多和田葉子のレビュー一覧

  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    初めて読む多和田さんの作品。
    そして私がこれまで読んだことのないタイプの小説でした。

    ホッキョクグマの「わたし」はケガが原因でサーカスの花形から事務職に転身。
    ひょんなことから自伝を出版することとなり、世界的ベストセラーになるがー。
    「わたし」の娘の「トスカ」、「トスカ」の息子の「クヌート」、3代にわたるホッキョクグマの物語。

    こう書くと、ふわふわとした優しいファンタジーかと思われそうですが、そういう作風とはほぼ対極にあると言ってよいでしょう。
    ホッキョクグマの視点から見た人間社会の問題点、滑稽さ、無駄などが浮き彫りにされていて、読み手のこちら(人間)がむむむ、と考えさせられてしまいます。

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    2022年09月09日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    ネタバレ

    7編の短編集。特に、「鼻の虫」「ミス転換の不思議な赤」の二作品が面白かった。
    「鼻の虫」は、衛生博物館の「体の中の異物」という展示で見た人間の鼻の中で、何千何万年もの愛、共存してきたという虫を、ふと意識するようになる「わたし」の物語である。「わたし」は、携帯電話を梱包する工場での就職が決まり、海辺の町へ引っ越してきたが、この工場の描写や、社会描写からは、この世界が、現実とは異なる世界で、その工場は、どこか怪しげな雰囲気であることを感じさせ、しかし、「わたし」は、同僚の女性従業員がみな解雇されるなか、自分だけ課長に昇進し、管理職となる。
    そんな生活の中、「わたし」は、朝起きると鼻の虫が、鼻の中に

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    2022年08月23日
  • 献灯使

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    なんだこれ、なんだこれ、なんだこれという気持ち。こんな世界観は初めてでわくわくしました。世界観に呑まれるってこういうことかと思いました。あと5回読み直せしても筆者の意図の端さえ掴めないような気がする。読解力不足、でもだからこそまた読みたい。

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    2022年05月09日
  • 献灯使

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    震災後の災厄を機に鎖国状態の架空の日本を描いた小説など5編。

    「献灯使」では、外来語が禁止されたため言葉の音だけを拾って当て字した名称が頻出しますが、多和田さんの言語感覚の鋭さにドキリとしました。積極的な誤読が繰り返される感じ。

    多和田作品は4冊目ですが、読むたびに動揺します。他に読んだのは『雪の練習生』『球形時間』『穴あきエフの初恋祭り』。
    言葉遊び、もしくは意図的な変換ミスによって思考や連想が強制的に目の前のページからあらぬ場所へ飛ばされる感覚がします。ああまた誤配された、と思いつつも楽しいです。

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    2022年03月21日
  • 球形時間

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    ネタバレ

    読みやすいけれど、感想を書くのは難しいです。
    物語の台風の目はカツオだったように思いました。「無能でも、変な運がこびりついている人というのがいる」とは神経症のコンドウを評したカツオの言葉ですが、カツオを含め、登場人物たちは皆どこか変な運に巻き込まれています。カツオが結んでしまったのだろうなあ。
    そして、それを病んだナミコが嗅ぎつけて、自分の信じる捻じれた、でも完成された時間の中に閉じ込めてしまった。
    サヤカが深入りせずに済んだのは、イザベラのように旅行者だったから、かもしれません。

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    2022年01月15日
  • 献灯使

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    ネタバレ

    死ねない老人、反対に子どもたちの生きづらさ、本当にかわいそうになってくる。
    表題作を補完する形の短編は、災害のリアリティと空想が混じり合ってこの世の終わり感が強い。とりとめなく続くディストピアな日本の話に絶望がひたひたと押し寄せてくる。随所にある言葉遊びも、時にゾクっとする不気味さを連れてくる。
    終末期はかえって穏やかで、地に還ってゆくような静けさを感じるが、そこに至るまでの壮絶さは言葉も出ない。
    全体的に難解だった。政治的な皮肉、風刺が効いていて、ぐうの音も出ない。人間というのは愚かな生き物だ。

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    2022年01月06日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    ネタバレ

    難しいけど、読みづらくはないという不思議な作品。小説というドラマを盛り上げるためにつらいシーンが不用意に出てくることはないので、かまえて読まなくてもいいものの、「物語」として成り立っているかどうかは微妙なので(※貶しているわけではない)、集中してサッと読まないとストーリーを見失ってしまう。
    起承転結があって最後で締められるわけではないし、展開も予測できなくて没頭してしまう。人に薦めたり紹介するには難しいかもしれないけど、多和田さんの小説はたぶんこの先もときどき読みたくなると思う。癖になる。

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    2021年12月31日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    ファンタジーというか、寓話的な作品。
    しんみりと静かで、全体に物哀しい感じ。

    最初は、クマは擬人化されてるのか、あるいは普通に動物と人間が会話できる設定のファンタジーなのか、と考えながら読んでいったけど、どちらでもない感じ。そういうのがすっきりしなくてイヤ、という方にはお勧めしない。

    途中、空虚ということについて、空っぽで重さのないものと思っていたら、空虚の重さで起きられなくなった、みたいな表現があり、経験しないとできない表現かも、と思った。

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    2021年12月27日
  • 私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2

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    金原ひとみさんと阿川佐和子さんの箇所が印象に残った。
    人との関わりや、孤独や苦しみは永遠には続かない事を改めて考えさせられた。

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    2021年12月19日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    川上弘美さんの、愛した人の骨の話が、秀逸だった。自分には、強烈な作品もあったが、面白い企画だと思う。

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    2021年11月18日
  • 私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2

