多和田葉子のレビュー一覧

  • 星に仄めかされて

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    長編三部作の第二弾。Susanooは言葉を取り戻せるのか、HirukoはSusanooと言葉を分かち合えるのか。淡い恋心のようなものが複雑に絡み、アイデンティティがゆらぐ。日本という島国にいると、国をまたぐことがあえてわざわざ国を越えることを意味するが、欧州における国から国への移動というのは、電車や車やバイク、飛行機、あるいは徒歩で割と気軽に気楽に越えられるものだ。だからといって、思想や言葉までは軽々と越えられない。だから面白いんだけど、時と場合によってはやっかいだなとも思える。

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    2025年02月23日
  • 犬婿入り

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    『ペルソナ(能面)』
    ドイツに住む日本人である姉弟の物語。日本人である主人公は、東アジア人と一括りにされ、ドイツ人に偏見の目で見られる。いくら活躍しても日本人というだけで、婉曲的にであるが、侮蔑的な屈辱を味わったイチロー選手やダルビッシュ選手を思い出す。主人公は他者が日本人に期待する能面を被って街へ出る。その時やっと自分自身が自由な感覚を取り戻す。強い言葉を持った一人の人間として。

    『犬婿入り』

    「異類婚姻譚」(人間以外の存在と 人間とが結婚する説話の総称)をベースに書かれている。ありえない話なのに、あれ?これ、もしかしたら犬が入ってる人間?それが信じられないくらいリアリティをもって物語が

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    2025年02月22日
  • 雪の練習生(新潮文庫)

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    シロクマ3代に渡る物語。熊なのに思索し、話し、自伝を書くのだが、違和感なくストーリーにのめり込む感じ。人に振り回され、ベルリンの壁崩壊などの世情に翻弄され、人によって囲われた世界から、外の世界を夢見る刹那さが漂う。2025.2.4

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    2025年02月04日
  • 地球にちりばめられて

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    多和田さんが紡ぎ出す物語は捉えどころがない。ファンタジーではない。SFでもない。ミステリでもサスペンスでもない。なのに、どこかその全部の要素を内包しているように思える。留学中故郷が消滅しまった女性Hirukoは日本人であることは間違いないが、本当に日本人なのだろうかと揺らぐ。不思議な縁で旅をすることになったHiruko、クヌート、アカッシュ、ノラ、ナヌーク、Susanoo。それぞれの語り口で語られる彼ら彼女らの事情。彼らはどこにむかおうとしているのだろうか。

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    2025年01月19日
  • 献灯使

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    ネタバレ

    現代SFというのかな? 大災厄に見舞われ鎖国に舵を切った日本。老人は死ねない、若者は病弱で長生きできない、東京は汚染されているという世界での老人と曾孫の話が『遣唐使』。現実と虚構の狭間にある分、どうしても説明的に感じるけれど嫌味はない。『韋駄天どこまでも』のように漢字を分解して語るのは翻訳するとどうなるの?と考えると日本人だから楽しめる特別感もあった。世界観は他にないんだけれど、私の場合把握するのに気を取られ置いて行かれる感じがあって、そこまで素敵!好き!とはならなかった。

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    2024年12月27日
  • 地球にちりばめられて

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    日本がなくなった世界でhiruko という女性が日本人を探す。書かれているのは日本語だが、パンスカという独自の言語が出てきたり、アカッシュはインド人、ナヌークはエスキモーだったりとみんな個性豊か。

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    2024年12月11日
  • 地球にちりばめられて

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    初読作家さん。
    文庫の装丁に惹かれて読んでみた。

    日本と思しき国(鮨の国とかの表記)が消滅して、国に帰れなくなった留学生の話が根幹。
    この設定は面白かった。
    クヌートのお母さんが怖すぎたw

    最終的にどこへ向かうんだ?と思うと、ちょっと迷子になってしまった。
    調べてみると、続編があるようです。

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    2024年12月06日
  • 星に仄めかされて

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    訳ありの6人プラス3人
    それぞれが自分のために動き
    言語をこえて、国をこえて
    仲がいいのか悪いのか?
    3部作の2作目

    消えてしまった島国、多分日本がどんな風に
    消えたのかが気になって
    いろんな意味が
    ちりばめられているとは思うけれど
    頭に入ってこない
    1作目同様一読では難しい
    でも、続きは気になる!

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    2024年11月28日
  • 地球にちりばめられて

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    留学中に故郷の島国が消滅。独自の言語をつくり、同じ母語を話すものを探す
    島国、それは多分日本であって、しかもなにか
    ちぐはぐなことになってしまった島国
    演劇的な小説と解説で言っていて、地理と言語で満ちて、人と人が繋がりいつしか集合していく
    ちょっと不思議で、一読ではわからない



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    2024年11月24日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

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    この物語はなんなのだろう。読んでいる最中も、読み終わっても、なんだかよくわからないものを読んでしまった気持ちがある。エッセイのようで、でも、物語のようで、そもそも「わたし」と「あの人」の関係性もそもそもの性別すらわからない。そこかしこに潜んでいる歴史の残骸、遺物、遺構。「わたし」の思考が浮遊しているようにも思えるし、いやいや、実際に通りを歩いて目に移ったものを片っ端から夢想して、妄想して、思考が四散していっただけだ。と思う瞬間もある。

