多和田葉子のレビュー一覧

  • 献灯使

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    東日本大震災の"if"の世界を描く5作品収録。デストピアの雰囲気漂う中に、どこか浮遊感漂う不思議な作品。紡ぐ言葉は柔らかく、描かれる世界は退廃的。各話の主人公たちの視点の切り替えの機微が素晴らしい。おそらくジャンルとしてはSFに分類され、捉えどころのない作品ではあるが、文学の新境地を感じさせる作風。

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    2024年11月08日
  • 献灯使

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    一年以上前にNHKで多和田さんがニュースで取り上げられてて初めて知った作家さんで、ずっと一度は読んでみたいと思っていた。

    ニュースの内容は記憶にないけど、ノーベル文学賞に近い日本人の一人(もう一人は村上さん)として紹介されてたのではないか。

    この本は2013.2014位に世にでていて東日本大震災の影響がとても強い作品だと感じた。ドイツに在住されてる多和田さんの俯瞰的日本像というのか近未来小説というのか。世界観が、テーマは重いながら、不思議とページをめくる手は止まらない。

    非常に風刺が効いてるんだが、人はこうあるべきみたい説教くささはなく、読者に判断は委ねられている。

    短編小説が5つ収載されているんだけど、設定が面白くて、「韋駄天どこまでも」は何故かある漢字のみ太字で強調されたりの文字遊びあり、「動物たちのバベル」は、動物たちが出演する舞台台本なんだけどシュール。セリフだけで、なんの解釈もなしでここまで見せる凄い。出演は、リス、ウサギ、クマ、ネコ、イヌ、キツネ。ノアの方舟が設定かな。

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    2024年10月19日
  • 溶ける街 透ける路

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    さまざまな街が、そこに息づく人々とともに紹介されていく。ともに旅行をするというより、ともにそこに短期間、よそ者として住み着くような感じ。また、筆者の関心である移民に目が向けられ、またそれが幾層にも重なっていくことによって、街が変化していくことが想像される。

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    2024年09月14日
  • 言葉と歩く日記

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    ネタバレ

    311の後、コロナ前。言葉との向き合い方がとても丁寧で相対的で面白かった。3つ言葉ができるといいなあ。ベトナム語またやろうかな。

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    2024年08月08日
  • 言葉と歩く日記

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    vollmondのkomachiさんがインスタで投稿していたことがきっかけで読んでみた。英語、ドイツ語を学ぶにあたりぶつかった疑問を解いてくれるような本も紹介されていて参考になる。ふと思っていることを言語化してくれていて、これが言いたかったんだ!と思う箇所も。言語学習者、特にドイツ語学習者にはおすすめ。

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    2024年07月15日
  • 尼僧とキューピッドの弓

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    多和田さんの小説としては幻想的な部分が少なくて読みやすかった。
    第一部は様々な性格の尼僧たちと修道院の様子が面白くて時間を忘れて読んだ。
    第二部は主人公の流されてしまう性格が身につまされてなかなか読み進められなかったが、つらかった分ラストが良かった。

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    2024年03月13日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    酉島伝法さんの作品を読んでいて「山尾悠子っぽいなあ」と思い、[酉島伝法 山尾悠子]で検索したら酉島氏のインタビュー記事がヒットし、みるとやっぱり影響を受けているようで、そこで山尾氏と同時に挙げていた作家さんが多和田葉子さんでした。多和田氏の作品の中から本作を選んだ理由は、表紙にホッキョクグマが描かれていたから。読んでみたらマジでずっとホッキョクグマの話だったから、とてもよかった。高校2年生の秋に北大銀杏並木のライトアップを見に行ったとき、路上ライブしていた北大生水産学生がホッキョクグマについて熱く語っていて、その時のことを思い出しながら読んだ。本作に出てくるクマたちは皆どこか、あの水産学生の女の子に似た雰囲気がある気がする、なんか、切実さとか。
    月刊誌に3ヶ月連続で掲載されたという中編3編ですが、どれも多分あんまりプロットとか考えずに書かれてるんだろうな、と勝手に考えました。思考垂れ流し、みたいな文章群で、難しい表現はあんまりないけど、平易な語彙の組み合わせで見たことない景色を見せてくれる(最終頁なんかはその真骨頂で、ふるふる感動した)。勢いよくエイヤと一筆で書くような物語は好きです、というか割とそういう小説家って多いらしい。小川哲も京極夏彦もプロットを考えずに書くって言ってた、それでアレが出力されるのえぐい。
    読み終わった今、タイトルの意味を考えています。ホッキョクグマという依代を得て作者が描いたエチュード、ということですかね。多分、その逆なんでしょう。

