多和田葉子のレビュー一覧
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多和田葉子の中編集。表題の「犬婿入り」と「ペルソナ」の2作品が収録。
以前に読んだ「献灯使」が心に残ったので、芥川賞受賞作品である本書を手に取ってみた。
「犬婿入り」は芥川賞受賞作。39歳の学習塾を開いている女性を中心とした不思議な物語。
「ペルソナ」はドイツに留学している姉弟の話。姉の視点から日々の生活が描かれ、外国で日本人として暮らす姉の心情風景が描き出される。
「犬婿入り」は、芥川賞受賞作らしく、非常に難解であった。実際に犬が婿にくるような話なのであるが、それがエロティックというか、気持ち悪いというか、心にざわざわ感が残るというか、何とも読後の印象の不思議な物語だった。
「ペルソナ -
Posted by ブクログ
バラエティに富んだ5作品を収録した作品集。
「枕木」は何と言っていいのか感想に困ってしまうが、絶えず焦点をずらされ横滑りしていくような感覚。
「雲を拾う女」何なの?哺乳ビンの乳首になってしまう(わたし)。火を吹き、鏡に映らないコウモリと呼ばれる女。寓話や幻想とは違う。あまりにも輪郭がはっきりとし過ぎていて。意味とか脈絡とかそんなのよく分からないままに、ひたすら読まされてしまう。
「ヒナギクのお茶の場合」語の反復とか文体のリズムとか、読んでいて楽しい作品。友人ハンナへの語り手の好感が滲んでいる。
「所有者のパスワード」多和田さんにこんな作品あるんだ、と意外性に驚く。ラノベの恋愛モノ読んでコマ割り -
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Posted by ブクログ
実に難解な小説である。タイトルの『変身のためのオピウム』からして意味不明だ。オピウムはアヘンや麻薬のことであり、マルクスの『ヘーゲル法哲学批判序説』の中の言葉「宗教は民衆のためのオピウムである」からとられているのは明白。しかし、そうだからといって何が分るといういうものでもない。スタイルは一見したところは長編小説だ。しかし、物語全体を貫流するプロットは、これまたあるような無いようなだ。表現のところどころはシュール・レアリスムを想わせるのだが、シュールではない。しいて言えば西脇の「旅人かへらず」に似ているか。
この小説はけっして観念的な意味で難解なのではない。ひとえに小説作法のあり方において難解 -
Posted by ブクログ
表題より前掲のペルソナがよい。
まあ、読みにくい。
異国の生活でのアイデンティティについて。外国人とも日本人とも意識が乖離。私はこの問題に関して留学中は諦めてたなと反省。むしろ韓国人やベトナム人に見られることで新たなペルソナを被り匿名性の快感を感じてました。
壁も、ステロタイプの像も他者の頭から無くなるわけない。諦めた方がいいはず。でもこの作者は戦っている人でした。非常にタフ。
ついでに犬婿入りのメモ。
長文を繋げてリズミカルに。
口上。興行師の話し方に似ている。書き方で連想するのはなめとこ山の熊、樋口一葉。きっと後者が近い。
口上を目指すことで民話的な、昔々的な世界観を作る?
段階別の異様 -
Posted by ブクログ
ペルソナ、表題作の二篇。ちょっと歩いただけで体中に小さい棘が刺さる。端的なようでねじれた文章、意地の悪い目線。散らされた毒に、違和感の集積が肩にのしかかる。重ならないが故のあきらめ、一方の引力、思いやり。ひとり目の道子と似た環境にいたことがあるけれど「あーあるねー」ってところと、そういう風に感じるのか、と思うところと。アジアは総じて「アジアチック」、「トヨタ」ではなく「ソニー」だった。顔指して言われた事はないしいわれても別に気にならなかったと思う。
正直なところ、主人公が神経過敏でなんてめんどくさいんだ、と思った。でも、その感覚を知っている気もする。読後こってりした澱が残る。