多和田葉子のレビュー一覧

  • 白鶴亮翅

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    新聞連載で読んだ。

    エッセイのような小説。次々と現れる隣人たちが、それぞれに歴史を抱えているのが、袖触り合うも多生の縁で、垣間見えたりもするのだが、それが赤裸々に明かされることもない。
    そうやって誰もが生きているのだなということ。

    太極拳などしながらね。
    太極拳っていいよな。

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    2023年07月08日
  • 白鶴亮翅

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    着地点がなくまだ続いていく終わり方だった。題名の白かくりょうしのいみは太極拳のポーズで美砂が隣の人に誘われて一緒に習いにいく。恩田陸の作品と似通っている気がするので目に留まったら違う作品も読んでみたい。時間潰しで読む本。

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    2023年06月28日
  • 星に仄めかされて

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    相手のことなどどうでもいい。相手にどう思われているかもどうでもいい。自分が真実だと思うことを正直にそのまま口にするだけの話さ。

    直進するのは落ちていく星くらいだろう。僕たちは落ちていくわけじゃないのだから、ためらわずに蛇行しようよ。

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    2023年06月22日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    ネタバレ

    これは誰の物語なのだろうか。主人公はヒトなのかホッキョクグマなのか。「わたし」の正体に惑わされ、そういう世界観なのかと飲み込むまで戸惑いと気持ち悪さがあった。サーカスでは花形でそこには輝かしい人生が待ち受けているかと言えば、そうそう簡単には行かないのが世の常で、時代や情勢に翻弄されるのは男も女もホッキョクグマも同じかもしれないと思える説得力があった。

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    2023年06月18日
  • 私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2

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    コロナ禍をテーマにした、識者たちの短いインタビュー記事が集められたものだが、人間の生死について、人間どうしの関係性について、また経済について(これに関しては私自身の基礎知識がなく、よくわからなかったが…)など、コロナ禍に限らず、人間社会が抱える普遍的で本質的な事柄が多岐にわたって言及されていた。
    色々なるほどと思う言葉に出会ったが、特に、世界的な傾向にある「分断」が抱える問題について、アメリカ人経済学者の言葉が腑に落ちた。彼は、それは誰か一人の責任ではなく「差異を超えて互いに話し合うことを妨げている深い分断そのもの」が問題であると語った。特定の人物に責任を転嫁させるような報道に違和感があったが

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    2023年05月26日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    普段、ほとんど読むことのない現代の日本人作家のアンソロジー。
    興味深く読んだ。
    もとは、深堀骨 の作品を読んでみたかったから手に取ったが、どれもなかなか良かった。ありそうでない話というファンタジーというか、不気味な話が多い。恋愛要素はどれも少なく見えるが、一応恋愛ものという括りらしい。

    一作だけ、多和田葉子の漢字の話はすでに読んでいた。

    特に印象的だったのは、
    本谷由希子、迫力とリアリティと奇想天外で面白かった。
    村田沙耶香、細かく書き連ねて積み上げるのがうまい。
    吉田知子、多分この中で一番好きなタイプの作家。
    小池昌代、切れ味がよい。
    星野智幸、描写がうまい。

    というかんじ。
    編者は岸

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    2023年03月22日
  • 私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2

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    文字通り、コロナ禍においてどう生きるかを説いた本。

    オムニバス形式なので統一感はないが、コロナについての各有識者の意見が知れたのは良かった。

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    2023年03月12日
  • 献灯使

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    震災の数年後を描いたデストピア小説。表題作では、何か起きてこうなったのか、は描かれておらず、短篇4篇のうちの、『不死の島』と『彼岸』を読んで、漸くどういう設定かを理解できた。

    全米図書賞(翻訳部門)受賞作品、ということで、期待して読んだが、ひたすら暗い、というか、救いがない、というか、自分が読書に求めているものとは全く違う内容だった。だが、強烈なインパクトはある。

    鎖国状態での言葉狩りの状況が一番ピンとくる箇所

    “「勤労感謝の日」は働きたくても働けない若い人たちを傷つけないために、「生きているだけでいいよの日」になった。”

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    2023年02月05日
  • 献灯使

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     あり得ない(はずの)設定なのに、嫌に絵が浮かんで読みながら疲弊してしまった。日本に山積する問題という問題を詰め込んで、その先にある救いのない世界を見せてくれた。
     子供は元気が1番。公園で騒いでいても是非苦情をいれないでやってほしい。

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    2022年12月02日
  • 献灯使

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    多和田葉子(1960年~)氏は、早大第一文学部ロシア語学科卒、ハンブルク大学大学院修士課程修了、チューリッヒ大学大学院博士課程修了(ドイツ文学)。1982年から2006年までハンブルク、2006年からベルリン在住。1993年に『犬嫁入り』で芥川賞受賞。谷崎潤一郎賞、野間文芸賞ほか数々の文芸賞を受賞。紫綬褒章受章。ドイツ語でも20冊以上の著作を出版し、それらは英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、中国語、韓国語などにも翻訳されている、本格的なバイリンガル作家で、ドイツでも、ゲーテ・メダル、クライスト賞等の有力文芸賞を受賞。今や日本人で最もノーベル文学賞に近い作家とも言われる。
    本書

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    2022年11月25日
  • 献灯使

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    ネタバレ


    自分に教えられるのは言葉の農業だけだ。子供たちが言葉を耕し、言葉を拾い、言葉を刈り取り、言葉を食べて、肥ってくれることを願っている。

    献灯使 より


    普通なら「暗殺」のニュースが流れるはずなのに、マスコミはなぜか「拉致」という言葉を使った。


    若返ったのではなく、どうやら死ぬ能力を放射性物質によって奪われてしまったようなのである。

    不死の島 より


    初めて読む作家さんでした。
    ハシビロコウの表紙に興味を持ち、前情報なしに読みました。震災後の壊れた世界、同一線上にある世界を舞台にした中短編集。
    一般的に小説は、ひとつふたつの矛盾やおかしみを無視して構築されているものが多いかと思います

