あらすじ
芥川賞作家のめくるめく奇妙な万華鏡世界。ギリシア神話の登場人物から22人の女性を選び一人一章をあてて描く連作集。芥川賞作家多和田氏ならではの想像力の限りを尽したタペストリーをお楽しみ下さい。
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Posted by ブクログ
この小説を語るにはあまりにも私の知識が矮小。それでも読むことがやめられぬほど思考に馴染み、こんなに息がしやすいと思うことはない。これからもいつもどんな時もそうやって私の脳みその皺にすっと溶けるんだろうな。
クリニックの待ち時間に坂道に腰掛けて光の中これを読み、事務員に呼ばれて建物に戻った時、しばらく眩暈がしたのを生涯忘れないと思う。
Posted by ブクログ
実に難解な小説である。タイトルの『変身のためのオピウム』からして意味不明だ。オピウムはアヘンや麻薬のことであり、マルクスの『ヘーゲル法哲学批判序説』の中の言葉「宗教は民衆のためのオピウムである」からとられているのは明白。しかし、そうだからといって何が分るといういうものでもない。スタイルは一見したところは長編小説だ。しかし、物語全体を貫流するプロットは、これまたあるような無いようなだ。表現のところどころはシュール・レアリスムを想わせるのだが、シュールではない。しいて言えば西脇の「旅人かへらず」に似ているか。
この小説はけっして観念的な意味で難解なのではない。ひとえに小説作法のあり方において難解なのだ。従来のどのような範疇にも入らない。