多和田葉子のレビュー一覧

  • 献灯使

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    読み進めるにつれて、未知の世界に引き込まれる感じがした。風景や様子など表現が細やか。義郎が荒廃した都心を想像していたが、とても寂しい風景なのにどこか幻想的に感じた。気持ちの揺れに対して潮の満ち引きなど、素敵な表現だなと思う。
    義郎は、曾孫に知恵や財産を残してやろうとするのは傲慢だ、今できるのは一緒に生きる事。その為にはずっと信じていた事を疑える様な勇気を持たなければならない。と考えていて、歳を重ねるにつれて考えが凝り固まってしまう人の方が多いと思うが、そういった考え方の更新は、義郎の世界だけでなく、今の私達の世界でも必要なことかもしれない、と思う。
    下心をもって結婚し、そんな自分を軽蔑したこと

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    2022年08月23日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    祖母、母トスカ、そして息子クヌートの三代にわたるホッキョクグマの物語。
    実はクヌートについては、名前を聞いたことがあるくらい。
    映画か何かのキャラクターだと思っていたくらい。
    それが、多和田さんの手にかかると、こんなめくるめくような言葉の構造物になる。

    ただ、読み終わったあと、どうにも悲しい。

    自伝を書くホッキョクグマの「わたし」の物語から始まる。

    サーカスの花形ウルズラとトスカの、濃密な関係。
    しかし、それもサーカスが動物虐待にあたるという世論により、二人は引き裂かれる。
    トスカの「死の接吻」の芸により、ウルズラの魂がトスカの中に入っていく。
    ウルズラの死後、トスカがウルズラの自伝を書

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    2022年08月04日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    多和田葉子ってこんな笑える文章もかけるんだ。所々表現が難解で、ちゃんと解釈できてるか不安な箇所があるんだけど、多和田葉子らしい詩的で仄暗い言葉が散りばめられてて最高でした。私は新しめの短編が好みだった!

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    2022年07月27日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

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    ベルリンは訪れたことがないので、google earthでそれぞれの通りを見ながら読んだ.一つの店を見ながら様々な思いが沸き上がり、それが落ち着く前に別の気持ちが吹き出してくる、着いていくのが大変だ.当然ドイツ語が随所に出てくるが、分かりやすい解説が楽しめた.彼女のような散歩は彼女にしかできないと感じた.

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    2022年07月06日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    多和田葉子が世界の様々な都市に滞在した時の体験をもとに綴った「ことば」をめぐるエッセイ.ソローキンと山田詠美のやりとりが微笑ましい.

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    2022年06月29日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    シロクマが人間の世界で生活したり、そこには性格の悪いオットセイとのやりとりがあったり、サーカスで人間とコミュニケーションがとれたり、動物園で感じることがあったりと、異世界が描かれている。それが、共産主義のロシアや東ドイツが舞台であることによって、人間の生きづらさではなく、人間に愛着を持ちつつも、人間によって生きづらくなったシロクマの生命が冷静にシニカルに描かれて、目が覚めるような感覚だった。

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    2022年05月14日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    28冊目

    2009年から2018年に『文學界』に発表された7つの掌編。

    現実にいながら、ふと違う次元に迷い込んでしまうような一瞬、不条理な部分もあって夢をみているかのようです。そこに意図的誤変換からの言葉遊びが加わると私の精神もぐらぐら揺れ動いてしまいます。

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    2022年05月01日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    ネタバレ

    12編のアンソロジー。
    どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
    その中でも特に好みだった2つについて書きたい。

    『藁の夫』
    2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。

    『逆毛のトメ』
    シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚か

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    2022年04月21日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    「人権については考えたことがない」
    そりゃそうだ、ホッキョクグマだもの。

    ふわふわしているのは見た目だけではない。この物語の空気感。
    透明の風船をつかむような、形のあるようなないような不思議な感覚。

    三部それぞれ少しずつテイストが違う感じ。
    世の中のややこしさやせつなさもにじませながら、シュールでクールでユニーク。
    読み終えた、あとになって何かがじわ~っと広がって来る気がした。
    味わい深い作品だった。

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    2022年04月11日
  • 私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2

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    コロナ後の日本社会はどのように変化してゆくのか。変化した社会にどう生きるか。桐野夏生さんの「不寛容な時代、自由な小説から力を得て欲しい」の言葉に、不安の塊がふうっと軽くなりました。

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    2022年04月04日
  • 献灯使

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    初めてのディストピア小説。ちょっと私の想像力が足らないと反省。でも、新ジャンル開発になりそう。自分でも意外。

