多和田葉子のレビュー一覧

  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    あと100ページほど残っている。最後まで読み切らなくてもいいと思うくらい満足している。良いとか悪いとかの程度で測れないほど素晴らしい。
    東欧や北極の澄んだ冷たさが書かれていて、知らないのに知った気になる。あたりまえの心の動きが、初めて見たもののように注意深く鮮やかに表現されている。
    生きてきて一番、日本語を読めてよかったと感じている。

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    2025年11月28日
  • 献灯使

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    他の言語から、日本語の外から日本語を捉えないと
    見つけられない言葉遊びが随所に見られた。

    今後の日本、超高齢化社会の行く末を過度に強調することで多少のポップさ、滑稽さを交えつつと将来の日本に危機感を覚えさせられた一作。

    名作。

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    2025年09月22日
  • 地球にちりばめられて

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    最高の読書体験をした。
    万博イタリア館の待ち時間に全て読み終えた。
    およそ7時間くらいか。

    多和田葉子さんの書籍は2冊目。

    テレビに出ていた、祖国を亡くしたという女性が話す独特の言葉遣いに興味を持って、ぜひ会いたいとテレビ局に問い合わせたら、案外簡単に会えて、詳しく話を聞いてみたいということで、会いにいったことから始まった。問い合わせをしたのは、クヌートという名の青年。彼は言語に興味があることもそうだが、祖国を亡くしてしまったという女性に興味を持った。女性はHiruko という。
    Hirukoは、スカンジナビアの言語体系を自分なりにまとめて、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク語を話す人な

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    2025年09月21日
  • かかとを失くして 三人関係 文字移植

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    濃密な世界、なににも頼れることのない不安定感、これらは我々の生きている世界そのものであり、それらを何気ない顔で過ごす我々とは一体なんて奇妙な生き物なんだろうかね

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    2025年09月11日
  • エクソフォニー 母語の外へ出る旅

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    ネタバレ

    突然ですが、読書について。

    私よりも速読・多読の方は数えきれないほどいらっしゃるのは分かります。それでも、この数年は、私の中では人生史上最も読書をしているという感覚があります。

    それらの本は、当初は仕事で行き詰まる自分への武器、突破口発見のため。あるいは、金がないなかで(というか塾に通わせずに)子どもの高校受験を成功させる、という目的がありました。

    仕事がそこそこ落ち着き、そして子どもたちも無事に日本に戻った近年は、文芸書・エンタメが太宗を占める、息抜き読書が多く、しかも消費する・ただ貪り読むという、あたかも早食い・大食いの読書バージョンであるかのような読み方であると自身感じていました。

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    2025年05月17日
  • 地球にちりばめられて

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    ネタバレ

    この物語の主人公 Hiruko が話すオリジナルの言語であるパンスカは、体言止めで、独特な言い回しをする言語だった。また言語といっても、そこに決まった形はなく、Hirukoがその時感じたままを、スカンジナビア半島周辺の言語の中で、より同じような質感を持つ言葉を選びつつ、会話は展開されていた。
    恥ずかしながら、今まで日本語は表現できる種類の言葉が多く、表現においてあまり不自由を感じたことはなかったが、日本語という言語に支配されているからこそ、語ることのできないものも同時に存在するということを知る機会になった。
    本書を読み、さまざまな言語を学ぶことは、さらに自分の表現の幅を増やすということにつなが

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    2025年05月15日
  • 地球にちりばめられて

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    ちょっとすごすぎるかも!!
    多和田葉子のなかだとかなり読みやすい方だと思うんだけど(ストーリーが追えるので)、ふんわりふんわり流動的に場所が動いていく。根本的に根無し草の感覚があるのかも。
    言語はもっと自由なのかもしれない。私はいつも(特に)英語を話すときには間違えるのが怖いと思ってしまう。文法がちがうと笑われることが怖い。とりわけ「文法を解する」日本人に笑われたりするのが怖いんだと思う。だからchatGPTとは、べらべらずっと好きなだけ喋ってしまう。私は本当はおしゃべりなのに、英語だとおしゃべりになれないのは「文法の共通了解」が世界中に有ってその人たちにジャッジされているという感覚があるから

