彩瀬まるのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
彩瀬まるさんのご本を読むのは初めて。
3.11が近づいて来たので、ずっと気になってたこちらを読んでみた。
三章からなる構成。
福島の一人旅中に常磐線であの地震に遭遇。
たまたま隣に座っていた女性と津波が迫る中逃げるところから始まる。
一章では、あの震災に遭いながらも励まし合い助け合う人々に救われる様子が描かれていて、自然と涙が出て来てしまった。
みんな優しい。
本当に優しい。
自然災害と今の世界を揺るがす疫病とは話が違うかもだけど、今買い占めとか転売とかで揉めてるのが本当に馬鹿らしくなってしまう。
でも、二章からはやっぱり人間のどうしようもない面も描かれていて…。
愚かだし、悲しいなぁと思った。
そして、ボランティアなどで福島に再来した様子が描かれている。
そこで見聞きした情報や彩瀬さんが思ったことが書かれていて、私もあの当時本当に地震も放射能も恐いと思った事などが思い出された。
…最後に、私は極限状態でも他人に優しくできるかな?
優しくありたいな…と心の底から思った。
この本を読んだ方が、同じようにそういう気持ちになってくれれば良いな…。
そして、ここで書かれている福島県のお祭りに行ってみたいなぁと思った。
東北の他の地域もほぼ行ったことないので、私もいつか旅してみたいな。
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Posted by ブクログ
一言でこの小説を表すとすれば、哀しいホラー短編集だと、私は思う。
全6編のうち3編は死というものが前提にあって、残りの3編にもどことなく死の匂いのようなものが漂っている。
怖い中にも湿り気や情緒があって、とても日本人好みの内容だと思う。死者の念や想いの強さが、鬼や奇鳥や地縛霊に姿を変えてこの世に取り憑く。そこには人の哀しみが溢れている。
ホラー要素はほとんどない一編「眼が開くとき」がとてもエロティックで良かった。いらやしい要素や直接的な表現は全くないのだけど、とてもエロティック。だけどある意味でとても恐ろしい物語でもある。
憧れや恋心は片目瞑って相手を見ているくらいがちょうど良く長続きもするのだろうけど、何かのタイミングで両目が開いてしまう時がある。その瞬間憧れは遠のき、そこから先本物の愛に変えてゆけるかどうか…という。
全体的に、人の念を強く感じて、読んでいる最中はとても気が重かった。愛する者に対する死者の執着とか、過去の傷を忘れられない生者の苦しみとか。
突然という形で自分の命が断たれた時にもしも愛する人がいたら、自分はどうするのだろう?と考えたりもした。自分が死んだ後もその相手が幸せに生き続けてくれたらそれで良いと、立派なことが思えるだろうか。
もしかしたらこの小説の中の夜に潜む者のように、相手に執着して、一緒に死んでも良いから側に居て欲しいと願ってしまうのかもしれない。奇怪なものに形を変えてしまうくらい、愛して、狂ってしまうこともあるのかもしれない。
近頃よく読む作家さんの中で、彩瀬まるさんは特に好きだ。単純に読み物として面白いのと、読んでいて人に対する愛情というか温かみを感じるところが、とても好きだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ97
蓋をしていた汚い感情がすべて露呈した気分。
一度は思ったことがある劣等感とか人に合わせて正解の相槌をすることとか、見たくないものは見ないとことか、どうしようもない才能に嫉妬することとか、ああわかるわかるってなった。
それでも最後は、何かしら乗り越えて希望が持てるエンドでよかった。
それを読んで、わたしもなんか頑張ろうと思った。
20191229
「光る背中」がとにかく好きで、何度も何度も読み返している。イケメン商社マンに恋をして、好きになってもらいたいから偽りの自分をつくって。それでも最後に自分をさらけ出して決着をつけた君はえらい。 -
Posted by ブクログ
数行読むごとに胸が締め付けられる。
目頭が熱くなる。
鼻の奥がツンとする。
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私はこの時、地震にさえ気づかずに、電気屋でのアルバイト。
ちょうどテレビ売り場のテレビが十数台立ち並ぶ裏側で1人梱包作業をしていて、いつもはいろんなチャンネルで混ざり合った騒音がやけにクリアだなぁ〜とか思ってた。
売り場に出ると、テレビは一斉に臨時速報を流していて、すべてのテレビが同じ画面で、いつもは色とりどりなのに全画面が濁った灰色一色。それから状況はさらに悪化していっても画面はずっと灰色だったな。
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被災もしていない、原爆の恐怖も感じなかったけど、あの日の事は忘れられないし、大きな地震が来そうな土地に住んでいるから他人事とは思いたくない。
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Posted by ブクログ
窓やドアのつまみに糸を引っかけて、外から引き鍵をかける-単純で使い回されたミステリーのお約束のトリック。では、このトリックを使うと宣言してしまうのは?
5人の作家が同じトリックを使い、まったく別の物語を作り出す。
物語の中にはたくさんの密室トリックがあふれているけれど、現実の事件ではまず存在しない。手間がかかるし、成功する可能性も高くないだろう。読みながらそう思うことも多々あるし。
それを逆手に取った『似鳥鶏』の『このトリックの問題点』を始め、それぞれひねりが効いていて、とても面白かった。
一番気に入ったのが、突如部屋に出現した金の仏像と正体不明の彼女『彩瀬まる』の『神秘の彼女』。男子大学寮のわちゃわちゃ感と相まって、とても楽しく後味も爽やか。 -
Posted by ブクログ
自分という生き物とうまく付き合えなくて、自分でいることに窮屈さを覚える。
どうして自分はこんな風にしか生きられないのだろう。という自己嫌悪に陥った経験を持つ人は、持たない人よりも多く存在すると思う。
別の誰かになることは叶わない。それならばこの自分という厄介な生き物と、どう付き合っていけばいいのか。
そういった想いを抱えた登場人物たちが織り成す、5つの短編集。
美しい容姿に生まれたことを窮屈に感じている男子高校生や、女性という性に少なからず違和感を抱えながら生きてきた中年女性など、自分のコンプレックスが何であるかをはっきり認識している主人公もいれば、真面目すぎて物事をまっすぐに決め付けてしまうことを周りに疎まれながらも、自覚は出来ていない老年の男性が主人公の物語もある。
いずれにしてもどこか“上手く生きられない”人たちが主役であるところが、身近に感じてとても愛おしくなる。
5つの物語の共通点はインターネット上にある1つの掲示板のスレッドで、若い女性が立てたらしい「手が好きなので、いま起きている人の手の画像をください!」という内容のもの。
5人のうち4人の主人公はそのスレッドを偶然見つけ、ほんの一時軽く関わる。そして残りの1人は…という少しの謎も楽しめるつくり。
みんなスレッドとの関わり方はほんの浅いものなのに、不思議とその存在が心に残る。偶然見つけてふと立ち寄って書き込みをするのだけど、その内容が主人公たちの悩みやコンプレックスにとても沿っているところが興味深い。
普段悩んでいることや考えていることが無意識に現れる瞬間の小さな恐ろしさのようなものを感じた。
私はとくに「小鳥の爪先」と「マリアを愛する」が好きだった。主人公たちのコンプレックスを理解出来るせいかもしれない。
ネット上に居場所を求める人間が数多いる今の世の中。不健全だと責める人もいるかも知れないけれど、それによってどうにかバランスを保てている人も確かに存在する。
そこに血の通ったような温かさを感じることも、きっと不可能ではないのだと思う。