多和田葉子のレビュー一覧

  • 飛魂

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    日本語とは表音文字であると同時に表意文字である。正確に言えば、全ての文字は音を持つが、漢字は加えて意味を持つ。では、意味を持ちながらその言葉から音を取り去ってしまったらどうなるだろうか?梨水や亀鏡、朝鈴といった読み名を定められぬ者どもは女子寄宿学校での隠遁した生活と相まって、その実態はとても儚げでおぼろげだ。しかし著者の編む比喩と表現はとても美しくみずみずしく、そして肉感的でもある。思弁と実体がゆるやかに溶け合ってゆく快楽、言葉に酔い痴れることの喜び。読書が持つ経験の豊かさがここには見事に実っている。

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    2015年03月04日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    まるっと作り話,分かっているけど
    白熊を見る目が変わってしまったと思う。
    冬に再読したいフィクション1位。タイトルもすてき。

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    2021年03月06日
  • 言葉と歩く日記

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    なかなかの良書である。外国で外国語を使って生活していなければわからない、日本語に対する意識や、気づき。海外生活がなければ、そんなことに気づくこともないだろう。楽しめた。

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    2014年06月08日
  • かかとを失くして 三人関係 文字移植

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    ネタバレ

    ◆『犬婿入り』から多和田作品2冊目。
    ◆今回もディスコミュニケーション・意思疎通の欠如を強く感じる。主人公はいつも、「私」を含まない共同体や共通言語を妬み・軽蔑し、地団駄踏んで苦しみの声をあげる。ソフィストケートされることを拒み、言葉を解体し、言葉以前のものに戻ろうとし、あるいは過剰に連ね、駄々をこねる。◆それはまるで赤ん坊の泣き声(言葉への・世界へのラブコール)のよう。かつての子であり女であり母である私は、それを不快と思うこともできず、愛し子たる彼女を、目で耳で鼻で皮膚で子宮で全身で抱きしめたくなってしまう。
    ◆「翻訳」をテーマにした「文字移植」は、いつになく具体的で作者の核を見たようで興味

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    2014年05月23日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    ヨーロッパと日本の言語を巡る状況を概観するとともに、いろんな物事が統一とか硬直に向かっていくことを危惧し、それとは全く逆の瑞々しい価値観を提示している。外国語を学び、外国語と母国語の間で考えることで、一つの文化を相対的に見ることができる。ここからはかなり教訓的な考えを取り出せるだろう。だが本書の特徴はいたるところに言葉遊びが散りばめられていることだ。この本はただ有意義なだけでなく、たたずまいそのもので芸術を表している。

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    2014年03月13日
  • 言葉と歩く日記

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    「雪の練習生」という日本語で書いた自著をドイツ語に翻訳するまでの間に、言葉について起こったことや考えたことを中心として綴られている日記。
    多和田さんの小説はいくつか読んだけれど、なんてすごい言葉を持っている人なんだと、どの作品を読んでも思う。鋭いけれど、刃物の鋭さではなく紙の鋭さのような、温かみのある鋭さ。
    いろいろな国に行って朗読イベントや自著の解説をする講習会や討論を行っている(よばれている)んだけど、そのなかでメガポリスを描く文体を模索しなければならないという話題が出てきたというくだり。とある海外の作家がメガポリスの例として東京を上げたことに多和田さんは驚く。あの「トーキョー村」かと。ヨ

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    2014年02月25日
  • 尼僧とキューピッドの弓

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    この作品は修道院を舞台としており、個性的な尼僧たちが共同生活を営んでいる。主人公は取材にやってきた日本人作家である。しかし小説には一つ見落とせない空白がある。キューピッドの矢にハートを射られ駆け落ちしてしまったと噂される元尼僧院長である。
    第一部は主人公が小説を書けるようになる小説である。最後の方で主人公は、まだ自身が想像もしていない、後に書かれるであろう未来の作品(虚構)を先取りしているかのような(?)老女のおかげで、目の前の壁が幕に変わり舞台(虚構)が現れる体験をする。作品を書けるようになったということだ。
    第二部は、第一部で不在の中心としてあった尼僧院長が、主人公が書いた第一部の英訳を読

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    2014年02月15日
  • 言葉と歩く日記

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    いゃーこれは面白かった。枕草子には「神経にさわるもの」がなく、「にくし」で表現されていることなど、興味深い考察がいっぱい。推敲について「深い眠りが良い推敲の条件」と記しだところも共感できる。
    ドイツにいて日本を、日本語を考える。文章を物質として見る。単語一つ一つを物として観察すること、などなど、言葉について考え、言葉が好きな人なら、きっと面白く読めると思う。
    ドイツの暮らしや空気感も、文章から感じられるのもまた楽しけり。

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    2014年01月27日
  • 言葉と歩く日記

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    こーれは、面白かった。考えること=言葉。生活すること=言葉。
    映画「ハンナ・アーレント」を観た日に読んでいたら、「〜ゆうべは友達と近所の映画館で『ハンナ・アーレント』を観た。〜」という文章が出てきてビックリ。なんたる共時性!

