多和田葉子のレビュー一覧
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◼️ 多和田葉子「星に仄めかされて」
不思議と謎への興味と、人間。やはりアプローチが独特で、惹かれる作家さん。
多和田葉子はさっぱり分かんないこともあるし、根っこのところが賛同できないな、と思った過去もある。でも多くの要素からなる、知性と無邪気さが融合したような物語の成り行きに、強く惹きつけられるときがある。ドイツ在住の長い、言語学的なテイストの入った、不思議な作品を書く人、という感じで、ついつい何作も読んでしまう。この作品は3部作である「地球にちりばめられて」の次、「太陽諸島」の前の中巻。
Hirukoはかつて中国大陸とポリネシアとの間にある列島から留学してきた女性。しかし帰国直前に母 -
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ネタバレ初読。意図的に隠されていた情報が少しずつ読者に手渡されていき、物語の骨格を組み立てていく楽しさを与えてもらえた。ソ連とドイツの関係とか、人間と動物の関係とか、言語と非言語の関係とかの要素が巧みに織り込まれていき、ふと歩みを止めてしまうのも素敵な読書体験だ。少し寝かせてもう一度(あるいは何度でも)読み直したい。
文芸誌『GOAT』創刊号「愛」の「私のGOAT本」コラムで上白石萌音さんが熱を込めて紹介していたのに、釣られた。誰かに買ってきてもらって帯と表紙カバーを外して渡して貰えとの指示だったが、お願いできる人がいない私は、自分で買って極力前情報が入らないようにして読んだ。おかげで目論見通りの結 -
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『地球にちりばめられて』、『星に仄めかされて』に続くシリーズ最終巻。今回の御一行はコペンハーゲンから日本を目指し、船に乗ってバルト海を東へ向かう(そんな航路では日本へはたどり着かないのだが、なぜかそういうことになっている)。旅の中で色々と謎の人々が登場し、物語はますます不可思議な方向に。これ、本当にこれで完結?
三部作を通して、つかめるところが沢山あるのに全体としてはつかみどころのないような、妙な読書体験だった。
登場人物たちは癖の強いキャラクターばかりで、傍にいるようなリアリティがある。一方で、それぞれ「自分語り」が挿入されているにもかかわらず、全体としては何を考えているのか分からない。 -
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物語の日本はどんな世界なのだろうと
不思議な気持ちで読み進めていました
老人がとても元気
子供たちは虚弱 精神は老成している
鎖国政策をとる日本
民営化される政府
ありがとう の言葉が死語になっている
仮設住宅や汚染という言葉から
どうやら大災害後の日本で社会の仕組みや価値観が
大きく変革したらしいことがわかってきます
日本の今の社会に見え隠れしている不穏さに
得体の知れない漠然とした不安を
抱くことがあるけれど
物語の世界に触れたことで不穏さの輪郭がくっきり見えてきました
今 自分が馴染んでいる価値観や世の中が
本当に正しいの?
それで良いの?
このままで良いの?
真っ直 -
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著者自身と思われる若い日本人女性が、西ドイツのハンブルクにある書籍取次会社で「研修生」として働く日常が淡々と描かれている。
大きな起伏も、回収すべき伏線も、ましてや劇的な結末もない滞在記(しかも500ページ超)なのに、なぜページを捲る手が止まらず、読み終わってしまうことをこんなに惜しむのか、よく理解できない。
ひとつあるとすれば、1980年代というインターネットもSNSもなかった時代に異国に身を置き、異なる言語、異なる文化にどっぷり浸かる体感や、それが及ぼす心身の変化がリアルに感じられるからかもしれない。
著者が病的に「小説を書きたい」と思い立つ場面はグッとくる。 -
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ネタバレ多和田葉子を初めて読む。
言葉はこんなにも存在に食い込んでいるのか。
自己の存在を考えるとき、恋愛や記憶、国家や生まれた土地が脳裏によぎるが、この作品にはそれらよりも色濃く、言語という明瞭なテーマがある。
正直、こんなに簡単に出来事が展開してよいのか?という思いはある。
ただ、以下に述べる内容は小説世界を純粋な表現空間に仕立て上げている。たどたどしい会話、人物の精神に深入りしない淡々とした一人称の文。関心に従って、あるいは成り行きに従った即時的な展開。その中で、移動に向かうことで前向きに保たれるゆるやかな連帯。近代的な1つの完成を目指すのではなく、その時々を一緒に生きる。健全な現代の -
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私にとって文学は、自分の感受性を鍛えてくれるもの。
一読するだけでは説明の列挙でつまらないと感じてしまうが、解説や他者の感想を読むと、現実社会とのメタファーに気付けたり、「そういう意味だったのか」「この文章を読んでそういう風に感じる人がいるのか」と、自分の発想に無いもので予想もしていない角度から殴られる感覚が気持ちいい。
この本は年齢や立場、読む時の自分の心情、誰に感情移入するか等で印象がガラッと変わる作品。
読み手が「虫」を「病気」「無職」「介護」「鬱」「依存」...何に置き換えるか。
物語の根幹である「虫」について「どんな虫なのか」「どうして虫になってしまったのか」あえて説明しないこと -
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難解でうまく入り込めず挫折してたけど、久々に最初から読み返したら面白くて一気に読んだ。前回はタイミングが合わなかったのか、初読だから内容が入ってこなかったのか?たぶん曖昧さや余韻を楽しむ作品。
不思議な構成で最初は混乱。できるだけ前提知識は抜きで読むのがおすすめ!というコメントを見て読んだけど、曖昧さに耐えながら読み進めていくような感じ。哲学っぽいことや歴史とか社会問題が読みやすく落とし込まれているような。よくわからないなりに★5寄りの★4。
疑問点も多くいつか読み返したい。たとえば第3章のミヒャエルは幽霊だったってこと?とか。すぐに出てこないけど他にも色々。
解説の最後の一文でしっか -
Posted by ブクログ
500ページを越えるぶ厚い本を手に取り表紙をめくる。2段組みでないことに少し安堵の気持ちをおぼえ読み始めた。文章は平易な表現で、読みやすいリズム感がある。比喩の巧みさも含め、若いころに読んでいた開高健さんを思い出した。
主人公はドイツの出版取次会社に研修生として働き、公私を含めた日常を淡々と書き綴っていく。我々の生活に時間の区切りがないことと同様に、全編章立てもなく書き綴られる。淡々と、連綿と。
研修生として転々と業務が変わる様子、職場ごとの人間関係、帰宅すると現れる友人たちや家主さんたちとの関係。人間の内側を伺いながら同じような日常が繰り返し描写されていく。同じような日常の中で気づ