多和田葉子のレビュー一覧

  • 献灯使

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    厄災のあと体が変わってしまった日本人。
    とても脆い子どもと、その子の世話をする元気な高齢者。脆い子供たちは、自分たちを不幸だとも思っておらず、弱い身体を受け入れている(転び方が上手なので倒れても怪我をしない、というところなど、面白い)。そして、国を出て新たな働きをするかもしれないのも彼等。
    善悪を言わないところ、私(たち)の基準だと悲観しそうなことでも、新たな展開があるところが好き。

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    2024年06月15日
  • 言葉と歩く日記

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    こんなにドッグイヤーを作った本は他にないかもしれない。
    わたしが考えていることは既に誰かが考えていたことなのだなと、多和田さんの文章を読んで実感した。
    3年間ほど積読していたのだが、ようやく読めた。なぜもっと早く読まなかったのかとも後悔した。

    本書で紹介されている文献も面白そうなものばかりで今度読んでみようと思う。

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    2024年04月30日
  • パウル・ツェランと中国の天使

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    すごくいいんだけど最後のエピローグは必要だったのか考えてしまった。多和田葉子の本文自体は詩的でとても素敵。

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    2024年04月19日
  • 飛魂

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    「ある日、目を覚ますと、君の枕元には虎が一頭、立っているだろう。」この冒頭一文で心を奪われた。『飛魂』は、これまで読んだ多和田さんの作品で一番好きな作品。皮肉まじりな幻想的な世界も、多和田さんの生み出す言葉のセンス、力にもずっと浸っていたい。

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    2024年04月02日
  • 地球にちりばめられて

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    Audibleで聴了。ものすごく引き込まれたので、続編を文庫で買うことに。出来ればそちらもAudibleで聴きたかった。朗読の可能性も感じました。

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    2024年03月04日
  • かかとを失くして 三人関係 文字移植

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    「犬婿入り」を読みこちらも読みたくなった。
    「かかとを失くして」は、書類結婚で異国へ移動した異邦人の話。異物(異質なもの)として生きていくのは、つまさき立ちするよな不安定な状態なのかも。三作とも平衡感覚を失うような感覚を覚えた。
    イカ、いか、烏賊・・・他は?

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    2024年02月12日
  • 犬婿入り

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    学習塾の独身女性の元へ太郎という犬男が現れ、奇妙な共同生活が始まる「犬婿入り」。
    ドイツ留学中の女性が味わう差別や偏見、攻撃によりアイデンティティをを失う「ペルソナ」。
    異質なものに対して、意図的にではなく無意識に排除してしまうこともあるから厄介だ。そもそも異質と同質の境はどこにあるのか?作品から抱いたモヤモヤをうまく言語化できないのがもどかしい。

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    2024年02月10日
  • 言葉と歩く日記

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    多和田さんが好きなのは、独特の感性と鋭い批評眼があって、なおかつ明るさがあるから。小説でもエッセイでも。
    この本は書店で平積みになってて、新しい本かと思って買ったら10年前の再版だった。けど読んでなかったのでノープロブレム。
    2013年1月から4月15日までの日記で、1日分は短いので隙間時間にちょっとずつ読もうと思ったのに、面白くて一気に読んでしまった。

    こむらがえりを起こすとドイツ人に言ったら、皆口々にそれはマグネシウムが足りないせいだと答えた、という話のあとに、

    「「こむらがえり」はとても古い単語なので「マグネシウム」という単語と出逢って、かなり驚いたみたいだった。」(P69)

    (「

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    2024年02月04日
  • 言葉と歩く日記

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    2013年、日本語で書いた自著『雪の練習生』を自らドイツ語に訳している最中、多和田葉子が言語について考えたさまざまな疑問や気づきを書き留めた日記。


    めちゃくちゃに面白い。日独だけでなく、多和田さんが講演などで旅した先で出会う言葉がどんどん思索を豊かにしていく。逆に翻訳作業の話は「手」の訳語にまつわるエピソードくらいだけど、多和田葉子という作家が日常的に言葉や文字とどう触れ合っているか知れるのが面白い。
    レガステニーという学習障がいをめぐって「言語を文字で記すことが根本的に人間には困難」だと笑って見せたり、移民由来の乱れた言葉とされてきたキーツ・ドイツ語に惹かれてラップを書いてみたいと言った

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    2024年01月22日
  • 犬婿入り

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    ネタバレ

    ⚫︎受け取ったメッセージ
    混ざり合い、影響しあう人間と文化

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    多摩川べりのありふれた町の学習塾は“キタナラ塾”の愛称で子供たちに人気だ。北村みつこ先生が「犬婿入り」の話をしていたら本当に〈犬男〉の太郎さんが押しかけてきて奇妙な2人の生活が始まった。都市の中に隠された民話的世界を新しい視点でとらえた芥川賞受賞の表題作と「ペルソナ」の2編を収録。

    ⚫︎感想
    「犬婿入り」
    全てのものに境界線がない世界観。民話風な雰囲気で現在と過去、現実と虚構、動物と人間、父と娘、妻と夫、先生と生徒、男と女、清濁、といった境界全てを曖昧にしてひとつの世界を作っている。非常に不思議なお

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    2023年11月21日
  • 地球にちりばめられて

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    hirukoの言葉の、1984感。
    異国の目を通して感じる、わたしたちの文化。

    ちょっとした表現の、ピリッとウィットのきいたかんじ。

    人が語る人、の連なり。

    言語がつくる、思考。

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    2023年11月19日
  • 地球にちりばめられて

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    ネタバレ

    ⚫︎受け取ったメッセージ
    自分が言葉を話せることや、言葉自体を
    改めて素敵だと感じられる一冊。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)

    「国」や「言語」の境界が危うくなった現代を照射する、新たな代表作!

