多和田葉子のレビュー一覧

  • 白鶴亮翅

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    初めての作家のハードカバーブック。
    なぜ読んだかというと、今まさに私は太極拳を習い始めて3年目。

    この主人公は、夫の仕事のためにドイツに移り住んだが、本人は気に入りずっと暮らしていたいと感じる。
    そして、日本よりも伸び伸びと生きている自分を発見するのだ。仕事は翻訳家。

    2度目の引越しで、バラの美しい隣家の住人高齢のM氏と出会う。

    コーヒーを飲みながらのおしゃべりで、国と自分の中の所属性、ところが変われば迫害の加害者、被害者となる歴史を感じる。

    日本で暮らしていた時には感じなかった、さまざまな国を背景とする人間たちのそれぞれの幸せと不幸。

    立場が変われば、見る人が変われば歴史はかわり、

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    2023年07月12日
  • 尼僧とキューピッドの弓

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    中世から続く修道院、尼僧といったモチーフから想起されるものと作中で語られる現代的な尼僧らの生活や価値観のぶつかり合いに、読みながら知的興奮を覚える。
    ルポ的ですらある前半と、ある一面からの答えをくれる後半の読み口の違いもたまらない。

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    2023年07月03日
  • 白鶴亮翅

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    小説というものは、始まりがあって終わりがある、登場人物たちにとっての何かの出来事があって、物語(小説)のラストではその出来事が丸く収まるものだ(ハッピーエンドであろうとそうでなかろうと)と、自分はこれまでなんとなく思いこんできたのだなぁ。

    この小説を読み終わって、ベルリンに住んでいる人たちのある期間の出来事をたまたまそこだけ目にしたんだなー、という不思議な気分になった。

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    2023年06月29日
  • 私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2

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    金田一秀穂さんは
    日本語は緊急事態に向かないと言う

    緊急事態を宣言します、には
    本当に緊急事態なの?

    緊急事態宣言を発出します、だと
    ああそうですかとどこか他人事

    日本語の得意は落とし所を探す事

    ロックダウンより20時閉店
    和を持って貴しとなす、それでいい

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    2023年06月27日
  • 白鶴亮翅

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    ベルリンで暮らす美砂は、結婚してからこちらで暮らし始めてもっとここで住んでいたいという気持ちで、夫だけが日本へ帰ることに…。
    ひとり暮らしになり、隣人のMさんと交流をもつことで、第二次世界大戦前後のドイツと日本の歴史や民族について興味を持つ。
    Mさんに誘われた太極拳学校でもいろんな人と関わる。

    美砂は、人づきあいが良さそうに見えて、でもクールな感じもする女性で文学を愛するようでいながらもちょっと違うかも…と不思議であり、でも気にはなり年齢もあきらかにしていないからよくわからないのである。
    だが、さらさらと読み進めても不快さは感じない。
    家電が関西弁で喋ってくるし、言い返しているし…とわけがわ

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    2023年06月19日
  • 犬婿入り

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    『ペルソナ』も『犬婿入り』も面白かった。
    多和田葉子さん自体、初めてだったけれどとても読みやすくあっという間に読んでしまった。

    あれは何かを意味していてとか、あれはそういうことで等、難しい解釈は分からない。
    ただ私が読んでいて好きだなぁと思ったのは、ペルソナにしても犬婿入りにしても主人公の女性が周りで起こっている変な事の割に、妙に現実的な考え方や過ごし方をしているところだ。
    周りが全部おかしくて、主人公だけが現実のような。不思議の国のアリスのようなところが初心者読者の私も取り残されず楽しめた。

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    2023年05月30日
  • 犬婿入り

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     「ペルソナ」と「犬婿入り」の2作品で「犬婿入り」の方が好きだった。
     2作ともギリギリのギリギリで破綻しない奇妙な状況や雰囲気が終始続いて、最後には堰を切ったように破局を迎える。その感じがすごく良かった。特に犬婿入りの方はホラーみたいな不気味さがあるけど奇妙さに親しみの持てる感じが良かった。

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    2023年05月08日
  • パウル・ツェランと中国の天使

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    短い作品ではあるが注釈を読まないとパウルツェランのエッセンスは到底わからない(個人差はありますが)と思う。私は詩を人生で堪能してきた人間ではないから、彼に触れるのはお薦めしないとご提言をいただいた反駁で手に取ったわけであるが、間テクスト性満ち溢れた本作はより彼について知りたいと思わせ、同時に多和田葉子という作家が積み上げてきたエクソフォニーを体感できるようなそんな作品だった。彼女の作品を関口さんが翻訳する。日本人のかいたドイツ語文学を日本人が翻訳する?不思議な試みだなと当初考えてはいたものの、同じ人間でも異なる言語に身をおいてみれば織り成す内容も形式も変わってくる。まさに「世界は言語によって構

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    2023年04月11日
  • 犬婿入り

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    この作家の特徴でしょうか?
    文章がとても長い。1つの文章にたくさんの情報が入っている。
    「ペルソナ」も芥川賞の「犬婿入り」も間なのか溝なのかを書いてあるんだな?と思いました。
    「ペルソナ」の最後にどちらでもない自分になった道子はその後どんな人生を送ったんだろうか?
    「犬婿入り」は本人たちとその周りの人たちのギャップが面白かったです。

