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緑の髪の舞台美術家ハンナと小説家のわたし。ティーバッグを絆に結ばれた女ふたりの交友を描き、えもいわれぬ可笑しみを湛えた表題作ほか、恋愛小説ぐるいの少女が《ボクトーキタン》を追体験する「所有者のパスワード」など全八篇。覚醒した《日本語》が火花を散らし、日常と異界の境を揺るがすスリリングな短篇集。
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Posted by ブクログ
短編小説が集まったものである。アメリカ風のものが出てくる。タイトルのものは、本人の友人である女性が、舞台美術を仕事としており、疲労のあまり、赤いペンキの上に突っ伏して眠り、それを見た友人が、死亡したと勘違いして自分に連絡してきたという話である。
見ると1990年代に書かれた話ばかりなのに、全く古さを感じさせない。 目星の花ちろめいてのあやめびとの話は他の作品でも使われていたモチーフだったけど、印象がまた違くてよかった。 20131221
ドイツ在住の芥川賞作家、多和田葉子。 いま個人的に一番気になる人。彼女のエッセーは読んだけど、文学作品を読むのは初めて。 どの短篇も独特の不思議世界が構築されてます。 この世界観と言葉の感覚かなり好きです。 クセがあるので好みは別れそうだけれど。
緑の髪の舞台美術家と小説家のわたしの交友を描いてえもいわれぬ 可笑しみを湛えた表題作、恋愛小説ぐるいの少女が“ボクトーキタン” を追体験する「所有者のパスワード」ほか全8篇。日本語小説の閾を 見据えたスリリングな最新短篇集。 第28回泉鏡花文学賞。
バラエティに富んだ5作品を収録した作品集。 「枕木」は何と言っていいのか感想に困ってしまうが、絶えず焦点をずらされ横滑りしていくような感覚。 「雲を拾う女」何なの?哺乳ビンの乳首になってしまう(わたし)。火を吹き、鏡に映らないコウモリと呼ばれる女。寓話や幻想とは違う。あまりにも輪郭がはっきりとし過ぎ...続きを読むていて。意味とか脈絡とかそんなのよく分からないままに、ひたすら読まされてしまう。 「ヒナギクのお茶の場合」語の反復とか文体のリズムとか、読んでいて楽しい作品。友人ハンナへの語り手の好感が滲んでいる。 「所有者のパスワード」多和田さんにこんな作品あるんだ、と意外性に驚く。ラノベの恋愛モノ読んでコマ割りまで脳内で漫画に変換したり、難しい漢字の意味も分からず字面に官能性を感じたりする語り手。パロディーというか遊び心を感じる作品。
全体的にどこか抽象的で掴み所がなくて、でもとても引き込まれた作品。私は「目星の花ちろめいて」と「所有者のパスワード」の摩訶不思議感が好き。特に「所有者~」は本の虫の姫子が本ばかり読んでるがゆえに無知であることで危ない目に遭ったり現実とごちゃごちゃになったりしつつ、本ばかり読んでるがゆえに難を逃れる...続きを読む様が滑稽ですごく面白かった。
「雲を拾う女」が最も面白い。次に表題作。見れば前者は95年に後者は96年に発表されたもので、そのほかの作品(「所有者のパスワード」「枕木」「目星の花ちろめいて」)は2000年前後に書かれている。これらは多和田文学におけることばあそび(言葉の語感から喚起されるイメージで小説を展開していくスタイル)への...続きを読む習作といったイメージ。「光とゼラチンのライプチッヒ」の、音とことばに執拗にこだわる独特な世界観と、これらの作品は近いと思う。 「雲を拾う女」では、所有や主体や存在に対して直接的な説明が随所に織り込まれている。ここでは主体はものである(わたし)であり、その視点から外側にアプローチをかけているのだが、語り手としてものを選び、冷静に行き交う人々の所作を描くというのはなかなか考えつかないなあ、と。実験的かつ哲学的な要素を多分に含んだ短編。
多和田さんの自由な文体が相変わらず面白い。 「電車に乗っていると、どうして電車なんかに乗っているのだろうと思ってしまう」 出だしから笑った。 静かなトーンの話からクスッと笑える軽快な話、と多和田さんの引き出しの多さが伺える短編集。 「枕から枕へ、今夜見る夢から明日の夜見る夢へ」とあるように、多和田さ...続きを読むんに夢の世界に誘われたかのようにふわふわした余韻が漂う。 特に『目星の花ちろめいて』『所有者のパスワード』が好き。 『目星…』は多和田さんの紡ぐ詩のような言葉遊びが心地好く、続きが気になる終わり方でもっと読んでいたくなる。 『所有者の…』の姫子が夢中で読んでいた「ボクトーキタン」(永井荷風の『濹東綺譚』らしい)が気になる。何度もニヤリとなった。
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