多和田葉子のレビュー一覧

  • 海に落とした名前

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    多和田さんの小説に出てくる人間はみんなどこかずれている。天然とか主張が強いとか協調性がないとかいう性質の問題じゃなく、むきだしのまま成人しちゃったような感じ。子供みたいっていうのとは違う。私たちが元をたどれないほど昔の祖先、もっと人間が素朴で凶暴だっただろう頃の時代からぽんと現代に投げ出されたような絶妙な違和感に包まれている。
    むきだしのままなのに世界に怯まない。妙に強い。

    4編入り。

    表題作と「土木計画」が良かった。
    「土木計画」ああ、そうだったのかと最後で実はこの作品に大きな謎があったことに気付かされる。

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    2013年12月16日
  • 旅をする裸の眼

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    「わたし」(物語の語り手)の眼は現実の光景を見る以上に、スクリーンの中の「あなた」(ドヌーヴの演じる女)に注がれる。現実の「わたし」自身も運命に翻弄されるのだが、「わたし」のアイデンティティは、あくまでも「トリスターナ」の、あるいは「インドシナ」の中で役柄を演じる「あなた」と共にある。しかし、フランス語を解しない「わたし」には言語による共感ではなく、「視る」ことにおいてのみ自己を「あなた」に投入していく。作中の「わたし」も、作者もそこに「歪み」があることを重々に承知しつつ。本当に見事な小説空間だった。

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    2013年11月26日
  • 海に落とした名前

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    短編集、文句なく面白かったです。

    エクソフォニーでホモエロティックな三人の男が舞台の上でくるくると入れ換わる「時差」。笑うとこなどないのに、なんとなくスラップスティック。最初に自分が”盆回し”をイメージしちゃったからかも。

    しかし、なんと言っても表題作!気づいたら自分も名前を失くしてしまっていた!

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    2013年05月23日
  • 海に落とした名前

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    始めは「何だこれ?」と疑問符だらけで読んでいたが、この不思議な感性に慣れると次第に虜になる。
    無機質で知的な言葉の遊戯。

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    2013年01月28日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    世界を「魚になって」動き回っている多和田葉子だからこその文学論。説得力も違う。現代のあらゆる文学を考える上で刺激的。

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    2012年11月18日
  • 旅をする裸の眼

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    異国へ迷い込み、流されていく女性の生を追う。

    眼差しには権力が宿る、という言葉があるように、人の視線には常に意味が込められます。「裸の目」という表題はそうした眼差しの意味を排した、あくまで説明的というか冷徹に出来事が語られていくこの本をよく表していると思います。
    過酷でドライな内容です。なかなか無い雰囲気の本なので戸惑いつつも、その独特さに惹かれました。

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    2012年10月22日
  • 海に落とした名前

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    ベルリンで日本語教師をする日本人マモル、
    ニューヨークでドイツ語を教えるドイツ人マンフレッド、
    東京で漫画家を目指すアメリカ人マイケルの三角関係。
    「時差」
    稚内からサハリンへ渡りガガーリン公園を、運動場を、丘を見て
    戦争の残滓を見つける
    「U.S.+S.R. 極東欧のサウナ」
    全てが合理化されて部下とは顔を会わせない女社長の麻美は
    家ではみみちゃんを可愛がり老齢の克枝に手を焼いている
    「土木計画」
    乗っていた飛行機が不時着して私は機内に荷物と記憶を置いてきてしまった。
    残されたのはポケットいっぱいのレシートの束だけ。
    担当医の甥の後藤とその妹の三河と共に推理を重ねる
    「海に落とした名前」

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    2010年12月26日
  • 球形時間

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    あまりにも読みやすくて拍子抜けしてしまうほどですが、
    登場人物たちの妄想や、相互の交わりを考えると、
    読み終わっても噛み締めるように心に残っています。

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    2010年11月11日
  • ヒナギクのお茶の場合

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    ドイツ在住の芥川賞作家、多和田葉子。
    いま個人的に一番気になる人。彼女のエッセーは読んだけど、文学作品を読むのは初めて。

    どの短篇も独特の不思議世界が構築されてます。
    この世界観と言葉の感覚かなり好きです。
    クセがあるので好みは別れそうだけれど。

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    2010年05月19日
  • ヒナギクのお茶の場合

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    緑の髪の舞台美術家と小説家のわたしの交友を描いてえもいわれぬ
    可笑しみを湛えた表題作、恋愛小説ぐるいの少女が“ボクトーキタン”
    を追体験する「所有者のパスワード」ほか全8篇。日本語小説の閾を
    見据えたスリリングな最新短篇集。 第28回泉鏡花文学賞。

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    2009年10月07日
  • 海に落とした名前

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    記憶がない。自分の名前がみつからない。手がかりは、ポケットの中の
    レシートだけ。スーパー、本屋、ロシア式サウナ…。眩暈と笑いが渦巻く
    短篇集。表題作のほか、「時差」「土木計画」など全4篇を収録。