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    2022年10月29日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    初めて読む多和田さんの作品。
    そして私がこれまで読んだことのないタイプの小説でした。

    ホッキョクグマの「わたし」はケガが原因でサーカスの花形から事務職に転身。
    ひょんなことから自伝を出版することとなり、世界的ベストセラーになるがー。
    「わたし」の娘の「トスカ」、「トスカ」の息子の「クヌート」、3代にわたるホッキョクグマの物語。

    こう書くと、ふわふわとした優しいファンタジーかと思われそうですが、そういう作風とはほぼ対極にあると言ってよいでしょう。
    ホッキョクグマの視点から見た人間社会の問題点、滑稽さ、無駄などが浮き彫りにされていて、読み手のこちら(人間)がむむむ、と考えさせられてしまいます。

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    2022年09月09日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    ネタバレ

    7編の短編集。特に、「鼻の虫」「ミス転換の不思議な赤」の二作品が面白かった。
    「鼻の虫」は、衛生博物館の「体の中の異物」という展示で見た人間の鼻の中で、何千何万年もの愛、共存してきたという虫を、ふと意識するようになる「わたし」の物語である。「わたし」は、携帯電話を梱包する工場での就職が決まり、海辺の町へ引っ越してきたが、この工場の描写や、社会描写からは、この世界が、現実とは異なる世界で、その工場は、どこか怪しげな雰囲気であることを感じさせ、しかし、「わたし」は、同僚の女性従業員がみな解雇されるなか、自分だけ課長に昇進し、管理職となる。
    そんな生活の中、「わたし」は、朝起きると鼻の虫が、鼻の中に

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    2022年08月23日
  • 献灯使

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    なんだこれ、なんだこれ、なんだこれという気持ち。こんな世界観は初めてでわくわくしました。世界観に呑まれるってこういうことかと思いました。あと5回読み直せしても筆者の意図の端さえ掴めないような気がする。読解力不足、でもだからこそまた読みたい。

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    2022年05月09日
  • 献灯使

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    震災後の災厄を機に鎖国状態の架空の日本を描いた小説など5編。

    「献灯使」では、外来語が禁止されたため言葉の音だけを拾って当て字した名称が頻出しますが、多和田さんの言語感覚の鋭さにドキリとしました。積極的な誤読が繰り返される感じ。

    多和田作品は4冊目ですが、読むたびに動揺します。他に読んだのは『雪の練習生』『球形時間』『穴あきエフの初恋祭り』。
    言葉遊び、もしくは意図的な変換ミスによって思考や連想が強制的に目の前のページからあらぬ場所へ飛ばされる感覚がします。ああまた誤配された、と思いつつも楽しいです。

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    2022年03月21日
  • 球形時間

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    ネタバレ

    読みやすいけれど、感想を書くのは難しいです。
    物語の台風の目はカツオだったように思いました。「無能でも、変な運がこびりついている人というのがいる」とは神経症のコンドウを評したカツオの言葉ですが、カツオを含め、登場人物たちは皆どこか変な運に巻き込まれています。カツオが結んでしまったのだろうなあ。
    そして、それを病んだナミコが嗅ぎつけて、自分の信じる捻じれた、でも完成された時間の中に閉じ込めてしまった。
    サヤカが深入りせずに済んだのは、イザベラのように旅行者だったから、かもしれません。

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    2022年01月15日
  • 献灯使

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    ネタバレ

    死ねない老人、反対に子どもたちの生きづらさ、本当にかわいそうになってくる。
    表題作を補完する形の短編は、災害のリアリティと空想が混じり合ってこの世の終わり感が強い。とりとめなく続くディストピアな日本の話に絶望がひたひたと押し寄せてくる。随所にある言葉遊びも、時にゾクっとする不気味さを連れてくる。
    終末期はかえって穏やかで、地に還ってゆくような静けさを感じるが、そこに至るまでの壮絶さは言葉も出ない。
    全体的に難解だった。政治的な皮肉、風刺が効いていて、ぐうの音も出ない。人間というのは愚かな生き物だ。

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    2022年01月06日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    ネタバレ

    難しいけど、読みづらくはないという不思議な作品。小説というドラマを盛り上げるためにつらいシーンが不用意に出てくることはないので、かまえて読まなくてもいいものの、「物語」として成り立っているかどうかは微妙なので(※貶しているわけではない)、集中してサッと読まないとストーリーを見失ってしまう。
    起承転結があって最後で締められるわけではないし、展開も予測できなくて没頭してしまう。人に薦めたり紹介するには難しいかもしれないけど、多和田さんの小説はたぶんこの先もときどき読みたくなると思う。癖になる。

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    2021年12月31日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    ファンタジーというか、寓話的な作品。
    しんみりと静かで、全体に物哀しい感じ。

    最初は、クマは擬人化されてるのか、あるいは普通に動物と人間が会話できる設定のファンタジーなのか、と考えながら読んでいったけど、どちらでもない感じ。そういうのがすっきりしなくてイヤ、という方にはお勧めしない。

    途中、空虚ということについて、空っぽで重さのないものと思っていたら、空虚の重さで起きられなくなった、みたいな表現があり、経験しないとできない表現かも、と思った。

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    2021年12月27日
  • 私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2

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    金原ひとみさんと阿川佐和子さんの箇所が印象に残った。
    人との関わりや、孤独や苦しみは永遠には続かない事を改めて考えさせられた。

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    2021年12月19日