あらすじ
世界文学の旗手が紡ぐ、初の連作長篇三部作、完結!
響きあう言葉とともに地球を旅する仲間たちの行方は――。
国境を越えて人と人をつなぐ、新しい時代の神話
ヨーロッパで移民として生きるため、自家製の言語「パンスカ」をつくり出したHirukoは、
消えてしまった故郷の島国を探して、仲間たちと共に船の旅に出る。
一行を乗せた船はコペンハーゲンからバルト海を東へ進むが、
沿岸の港町では次々と謎めいた人物が乗り込んできて――。
言葉で結びついた仲間たちの、時空を超えた出会いと冒険を描く、多和田葉子の新たな代表作。
『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』に続くサーガ、ついに完結!
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Posted by ブクログ
初読。『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』の続編。皆で海に出て船旅ををする。どの国もどの人も海に出たがるのに、目的地にまっすぐには進めず、遠回りすることになる。しみじみ地図を眺めるとバルト海の不思議さが味わえる。
Posted by ブクログ
『地球にちりばめられて』、『星に仄めかされて』に続くシリーズ最終巻。今回の御一行はコペンハーゲンから日本を目指し、船に乗ってバルト海を東へ向かう(そんな航路では日本へはたどり着かないのだが、なぜかそういうことになっている)。旅の中で色々と謎の人々が登場し、物語はますます不可思議な方向に。これ、本当にこれで完結?
三部作を通して、つかめるところが沢山あるのに全体としてはつかみどころのないような、妙な読書体験だった。
登場人物たちは癖の強いキャラクターばかりで、傍にいるようなリアリティがある。一方で、それぞれ「自分語り」が挿入されているにもかかわらず、全体としては何を考えているのか分からない。語られるエピソードには様々な寓意や風刺が込められているようにも見えるのだが、強く主張はしてこない(言語、異文化、歴史、環境問題、ジェンダーなど、色々な問題を考える機会を与えてくれるのは確かだ)。そして、ストーリー上、大小様々な謎が埋め込まれているのだが、明確な答えもない。
しかし、このすっきりしない感じこそが、実はそのまま人間の現実ではないか。荒唐無稽ともいえるこの物語に、妙な安心感を感じてしまうのは、これがデフォルメされた「日常」だからなのかもしれない。
Posted by ブクログ
言語も国籍も性別も混ぜこぜで海をゆく一行の旅の終わり。
…かと思いきや、次(?)は西から行く!ということで旅は続く。完結しなかったけれど好きな終わりです。
シベリア鉄道だと端まで行き着いてしまう、でも船なら先延ばしできる…という感覚に切なくなりました。
日本がどうなったかは仮説が語られてました。これも強烈。
死者と生者も入り乱れてくるのが面白かったです。
不勉強で誰だかわかりませんでしたが、文学史的に重要な方々なのか…
海進んでるときはいいけど、確かにどこかへ上陸しようとしたらビザ要る、と思いました。
難民って、渡航ビザどうやって取るんだろう…ググったら「難民旅行申請書」というのが日本にはありましたが外国はどうだろう?