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    2009年10月07日
  • 海に落とした名前

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     多和田作品を読むのはこれで3作品目。ドイツで暮らし日本語で綴る作家らしく、軽やかで不可思議で面白味をたたえた作品集です。4編収録。 ベルリンの日本人マモル、ニューヨークのドイツ人マンフレッド、東京のアメリカ人マイケルが過ごす3人3様のとある一日の様子を切り取り「時差」を描きながら同時に、恋愛に対する温度差、片思いをも含みを持たせて描いているところが興味深い「時差」、視野人物の思考をありのままに忠実に描いて、ヘンといえばヘンだけど、不思議な面白味がある「U.S.+S.R. 極東欧のサウナ」、まさに「海に名前を落としてしまった」私が、名前を取り戻そうとする表題作の“私のポケットに突っ込まれたまま

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    2011年09月07日
  • 太陽諸島

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    ネタバレ

    ◼️多和田葉子「太陽諸島」

    三部作の完結船旅編。って完結してまう?続編をぜひ〜涙

    「地球にちりばめられて」「星に仄めかされて」に続くHiruko主人公もの。前作でついにSusanooが意外な本性を表し、Hirukoらと故郷への船旅に出る、という本編最大の謎へと向かう未来への期待を残した。一緒に旅するのはデンマークに留学中の言語学者の卵クヌート、女性へ性の引越し中のインド人アカッシュ、グリーンランドのエスキモー出身ナヌーク、ナヌークに思いを寄せるドイツ人女性ノラといったにぎやかで出自も言語もさまざまな仲間たち。

    途中で、これは行き着かないな、と思った。船はバルト海を突き当たりのサンテトペテ

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    2026年07月03日
  • 太陽諸島

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    三部作の最後。Hirukoたちの旅が終わるのかと思ったけどそんなことはなくて。最後の方は故人も出てくるし、HirukoやSusanooの名前から日本神話の話をちょっと盛り込んだりと想像もつかない展開でした。彼らの旅がどのように続いていくかは分からないけれど、移民という立場の寄る辺なさ、国境というものの持つ意味を考えさせてくれるという点では興味深く読むことができました。「わたしたちは波と似ている。押し合いぶつかり合い、形を崩しては、また新しい形をつくり、いろいろな方向に目を向けながら、いつも揺れている。」

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    2026年06月25日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    変愛、と銘打つだけあって、なんだか読後感が…

    いろんな作家さんの個性も垣間見える作品だったが、やっぱり村田沙耶香さんの作品の不気味さは突出してるな…

    再読したい本ではなかった

    いい悪いではなくて、好みじゃないってことですね…

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    2026年05月28日
  • 献灯使

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    小説自体は頭の中って印象なのですが、この本が出る過程、出た時代背景、リアクションなどを考えることにはとても価値があるように思いました。
    制作過程、本になるまでの過程、専門家に、聞いたのか、人選は、どういう聞き方をしたのか、などを考えるのは楽しかった。

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    2026年05月16日
  • 研修生

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    ネタバレ

    たくさんの本や映画のタイトルが出てきて、良い刺激をたくさん受けた。

    文書の中に、著者の感性とたくさんの知識があって小説の展開とかよりも主人公の感情を知りたくて読み進めた。

    小説を書きたい主人公が書いた小説が「研修生」

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    2026年05月08日
  • 献灯使

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    独特な文体だからなのか、独特な世界観だからなのか、なんとも掴みどころのない不思議な感覚を味わえる本。

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    2026年05月02日
  • 研修生

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    主人公の父が営む洋書店を媒介としてドイツの書籍取次会社の招きで研修生として冷戦で東西が分断された西ドイツの港町ハンブルグで過ごす半年余りの生活を描く。
    1980年代のまだ日本はバブル景気前だが、就職もせず中途半端な身分のままドイツの書籍取次会社の多様なセクションで多様なドイツ人と仕事場でドイツ人の多様なキャラやドイツ特有な文化や生活習慣に触れる様子をスクエアな観察眼で見つめる。
    主人公がレズ関係にあったマグダレーナを除いて、多くのドイツ人と交流するがあくまで観察の対象ないし時間つぶしとして付き合う様子を508頁付き合うのは些かしんどい。
    それでも高等遊民な主人公がやがて文章を(小説を)書く内的

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    2026年04月17日
  • 犬婿入り

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    ネタバレ

    犬婿入りとペルソナの二つの短編。ペルソナは求められる人物像や無意識に演じていた役割からの解放が印象的。犬婿入りはユニークで笑ってしまうがこちらも広義な意味でペルソナに通づるものがあると思っていて集団と個、無意識の同調圧力と自由の対比がおもしろい。

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    2026年03月25日