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    2025年04月20日
  • 言葉と歩く日記

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    面白かった〜。言葉の不思議さに触れられ、驚き、合わせて、ドイツなどを旅している気にさせてくれる、多和田さんらしいエッセイ。現実逃避に最適かもしれない。

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    2025年03月21日
  • 変身のためのオピウム

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    この小説を語るにはあまりにも私の知識が矮小。それでも読むことがやめられぬほど思考に馴染み、こんなに息がしやすいと思うことはない。これからもいつもどんな時もそうやって私の脳みその皺にすっと溶けるんだろうな。
    クリニックの待ち時間に坂道に腰掛けて光の中これを読み、事務員に呼ばれて建物に戻った時、しばらく眩暈がしたのを生涯忘れないと思う。

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    2025年03月19日
  • 言葉と歩く日記

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    彼女は言語学者ではない。
    小説家であり詩人だ。
    それも日本語とドイツ語で小説を書く小説家だ。
    だからなのか言語への深い理解と探究心と遊び心にあふれている。
    言葉と歩く多和田さんの日記の言葉を
    もらすことなく読みたくて時間をかける。

    折しも今日は3月11日
    私のすぐ横に職場のブラウン管テレビが
    落下してきた日だ。
    彼女は「ベルリンにいて地震を経験していないという穴があまりに大きいので、人の話がその穴にどんどん吸い込まれていく。共有ではなく、むさぼり喰うような感じ」と語る。そして次の日のアサヒ・コムの「炉心溶融」は危機感が薄く、「メルトダウン」の方が危うく感じられると述べている。そして、多和田さ

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    2025年03月11日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    文芸誌GOATで上白石萌音さんが紹介していたのをきっかけに読みました。
    萌音さんが教えてくれたように『先入観無く読みたい!』と思い、ネットで買うにも検索したら表紙が見えちゃうので、家族に頼んで買ってもらい、表紙も帯も取ってもらってから読みました。

    この工程が無ければ、すんなり読めてしまったかもしれません。でも、表紙や背表紙のあらすじを見ずに入り込めたお陰でとても楽しく(頭の中が???になりながら)読むことが出来ました!
    これは初めての読書方法でした。
    上白石萌音さんに感謝の気持ちでいっぱいです^_^

    イヤな顔をせずネットでポチってくれたり表紙と帯を隠してから渡してくれたりと協力的な家族にも

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    2025年03月09日
  • 地球にちりばめられて

    購入済み

    不思議な作品

    ちょっと読みにくいので、ざっとスピードをつけて流してみた。
    日本がもうなくなっていて、日本人のHirukoはパンスカという
    どこの国の言葉でもないそれでも通じる言語を話す。失語症、
    魚の文化、泥沼に咲く蓮にすわるブッダ、ロボット、セックスと
    セックスなしの付き合い、言語、テロ、神話と女性と暴力、
    約束とすっぽかし、反捕鯨、いろいろなものがあって、
    不思議な感じがした。

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    2025年02月19日
  • 地球にちりばめられて

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    今度ヨーロッパにいくから、旅がしたくなるような本おしえてって、chatGPTにいったら、この本が紹介された。なんにも前情報なしで、文庫版の表紙のアーティストのファンなのもあって、読んでみることにした。

    何気なく読み始めたけど、めちゃくちゃ面白かった。
    言語を学んでいくときに今までになかった輪郭が見えてくるような感覚が好きなんだけど、
    それを日本語だけでできている物語で味わえるって、不思議!素敵な読書体験ができた!

    ただ物語の波がすごいエンタメとかそういう物じゃない、文字にしかできない面白さがあるな。

    こういう本をもっと読みたいー!!

