多和田葉子のレビュー一覧

  • 海に落とした名前

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    久々に小説を読んでいて薄気味悪さを感じた。それがどこから来るのかをまだしっかり考えてはいないのだけど。

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    2009年10月04日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

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    言葉あそびがとがっていて、異邦人だからこその観察眼。
    この国の、そこで生きてきたひとたちの歴史を軽々飛び越えて、漂う。
    「あの人」との関係性が明らかにされるくだりには不意をつかれた。
    夢のような現のような、物語のようなエッセイのような、そんなお話。

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    2026年06月21日
  • 献灯使

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    どうして歳をとっているのにそんなに元気なんだろう、どうして幼い子がこんなに身体の自由がきかないんだろう、どうしてお母さんやお父さんがいないんだろう。読んでいく中で湧き出てくるいくつものはてなマークが明らかになる時、この物語の舞台が形を見せてくる。その柔らかな文体で表現された何気ない日常から、急に姿を見せた冷酷な現実にどうしようもない気持ちになった。

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    2026年06月12日
  • 星に仄めかされて

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    ◼️ 多和田葉子「星に仄めかされて」

    不思議と謎への興味と、人間。やはりアプローチが独特で、惹かれる作家さん。

    多和田葉子はさっぱり分かんないこともあるし、根っこのところが賛同できないな、と思った過去もある。でも多くの要素からなる、知性と無邪気さが融合したような物語の成り行きに、強く惹きつけられるときがある。ドイツ在住の長い、言語学的なテイストの入った、不思議な作品を書く人、という感じで、ついつい何作も読んでしまう。この作品は3部作である「地球にちりばめられて」の次、「太陽諸島」の前の中巻。

    Hirukoはかつて中国大陸とポリネシアとの間にある列島から留学してきた女性。しかし帰国直前に母

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    2026年06月11日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

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    ネタバレ

    初読。ベルリンの街を散歩するエッセイなのかと思いきや違った。散歩しながらあちこちに思索を飛ばして、たぐり寄せて、つなげていく。今いる場所とつながりのある、でも知らない世界に迷い込み、言葉と戯れ、誰かと出会ったようで、誰とも出会わず、染みだしてくる過去とふれあい、別れる。こんな散歩がしてみたい。

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    2026年06月08日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    ネタバレ

    初読。意図的に隠されていた情報が少しずつ読者に手渡されていき、物語の骨格を組み立てていく楽しさを与えてもらえた。ソ連とドイツの関係とか、人間と動物の関係とか、言語と非言語の関係とかの要素が巧みに織り込まれていき、ふと歩みを止めてしまうのも素敵な読書体験だ。少し寝かせてもう一度(あるいは何度でも)読み直したい。

    文芸誌『GOAT』創刊号「愛」の「私のGOAT本」コラムで上白石萌音さんが熱を込めて紹介していたのに、釣られた。誰かに買ってきてもらって帯と表紙カバーを外して渡して貰えとの指示だったが、お願いできる人がいない私は、自分で買って極力前情報が入らないようにして読んだ。おかげで目論見通りの結

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    2026年05月27日
  • 太陽諸島

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    ネタバレ

    初読。『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』の続編。皆で海に出て船旅ををする。どの国もどの人も海に出たがるのに、目的地にまっすぐには進めず、遠回りすることになる。しみじみ地図を眺めるとバルト海の不思議さが味わえる。

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    2026年04月30日
  • 研修生

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    日本とドイツ、学生と社会人。文化のはざまに生きて、その違いに気づき、表現する。きっと若いころ、私も、本書の主人公のようにいろんな発見をして驚き傷つき、生きていたんだろう。

    でも、こうしたことをやっと言語化できるようになったとき、たいていの人は今度は文化の違いに驚きも傷つきもしなくなっていて、今度は言語化の必要もなくなっていく。だから、本書のように、はざまを細かくみずみずしく表現できるのは、きっと驚異的なことなんだと思う。

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    2026年04月15日
  • 太陽諸島

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    『地球にちりばめられて』、『星に仄めかされて』に続くシリーズ最終巻。今回の御一行はコペンハーゲンから日本を目指し、船に乗ってバルト海を東へ向かう(そんな航路では日本へはたどり着かないのだが、なぜかそういうことになっている)。旅の中で色々と謎の人々が登場し、物語はますます不可思議な方向に。これ、本当にこれで完結?

