多和田葉子のレビュー一覧

  • 飛魂

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    先に書いた読書会の際にサインをいただきました。読書会自体は日本語、ドイツ語、フランス語、英語が入り混じり、この年で1番「リテラシーの高い人が集まっている空間」でした。非常にユニークな読書会で先生もとても気さくな方でした。やっぱり文章表現が素晴らしい。特に元々修道院が身近になかった語り手とそうでない人々、そうである人々、関係のない人々。嫉妬や尊敬、愛情が入り混じる土修羅展開も良きでござんした★

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    2021年03月07日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    日独バイリンガルでドイツに渡り、母語を日本語としながら日本語とドイツ語の両方で小説を書く作家の「言葉を越境する」ことから広がる視界、言葉をめぐる冒険のエッセイ。
    自身が当たり前のように接していた言葉、日本語、外来語について紐解かれていくのが非常に興味深かかった。
    自身の知識では抑えきれていない部分もあるのだろうと思わされつつ、読めば読むほど奥深い発見が溢れていた。

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    2021年01月17日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    冒頭、なんだか官能的な話が始まったと思った。しかし、しばらく読み進めて、なにかが違う……これは人間じゃない!?と気が付いた。裏表紙にも「ホッキョクグマ3代の… 」と書かれている。そうか、ホッキョクグマが主人公のお話か。 と、とりあえず把握したのも束の間、そのホッキョクグマが会議に参加(!)したり、文章を書いたり(!)するのである。人間の世界に「普通に」参加している。この言い方には語弊がある気もする。現実のようで、幻想のようで、空想のようで……でも、この物語のなかではまるごと現実として納得させられる。

    話としては3話収録されており、あらすじのとおり「ホッキョクグマ3代記」ということでとりあえず

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    2020年09月05日
  • 言葉と歩く日記

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    著者が原稿用紙にやわかな鉛筆で書き上げた3ヶ月半の日記。言葉というのはこうして身に纏って生きていくものなのだと実感できる日々のことをのぞけてしまう。わからない言葉や用語に出会ってもインターネットで安易に調べず一つ一つ辞書にあたって、触れた感触を確かめていくというのはとても楽しいだろうなと思えた。

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    2020年08月24日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    日本語‐ドイツ語のはざまで、ドイツ語から日本語を、日本語からドイツ語を照射しそれぞれを解放していく。

    言語の、生きられたコードとしての不自由さのいっぽうで、コードそのものに宿る固有の何か、をあぶりだしていく。

    幼児の言語習得の過程では、分節をふやしていくのではなく
    分節を忘れる―区別をしなくなる/ある種のコードに沿った分節に屈する、ということが印象的。

    コードへの執着を持ちながら、そのコードを自らの手で増やし相対化されているー言葉の快楽におぼれるでなく、実感に基づいた冷静な思考。
    刺激的な言語論であり文章論。

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    2020年08月16日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    多和田葉子さんは
    1993年に芥川賞を受賞した著名な作家なのだが
    私は恥ずかしいことに
    多和田さんの存在を
    「2018年の全米図書賞翻訳部門を受賞」
    のニュースをネットで見て初めて知ったのだった。

    多和田さんは早稲田大学でロシア語を学び
    ロシア(当時ソ連)ではなく
    ドイツ(当時西ドイツ)に留学。
    以来30年以上ずっとドイツに住み
    日本語とドイツ語で作品を創り続けている。

    Exophonyとは
    「母語以外の言語で文学を書く」という意味。
    サブタイトルのように
    多和田さんは朗読会や講演などを行うために
    世界各地を旅しているわけだが
    その度に母語と非母語について
    考え
    感じ
    新たな捉え方に挑戦し

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    2020年03月14日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    とても面白かった。
    まず、タイトルが素敵だ。そして、主人公が北極熊という視点が興味津々だ。さらに、その3世代の物語という構成が見事だ。全編を通して俗世間の物語とは違う、純粋で透明感のある思考と想いとユーモアが感じられて、とても心地好い読書体験だった。
    作家であるわたしの「祖母の進化論」、その娘トスカの「死の接吻」、さらにその子クヌートの「北極を想う日」。3章に渡って描かれる北極熊の物語は、単なる熊の擬人化ではなく、忘れてしまっていた私たちの心象風景なのかもしれない。

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    2019年11月19日
  • 犬婿入り

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    「犬婿入り」(多和田葉子)を読んだ。
    「ペルソナ」「犬婿入り」の二編。
    前回これを読んだのはもう四年くらい前で、日常生活に潜む緊張感とか不条理性とかそういった多和田葉子の世界にすっごく感激した記憶があり今回もやっぱりすっごく感激したけれど、と同時にリラックスして笑える自分がいた。

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    2019年09月24日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    さまざまな形の「愛」が収められたアンソロジー。どれも一般の恋愛観からは少し外れた愛で、しかしそんな奇妙な愛こそが恋愛であるような気がする。どこか変でなきゃ恋愛なんてできないな、と感じた。

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    2019年09月14日
  • 言葉と歩く日記

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    単なる「ドイツに住んでいる小説家の日記」ではない。
    言葉と歩いている多和田葉子さんの日記、なのである。

    多和田さんは小説を
    日本語で書き、ドイツ語で書く。
    日本語作品をドイツ語に翻訳もする。

    自作品を日本語、ドイツ語、英語で朗読し
    さまざまな言語に翻訳された自作品を聞くために
    世界各地を旅している。

    そんな人生があるとは。。。
    まさに理想的な人生である。
    それができる才能が実に羨ましい。

    あまりに面白いので
    私が勤める日本語学校の先生たちに
    熱烈推薦してしまった。

    何が面白いか、その面白さを説明すると
    多分すごくつまらなくなるので書かないが
    言葉に興味ある人はとにかく読んでみてほしい

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    2019年04月01日
  • 犬婿入り

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    遅読の私なのだが実にすいすい読み進めた。
    二冊目にして「多和田葉子流」に慣れたのは
    思考の形がどこか似ているのかしら?なんて
    多和田女史の研ぎ澄まされた言語感覚と
    深い洞察力を前にして とても言えない。