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    2022年03月18日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    今の自分には、わかんなかった部分もあったけど、わからないままでいいかと思った。わからないけど良かった。

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    2022年02月11日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    「胡蝶、カリフォルニアに舞う」のストーリー性に牽引され、「穴あきエフの初恋祭り」でかく乱される。多和田さんの作品には、人称の問題とセットで語り手の問題が埋め込まれていることが多いのだけれど、やはり、この本もそうだった。「おと・どけ・もの」は、多和田さんが詩人でもあることを強く感じさせる一編。韻文と散文を自在に往還できる作家さんは、本当に魅力的だ。

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    2022年01月27日
  • 献灯使

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    前回の本と同様なかなか読み進められなかった.
    でもこれは面白かった.
    面白いというより読みすすめるたびに色々考える事がある内容.
    言葉遊びと言い回しと独特なテンポがあるので本を読み慣れてない私にはググっと入り込めないけどジワジワとくるものがある.
    献灯使の最後は え??なに??ここで終わり??え?どういう事??ジョジョ並のぶった切りのような終わりに困惑したけれど 他4作の短編を含めて1つの作品という印象.
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    2022年01月06日
  • 言葉と歩く日記

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    日本語とドイツ語で著作するというか、文学作品を書く著者の言葉をめぐる日常を描いた本。

    著者の「エクソフォニー」という本をたまたま読んで、自国語以外の言語環境で生きること、さらには文学作品を書くということについての話しが面白かったので、こちらも読んでみた。

    日記という形で、その日その日におきたことを言葉、言語の違いという観点で書いてあって、すっと入ってくる。

    でも、これって、社会構成主義とかでいう「言葉が世界をつくる」ということだな。

    ある名詞が指示するものごとの対象範囲は言語によってことなるし、たまたまある言葉がほぼ程度同じことに対応していても、その言葉がもっている他の意味とか、語源に

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    2021年12月07日
  • 献灯使

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    大地震によって大陸から遠く離れ、原発事故の影響で放射能に汚染された日本。政府は鎖国政策を取り、往来での外来語使用はなんとなく憚られる空気のなか、人びとの生活と共にことばも形を変えていく。震災後に生まれた体の弱い曽孫・無名の看護をする"死ねない老人"義郎の物語「献灯使」ほか、大災害と原発という二つの〈爆弾〉を抱えた列島の物語五篇を収める短篇集。


    あらすじを書きだすと真面目な反原発小説のようだし、実際真顔で書かれた反原発小説そのものなのだが、表題作の構造自体はSF。〈変わってしまった世界〉の姿が霧の向こうから少しずつ見えてくるのが楽しくもあり、恐ろしくもあるディストピア小説

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    2021年10月03日
  • 私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2

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    20人によるエッセイ。
    共感できる話が一つや二つはあるのではないでしょうか。
    私は瀬戸内寂聴さんでした。

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    2021年09月27日
  • 尼僧とキューピッドの弓

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    本好きの友人に誘われ、多和田先生の読書会へ行くときに読みました。とても文章が好き。整頓された文章で且つ感情への訴えかけも緩やかでてくだです。

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    2021年03月07日
  • 言葉と歩く日記

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    ネタバレ

    作者は早稲田大学で文学を学び、ハンブルグ大学で学び、チューリッヒ大学で修士を撮った人が、言語の壁を日本語からドイツ語を観察したり、ドイツ語から日本語を観察する際に、感じたことを日記の形で、自作翻訳している期間にまとめられたもの。それは、日本語の「雪の練習生」を和独する作業をされていた時期だと後書きで述べられている。
    作者の琴線に触れた事としてあげられている物の中の一つとして。117項にこんな記述がある。
    「ハンナ・アーレントによれば、ナチスの一員として多くのユダヤ人を死に至らせたアイヒマンは、悪魔的で残酷な人間ではなく、ただの凡人である。上からの命令従わなければいけないと信じている真面目で融通

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    2022年10月08日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    ネタバレ

    親子3代のホッキョクグマがそれぞれ語り手となる3部構成。(人間が語り手となる部分もあり。)

    最初はホッキョクグマが語り手であるとわからず、違和感があったが、それをわかって読むと面白い。

    ホッキョクグマと人間の視点を行き来しながら、読む本ははじめてだったので楽しかった。

    パーティーに出席したり、会議に出席するクマの描写に思わずクスッと笑ってしまうところもあった。

    人間のように語るホッキョクグマの視点に、人間が思う「クマらしさ」を感じて心が和んだ。

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    2021年01月19日