多和田葉子のレビュー一覧

  • 言葉と歩く日記

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    多和田さんが好きなのは、独特の感性と鋭い批評眼があって、なおかつ明るさがあるから。小説でもエッセイでも。
    この本は書店で平積みになってて、新しい本かと思って買ったら10年前の再版だった。けど読んでなかったのでノープロブレム。
    2013年1月から4月15日までの日記で、1日分は短いので隙間時間にちょっとずつ読もうと思ったのに、面白くて一気に読んでしまった。

    こむらがえりを起こすとドイツ人に言ったら、皆口々にそれはマグネシウムが足りないせいだと答えた、という話のあとに、

    「「こむらがえり」はとても古い単語なので「マグネシウム」という単語と出逢って、かなり驚いたみたいだった。」(P69)

    (「

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    2024年02月04日
  • 言葉と歩く日記

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    2013年、日本語で書いた自著『雪の練習生』を自らドイツ語に訳している最中、多和田葉子が言語について考えたさまざまな疑問や気づきを書き留めた日記。


    めちゃくちゃに面白い。日独だけでなく、多和田さんが講演などで旅した先で出会う言葉がどんどん思索を豊かにしていく。逆に翻訳作業の話は「手」の訳語にまつわるエピソードくらいだけど、多和田葉子という作家が日常的に言葉や文字とどう触れ合っているか知れるのが面白い。
    レガステニーという学習障がいをめぐって「言語を文字で記すことが根本的に人間には困難」だと笑って見せたり、移民由来の乱れた言葉とされてきたキーツ・ドイツ語に惹かれてラップを書いてみたいと言った

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    2024年01月22日
  • 犬婿入り

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    ネタバレ

    ⚫︎受け取ったメッセージ
    混ざり合い、影響しあう人間と文化

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    多摩川べりのありふれた町の学習塾は“キタナラ塾”の愛称で子供たちに人気だ。北村みつこ先生が「犬婿入り」の話をしていたら本当に〈犬男〉の太郎さんが押しかけてきて奇妙な2人の生活が始まった。都市の中に隠された民話的世界を新しい視点でとらえた芥川賞受賞の表題作と「ペルソナ」の2編を収録。

    ⚫︎感想
    「犬婿入り」
    全てのものに境界線がない世界観。民話風な雰囲気で現在と過去、現実と虚構、動物と人間、父と娘、妻と夫、先生と生徒、男と女、清濁、といった境界全てを曖昧にしてひとつの世界を作っている。非常に不思議なお

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    2023年11月21日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    ホッキョクグマという存在自体がなんとなく危うく、儚い動物の「アイデンティティ」をテーマにした3代にわたるストーリー(と読みました)。クヌートという実在したホッキョクグマは残念ながら勉強不足で知らなかったけど、なんとも全体的に危うい…でも生きていくってことを改めて考えさせられました。初めて多和田さんの本を読んだけど、どこか海外小説風の雰囲気は、後になって調べたら海外に在住とのことでこれも納得。

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    2023年11月12日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    言葉に真摯に向き合っている筆者が、旅行先のエピソードからの想起に端を発して自身の言語論を展開していく。
    その言語論は実際に行動に移す中で獲られたものだから、読んでいてとても小気味よい。
    読みやすい文章だけど、手を止めてゆっくり読みたくなる本。

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    2025年08月16日
  • 犬婿入り

    購入済み

    不思議、と、多文化

    犬婿入り、不思議に感じながら読んだ。
    子供の視点があるから、
    汚いのかエッチなのか
    はぐらかされてしまう。
    綺麗な先生でこんなことをされてるんだと
    美女と野獣みたいにも思える。
    そこに可哀そうな女の子がからんで、
    それから超人的なことが
    修行で身につくとか
    触れてあったと思う。
    はじめの、町の描写、周りの様子から入って
    剝がれかけたようなポスター、
    うわさとかから先生にだんだん
    フォーカスされたのがおもしろい。
    最後も、あれっと思ううちに
    狐にでも化かされたように
    不思議のうちに終わった。
    ペルソナ、は読み忘れてた。
    そういえばとばしたんだ。
    読んでみたら読みやすい。
    最初のあたりからして、ど