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    2025年02月09日
  • 献灯使

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     大災害が起こった後の日本。
     「無名」という名の首が細く身体がグニャグニャして、膝から下が鳥のように内側に曲がって上手く歩けず、食べ物もなかなか咀嚼出来ず、栄養も上手く吸収出来ない弱々しい子供を曽祖父である「義郎」が世話している。
     大災害の後、子供はみんな「無名」のように弱い老人のようになり、逆に老人は死ぬことが出来なくなり、義郎のように100歳を超えた老人がピンピンしていた。
     野生動物は殆ど見かけなくなり、本州では安全な食べ物は殆ど無くなってしまった。義郎は運良く1万円で手に入れることが出来た四国産の一個のみかんを無名がなんとか食べられるように包丁で切り刻んでジュースにするのだが、無名

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    2025年02月09日
  • 星に仄めかされて

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    ラストシーンの、役者全員が場に出揃った会話劇が最高潮だった。ムンンの語りによる最後の夢の部分は難しく感じてしまった。解説を読んでみてコロナ禍を意識して執筆されたことがよく理解できる。環境問題やジェンダー認識等、社会の捉え方が好きだった。

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    2024年12月22日
  • 地球にちりばめられて

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    不思議な世界観と読み心地でとても良かった!!
    登場人物たちと一緒に旅してるよう。あえて色々な背景を詳しく描かないところも私は好きだった。空気感的にたぶん小川洋子とか好きな人は好きなんじゃないかと思う。でも小川洋子のようなフェティッシュな湿度はなくどちらかというと無機質な雰囲気。
    海外旅行好きな人、留学したことある人にもおすすめ。
    逆に現実的なストーリーが好きで、ぼんやりとした雰囲気を好まない人には向かないかも。

    私がとても好きなフレーズをひとつ、
    「わたしの心は、まだ春とは呼べないけれども、クロッカスのなまなましい白や黄色が冬の土を破って出てきている。まだ恋とは呼べないけれど、もう冬に戻るこ

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    2025年04月01日
  • 献灯使

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    震災後文学の頂点とはよく言ったもので、川上弘美が書ききれなかった、何か大切なものが剥ぎ取られてしまった世界を不思議な文体で描写しているように思われた。表題作も面白かったのだけど、「韋駄天どこまでも」は技法的にもクィア的にも面白かった。あと装丁の堀江栞って堀江敏幸と関係あったっけ。

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    2024年10月20日
  • 白鶴亮翅

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    多和田さんの小説はいろいろ読んだけど、これが自分に一番ピッタリと来た

    もちろん彼女の小説を全部読んではいないけど

    読み終わったとき、多和田さんに電話でこの気持ちを伝えたかったけれど、残念なことに電話番号を知らなかった

    まだ読んでない本(こちらのほうが多数)を読めるのが、とても楽しみ

    読んでる間、至福の時間だった

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    2024年09月05日
  • 地球にちりばめられて

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    これは…!なんだか不思議で夢中になる新感覚の読書体験

    日本語の響きや語感、ニュアンス、文字、文体、地理など、言語を言語たらしめるそのすべてを、他言語との相対性の中で自由自在に操る。そうして紡がれた海の上を読者がたゆたう中で、登場人物たちの過去と現在と未来とが交錯し物語も展開されていっている、みたいな感覚

    コペンハーゲン、言語、旅、留学、グリーンランド、ドイツ、モネ、「並んで歩く人たち」、そして何だか心地よい音がする読書、あたりに少しでも心惹かれる人にとてもおすすめしたい!

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    2024年08月19日
  • 穴あきエフの初恋祭り

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    いつも不思議な世界に導いてくれる多和田さん
    「下半身が目に見えない無気力の霧に包まれて動けない」
    「ガムでも噛んでいるみたいな感触で時間が過ぎていくね」
    こんな言葉遊びのような文章に惹きつけられる!
    文字が踊っているような、リズムを刻んでいるようで、思わずふわふわと頭の中が掻き回される。
    この心地良さはなんなんだろう!

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    2024年07月11日