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    新型コロナで経済格差は拡大し社会の分断は深まり、暮らしや文化のありようも大きく変わった。歴史の転換期とどう向き合えばよいのか。各界で活躍する精鋭たちが「変化」の本質に迫る。『朝日新聞デジタル』連載を書籍化。

    それぞれの話をじっくり読みたい。

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    2021年11月16日
  • 献灯使

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    談社文庫)
    環境破壊され、農作物も採れない近未来。 ありそうで怖い。昭和半ばに生まれた世代は長生きで平成令和に生まれた子は弱くて薄命。昭和の中頃は放射能の汚染などの自然破壊は少なかっだと言う事なんだろうな。読みやすい本ではなかったけど読んで良かった。

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    2021年11月08日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    北極熊のクヌート、その母トスカ、そして祖母の三世代の物語。作家である祖母の再三の亡命に伴い変化する言語への困難な適応、母トスカと女性調教師ウルズラの夢の中での異種間コミュニケーション、娘クヌートとマティアスの親子同然の信頼関係とクヌートの言語認識過程や自他の理解等々が人間と熊の目を通して語られる。更に、異種の動物間では単一の共通言語での会話が可能な反面、亡命の度に異なる言語の習得が必要な人間界の煩雑さや、自由移動の障害となる、紛争や覇権争いにより構築された国境や体制などの数多の問題が重層化され、自己レベルでの解釈で読み進まずを得られなかった。作者の意図とは関係なく、動物との会話が可能な状況で、

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    2021年10月20日
  • 尼僧とキューピッドの弓

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    ドイツの尼僧修道院の中に、日本から来た女性作家が潜入取材する、第一部が印象的。

    人生のありとあらゆる大波を乗り越えた、未婚、あるいは離婚した女性たちが集まる修道院が、実は不調和だというのも、よくよく考えれば納得できるものがあり、何千年もの歴史を等しく重ね続ける建造物とは対照的に、理想や妄想でない現実的な人間味を、住んでいる尼僧たちに感じられたことに、むしろ好感を持った。

    こういうのもハイブリッドというのかもしれない、なんて思っていたら、第二部での、「個人に本当に選択の自由があるのか」という、昔からあるような因襲的な問いかけに自ら飛び込んでいくような、彼女自身の歴史が、思いのほか印象に残らな

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    2021年10月19日
  • 私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2

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    全部が◎ではないけれど、示唆に富む意見を読むことができる。
    旦那→ロバートキャンベルさん「「見つめ合わない」日本は貧困が見えにくい」が1番腑に落ちた。
    私→多和田葉子さん「日本の不思議はダメ政府と良心的な市民かもしれません。」メルケルさんと比べられちゃうとなあ…とトホホな気持ちになる。
      パオロジョルダーノさん「複雑な問題には単純な解決策は存在しない」まったくその通りというほかない。その逆をいく多数派の意見に、静かに抵抗する日々。

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    2021年09月26日
  • 私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2

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    コロナによって浮き彫りにされてきた、日本(人)の弱点や、今まで当たり前だったこと、生死観、人同士の距離感などについての、国内外20人の著名人によるインタビュー・寄稿。
    柳田邦夫さんの、コロナによる死は「あいまいな喪失」(生きているのか死んでいるのか分からない別れ)による残されたものたちの葛藤だという見方が印象的でした。

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    2021年09月14日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    とても不思議な物語だった。ホッキョクグマがサーカスで舞台を降りて亡命作家になっていたり、なぜか人間と会話しているのにそれが自然であるかのように描かれている「祖母の退化論」をはじめ、ソ連時代、冷戦を生きるホッキョクグマ3代の物語が綴られる。初めての多和田葉子さんの作品だったけど、気に入りました。

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    2021年05月14日
  • 献灯使

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    放射能で汚染された、とは書いていないがそれを思わせる状況の日本。

    東京23区は人が住めない。子供は痩せ細り、歯が抜けたり、とても健康とは言えない。逆に年寄りは元気で犬とジョギング(と言ってはいけないので駆け落ちという)したり。

    世界観は伝わってきてゾッとしたが、何となく肌に合わず途中で読むのをやめた。

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    2021年03月20日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    日本人としてドイツに移住し、日本語とドイツ語の両方で創作活動を続ける作家、多和田葉子が自身の母語から出るという行為―エクソフォニーーについて、自身の経験や思索をまとめた論考集。

    とはいっても、エッセイのような文体で書かれており、内容は重苦しくない。文学の世界では母語を用いずに創作した作家の多くは、政治的な亡命により異国に渡ったことが理由になっているケースが多い(ロシアからアメリカに亡命し、英語で創作を行ったナボコフのように)。一方、多和田葉子はそうした先例とは異なり、自身の明確な意思によってドイツへの移住を選び、ドイツ語での創作を行っている。このような創作活動を行っている日本人作家は極めて稀

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    2020年06月21日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

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    面白かったです。
    ドイツの様々な通りを散歩しながら、あの人のことを考えたり、不思議な人たちに出会ったり、歴史的な物事に接したり。
    言葉遊びも豊かでした。ドイツ語がいきなり出てきますが、意味も書いてありました。
    なかなかおいそれと外出出来ない昨今ですが、状況が落ち着いたらわたしも色々考えたり考えなかったりする散歩に出かけたいと思いました。

    ドイツの「FUTON」に「Hokkaido」という名前が付いてた、という文を見て、昔イギリスに住んでいたことのある同僚が「日本のポッキーが『Mikado』という名前で売ってた」と言ってたのを思い出しました。帝。。

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    2020年06月11日