多和田葉子のレビュー一覧
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多和田さんが好きなのは、独特の感性と鋭い批評眼があって、なおかつ明るさがあるから。小説でもエッセイでも。
この本は書店で平積みになってて、新しい本かと思って買ったら10年前の再版だった。けど読んでなかったのでノープロブレム。
2013年1月から4月15日までの日記で、1日分は短いので隙間時間にちょっとずつ読もうと思ったのに、面白くて一気に読んでしまった。
こむらがえりを起こすとドイツ人に言ったら、皆口々にそれはマグネシウムが足りないせいだと答えた、という話のあとに、
「「こむらがえり」はとても古い単語なので「マグネシウム」という単語と出逢って、かなり驚いたみたいだった。」(P69)
(「 -
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2013年、日本語で書いた自著『雪の練習生』を自らドイツ語に訳している最中、多和田葉子が言語について考えたさまざまな疑問や気づきを書き留めた日記。
めちゃくちゃに面白い。日独だけでなく、多和田さんが講演などで旅した先で出会う言葉がどんどん思索を豊かにしていく。逆に翻訳作業の話は「手」の訳語にまつわるエピソードくらいだけど、多和田葉子という作家が日常的に言葉や文字とどう触れ合っているか知れるのが面白い。
レガステニーという学習障がいをめぐって「言語を文字で記すことが根本的に人間には困難」だと笑って見せたり、移民由来の乱れた言葉とされてきたキーツ・ドイツ語に惹かれてラップを書いてみたいと言った -
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ネタバレ⚫︎受け取ったメッセージ
混ざり合い、影響しあう人間と文化
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
多摩川べりのありふれた町の学習塾は“キタナラ塾”の愛称で子供たちに人気だ。北村みつこ先生が「犬婿入り」の話をしていたら本当に〈犬男〉の太郎さんが押しかけてきて奇妙な2人の生活が始まった。都市の中に隠された民話的世界を新しい視点でとらえた芥川賞受賞の表題作と「ペルソナ」の2編を収録。
⚫︎感想
「犬婿入り」
全てのものに境界線がない世界観。民話風な雰囲気で現在と過去、現実と虚構、動物と人間、父と娘、妻と夫、先生と生徒、男と女、清濁、といった境界全てを曖昧にしてひとつの世界を作っている。非常に不思議なお -
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ネタバレ⚫︎受け取ったメッセージ
自分が言葉を話せることや、言葉自体を
改めて素敵だと感じられる一冊。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
「国」や「言語」の境界が危うくなった現代を照射する、新たな代表作!
留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。
誰もが移民になりえる時代に、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく -
購入済み
不思議、と、多文化
犬婿入り、不思議に感じながら読んだ。
子供の視点があるから、
汚いのかエッチなのか
はぐらかされてしまう。
綺麗な先生でこんなことをされてるんだと
美女と野獣みたいにも思える。
そこに可哀そうな女の子がからんで、
それから超人的なことが
修行で身につくとか
触れてあったと思う。
はじめの、町の描写、周りの様子から入って
剝がれかけたようなポスター、
うわさとかから先生にだんだん
フォーカスされたのがおもしろい。
最後も、あれっと思ううちに
狐にでも化かされたように
不思議のうちに終わった。
ペルソナ、は読み忘れてた。
そういえばとばしたんだ。
読んでみたら読みやすい。
最初のあたりからして、ど -
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「地球にちりばめられて」が非常に面白かったので、読み始めた。同じようにストーリーはなく、次から次へと会話が進むように流れていく。主人公の美沙は現在ベルリンに1人で住んでいる。日本にいた頃は目立たない存在だったが、ドイツに来ると突然周りの人から注目され魅力ある存在へと変わっていく。日本では出せなかった自分がドイツでは自然に溢れてきたからだろう。夫が日本に帰ってからも、ドイツを離れがたく結局離婚して、翻訳で身を建てて生活している。隣人のMに誘われて太極拳学校へ通い始める。隣人Mや太極拳学校の仲間との交流を描いて社会、歴史、現在がかかえる問題など様々なことが描かれている。太極拳の教え方が、日本とは全
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ベルリンに暮らす主人公は夫が帰国してからも、ドイツでの暮らしを選び一人暮らしをしている。年齢は恐らく50代後半より上のよう。隣人や大学院時代の友人夫妻との交流、太極拳で知り合った仲間との付き合いを淡々とした文体で描く。特に大きな事件も起こらない話だけど、自分はこういう話が好きなので買ってよかった。からっとして湿度が少ない不思議な風通しの良さを感じる作品。
主人公が細々とした翻訳の仕事の収入だけで、一軒家を友人の紹介で格安で借りられて、夫が帰国した後もドイツに滞在し続けられるという設定はいささかファンタジーに近いけれど、まあ小説なのでいいか、という感じ。
多和田葉子の作品を読むのは初めてだった