほど疑うことが難しい。
例えば資本主義というイデオロギーは、最も疑うのが難しい先入観の一つであろう。登校を拒否する反体制の不良でさえ弱者からカネを巻き上げ、道徳に囚われない殺し屋でさえ報酬を要求する世の中なのだから。「地獄の沙汰もカネ次第」という言い回しにもあるように、われわれは貨幣至上主義に染まっておりしかもそのことに気づいていない。
だが実のところ貨幣そのものに価値はない。価値のない貨幣がなぜ流通し続けるのか。そのパラドック -
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【未知満ちた国の成り立ち】『不思議なキリスト教』でも対談を行った東京工業大学名誉教授の橋爪大三郎と社会学者の大澤真幸が,ずばりアメリカをテーマとして対談した作品。知っているようで知らないその国の根幹を,キリスト教やプラグマティズムを軸として語り明かしていきます。
あとがきに記されているとおり,アメリカの「急所」を知る上で大変参考になる一冊だと思います。目に見えないものとしてどうしても取っ付きづらさが伴う宗教・哲学面に光を当てることで,多くの方にとって新鮮なアメリカ像が浮かんでくるのではないかと思います。
~プラグマティズムは、宗教のことを考えている。さまざまなキリスト教の宗派(教会)と自然 -
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新聞広告をみてビビっときて、書店で手に取ってまたビビっときた1冊。期待通りに面白かった。単に社会学の歴史と人物を羅列的に紹介するのではなく、その時代になぜそういう考え方が出てきたのかという点を大きな歴史の流れの中で整理して教えてくれるのと、それぞれの理論について、著者なりのかみ砕いた解釈により、身近な事象に置き換えて理解させてもらえるので、とても腹落ちしやすかった。特に、マックスウェーバーの理論の切れ味については、あらためて感じ入った。ただ、現代の社会学については、元の理論が少し細かい点に入りすぎているためなのか、自分の中で整理して考えることが難しかった。
学生時代、社会学専攻でしたが、当時、