多和田葉子のレビュー一覧
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一年以上前にNHKで多和田さんがニュースで取り上げられてて初めて知った作家さんで、ずっと一度は読んでみたいと思っていた。
ニュースの内容は記憶にないけど、ノーベル文学賞に近い日本人の一人(もう一人は村上さん)として紹介されてたのではないか。
この本は2013.2014位に世にでていて東日本大震災の影響がとても強い作品だと感じた。ドイツに在住されてる多和田さんの俯瞰的日本像というのか近未来小説というのか。世界観が、テーマは重いながら、不思議とページをめくる手は止まらない。
非常に風刺が効いてるんだが、人はこうあるべきみたい説教くささはなく、読者に判断は委ねられている。
短編小説が5つ収載 -
Posted by ブクログ
多和田葉子さん、実は学生時代から名前だけは聞いていた。でも、多和田さんの本を読み通したのは初めてだった。
留学中に、故郷の島国が消滅し、ヨーロッパで生き抜くため、独自の言語パンスカをつくり出すという設定からもう一気にひきこまれる。
島国が消滅した理由は読み手に委ねられている。原発が関係しているということは容易に想像できる。しかし、そこが主題ではない。
個人と言語、個人と国家とは何かを問いながらも、明るく不可思議なストーリーがそこにある。
「地球人なのだから、地上に違法滞在することはありえない」ということばはずしりと響く。
クライマックスにはビックリ。続きもありそうだ。多和田さんの言語感覚、世界 -
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外国留学中に祖国が消滅してしまい、外国で独自の言語を作って生きている女性を巡るお話
以下、公式のあらすじ
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留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。誰もが移民になり得る時代、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。
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「 -
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あらすじ
留学中に日本が消滅してしまった女性Hirukoは母語を喋れる仲間をさがしつつ日本の文化を残そうする。
彼女に興味を持った言語学者のクヌートをはじめとした登場人物が各々動き出し旅へと駆り立てられる群像劇。
感想
文体が素晴らしすぎる! Hirukoが作った独自言語パンスカの簡潔な説明書のような言葉。
おしゃべりで人の話を聞かない登場人物は地の文でも一切改行がないなどなど。
個人的に好きな文章はアカッシュの地の文での『ふっくりした頬の内部に整った骨格を感じさせる美味しそうな青年だった』という一文。全く下品な言葉を使っていないのにここまでキモく感じさせるの本当にすごい。
Susanoo -
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多和田葉子を何冊か読んだなかで、ダントツに面白かった。終盤はやや主張を強くしたいせいなのか堅苦しさが出てしまった観がある。
しかし、そこまでは絶妙なユニークさとファンタジックな面白さがあった。失われた列島を故郷に持つhirukoが北欧に暮らす設定、彼女の奇抜さと納得のいく理由、玉突きのように事が転がり、人がくっついて増える展開。
それは単に奇抜なのではなく、著者の国や言語や人のあり方についての当たり前な考え方を代弁するものである。そんな社会風刺は生々しすぎると白けてしまうのだが、日本人ディアスポラを想像させてくれるファンタジーは美しく、切実に感じられた。 -
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ドイツ在住の作家の描く(日本にとっては)ディストピア小説。代表作「献灯使」と違い、不思議とのんびり明るい。移動時間に少しずつaudibleで聴いて約3週間、約9時間でやっと終えた。矢野敦史さんの朗読で、女性語り部分は違和感あるが、途中女性に変化しつつある人も出てくるので、これはこれで良かったのかもしれない。
第一章はクヌートが語り手。デンマークのコペンハーゲン大学の言語学者。テレビで見て、自前の言語を作ったヒルコという女性と知り合う。忽ち彼女に魅了される。クヌートは彼女の「今や消滅した国の言語を話す人を訪ねる旅」に付き合うことにする。
第二章はヒルコが語り手。どうやら1人語りの時は人工語で -
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酉島伝法さんの作品を読んでいて「山尾悠子っぽいなあ」と思い、[酉島伝法 山尾悠子]で検索したら酉島氏のインタビュー記事がヒットし、みるとやっぱり影響を受けているようで、そこで山尾氏と同時に挙げていた作家さんが多和田葉子さんでした。多和田氏の作品の中から本作を選んだ理由は、表紙にホッキョクグマが描かれていたから。読んでみたらマジでずっとホッキョクグマの話だったから、とてもよかった。高校2年生の秋に北大銀杏並木のライトアップを見に行ったとき、路上ライブしていた北大生水産学生がホッキョクグマについて熱く語っていて、その時のことを思い出しながら読んだ。本作に出てくるクマたちは皆どこか、あの水産学生の女
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夫についてドイツに来たのに、夫が帰国した後も1人で住み続けている主人公。
隣の住むMさんは、東プロセイン出身のおじいさんで、彼と戦争の話をするようになり、国や民族について考えるようになる。
一緒に行くようになった太極拳の一つの技が「白鶴亮翅」。
太極拳を通じて、様々な国の人達と交流するようになる。
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大きな事件が起きるわけでは無く、エッセイのように日々の生活が淡々と描かれていて、読んでいくうちに引き込まれてしまう本。
隣人のMさんとの戦争の話は、東ヨーロッパの人たち、特に出身がポーランドやロシアでドイツに住む人たちの苦労や、東プロセインについて知ることができた。
出 -
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日本語とドイツ語で小説を書き、英語やロシア語も出来る多和田葉子さんが、
日本語で書いた小説をドイツ語に翻訳する期間、言葉について考え書かれた日記。
世界中を旅して朗読活動をされているので、
様々な国の色々な言語を使う作家や詩人や学者の方々との交流も興味深く、
知的だと思うけど難解な感じはなく読みやすかったです。
ヨーロッパでは多言語を話される方も多いけど、
上海の喫茶店で周りの人たちがそれぞれ
中国語、日本語、韓国語、英語で話していて、
ある若い学生の集団は次々と言語を変えて話していたことを思うと、
アジアもアジアで多言語が交錯する場所ですよね。