    留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。

    誰もが移民になりえる時代に、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく

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    2023年11月18日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    ホッキョクグマという存在自体がなんとなく危うく、儚い動物の「アイデンティティ」をテーマにした3代にわたるストーリー(と読みました)。クヌートという実在したホッキョクグマは残念ながら勉強不足で知らなかったけど、なんとも全体的に危うい…でも生きていくってことを改めて考えさせられました。初めて多和田さんの本を読んだけど、どこか海外小説風の雰囲気は、後になって調べたら海外に在住とのことでこれも納得。

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    2023年11月12日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    言葉に真摯に向き合っている筆者が、旅行先のエピソードからの想起に端を発して自身の言語論を展開していく。
    その言語論は実際に行動に移す中で獲られたものだから、読んでいてとても小気味よい。
    読みやすい文章だけど、手を止めてゆっくり読みたくなる本。

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    2025年08月16日
  • 白鶴亮翅

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    太極拳教室で様々な国の人たちと積極的に交流する主人公。東ヨーロッパの複雑な歴史や、中国、日本の文化まで絡めながら展開するストーリーに、わかりやすく知的好奇心を満たしてもらえる。
    この本を読みながら、「楢山節考」の映画を見た。若い頃少し齧って面白くなくてやめた太極拳を、またやってみたいと思っている。
    何より、いろいろな人に好奇心をもって関わってみることの楽しさ?を感じた。

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    2023年09月11日
  • 白鶴亮翅

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    心待ちにしていた単行本をやっと手に取った。というのも朝日新聞連載時に最初の数日分を読み忘れていたのだ。主人公のちょっとした心模様を淡々と描いた作品なのであまり影響はなかったが。
    ドイツに暮らす移民同士の親密すぎない日常を飄々と物語る、まさに多和田葉子にしか書けない文面は心地よく、独特のユーモアに心をくすぐられる。
    太極拳にも興味が湧いた。

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    2023年07月31日
  • 犬婿入り

    購入済み

    不思議、と、多文化

    犬婿入り、不思議に感じながら読んだ。
    子供の視点があるから、
    汚いのかエッチなのか
    はぐらかされてしまう。
    綺麗な先生でこんなことをされてるんだと
    美女と野獣みたいにも思える。
    そこに可哀そうな女の子がからんで、
    それから超人的なことが
    修行で身につくとか
    触れてあったと思う。
    はじめの、町の描写、周りの様子から入って
    剝がれかけたようなポスター、
    うわさとかから先生にだんだん
    フォーカスされたのがおもしろい。
    最後も、あれっと思ううちに
    狐にでも化かされたように
    不思議のうちに終わった。
    ペルソナ、は読み忘れてた。
    そういえばとばしたんだ。
    読んでみたら読みやすい。
    最初のあたりからして、ど

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    2023年07月30日
  • 白鶴亮翅

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    「地球にちりばめられて」が非常に面白かったので、読み始めた。同じようにストーリーはなく、次から次へと会話が進むように流れていく。主人公の美沙は現在ベルリンに1人で住んでいる。日本にいた頃は目立たない存在だったが、ドイツに来ると突然周りの人から注目され魅力ある存在へと変わっていく。日本では出せなかった自分がドイツでは自然に溢れてきたからだろう。夫が日本に帰ってからも、ドイツを離れがたく結局離婚して、翻訳で身を建てて生活している。隣人のMに誘われて太極拳学校へ通い始める。隣人Mや太極拳学校の仲間との交流を描いて社会、歴史、現在がかかえる問題など様々なことが描かれている。太極拳の教え方が、日本とは全

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    2023年07月17日
  • 白鶴亮翅

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    ベルリンに暮らす主人公は夫が帰国してからも、ドイツでの暮らしを選び一人暮らしをしている。年齢は恐らく50代後半より上のよう。隣人や大学院時代の友人夫妻との交流、太極拳で知り合った仲間との付き合いを淡々とした文体で描く。特に大きな事件も起こらない話だけど、自分はこういう話が好きなので買ってよかった。からっとして湿度が少ない不思議な風通しの良さを感じる作品。
    主人公が細々とした翻訳の仕事の収入だけで、一軒家を友人の紹介で格安で借りられて、夫が帰国した後もドイツに滞在し続けられるという設定はいささかファンタジーに近いけれど、まあ小説なのでいいか、という感じ。

    多和田葉子の作品を読むのは初めてだった

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    2023年07月02日
  • 献灯使

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    完全に打ちのめされてしまった。
    震災後のいつかの日本という設定はフィクションだけどフィクションじゃない。
    物語から漂うやるせなさを私は知っている。
    これからの日本のことを考えながら読んだ。

    表題作は勿論、「彼岸」が凄かった。
    どうして原子力発電所の上に飛行機が落ちてこないと言い切れる?
    鈍器で殴られたような衝撃があった。

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    2023年01月29日