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    2014年01月20日
  • 飛魂

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    読み始めると、ひんやりと湿った心地よい場所に私は陥る。
    そこからなかなか抜け出せずに、このストーリーを盗み見する。

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    2014年01月05日
  • ゴットハルト鉄道

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    多和田葉子さんをちゃんと読んだのは初めてです。
    「無精卵」が、言葉は驚くほど滑らかでここち良いのに出てくる人物がみんな不思議でアクが強くて、穏やかに流れる底に蟠っているヒリヒリする感じが何とも言えず魅力的だった。
    なんかそんな気がしたんだけど、書き出しがああだし、やっぱりそうだったの?という。でもそうじゃなくてもいいや。

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    2013年11月17日
  • 光とゼラチンのライプチッヒ

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    「光とゼラチンのライプチッヒ」(多和田葉子)を読んだ。多和田葉子さんの作品を読むのがこれで何冊目かは忘れてしまったけれど、読むたびに唸らされる。身悶えしそうなくらいに刺激的であるのだ。私の中では間違いなく現時点における最高の書き手のうちのお一人である。
    今回は「ちゅうりっひ」でちょっと躓いてしまいましたが、あとはどれも好きです。特に「盗み読み」がいいな。

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    2013年06月26日
  • 飛魂

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    虎使いになるべく森の中の寄宿舎に学ぶ女性だち。閉鎖的な小さなコミュニティで彼女たちは師匠の寵愛を切望しながら、己の欲望を持て余し、言葉による官能が交錯する。漢字そのものの解釈が言葉の本質を味わう快楽へ読者を誘うだろう。果たして「虎」とはなんなのか。文学でしか表現し得ない小説の真髄がここにあり、読者の想像力が試される。もしかするとこの題名は言葉には実体はなく、魂の交歓でしか人の心は理解し得ないという象徴か。

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    2013年04月02日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    「90年代を代表する文学はどんな文学かと聞かれたら、わたしは、作者が母国語以外の言語で書いた作品、と答えるのではないかと思う」

    と言い切る多和田葉子氏の著作で、解説は英語を母語としながら日本語で捜索活動を続けるリービ英雄氏。
    『エクソフォニー』という表題は耳慣れないが、副題は「母語の外へ出る旅」。
    そうなれば本書のテーマは明らかだろう。
    要するに「母語を相対的にとらえる」ということになるのではないか。

    我々は当たり前のことだけれど母語に依拠して生きている。
    それはつまり、母語の世界観を前提にした考え方やものの見方しかしていないということだ。
    筆者の多和田氏はそうした我々の「思い込み」を突き

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    2013年03月31日
  • ゴットハルト鉄道

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    感情ではなく身体で知覚していく登場人物。
    心という概念が誕生する以前の人間は、おそらくこれほどまでに繊細な肉体を持ち合わせていたのだろうと思いを馳せる。

    出逢ったことがない光景の描写なのに、どうしてこれほどまでに脳内で鮮明に再生されるのだろう。
    表題作は、特にそういった表現もないのに、少し霧がかった情景がずっと浮かんでいた。

    ドイツ語で綴った自分の作品を初めて翻訳してみた作品でもあるという。
    翻訳、とは、表題作同様、長いトンネルの先に現れる景色と向き合うことだとのこと。

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    2012年05月13日
  • 旅をする裸の眼

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    言葉が通じない異国に住む主人公。ドヌーヴの演じる役がすべて混ざり合い、映画のストーリーがとけあっていく。すべての要素が好みだった。こんなすごい作家がいたのかと驚いた。この作家の作品をもっと読んでみようと思う。

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    2010年03月16日
  • 海に落とした名前

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    初、多和田葉子。
    この人の言葉の力はすごい。

    "言葉で遊ぶ"
    簡単そうで簡単でないことを、簡単にやっているようで、多分簡単にやっていないとこがすごい。

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    2009年10月04日
  • 海に落とした名前

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    久々に小説を読んでいて薄気味悪さを感じた。それがどこから来るのかをまだしっかり考えてはいないのだけど。

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    2009年10月04日
  • 研修生

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    日本とドイツ、学生と社会人。文化のはざまに生きて、その違いに気づき、表現する。きっと若いころ、私も、本書の主人公のようにいろんな発見をして驚き傷つき、生きていたんだろう。

    でも、こうしたことをやっと言語化できるようになったとき、たいていの人は今度は文化の違いに驚きも傷つきもしなくなっていて、今度は言語化の必要もなくなっていく。だから、本書のように、はざまを細かくみずみずしく表現できるのは、きっと驚異的なことなんだと思う。

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    2026年04月15日
  • 太陽諸島

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    『地球にちりばめられて』、『星に仄めかされて』に続くシリーズ最終巻。今回の御一行はコペンハーゲンから日本を目指し、船に乗ってバルト海を東へ向かう(そんな航路では日本へはたどり着かないのだが、なぜかそういうことになっている)。旅の中で色々と謎の人々が登場し、物語はますます不可思議な方向に。これ、本当にこれで完結?

    三部作を通して、つかめるところが沢山あるのに全体としてはつかみどころのないような、妙な読書体験だった。

    登場人物たちは癖の強いキャラクターばかりで、傍にいるようなリアリティがある。一方で、それぞれ「自分語り」が挿入されているにもかかわらず、全体としては何を考えているのか分からない。

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    2026年03月20日