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    2023年07月30日
  • 献灯使

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    完全に打ちのめされてしまった。
    震災後のいつかの日本という設定はフィクションだけどフィクションじゃない。
    物語から漂うやるせなさを私は知っている。
    これからの日本のことを考えながら読んだ。

    表題作は勿論、「彼岸」が凄かった。
    どうして原子力発電所の上に飛行機が落ちてこないと言い切れる?
    鈍器で殴られたような衝撃があった。

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    2023年01月29日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    人間は想像できたことしか実現できないと何かで見聞きしたけれど、では想像できたことなら実現できるということなのだろうか。この本を読んでいるあいだじゅう、ずっとそんなことを考えていた。じぶんのなかには絶対にあり得なかった、あり得る可能性にもまったく気付かないままの物語はまさに未知で楽しかった。うつくしい冬の描写にときめき、おもいでの鮮やかさにこうべを垂れ、深く深く流れる憧れに空をあおいだ。冬場れが広がっているきょうに読み終えることができてよかった。夏の褒美が冬ならば、冬の褒美が夏なのか。一年が終わりを迎える。

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    2022年12月30日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

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    10の短編
    全てに出てくる「あの人」、とは何者なのか
    ドイツの通りを歩けばプラタナスの木や墓地のレリーフ、閉店したお店の写真、様々なものが葉子さんに語りかける
    孤独遊びが癖になってしまって人生の内容になってしまった
    慰められる言葉です

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    2022年12月19日
  • 献灯使

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    多和田葉子氏の著作は初めてです。「震災後文学の頂点」という売り文句に惹かれ、そのまま読過していました。

    著者はノーベル賞の時期になると村上春樹氏と共に名前が挙がる程、海外では評価されている方。私はかなりハードルを上げていましたが、それを容易く超える作品でした。1つ1つの美しい表現の洪水に感動し、その度に友人にその文を送りつけるほどです。

    私のお気に入りは大厄災に見舞われた日本列島に暮らす家族を描いた表題作『献灯使』と、人類滅亡後の世界を戯曲で描いた『動物たちのバベル』です。

    「当たり前」は「当たり前でない」ということが認識されつつある現代で、両作品は輝きを増してゆくでしょう。

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    2022年11月15日
  • 溶ける街 透ける路

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    文章の透明感に吸い込まれそうな感じ。観光では行かないような街、全く知らなかったような街が多かったのに、実際に自分も旅している気分になった。

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    2022年10月27日
  • 言葉と歩く日記

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    私は中国語と日本語の間で著者のように行ったり来たりしている。
    共感し、驚き、感激し、とにかく読み終わるのが嫌だった。

    もっともっと続きが読みたい。
    外国語の語感を通して日本語を深め、それを日本語で思考した後外国語でもう一度表現してみる。
    そういう作業を楽しんだ。

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    2022年08月22日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    ネタバレ

    エクソフォニーとは母語の外に出た状態一般を指すそう。移民ではなくとも外国語で書く人がいる。意思疎通のために独自言語として進化したというわけでもない。日本語とドイツ語で本を書く著者の母語の外を巡る紀行文であり、言葉に対するエッセイ。母語しか扱えない(それもたまに危うい)身としては、母語と外国語の狭間を生きる感覚がどういうものなのか、体感できないゆえに羨望を覚える。思索は尽きない感じがした。

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    2022年06月23日
  • 雲をつかむ話/ボルドーの義兄

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    文章は何か過剰な気がするけど、話は面白かったです。

