多和田葉子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ太陽諸島=日本だと思い
3作目はHirukoたちが日本の現状を知る話なのかと予想していた。
が、結局は曖昧な船旅から始まったように、
旅先さえも定まらないまま、Hirukoたちは世界をつなげる海に揺られて行った。
そもそも作中では日本という固有名詞は一度も出てきておらず、Hirukoたちの会話から推測するしかない。
目的はあるけれど、そこに辿り着けるわけじゃない。
その道程での各々の心境や感じ方を
一緒に楽しむ物語なのだろうと思った。
海外や異文化と聞くと
まるで見えない膜のような隔たりが存在しており、
私たちの日常とは交わらない遠くの話かのように感じられるが、当たり前のように自身の価値観 -
Posted by ブクログ
多和田葉子さん初読です。ドイツに住みながら日本語・独語で小説を執筆し、国内外多くの文学賞を受賞する国際的に評価の高い作家さんです。本作は2014年刊行で、表題作(2018年全米図書賞)の中編+短編4篇を収録。
『献灯使』は、原発事故による環境汚染禍の日本をモチーフにしていることは明らかですが、歪な世界観や設定をはじめ、希望と危うさ・絶望が混在したような終末に困惑しながら、自分の解釈を確定しきれない印象をもちました。一方、多言語に精通する著者ならではの言葉へのこだわりは、国や言語の境界を軽々と越えている感がありました。
原発事故後、鎖国しディストピア化した日本。老人は超長寿、子供は虚弱 -
Posted by ブクログ
ネタバレ私小説風味の日常
父の勧めもあり、ドイツへ渡り書籍の取り扱いを行う会社へ研修生として出向いた主人公の女性。
様々な課を転々としながら半年ほど?の研修期間を、日々の徒然とともに描かれた作品。
東西ドイツが分断されている時代を背景に日々のことを描いている。時折挟まれる「その後」の話、例えば、部屋を貸してくれた友人は闘病生活を送ることになる、などの悲劇的であり日常的に起こりうる寂しさをいきなり放り込んでくる。
全体は暗めの質感、パブ「たまねぎ」も登場人物たちの空気の読まなさ加減もドイツならよくあることなのかも、と思いながら読み進めていく。そのため核心をついたような発言も鼻持ちならないというよりか -
Posted by ブクログ
留学中に祖国(おそらく日本)が消滅し、帰る場所を失った女性Hirukoが、独自に生み出した言語パンスカを操りながら旅先で出会った仲間と共に母国の言語を話す人を探す旅に出る。
言葉が通じないことの恐怖と通じない故の自由さ、両方が見えた気がする。
入り口はSFだったのに、読み進めると「文化とは?」「言語とは?」と哲学の深みに連れて行かれたような…言葉の意味や自分はどこまで自分なのか?なんて普段は考えもしない方向に舵を切られて読みながら沸騰しそうだった。
派手な未来描写はないのに、“今ある世界の延長かもしれない世界”のように見えて、読み終わってからも得体のしれない怖さがじわじわ近寄ってくるような感 -
Posted by ブクログ
ネタバレプロ向けの小説という印象の作品。
視点は面白いし、価値観を揺さぶってくる感じも悪くないが、読み終わった後の満足感はあまりない。
読んでも読まなくてもよかったなという感じ。
ペルソナ
ペルソナとは能面のことらしい。
人種や国民性についてステレオタイプな価値観を持つ人々がたくさん登場する。日本人は能面のように表情がなく感情が読めないと言われる。
道子が混乱して街を歩き回るところはカフカを想起させた。
犬婿入り
犬がお姫様の尻をなめるという「犬婿入り」という民話は本当にあるのかどうか。その話をした北村みつこの家に、何やら犬っぽい太郎という男が住み着いて犬っぽいことをする。 -
Posted by ブクログ
これはかなり読み手を選びそうな感じがした。各章は主人公の生活と女優カトリーヌ・ドヌーブが出演している映画の話が出てくるが、最終章はそういった描写はなく、映画の登場人物の名前(ダンサー・イン・ザ・ダーク)から始まるから、現実のお話なのか映画のお話なのか全くわからない(知っている人だけが気づける?)。おそらくそれを狙って書いているんだろうけども。
じゃあ予備知識なしだと何も楽しめないのかというとそうでもないと思う。それは『旅する裸の眼』は社会主義国家のベトナムからドイツやパリを移動し、時代の移り変わりによって変わった価値観(ベルリンの壁崩壊やパスポートなしで移動できるようになった欧州など)を主人 -
Posted by ブクログ
芥川賞受賞作『犬婿入り』と芥川賞候補作「ペルソナ」の2篇。
「ペルソナ」の方が個人的には好きです。作者が体験したかもしれない様々な出来事・観点みたいなものが出てくるのだけど、ドイツから見たアジアというくくりだったり、そのアジアの中でも日本が他のアジアの国々の人をどう思っているかだったり。同じアジア、もっと広く見れば同じ人間であるのに境界があるかのような(いわゆる差別的なもの)お話が興味深かった。最後は主人公が仮面(ペルソナ?)をかぶり街を練り歩くときドイツの誰も彼もが主人公を日本人として捉えなかったというのは分かりやすいオチっぽく感じるけど、好き。