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    2024年10月30日
  • 犬婿入り

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    「ペルソナ」
    日本に生まれて日本で生活し、日本語で育ち日本語で生活していては感じることが難しい感覚を味あわせてくれます。ドイツの都市で留学生として生活する主人公の道子の視点で、ドイツでの文化的差異における差別や、日本を離れて自国の文化や言葉とのつながりが途絶えている状態の内面が描かれていると思いました。
    不安感や焦燥感を感じながら落ち着かない気持ちで読んでいました。

    「犬婿入り」
    犬婿入りの話は昔話として日本だけではなく、アジアのいろいろな地域でいろいろな形で広がっているそうで、そういった話をモチーフに作者独自の話が紡がれていきます。
    多摩川べりの町の学習塾の先生みつこと犬男との奇妙な生活は

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    2024年10月20日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    純文学作家の発想
     ひとつづつ評していく。

     川上弘美。未来SF。
     発想が陳腐だと思ふ。書きたいことを意識的に書いてはゐるが、予定調和的で凡庸から突き抜けない。
     人間由来の人間を工場で作らず、多様な動物由来の人間どうしが結婚し合ふ未来観(近親交配によるホモ接合型を減らすためだらう)。そこでの恋愛。
     厳密にいへば、人間と他種ではゲノムの相補性が少ないからありえない。遺伝子組換かもしれない。まあそこは目をつむることにしても妙だ。
     未来でも入籍といふ制度は残ってゐる。人間に本能の性欲が残ってゐるんだらうけど。結婚しない人や、核家族がどうなったかも書いてない。
     妙にSFが現実路線のわりには

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    2024年10月10日
  • 球形時間

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    「男の顔には、怒りの予兆のエラが立っている。プラットホームで化粧するな、とその顔に書いてある。」
    冒頭のこのセリフは「令和」の「若い男性」である私には2重の意味で新鮮である。ナンパ、キャッチ、ぶつかり、これらは私に無縁のものだ。何なら、ティッシュ配りのバイトさんや道に迷った人もなかなか私をターゲットにはしない。少なくとも私なら、私は選ばないだろう。そんな人生を歩んできたので、女性のこういう体験は新鮮に映る。それに加えて、本小説は2002年に出版されている。まだ物心ついて間もない、私が知らない時代の話である。この頃はまだ、都会の他人同士が少なくとも今よりは関わり合っていた時代、というと大袈裟なの

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    2024年09月27日
  • 献灯使

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    ★3.5。
    恥ずかしながらこの作家の本を初めて読みました。
    原発がこれほどまでに種をまいたかと思うほど、異様とも言える世界が繰り広げられます。
    でも原発の話になると行きつくところ、今の生活をどうしますか?と問いにたどり着き、この作家も例外ではなく。
    原発そのものが矛盾に満ちた人類そのものの縮図だからかなぁ。

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    2024年09月08日
  • 百年の散歩(新潮文庫)

    購入済み

    エッセイのような小説のような不思議な感覚。10遍収められていますが、前半は街の描写や言葉遊びなどが多く楽しく読めるのですが、後半になるにつれてどんどん空想的になっていき、言葉遊びなどもしなくなっていく。一つ一つを独立した短編としてでなく全体として捉えたらまた違ったものが見えてくるのかな。

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    2024年08月17日
  • パウル・ツェランと中国の天使

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    多和田葉子の小説かと思っていたら翻訳であった。パウル・ツェラン自体があまり日本では知られていない。詩集がもっとメジャーになってくれたらわかりやすい。註が多く、さらにツェランについての説明も丁寧であったので、ツェランについて知るには簡易な本であると思える。

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    2024年02月14日
  • 白鶴亮翅

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    不思議な印象の小説だった。
    手に取ったのは、タイトルが目についたから。なんと白鶴亮翅といえば太極拳の技の一つ。なんで、そんなタイトルなのか。1年ほど前から太極拳を始めた者としては、見過ごせないではないか!

    主人公はベルリンで翻訳家として一人暮らしをする女性、美砂。隣人の男性Mさんに誘われて太極拳の学校へ通い始めた美砂は、そこでさまざまルーツをもつ女性たちと知り合いになり、関係性を深めていく。
    関係性を深める、と書いたが、べったりとしたものではない。むしろ淡く、時にすれ違うような関係性である。彼女たちと交流するなかで、美砂は自らについても顧みていく。

    登場する女性は、皆、何らかの過去がある。

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    2024年02月14日
  • 献灯使

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    多和田葉子さんは「地球にちりばめられて」を読んで世界観に圧倒されたのだけど、これも凄い世界観だった。
    震災以後の日本のようで日本でない。でもいつか有り得るかもしれない日本。

    「献灯使」はまだブラックユーモアにニヤつきながら読んでたんだけど、それ以外の4篇を読み進めるうちに気持ちが沈んでしまった。特に「彼岸」。

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    2023年11月26日
  • 地球にちりばめられて

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    多和田葉子さんのエッセイを読んだあとにこちらを読んだので、書いてある内容が入ってきやすかった気がする。
    前半はゆったりと言葉の面白さに身を任せられたのだけど、最後が怒涛の展開であまりついていけなかった。

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    2025年08月16日
  • パウル・ツェランと中国の天使

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    多和田葉子が独語で執筆したものを翻訳したもの。巻末の訳注は50P弱にもおよぶ。よって本文は難解。ツェランの詩を知らないので、ぼんやりとしたことしかわからない。それでも言葉や言語に対する並々ならぬこだわりを感じる。何よりユーモラスなところがやはり大好きな作家だ。

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    2023年08月08日