あらすじ
コロナ禍のベルリン。若き研究者のパトリックはカフェで、ツェランを愛読する謎めいた中国系の男性に出会う。
“死のフーガ”“糸の太陽たち”“子午線”……2人は想像力を駆使しながらツェランの詩の世界に接近していく。
世界文学の旗手とツェラン研究の第一人者による「注釈付き翻訳小説」。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
短い作品ではあるが注釈を読まないとパウルツェランのエッセンスは到底わからない(個人差はありますが)と思う。私は詩を人生で堪能してきた人間ではないから、彼に触れるのはお薦めしないとご提言をいただいた反駁で手に取ったわけであるが、間テクスト性満ち溢れた本作はより彼について知りたいと思わせ、同時に多和田葉子という作家が積み上げてきたエクソフォニーを体感できるようなそんな作品だった。彼女の作品を関口さんが翻訳する。日本人のかいたドイツ語文学を日本人が翻訳する?不思議な試みだなと当初考えてはいたものの、同じ人間でも異なる言語に身をおいてみれば織り成す内容も形式も変わってくる。まさに「世界は言語によって構成される」を体現した作品だと私は思う。はじめは仕様もない動機で手に取った本作であるが、「言葉に身を置く」これぞ読書といえるような体験が出来る作品だった。
Posted by ブクログ
多和田葉子の小説かと思っていたら翻訳であった。パウル・ツェラン自体があまり日本では知られていない。詩集がもっとメジャーになってくれたらわかりやすい。註が多く、さらにツェランについての説明も丁寧であったので、ツェランについて知るには簡易な本であると思える。