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    2024年01月30日
  • 犬婿入り

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    新感覚の小説だなと感じました。 
    「ペルソナ」は、ドイツに住む日本人の道子が
    人種による偏見に苛まれて、様々な国の人たちに出会い、それぞれの国でも、偏見があると知りながら、東アジアで一括りにされることに嫌悪感を
    抱く弟の和男との共同生活にも、違和感を感じていく、著者自身が、ドイツに住んでいることからも、自身が体験したことも反映されていると思います。 
    「犬婿入り」は、ある塾を中心に繰り広げられる不思議なストーリーでした。言葉が一つ一つ胸に響いてきますね。太郎の奇妙さも際立ちます。

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    2023年12月29日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    書店でタイトルと帯が気になり買ってみました。
    詩的で色っぽくて文字を追いたい欲求を刺激してくれますね
    同著者の本も読んでみたいなー

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    2023年12月19日
  • 言葉と歩く日記

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    日本語とドイツ語で小説を書き、英語やロシア語も出来る多和田葉子さんが、
    日本語で書いた小説をドイツ語に翻訳する期間、言葉について考え書かれた日記。
    世界中を旅して朗読活動をされているので、
    様々な国の色々な言語を使う作家や詩人や学者の方々との交流も興味深く、
    知的だと思うけど難解な感じはなく読みやすかったです。
    ヨーロッパでは多言語を話される方も多いけど、
    上海の喫茶店で周りの人たちがそれぞれ
    中国語、日本語、韓国語、英語で話していて、
    ある若い学生の集団は次々と言語を変えて話していたことを思うと、
    アジアもアジアで多言語が交錯する場所ですよね。

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    2023年11月11日
  • 聖女伝説

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    感想を言語化するのが難しいなぁ。理解出来たような気になっている部分もあれば、全体像は掴めていない気もする。そんな読後感が懐かしくて、読んだ人と意見を交わしたいと思った。

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    2023年11月08日
  • 溶ける街 透ける路

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    多和田葉子さんのエッセイが好きでこちらで3冊目ですが、
    この本は軽やかでヨーロッパ(主に)の町々を旅しているような
    気分になれる本でした。
    解説によると世界四十八の町をめぐっているとのこと。
    自然体の文章が心地よいです。

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    2023年11月05日
  • 聖女伝説

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    謎の男・鶯谷が頻繁に出入りする家で両親と共に暮らす少女の目を通して、猥雑で不可解な世界を生き延びていく少女小説。


    既読の二作(『百年の散歩』と『献灯使』)に比べ、フェミニズム的なテーマがわかりやすく示された作品。「獣姦」とか「精液」とかいう単語がでてくるのに語り手の年齢が九歳と言われてびっくりするのだが、その精神性はほとんど変わらないままいつのまにか十八歳まで時が飛んでいる。幼児からとっとと少女になることを求められ、”成人”になることは求められないという社会的な性役割を表しているかのよう。女は聖人になれないのか、「聖人の母」にしかなれないのか、という問いはそこにもかかっていたりするのかな。
    テーマはわかりやすいとはいえ、内容は多和田葉子らしい謎に包まれてもいる。聖女を目指してことあるごとに聖句を唱える少女が語り手なので、窮屈で息苦しい切迫感が常にある。シュヴァンクマイエルの本と続けて読んだせいか『オテサーネク』的な実写アニメで脳内に映像が浮かんできたし、わかりやすく似ているというわけじゃないけどテーマ性的にガルシア=マルケスの「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」も連想した。思春期に入ってからの男友だちとのやりとりなんかは少女漫画のモノローグっぽくもあり、純文と少女漫画って近しいよなぁと思う。福永信の解説を読むと、この作品をフェミニズム小説と考えること自体当たり前じゃなかった時代があったということにしみじみし、ぞっとした。

