多和田葉子のレビュー一覧
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日本人としてドイツに移住し、日本語とドイツ語の両方で創作活動を続ける作家、多和田葉子が自身の母語から出るという行為―エクソフォニーーについて、自身の経験や思索をまとめた論考集。
とはいっても、エッセイのような文体で書かれており、内容は重苦しくない。文学の世界では母語を用いずに創作した作家の多くは、政治的な亡命により異国に渡ったことが理由になっているケースが多い(ロシアからアメリカに亡命し、英語で創作を行ったナボコフのように)。一方、多和田葉子はそうした先例とは異なり、自身の明確な意思によってドイツへの移住を選び、ドイツ語での創作を行っている。このような創作活動を行っている日本人作家は極めて稀有であり、日本人が母語の外に出て創作活動を行うにあたって、どのようなことが考えられているのかが本書では明確に知ることができる。
異なる言語の関係性を考える上で良質な一冊。 -
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面白かったです。
ドイツの様々な通りを散歩しながら、あの人のことを考えたり、不思議な人たちに出会ったり、歴史的な物事に接したり。
言葉遊びも豊かでした。ドイツ語がいきなり出てきますが、意味も書いてありました。
なかなかおいそれと外出出来ない昨今ですが、状況が落ち着いたらわたしも色々考えたり考えなかったりする散歩に出かけたいと思いました。
ドイツの「FUTON」に「Hokkaido」という名前が付いてた、という文を見て、昔イギリスに住んでいたことのある同僚が「日本のポッキーが『Mikado』という名前で売ってた」と言ってたのを思い出しました。帝。。 -
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多和田葉子の中編集。表題の「犬婿入り」と「ペルソナ」の2作品が収録。
以前に読んだ「献灯使」が心に残ったので、芥川賞受賞作品である本書を手に取ってみた。
「犬婿入り」は芥川賞受賞作。39歳の学習塾を開いている女性を中心とした不思議な物語。
「ペルソナ」はドイツに留学している姉弟の話。姉の視点から日々の生活が描かれ、外国で日本人として暮らす姉の心情風景が描き出される。
「犬婿入り」は、芥川賞受賞作らしく、非常に難解であった。実際に犬が婿にくるような話なのであるが、それがエロティックというか、気持ち悪いというか、心にざわざわ感が残るというか、何とも読後の印象の不思議な物語だった。
「ペルソナ」も理解するのが、非常に難しかった。移民の多いドイツであるが、日本人や韓国人などの「東アジア人」はドイツ人や他の移民達から何となく差別を受けている。例えば、「東アジア人は表情がなく、本当の気持ちを顔に出すことは無い」などといった、差別とは言えないほどの些細なものだ。
おおっぴらに差別はされないが、誰もが心の中に壁を作り、それぞれの人たちが持つ「東アジア人」に対するステレオタイプを押しつける、あるいはそのように接してくる。
この微妙な空気のなかで息が詰まりそうになりながら主人公である道子の心情を、独特な筆力で筆者は描き出す。この心情は道子と同じくドイツで暮らす筆者の心情にも通じているのだろう。 -
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バラエティに富んだ5作品を収録した作品集。
「枕木」は何と言っていいのか感想に困ってしまうが、絶えず焦点をずらされ横滑りしていくような感覚。
「雲を拾う女」何なの?哺乳ビンの乳首になってしまう(わたし)。火を吹き、鏡に映らないコウモリと呼ばれる女。寓話や幻想とは違う。あまりにも輪郭がはっきりとし過ぎていて。意味とか脈絡とかそんなのよく分からないままに、ひたすら読まされてしまう。
「ヒナギクのお茶の場合」語の反復とか文体のリズムとか、読んでいて楽しい作品。友人ハンナへの語り手の好感が滲んでいる。
「所有者のパスワード」多和田さんにこんな作品あるんだ、と意外性に驚く。ラノベの恋愛モノ読んでコマ割りまで脳内で漫画に変換したり、難しい漢字の意味も分からず字面に官能性を感じたりする語り手。パロディーというか遊び心を感じる作品。 -
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実に難解な小説である。タイトルの『変身のためのオピウム』からして意味不明だ。オピウムはアヘンや麻薬のことであり、マルクスの『ヘーゲル法哲学批判序説』の中の言葉「宗教は民衆のためのオピウムである」からとられているのは明白。しかし、そうだからといって何が分るといういうものでもない。スタイルは一見したところは長編小説だ。しかし、物語全体を貫流するプロットは、これまたあるような無いようなだ。表現のところどころはシュール・レアリスムを想わせるのだが、シュールではない。しいて言えば西脇の「旅人かへらず」に似ているか。
この小説はけっして観念的な意味で難解なのではない。ひとえに小説作法のあり方において難解なのだ。従来のどのような範疇にも入らない。 -
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ドイツのとある修道院の尼僧たちの生活を描いた小説です。ここに登場する修道女たちは一般的なイメージと異なり、あまりに世俗的でした。プロテスタントの修道院ということが、理由のひとつなのかもしれません。カトリックだと、その暮らしぶりはもっと厳格なのでしょうネ。この小説は二部構成になっていますが、本来その構想はなかったようです。でも、この物語は二部があってこそ、登場人物ひとりひとりの個性が際立ってくるような気がしました。二部では駆け落ちして修道院を去った、元尼僧院長の過去が語られます。しかしながらそれは、タイトルから連想されるようなロマンチックなものではありません。ここにはひとりの女性の半生が、切々と綴られているのです。ひとは自分の居場所を求めながら生きているのかもしれません。でも、ほんとうに落ち着ける場所って、土の下なのかもしれませんネッ。