あらすじ
虎使いとなるため、師とともに人里離れた森の中の寄宿舎で修行を続ける女性達の深遠なる精神の触れ合いを描いた作品。表題作ほか、「盗み読み」「胞子」「裸足の拝観者」「光とゼラチンのライプチッヒ」を収録。
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Posted by ブクログ
「ある日、目を覚ますと、君の枕元には虎が一頭、立っているだろう。」この冒頭一文で心を奪われた。『飛魂』は、これまで読んだ多和田さんの作品で一番好きな作品。皮肉まじりな幻想的な世界も、多和田さんの生み出す言葉のセンス、力にもずっと浸っていたい。
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先に書いた読書会の際にサインをいただきました。読書会自体は日本語、ドイツ語、フランス語、英語が入り混じり、この年で1番「リテラシーの高い人が集まっている空間」でした。非常にユニークな読書会で先生もとても気さくな方でした。やっぱり文章表現が素晴らしい。特に元々修道院が身近になかった語り手とそうでない人々、そうである人々、関係のない人々。嫉妬や尊敬、愛情が入り混じる土修羅展開も良きでござんした★
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日本語とは表音文字であると同時に表意文字である。正確に言えば、全ての文字は音を持つが、漢字は加えて意味を持つ。では、意味を持ちながらその言葉から音を取り去ってしまったらどうなるだろうか?梨水や亀鏡、朝鈴といった読み名を定められぬ者どもは女子寄宿学校での隠遁した生活と相まって、その実態はとても儚げでおぼろげだ。しかし著者の編む比喩と表現はとても美しくみずみずしく、そして肉感的でもある。思弁と実体がゆるやかに溶け合ってゆく快楽、言葉に酔い痴れることの喜び。読書が持つ経験の豊かさがここには見事に実っている。
Posted by ブクログ
虎使いになるべく森の中の寄宿舎に学ぶ女性だち。閉鎖的な小さなコミュニティで彼女たちは師匠の寵愛を切望しながら、己の欲望を持て余し、言葉による官能が交錯する。漢字そのものの解釈が言葉の本質を味わう快楽へ読者を誘うだろう。果たして「虎」とはなんなのか。文学でしか表現し得ない小説の真髄がここにあり、読者の想像力が試される。もしかするとこの題名は言葉には実体はなく、魂の交歓でしか人の心は理解し得ないという象徴か。