    終盤の主人公(小説家・詩人)と友人(女医)の会話:
    「まだベルリンに帰っていなかったんですか。」「わたしも泊まります。」「その必要はありませんよ。風邪をひいただけですから。」「一人でいてはいけません。」「孤独はわたしのテーマじゃないんです。」「でも今夜は高い熱が出るかもしれません。」「高熱もわたしのテーマじゃありません。」「さっきからこれもテーマじゃない、あれもテーマじゃないって言っているけれど、それならあなたのテーマは何なんですか。」

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    2022年03月26日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    しろくまの話。ちょうどロシアのどこかの街にエサを求めたしろくまがたくさん来たというニュースを見た。他の人にはこんな話書けないよね。

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    2022年03月12日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

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    「でも、わたしにとっては負の世界に分け入っていくことの方が美味しいものを食べることよりも魅力的なのだった。」

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    2022年02月24日
  • 犬婿入り

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    ネタバレ

    2編収録。
    ・ペルソナ
    ドイツに姉弟で同居する道子。二人はそれぞれ留学中の身である。ドイツ中世文学をやる弟、道子はドイツ現代文学を研究中だが、成果なく、奨学金を得られなくなり細々したバイトに明け暮れている。
    自分に向けられる差別、自分以外の外国人に向けられる差別、日本人の奥さんたちと弟が持つ差別感情。道子は常にそれらを感じながら生きている。
    作者の体験から出てきた作品なのだろう。肌感覚の嫌な感じがうまく文章から伝わりゾクゾクする。

    ・犬婿入り
    面白すぎる。だが笑って済まされるものではない不穏な物語だ。民話にありがちなエロさ、不潔さ、理不尽さをきちんと備えた、しかしちゃんと現代の話である。なん

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    2022年01月01日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    フランス語がわからない著者がその環境に10日間ほどいたときの、夢の話が興味深かった。"ちょっと空気が震えただけで、泣いたり、喚き散らしたり、人を殺したくなる"という一文の凄み。ぐっとくるを通り越してなんかもう、ウッとなった(もちろんいい意味です)ここからもいい意味で、わりと怒りを感じるところに人間味を感じた。

    そのほかにもいいなあとじわじわ感じるところが多々あり、ほかの方も感想に書いてらしたけれど、多和田さんの言葉に対するこだわりや真摯さを感じられる。言葉えらびがすてきで、くり返し読みたくなる文体でした。読んでよかったです。

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    2021年12月03日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

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    小説だと思って読みはじめたからか最初は読みにくかった。
    小説ということだけど、小説というより多和田さんが散歩をしていて、考えていることをつらつら垂れ流しにしているエッセイという感じで、一緒にベルリンの街を、時空を、思考の中をふらふら歩いている気分になる。
    特に最初の方は、言葉遊びが樋口一葉と雰囲気が似ていて川上未映子が好きそうな感じだなと思った。
    「別宮、別宮浮かん、別空間」、「おつまず、つままず、つつましく、きつねにつままれ、つまらなくなるまで」

    ★「シーン」があるのは映画の中だけのことで、現実にはシーンなんてない。切り取ることのできない連続性の中を突っ走っていくだけだ。

    ★出逢ったかも

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    2021年12月01日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    日本語とドイツ語で創作する作家の母語をはなれることと、そこから何かを生み出すことに関するエッセイ集。

    エクソフォニーとは、母語を離れた状態を表す言葉のようだが、フォニーというところに、音楽的なニュアンスがあって、シンフォニーとか、ポリフォニーといった調和感ではないのだけど、一種の緊張感と解放性のある言葉なのかな〜。

    私たちの概念やストーリーがまさに言葉でできていることを日常的なレベル、そして文学作品を作る現場から、すらっと教えてくれる。

    そして、言語の音とか、綴りなどがもつ、呪術性というか、身体性も改めて、伝えてくる。自分の知らない意味の分からない外国語から、何らかの作品を作ってみるワー

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    2021年11月28日