多和田葉子のレビュー一覧
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ノーベル文学賞に近いと言われる多和田葉子。初めて読んでみた。いやはや、確かにノーベル賞に近い感じがした。国とは何か?言語とは何か?アイデンティティとは何か?を問いかける。言葉の運び方が実にうまいというか、ダジャレのような言葉の選び取り方。読みながら、なんか可笑しくなる。そうくるかとその言葉の発想がいいのだ。
まず、物語の中では、留学中のHirukoは、故郷の島国(日本)がなくなってしまっているらしい。国が失っているということが、一つのテーマだ。民族とは、共通の言語を持ち、伝統、食文化、衣服、音楽、芸術などの文化的要素、共有する歴史や生活様式を持っている。
登場する若者は、クヌート、H -
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『雲をつかむ話』ではまさに雲をつかむようでつかめないようなそんなお話だった。しかも数々のエピソードは作者の経験談が多く入っているというのだから驚いた。そして言語というものに対してとても追求する感じなんだなと―初めて多和田葉子の小説を読んだけどーそう感じた。あとは普段は流してしまいそうな物事の意味や疑問みたいなものを小説内に入れていくのも個人的には好きだ。
例えば「雲たちはまるで日が暮れる前に家に帰ろうと急いででもいるかのように夕空を目に見える速さで移動して行く。雲たちは夜、どこで眠るのだろう。」
「箸は二本で筆は一本、と言う人がいる。だから物書きは食費の半額しか稼げない。でも、もし二本の鉛筆を -
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岸本佐知子さんの編んだ書き下ろしアンソロジー、タイトルに惹かれてまず読んだ津島佑子の短編「ニューヨーク、ニューヨーク」が素晴らしかった。読みながら、読み終わってから、幾つものことを思った。
「ニューヨークのことなら、なんでもわたしに聞いて。それがトヨ子の口癖だった、という」冒頭のセンテンスを読んで、わたしも数年前の夏に数冊の本を読むことで行ったことのない「ニューヨークのことはもう分かった」と嘯いたことを思い出す。そこには彼女がニューヨークを思うのと同じように個人的で特別な理由があったのだけど。
その後に元夫と息子がこの世にいない彼女について語り合うことで明らかになり“発見”される、今まで知り得 -
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初めて読んだ多和田さんの小説。本書には『雲をつかむ話』と『ボルドーの義兄』の二作品が収録されている。
「人は一生のうち何度くらい犯人と出遭うのだろう」との不思議な書き出しで始まる『雲をつかむ話』。ある日、作者の家に「あなたの本を買いたい」と言って男が訪ねてきたが、「プレゼントなので、それらしく包んでほしい」との依頼に応じるため離れていた間に男はいなくなってしまっていた。それから一年後、一通の手紙が届いた。その手紙には、あのとき自分は警察に追われていて、その後逮捕され刑務所にいる。そして今自分は日本語の練習を始めた、といった内容が書かれていた。
そこから、語り手である作者と色々な「犯人」と -
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一年以上前にNHKで多和田さんがニュースで取り上げられてて初めて知った作家さんで、ずっと一度は読んでみたいと思っていた。
ニュースの内容は記憶にないけど、ノーベル文学賞に近い日本人の一人(もう一人は村上さん)として紹介されてたのではないか。
この本は2013.2014位に世にでていて東日本大震災の影響がとても強い作品だと感じた。ドイツに在住されてる多和田さんの俯瞰的日本像というのか近未来小説というのか。世界観が、テーマは重いながら、不思議とページをめくる手は止まらない。
非常に風刺が効いてるんだが、人はこうあるべきみたい説教くささはなく、読者に判断は委ねられている。
短編小説が5つ収載 -
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多和田葉子さん、実は学生時代から名前だけは聞いていた。でも、多和田さんの本を読み通したのは初めてだった。
留学中に、故郷の島国が消滅し、ヨーロッパで生き抜くため、独自の言語パンスカをつくり出すという設定からもう一気にひきこまれる。
島国が消滅した理由は読み手に委ねられている。原発が関係しているということは容易に想像できる。しかし、そこが主題ではない。
個人と言語、個人と国家とは何かを問いながらも、明るく不可思議なストーリーがそこにある。
「地球人なのだから、地上に違法滞在することはありえない」ということばはずしりと響く。
クライマックスにはビックリ。続きもありそうだ。多和田さんの言語感覚、世界