彩瀬まるのレビュー一覧
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一言でこの小説を表すとすれば、哀しいホラー短編集だと、私は思う。
全6編のうち3編は死というものが前提にあって、残りの3編にもどことなく死の匂いのようなものが漂っている。
怖い中にも湿り気や情緒があって、とても日本人好みの内容だと思う。死者の念や想いの強さが、鬼や奇鳥や地縛霊に姿を変えてこの世に取り憑く。そこには人の哀しみが溢れている。
ホラー要素はほとんどない一編「眼が開くとき」がとてもエロティックで良かった。いらやしい要素や直接的な表現は全くないのだけど、とてもエロティック。だけどある意味でとても恐ろしい物語でもある。
憧れや恋心は片目瞑って相手を見ているくらいがちょうど良く長続きもする -
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ネタバレ97
蓋をしていた汚い感情がすべて露呈した気分。
一度は思ったことがある劣等感とか人に合わせて正解の相槌をすることとか、見たくないものは見ないとことか、どうしようもない才能に嫉妬することとか、ああわかるわかるってなった。
それでも最後は、何かしら乗り越えて希望が持てるエンドでよかった。
それを読んで、わたしもなんか頑張ろうと思った。
20191229
「光る背中」がとにかく好きで、何度も何度も読み返している。イケメン商社マンに恋をして、好きになってもらいたいから偽りの自分をつくって。それでも最後に自分をさらけ出して決着をつけた君はえらい。 -
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彩瀬まるさんが、彩瀬まる初心者向けに「暗い方ならこれ」と勧めていた作品。
いつも、上手に表現できないんだけど、良い。
「君の心臓をいだくまで」では、お腹の子が上手くいかなかったかもしれないことに落ち込み、生活すらままならなくなる主人公の元に、不思議なおばさんが現れる。
やがて、そのおばさんが主人公を追い詰めていくんだけど、最初に作ってくれたすき焼きが、どうにも美味しそうで……。
肉が、人の肉を彷彿とさせるシーンは次の「ゆびのいと」にも現れる。
我儘な妻と、優しい夫の新婚夫婦。
妻は新婚旅行に行く間もなく亡くなり、亡くなったはずなのに彼に夕飯を作り、共に眠る。
そんな生活を繰り返すうちに、 -
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数行読むごとに胸が締め付けられる。
目頭が熱くなる。
鼻の奥がツンとする。
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私はこの時、地震にさえ気づかずに、電気屋でのアルバイト。
ちょうどテレビ売り場のテレビが十数台立ち並ぶ裏側で1人梱包作業をしていて、いつもはいろんなチャンネルで混ざり合った騒音がやけにクリアだなぁ〜とか思ってた。
売り場に出ると、テレビは一斉に臨時速報を流していて、すべてのテレビが同じ画面で、いつもは色とりどりなのに全画面が濁った灰色一色。それから状況はさらに悪化していっても画面はずっと灰色だったな。
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被災もしていない、原爆の恐怖も感じなかったけど、あの日の事は忘れられないし、大きな地震が来そうな土地に住ん -
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窓やドアのつまみに糸を引っかけて、外から引き鍵をかける-単純で使い回されたミステリーのお約束のトリック。では、このトリックを使うと宣言してしまうのは?
5人の作家が同じトリックを使い、まったく別の物語を作り出す。
物語の中にはたくさんの密室トリックがあふれているけれど、現実の事件ではまず存在しない。手間がかかるし、成功する可能性も高くないだろう。読みながらそう思うことも多々あるし。
それを逆手に取った『似鳥鶏』の『このトリックの問題点』を始め、それぞれひねりが効いていて、とても面白かった。
一番気に入ったのが、突如部屋に出現した金の仏像と正体不明の彼女『彩瀬まる』の『神秘の彼女』。男子大学寮 -
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ネタバレ連作短編のお手本のような見事な1冊。伏線回収がばっちり決まって心がすっとする。物語事態を感動する部分と別のところで、「1本とられた」的清々しさをしっかり味あわせてくれる。
ミステリーではない(そういう要素を含んだ作品もあるが)ので、伏線回収だけが上手く行っても仕方ないわけであるが、そこはそこ、1つ1つの収録作品の出来も良い。イケメンに生まれた葛藤を書く話、死んでしまった短編映画のヒロインとの葛藤を描く話、ド真面目おじさんのちょっとした再生話…。俺は特に合気道にのめり込む女性の話が好き。
合気道にはまるという設定もいいし、そこに「女性」であることを少し疑問視する主人公をたてるのもいい。合気道 -
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自分という生き物とうまく付き合えなくて、自分でいることに窮屈さを覚える。
どうして自分はこんな風にしか生きられないのだろう。という自己嫌悪に陥った経験を持つ人は、持たない人よりも多く存在すると思う。
別の誰かになることは叶わない。それならばこの自分という厄介な生き物と、どう付き合っていけばいいのか。
そういった想いを抱えた登場人物たちが織り成す、5つの短編集。
美しい容姿に生まれたことを窮屈に感じている男子高校生や、女性という性に少なからず違和感を抱えながら生きてきた中年女性など、自分のコンプレックスが何であるかをはっきり認識している主人公もいれば、真面目すぎて物事をまっすぐに決め付けてしま -
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ネタバレ読んでいると呼吸が詰まりそうになるような、おそらくこの物語と似たような身に覚えのある体験をした方も多いのではないだろうか。
P.195〜199 「かつんと小石を噛んだように三葉くんの表情が強ばる───…」
ここからの流れが所謂毒親育ちの弊害を分かりやすく表現している。梨枝自身も母から言われ続けてきた「ちゃんとしなさい」「みっともない」の呪いで恋人の三葉くんを支配しようと苦しんでいくさま。
梨枝を縛り付けるのは母から女手ひとつで住宅ローンを完済し子供ふたりの成人後まで世話して"やってる"と言われ続けた、見返りを求めて余計な先回り/面倒/条件付きの愛情。
「かわいそう」だ -
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帯の言葉
「結局その人が去ったあとに残るのは、
他者に渡せた幸福だけなのかもしれない」
よほど優れた秀でた人でない限り、凡人の私達は
去っても何も残らない。残せない。
そう、諦めていて。
今も段々弱っていく、みっともない姿をみせる
身近な人にイライラして嫌悪して、そんな自分に自己嫌悪して…
「いいところだけ覚えておいてよ」
「みっともない部分は、相手にしないでいいから」
ストンと言葉が降りてきた。
言われた、と思った。
読書の良いところは、こんなふうにストンと言葉が
降りてくるところ。
ありがとう。
これだけで充分。
色々あるけど、また頑張ろうかと思えた。 -
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自分自身は男として生を受けた。
性自認は男性で性的指向は女性。
マジョリティに属しているつもりでいる。
ただ趣味嗜好が合わない。
父親が好きだった、
釣り、格闘技、ラジコン、煙草、車。
どれにも興味を持てなかった。
格闘技や煙草は毛嫌いすらしている。
唯一といっていい共通点の野球は全く見方が違って話が合わなかった。
せっかく息子だったのに残念だったな、と思っている。
イエにも社会にも個人に対して要求があって、
個人が個人として欲求を突き詰めるのは難しい。
作品として、途中まではすごくよかったのだけれど、
終盤、依怙地になっていた夫が突然気が変わるシーンがある。
現実はそんなものかもしれな