    三部作を通して、つかめるところが沢山あるのに全体としてはつかみどころのないような、妙な読書体験だった。

    登場人物たちは癖の強いキャラクターばかりで、傍にいるようなリアリティがある。一方で、それぞれ「自分語り」が挿入されているにもかかわらず、全体としては何を考えているのか分からない。

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    2026年03月20日
  • 献灯使

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    物語の日本はどんな世界なのだろうと
    不思議な気持ちで読み進めていました

     老人がとても元気
     子供たちは虚弱 精神は老成している
     鎖国政策をとる日本
     民営化される政府
     ありがとう の言葉が死語になっている

    仮設住宅や汚染という言葉から
    どうやら大災害後の日本で社会の仕組みや価値観が
    大きく変革したらしいことがわかってきます

    日本の今の社会に見え隠れしている不穏さに
    得体の知れない漠然とした不安を
    抱くことがあるけれど
    物語の世界に触れたことで不穏さの輪郭がくっきり見えてきました

    今 自分が馴染んでいる価値観や世の中が
    本当に正しいの?
    それで良いの?
    このままで良いの?

    真っ直

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    2026年03月20日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

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    多和田葉子さんの本は初めて読みましたが、まず駄洒落ともとれるような言葉遊びに富んだ文体が独特でとても自分の感性にハマった。

    ストーリーらしいストーリーはなく、ベルリンの街並みを散歩し、街中で見かけたものや人に着想を得た小話が続々と展開される。
    いずれにしてもその発想力には驚く。

    後半に進むにつれ、言葉遊びは減り、過去の戦争の話などシリアスなテーマへ移っていく。
    そこでも皮肉に満ちた切り口で作者の思想が表現されていて、興味深い。

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    2026年02月26日
  • 研修生

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    著者自身と思われる若い日本人女性が、西ドイツのハンブルクにある書籍取次会社で「研修生」として働く日常が淡々と描かれている。

    大きな起伏も、回収すべき伏線も、ましてや劇的な結末もない滞在記(しかも500ページ超)なのに、なぜページを捲る手が止まらず、読み終わってしまうことをこんなに惜しむのか、よく理解できない。

    ひとつあるとすれば、1980年代というインターネットもSNSもなかった時代に異国に身を置き、異なる言語、異なる文化にどっぷり浸かる体感や、それが及ぼす心身の変化がリアルに感じられるからかもしれない。

    著者が病的に「小説を書きたい」と思い立つ場面はグッとくる。

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    2026年02月13日
  • 地球にちりばめられて

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    ネタバレ

     多和田葉子を初めて読む。
     言葉はこんなにも存在に食い込んでいるのか。
     自己の存在を考えるとき、恋愛や記憶、国家や生まれた土地が脳裏によぎるが、この作品にはそれらよりも色濃く、言語という明瞭なテーマがある。
     正直、こんなに簡単に出来事が展開してよいのか?という思いはある。
     ただ、以下に述べる内容は小説世界を純粋な表現空間に仕立て上げている。たどたどしい会話、人物の精神に深入りしない淡々とした一人称の文。関心に従って、あるいは成り行きに従った即時的な展開。その中で、移動に向かうことで前向きに保たれるゆるやかな連帯。近代的な1つの完成を目指すのではなく、その時々を一緒に生きる。健全な現代の

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    2026年02月11日
  • 研修生

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    外国との文化の違いを改めて知る。
    家に招くことが、こんなに気軽でカジュアル?
    マグダレーナへの感情は友情?恋愛?
    映画などでとてもよく耳にする、洒脱な会話。特に残っているのが、妊婦さんがお腹の子供、まだ名前は決まってないんだけど、将来の職業はサッカー選手、なぜならとてもよくお腹を蹴るから、というせりふ。