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    2023年03月26日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    ホッキョクグマの3代にわたる物語。3つの中編からなる。
    サーカスの花形クマが自伝を書き、オットセイの出版社の雑誌に連載。
    その娘のトスカはバレエ学校を出るが舞台に出してもらえない。そこへサーカスから声がかかり、女性調教師のウルズラと出会う。トスカとウルズラは伝説の舞台を作り上げる。
    さらにその息子のクヌートは育児放棄により、人間に育てられる。育ててくれたのはマティアスという男性。クヌートは地球温暖化による北極の環境破壊を止めるための広告塔としての役割を求められていた。クヌートがミルクを飲んで満腹になると眠くて寝てしまうシーンは本当に可愛い♡
    ソビエト連邦がまだある時代から現代までをカバーする背

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    2023年04月04日
  • 献灯使

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    ネタバレ

    これまでに読んだ多和田葉子の本は
    『犬婿入り』
    『ゴットハルト鉄道』
    『ヒナギクのお茶の場合/ 海に落とした名前』
    ファンタジー成分が多いけれど、わりと女性である作者に近い感覚の作品群だと思っていた。

    本書『献灯使』は5つの作品を含む短編集。
    視野が広がったためなのか、女の子っぽいところはなくなっている。
    フクシマ以後の核汚染の怖れを濃厚に映し、現代社会への風刺に満ち満ちている。

    『韋駄天どこまでも』が唯一ひとりの女性が主人公でその内面を書いているのだけれど、その視点はものすごく遠く高くにあるように感じられる。この作品は漢字をゴシック体で読者の目につくようにしかけ、漢字のダジャレのような遊

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    2022年11月10日
  • 献灯使

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    読み進めるにつれて、未知の世界に引き込まれる感じがした。風景や様子など表現が細やか。義郎が荒廃した都心を想像していたが、とても寂しい風景なのにどこか幻想的に感じた。気持ちの揺れに対して潮の満ち引きなど、素敵な表現だなと思う。
    義郎は、曾孫に知恵や財産を残してやろうとするのは傲慢だ、今できるのは一緒に生きる事。その為にはずっと信じていた事を疑える様な勇気を持たなければならない。と考えていて、歳を重ねるにつれて考えが凝り固まってしまう人の方が多いと思うが、そういった考え方の更新は、義郎の世界だけでなく、今の私達の世界でも必要なことかもしれない、と思う。
    下心をもって結婚し、そんな自分を軽蔑したこと

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    2022年08月23日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    祖母、母トスカ、そして息子クヌートの三代にわたるホッキョクグマの物語。
    実はクヌートについては、名前を聞いたことがあるくらい。
    映画か何かのキャラクターだと思っていたくらい。
    それが、多和田さんの手にかかると、こんなめくるめくような言葉の構造物になる。

    ただ、読み終わったあと、どうにも悲しい。

    自伝を書くホッキョクグマの「わたし」の物語から始まる。

    サーカスの花形ウルズラとトスカの、濃密な関係。
    しかし、それもサーカスが動物虐待にあたるという世論により、二人は引き裂かれる。
    トスカの「死の接吻」の芸により、ウルズラの魂がトスカの中に入っていく。
    ウルズラの死後、トスカがウルズラの自伝を書

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    2022年08月04日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    多和田葉子ってこんな笑える文章もかけるんだ。所々表現が難解で、ちゃんと解釈できてるか不安な箇所があるんだけど、多和田葉子らしい詩的で仄暗い言葉が散りばめられてて最高でした。私は新しめの短編が好みだった!

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    2022年07月27日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

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    ベルリンは訪れたことがないので、google earthでそれぞれの通りを見ながら読んだ.一つの店を見ながら様々な思いが沸き上がり、それが落ち着く前に別の気持ちが吹き出してくる、着いていくのが大変だ.当然ドイツ語が随所に出てくるが、分かりやすい解説が楽しめた.彼女のような散歩は彼女にしかできないと感じた.

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    2022年07月06日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    多和田葉子が世界の様々な都市に滞在した時の体験をもとに綴った「ことば」をめぐるエッセイ.ソローキンと山田詠美のやりとりが微笑ましい.

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    2022年06月29日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    シロクマが人間の世界で生活したり、そこには性格の悪いオットセイとのやりとりがあったり、サーカスで人間とコミュニケーションがとれたり、動物園で感じることがあったりと、異世界が描かれている。それが、共産主義のロシアや東ドイツが舞台であることによって、人間の生きづらさではなく、人間に愛着を持ちつつも、人間によって生きづらくなったシロクマの生命が冷静にシニカルに描かれて、目が覚めるような感覚だった。

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    2022年05月14日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    28冊目

    2009年から2018年に『文學界』に発表された7つの掌編。

    現実にいながら、ふと違う次元に迷い込んでしまうような一瞬、不条理な部分もあって夢をみているかのようです。そこに意図的誤変換からの言葉遊びが加わると私の精神もぐらぐら揺れ動いてしまいます。

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    2022年05月01日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    ネタバレ

    12編のアンソロジー。
    どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
    その中でも特に好みだった2つについて書きたい。

    『藁の夫』
    2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。

    『逆毛のトメ』
    シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚か

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    2022年04月21日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    「人権については考えたことがない」
    そりゃそうだ、ホッキョクグマだもの。

    ふわふわしているのは見た目だけではない。この物語の空気感。
    透明の風船をつかむような、形のあるようなないような不思議な感覚。

    三部それぞれ少しずつテイストが違う感じ。
    世の中のややこしさやせつなさもにじませながら、シュールでクールでユニーク。
    読み終えた、あとになって何かがじわ~っと広がって来る気がした。
    味わい深い作品だった。

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    2022年04月11日