そう思うと、EU圏内移動自由なシェンゲン協定はすごい。日本のパスポートはかなり強いらしいです
Posted by ブクログ
◼️多和田葉子「太陽諸島」
三部作の完結船旅編。って完結してまう?続編をぜひ〜涙
「地球にちりばめられて」「星に仄めかされて」に続くHiruko主人公もの。前作でついにSusanooが意外な本性を表し、Hirukoらと故郷への船旅に出る、という本編最大の謎へと向かう未来への期待を残した。一緒に旅するのはデンマークに留学中の言語学者の卵クヌート、女性へ性の引越し中のインド人アカッシュ、グリーンランドのエスキモー出身ナヌーク、ナヌークに思いを寄せるドイツ人女性ノラといったにぎやかで出自も言語もさまざまな仲間たち。
途中で、これは行き着かないな、と思った。船はバルト海を突き当たりのサンテトペテルブルクへ向かう。Hirukoは陸路で行こうとするが、ロシアのビザを持っておらず不可能、スエズ運河も通れず、アフリカを回る航路で行こうにも危険がつきまとうという。この世界は留学中に故国が消滅してしまったり、戦争中であることを匂わせたりといった特殊な世界のようだ。
これまでと同じように視点が変わるモノローグの章が連なる。意外な?必然的な?恋の進展もある。けども、歴史や国家間の関係を論じたり、英語、ドイツ語、Hirukoが作ったスカンジナビアの共通語パンスカで噛み合うような合わないような会話が交わされる。
Susanooはその名のごとく傲岸で荒い。Hirukoに対してもなにかと、昭和風オッサン的態度の言葉でつっかかり母語の福井弁と新潟弁でやり合うシーンもあって楽しい。
最近映画「急に具合が悪くなる」を観た。その中でカンヌの最優秀女優賞を取った2人の主演、過去早稲田に留学し日本語が堪能なヴィルジニー・エフィラがフランス語で問い、フランスで活動している演出家の岡本多緒が日本語で答える、というやりとりを思い出した。多言語、言葉そのものへの興味と、国情、自分を作ってきた過去、旅の情景など、ある意味突飛な部分もあり、独特なストーリー展開。
さらに物語の彩りがさまざま、過去の作家や絵のモデルにもなったブレヒトの元恋人、さらには江戸幕府と交渉したアメリカ領事ハリスに仕えミルクなどを調達した女性・唐人お吉まで時空を超えて登場する。
HirukoとSusanooの母国の名前はずっと出てこない。どうも東日本大震災や原発の影響はほの見えるが・・でそんな中、その巻の序盤、
「その時、波がふいにジャパンと音をたてて船体を洗った」
という一文に意表を衝かれ笑わせられる。解説にも「衝撃的かつ笑撃的な一行である」と。その通り。素晴らしい。さすがやるな多和田葉子。ネタバレでごめんなさいm(* _ _)m
それにしても、意味が深そうな遊びにしても、こう連なるとすこうし・・冗長かなと。で、著者的に謎は謎のまま、というのが意図であり、テーマとは違う、ということだと思うが、やっぱり、アジアまで行ってほしいなと。このパーティーそれが目的なんだし。ちょっと物語としていけずすぎる。
粘り強く続編を待つこととしたい。
Posted by ブクログ
三部作の最後。Hirukoたちの旅が終わるのかと思ったけどそんなことはなくて。最後の方は故人も出てくるし、HirukoやSusanooの名前から日本神話の話をちょっと盛り込んだりと想像もつかない展開でした。彼らの旅がどのように続いていくかは分からないけれど、移民という立場の寄る辺なさ、国境というものの持つ意味を考えさせてくれるという点では興味深く読むことができました。「わたしたちは波と似ている。押し合いぶつかり合い、形を崩しては、また新しい形をつくり、いろいろな方向に目を向けながら、いつも揺れている。」
Posted by ブクログ
太陽諸島=日本だと思い
3作目はHirukoたちが日本の現状を知る話なのかと予想していた。
が、結局は曖昧な船旅から始まったように、
旅先さえも定まらないまま、Hirukoたちは世界をつなげる海に揺られて行った。
そもそも作中では日本という固有名詞は一度も出てきておらず、Hirukoたちの会話から推測するしかない。
目的はあるけれど、そこに辿り着けるわけじゃない。
その道程での各々の心境や感じ方を
一緒に楽しむ物語なのだろうと思った。
海外や異文化と聞くと
まるで見えない膜のような隔たりが存在しており、
私たちの日常とは交わらない遠くの話かのように感じられるが、当たり前のように自身の価値観を交換し合う彼らを見ていると他国の人も私も同じ人間、それだけでいいんだと思わせてくれる。