    1993年芥川賞受賞の「犬婿入り」。
    エロチックな有機物のにおいに満ちているが
    妙に乾いた空気感。
    「異質な存在」も人々の「言葉」次第では
    そうでないものになり
    何者なのか 何物なのか 
    わからないまま時は過ぎていく。

    「ペルソナ」には「ドイツで生きる私」が
    ちょっと痛々しく描かれている。
    ある韓国人に対するドイツ人の反応をきっかけに
    「東アジア人」の自分がよくわからなくなっていく。
    能面

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    2019年02月24日
  • 言葉と歩く日記

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    『雪の練習生』と合わせて読んでいたのだけど本当にすばらしい羨ましいとしか言いようがない日々で、こんな美しい日々のことを本にまとめて発表してくれてありがとうという気持ちしかなかった。
    言語も国も水のように揺蕩い、ここは泳げる世界なのだ、少なくとも葉子氏には。
    伝え伝えられることの喜び、息をする喜び、書くことへの無常のよろこび。

    朗読イベントとか、参加したくもなってしまうね。

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    2019年02月07日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    難しい小説だなあ大丈夫かなあと自分の理解力にひやひやしながらも読み終わる頃には、お見事だ……の一言に尽きた。
    言語と思考が血に溶け込んで身体中に広がっていく過程、他者とわたし、世界とわたし、小さな文庫本が裏返しになりわたしが飲み込まれてしまったような気がした。

    ものを書くこと、浮遊感、次元の飛び越え、言語が指先まで染み渡っていく過程、すべてが鮮やかな描写によって目の前に迫ってきた。
    クヌートのその後、死ぬまでは幸せであれと願う。

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    2019年02月07日
  • 言葉と歩く日記

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    「小学生の夏休みに『アサガオの観察日記』を書いた記憶があるが、それを参考に、日本語とドイツ語を話す哺乳動物としての自分観察しながら一種の観察日記をつけてみることにした。」(著者後書きより)

    社会人になってから、数年に一度くらいの頻度で多和田葉子さんの文に引き寄せられる縁みたいなものがある。
    今回は小説でなくエッセイというか日記というか、丁寧な思考をほいっと手渡されて後は任せた、みたいな短文が続くので、相変わらず素敵だなあと思ってゆっくり読んでいる。
    今のこの日本ではない、別のもうひとつの静謐で豊かな世界がどこかにある気がしてくる。

    さいしょからさいごまで良い一冊だった。

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    2018年08月16日
  • ポケットマスターピース01 カフカ

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    再読の『変身』をはじめ、どの作品も最後の最後までどこに向かっていくのか方向性が読めないところが面白い。

    中でも『流刑地にて』は衝撃でした。
    とある植民地の島を舞台に、公開処刑の装置の仕組みについて嬉々として説明する士官。それを半ば冷めた目で眺める旅行者達。
    そして何故テーブルの下に墓石がある?想像するとかなりシュール。

    『訴訟』についても、解説を読むと色々な読み方ができて再読したくなりますね。

    またカフカの書簡についても、かな~りウザイ性格(ストーカーじみてる!笑)が伝わってきて、これまた楽しめました。

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    2017年02月05日
  • 尼僧とキューピッドの弓

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    ドイツにある尼僧修道院に、取材のため長期滞在している日本人の”わたし”の目を通して描かれる共同生活のようすと、”元尼僧院長の独白”の2部構成になっている。
    フェアな人には皆、すこし心を許すものであり、外国人ということもそこに加味されるものである。
    第二の人生をこの修道院に捧げる尼僧たちは、離婚経験もあれば子供もいたりする。男性との関わりに疲弊した過去をもっていても、豊かな記憶や想いと一緒に生きている。
    最後のほうで、わたし が修道院のことを執筆する(物語る)モードになっていく感覚が面白い。
    なにか液体が土に滲んでいくようだった。
    そして突然、平面的なものが立ち上がる。

    元尼僧院長の独白は、自

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    2015年12月27日
  • ゴットハルト鉄道

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    面白かった!!
    独特の言葉の使い方ゆえか、鮮烈なイメージは湧くけど掴みきれない感じが良い。
    三作品とも甲乙つけがたいなー。
    他の作品も読んでみたい!強くそう思える作家に久々出会った感じ。

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    2015年05月31日
  • 飛魂

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    日本語とは表音文字であると同時に表意文字である。正確に言えば、全ての文字は音を持つが、漢字は加えて意味を持つ。では、意味を持ちながらその言葉から音を取り去ってしまったらどうなるだろうか?梨水や亀鏡、朝鈴といった読み名を定められぬ者どもは女子寄宿学校での隠遁した生活と相まって、その実態はとても儚げでおぼろげだ。しかし著者の編む比喩と表現はとても美しくみずみずしく、そして肉感的でもある。思弁と実体がゆるやかに溶け合ってゆく快楽、言葉に酔い痴れることの喜び。読書が持つ経験の豊かさがここには見事に実っている。

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    2015年03月04日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    まるっと作り話,分かっているけど
    白熊を見る目が変わってしまったと思う。
    冬に再読したいフィクション1位。タイトルもすてき。

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    2021年03月06日
  • 言葉と歩く日記

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    なかなかの良書である。外国で外国語を使って生活していなければわからない、日本語に対する意識や、気づき。海外生活がなければ、そんなことに気づくこともないだろう。楽しめた。

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    2014年06月08日