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    2026年02月05日
  • ポケットマスターピース01 カフカ

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    私にとって文学は、自分の感受性を鍛えてくれるもの。
    一読するだけでは説明の列挙でつまらないと感じてしまうが、解説や他者の感想を読むと、現実社会とのメタファーに気付けたり、「そういう意味だったのか」「この文章を読んでそういう風に感じる人がいるのか」と、自分の発想に無いもので予想もしていない角度から殴られる感覚が気持ちいい。

    この本は年齢や立場、読む時の自分の心情、誰に感情移入するか等で印象がガラッと変わる作品。
    読み手が「虫」を「病気」「無職」「介護」「鬱」「依存」...何に置き換えるか。

    物語の根幹である「虫」について「どんな虫なのか」「どうして虫になってしまったのか」あえて説明しないこと

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    2026年02月01日
  • 研修生

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    ネタバレ

    1980年代、22歳で単身ドイツに渡り研修生として働く主人公。私自身も(時代は10年ほど後だが)似た経験があるため、彼女の寂しさや悔しさに強く共感した。淡々とした語り口ながら、ページをめくる手が止まらない。92ページに描かれるレートケさんのさりげない優しさには胸が熱くなった。手紙でのやり取りやトラベラーズチェック、生魚の日本食に抵抗感を示される時代背景も懐かしい。異国で暮らす中で生まれる微妙な違和感が的確に描かれ、マグダレーナに苛立ちを覚えつつも、最後まで一気に読んだ。

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    2026年01月24日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    難解でうまく入り込めず挫折してたけど、久々に最初から読み返したら面白くて一気に読んだ。前回はタイミングが合わなかったのか、初読だから内容が入ってこなかったのか?たぶん曖昧さや余韻を楽しむ作品。

    不思議な構成で最初は混乱。できるだけ前提知識は抜きで読むのがおすすめ!というコメントを見て読んだけど、曖昧さに耐えながら読み進めていくような感じ。哲学っぽいことや歴史とか社会問題が読みやすく落とし込まれているような。よくわからないなりに★5寄りの★4。

    疑問点も多くいつか読み返したい。たとえば第3章のミヒャエルは幽霊だったってこと?とか。すぐに出てこないけど他にも色々。


    解説の最後の一文でしっか

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    2026年01月11日
  • 地球にちりばめられて

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    ネタバレ

    おもしろかった!!何の伏線も回収しないまま自由に終わっていったと思ったら続編もあるのね!
    多和田さんの他の作品をもっと読んでみたくなった。

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    2025年12月30日
  • 研修生

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     500ページを越えるぶ厚い本を手に取り表紙をめくる。2段組みでないことに少し安堵の気持ちをおぼえ読み始めた。文章は平易な表現で、読みやすいリズム感がある。比喩の巧みさも含め、若いころに読んでいた開高健さんを思い出した。
     
     主人公はドイツの出版取次会社に研修生として働き、公私を含めた日常を淡々と書き綴っていく。我々の生活に時間の区切りがないことと同様に、全編章立てもなく書き綴られる。淡々と、連綿と。
     研修生として転々と業務が変わる様子、職場ごとの人間関係、帰宅すると現れる友人たちや家主さんたちとの関係。人間の内側を伺いながら同じような日常が繰り返し描写されていく。同じような日常の中で気づ

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    2025年12月27日
  • 研修生

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    ドイツハンブルクで研修生としてアルバイトのような立ち位置で働く主人公の日々の記録.日記のような,そして最後が最初につながる小説のような自伝風物語.仕事の内容も,異国での交友,文化の違いや部屋を借りるといった生活のさまざまなことが丁寧に書かれていて面白かった.
    そして何より小説を書きたいという気持ちが息苦しいほどに感じられた.

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    2025年12月26日