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    2023年10月27日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

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    最近ふとしたことからドイツ語に興味を持ち、特に「名詞に性がある」というドイツ語の特徴になんとなく気になるものを感じていました。とりわけ「ややこしそうな文法ルール」として。

    そんな中、個人的に惹きつけられた本書の一場面が、ドイツ語文法に怒りを込めて文句を言うアメリカ人と思われる女性に対し、主人公の「わたし」が
    『「性を失った英語の方がよっぽどステューピッドでしょ」と言い返してやりたくなった。』
    と心の中で反発する場面でした。

    真実がどうかはさておき、「言葉というものには元々性があって、英語はその性を失ってしまった言語なのだ」というものの見方は、自分の中に新しい視点を与えてくれたように思います。
    もっと言えば「ややこしそう」というネガティブな印象をも反転させられたと言えるかもしれません。

    言葉の中にある引っ掛かりや違和感みたいなものを、独自の視点で掬い上げる感覚はやはり多和田さんならではだなと唸ってしまいます。

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    2023年08月11日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    「エクソフォニー(exophony)」
    聞き慣れない言葉だが、「母語の外に出た状態一般」、そして「母語以外の言語で文学を書く現象」を意味するらしい。

    日本語とドイツ語で創作活動を続けてきた著者の多和田葉子さん。

    様々な言語文化と接する中で見えてきたもの、感じたことを鋭い洞察力で文字に起こしている。異なる言語の視点を持つことで、日本語を客観的に見る機会が得られることに気付かされる。
    ドイツ語の言葉遊びも面白い。

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    2023年07月31日
  • 献灯使

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    終末期の淵に立たされた世界の中で、生きる力をすでに見失った子ども達と相反して現実世界を生き抜こうとする老人達。
    表現というのはこんなにも多様なのかと驚いた。
    読み終わった後に私自信がこの小説の言葉や世界から抜け出せなくなりました。

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    2023年07月27日
  • 尼僧とキューピッドの弓

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    中世から続く修道院、尼僧といったモチーフから想起されるものと作中で語られる現代的な尼僧らの生活や価値観のぶつかり合いに、読みながら知的興奮を覚える。
    ルポ的ですらある前半と、ある一面からの答えをくれる後半の読み口の違いもたまらない。

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    2023年07月03日
  • 私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2

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    金田一秀穂さんは
    日本語は緊急事態に向かないと言う

    緊急事態を宣言します、には
    本当に緊急事態なの?

    緊急事態宣言を発出します、だと
    ああそうですかとどこか他人事

    日本語の得意は落とし所を探す事

    ロックダウンより20時閉店
    和を持って貴しとなす、それでいい

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    2023年06月27日
  • 犬婿入り

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    『ペルソナ』も『犬婿入り』も面白かった。
    多和田葉子さん自体、初めてだったけれどとても読みやすくあっという間に読んでしまった。

    あれは何かを意味していてとか、あれはそういうことで等、難しい解釈は分からない。
    ただ私が読んでいて好きだなぁと思ったのは、ペルソナにしても犬婿入りにしても主人公の女性が周りで起こっている変な事の割に、妙に現実的な考え方や過ごし方をしているところだ。
    周りが全部おかしくて、主人公だけが現実のような。不思議の国のアリスのようなところが初心者読者の私も取り残されず楽しめた。

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    2023年05月30日
  • 犬婿入り

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     「ペルソナ」と「犬婿入り」の2作品で「犬婿入り」の方が好きだった。
     2作ともギリギリのギリギリで破綻しない奇妙な状況や雰囲気が終始続いて、最後には堰を切ったように破局を迎える。その感じがすごく良かった。特に犬婿入りの方はホラーみたいな不気味さがあるけど奇妙さに親しみの持てる感じが良かった。

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    2023年05月08日