あらすじ
鋭くも愚かしくも聞こえる問いをつねに発している高校生サヤは、ある日の放課後、喫茶店で謎のイギリス女性と出会ってひきつけられる。クラスメートのカツオは、フィリピン人の混血少年と性関係をもちつつも、太陽を崇拝する青年への興味を抑えられない。あっちへこっちへと転がりながら、はからずも核心へと向かってゆく少女と少年の日常を描く、愉快かつ挑戦的な最新長篇。
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Posted by ブクログ
タイトルからは難解な小説を予想して読み始めたが、ここで描かれる世界も文体も多和田葉子のそれとは随分違っていて、一見したところは普通の高校生の日常が描かれるかのようだ。作中の視点人物は3人。サヤとカツオ、これに担任教師のソノダヤスオのそれが加わる。もっとも、最初から随所に不穏な感じがないではない。ことにコンドウとナミコの存在と行動が、この世界に異和を混入させる。それでも、小説の中を流れる時間は、ともかくも日常だ。「序・破・急」の急は、まさに唐突に訪れる。最後に至って一気にシュールな世界に呑みこまれるのだ。
Posted by ブクログ
あまりにも読みやすくて拍子抜けしてしまうほどですが、
登場人物たちの妄想や、相互の交わりを考えると、
読み終わっても噛み締めるように心に残っています。
Posted by ブクログ
最後、寝ぼけながら読んだので良く理解できてなかったので翌日ラスト数ページを読み返す。
普通に見せかけておいて、最後の急速な展開がなかなか面白い作品。
イザベラ・バード、久しぶりに読み返そうかな
Posted by ブクログ
「男の顔には、怒りの予兆のエラが立っている。プラットホームで化粧するな、とその顔に書いてある。」
冒頭のこのセリフは「令和」の「若い男性」である私には2重の意味で新鮮である。ナンパ、キャッチ、ぶつかり、これらは私に無縁のものだ。何なら、ティッシュ配りのバイトさんや道に迷った人もなかなか私をターゲットにはしない。少なくとも私なら、私は選ばないだろう。そんな人生を歩んできたので、女性のこういう体験は新鮮に映る。それに加えて、本小説は2002年に出版されている。まだ物心ついて間もない、私が知らない時代の話である。この頃はまだ、都会の他人同士が少なくとも今よりは関わり合っていた時代、というと大袈裟なのだろうか。そもそも人と人の関わりが生じなければ小説が成立しないと言ってしまえばそれまでだが、今、何気ない日常を描こうとした時に、プラットフォームのメイク直しに注意するおじさん(この後こういう展開になるのだ)は出てこないだろう。そういった意味で新鮮なのである。
Posted by ブクログ
読みやすいけれど、感想を書くのは難しいです。
物語の台風の目はカツオだったように思いました。「無能でも、変な運がこびりついている人というのがいる」とは神経症のコンドウを評したカツオの言葉ですが、カツオを含め、登場人物たちは皆どこか変な運に巻き込まれています。カツオが結んでしまったのだろうなあ。
そして、それを病んだナミコが嗅ぎつけて、自分の信じる捻じれた、でも完成された時間の中に閉じ込めてしまった。
サヤカが深入りせずに済んだのは、イザベラのように旅行者だったから、かもしれません。