彩瀬まるのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ97
蓋をしていた汚い感情がすべて露呈した気分。
一度は思ったことがある劣等感とか人に合わせて正解の相槌をすることとか、見たくないものは見ないとことか、どうしようもない才能に嫉妬することとか、ああわかるわかるってなった。
それでも最後は、何かしら乗り越えて希望が持てるエンドでよかった。
それを読んで、わたしもなんか頑張ろうと思った。
20191229
「光る背中」がとにかく好きで、何度も何度も読み返している。イケメン商社マンに恋をして、好きになってもらいたいから偽りの自分をつくって。それでも最後に自分をさらけ出して決着をつけた君はえらい。 -
Posted by ブクログ
数行読むごとに胸が締め付けられる。
目頭が熱くなる。
鼻の奥がツンとする。
.
私はこの時、地震にさえ気づかずに、電気屋でのアルバイト。
ちょうどテレビ売り場のテレビが十数台立ち並ぶ裏側で1人梱包作業をしていて、いつもはいろんなチャンネルで混ざり合った騒音がやけにクリアだなぁ〜とか思ってた。
売り場に出ると、テレビは一斉に臨時速報を流していて、すべてのテレビが同じ画面で、いつもは色とりどりなのに全画面が濁った灰色一色。それから状況はさらに悪化していっても画面はずっと灰色だったな。
.
被災もしていない、原爆の恐怖も感じなかったけど、あの日の事は忘れられないし、大きな地震が来そうな土地に住ん -
Posted by ブクログ
窓やドアのつまみに糸を引っかけて、外から引き鍵をかける-単純で使い回されたミステリーのお約束のトリック。では、このトリックを使うと宣言してしまうのは?
5人の作家が同じトリックを使い、まったく別の物語を作り出す。
物語の中にはたくさんの密室トリックがあふれているけれど、現実の事件ではまず存在しない。手間がかかるし、成功する可能性も高くないだろう。読みながらそう思うことも多々あるし。
それを逆手に取った『似鳥鶏』の『このトリックの問題点』を始め、それぞれひねりが効いていて、とても面白かった。
一番気に入ったのが、突如部屋に出現した金の仏像と正体不明の彼女『彩瀬まる』の『神秘の彼女』。男子大学寮 -
Posted by ブクログ
ネタバレ連作短編のお手本のような見事な1冊。伏線回収がばっちり決まって心がすっとする。物語事態を感動する部分と別のところで、「1本とられた」的清々しさをしっかり味あわせてくれる。
ミステリーではない(そういう要素を含んだ作品もあるが)ので、伏線回収だけが上手く行っても仕方ないわけであるが、そこはそこ、1つ1つの収録作品の出来も良い。イケメンに生まれた葛藤を書く話、死んでしまった短編映画のヒロインとの葛藤を描く話、ド真面目おじさんのちょっとした再生話…。俺は特に合気道にのめり込む女性の話が好き。
合気道にはまるという設定もいいし、そこに「女性」であることを少し疑問視する主人公をたてるのもいい。合気道 -
Posted by ブクログ
ネタバレ彩瀬マジックにすっかりやられた。
彩瀬さんの静かに流れるような文章に心をぎゅっと掴まれた。
真夜中のネット掲示板上で繋がる連作短編集。
世の中はなんて儘ならないことが多いのだろう。
顔や性別、年齢等、思い通りにいかずジタバタする主人公達の短編一つ一つに共感して切なくなる。
誰しも人には言えないジレンマを心の奥に潜めながら吐き出すことも出来ずにいる。
けれどそんな自分を受け止めてくれる味方はきっといる。
人を信じる…底知れぬパワーを貰えた。
人知れず思い悩んで眠れない夜は、重たい鎧を脱いで素の自分をさらけ出していけたらいいな…。
彩瀬さんの短編の繋げ方が見事で最後に唸ってしまう。
読み終えた -
Posted by ブクログ
自分という生き物とうまく付き合えなくて、自分でいることに窮屈さを覚える。
どうして自分はこんな風にしか生きられないのだろう。という自己嫌悪に陥った経験を持つ人は、持たない人よりも多く存在すると思う。
別の誰かになることは叶わない。それならばこの自分という厄介な生き物と、どう付き合っていけばいいのか。
そういった想いを抱えた登場人物たちが織り成す、5つの短編集。
美しい容姿に生まれたことを窮屈に感じている男子高校生や、女性という性に少なからず違和感を抱えながら生きてきた中年女性など、自分のコンプレックスが何であるかをはっきり認識している主人公もいれば、真面目すぎて物事をまっすぐに決め付けてしま -
-
Posted by ブクログ
ネタバレみんな大なり小なり闇を抱えて生きている。
その闇がコンプレックスやトラウマであると同時に
生き方の一部になっていることに気づいたとき、どう行動するのか。
梨枝と三葉の関係は続いて欲しいと願いつつも、だんだん壊れていって
「好きだけど適切な距離感に戻ろう」みたいな展開になりそうだなと思っていたけど
自分たちで行動してやり直すことになってよかった。
母との関係に悩んでいた時期もあったし
今でも腹が立つことは多いけれど
母娘の関係がテーマの小説がたくさんあって
それぞれ細かい種類は全く違うけれど、割とポピュラーな悩みなんだなと気付いて楽になった。 -
Posted by ブクログ
私は死後の世界を知らない。
けれど、この小説で描かれている世界がどこかに存在すると思いたい。
死んでもなお、自分の生きてきた道を振り返り、心の奥底に固く閉ざしたものと向き合い、誰かのために、そして自分のために、心のあり方を変え続ける時間が訪れる世界。
しがらみや悔いや妬みや戸惑いやその他にもある様々な感情。
生きてる間はそれらが複雑に絡み合い、けれど向き合うと日常生活をうまく過ごせないから、すぐにその存在に蓋をしてしまう。
それを納得した上で昇華させる事が出来るなら、その時間は尊いと思う。
そして、昇華するには何かが必要で、それは誰か他者との関わりなんだろう。
よくご縁があって、というけれど、