彩瀬まるのレビュー一覧
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帯の言葉
「結局その人が去ったあとに残るのは、
他者に渡せた幸福だけなのかもしれない」
よほど優れた秀でた人でない限り、凡人の私達は
去っても何も残らない。残せない。
そう、諦めていて。
今も段々弱っていく、みっともない姿をみせる
身近な人にイライラして嫌悪して、そんな自分に自己嫌悪して…
「いいところだけ覚えておいてよ」
「みっともない部分は、相手にしないでいいから」
ストンと言葉が降りてきた。
言われた、と思った。
読書の良いところは、こんなふうにストンと言葉が
降りてくるところ。
ありがとう。
これだけで充分。
色々あるけど、また頑張ろうかと思えた。 -
Posted by ブクログ
自分自身は男として生を受けた。
性自認は男性で性的指向は女性。
マジョリティに属しているつもりでいる。
ただ趣味嗜好が合わない。
父親が好きだった、
釣り、格闘技、ラジコン、煙草、車。
どれにも興味を持てなかった。
格闘技や煙草は毛嫌いすらしている。
唯一といっていい共通点の野球は全く見方が違って話が合わなかった。
せっかく息子だったのに残念だったな、と思っている。
イエにも社会にも個人に対して要求があって、
個人が個人として欲求を突き詰めるのは難しい。
作品として、途中まではすごくよかったのだけれど、
終盤、依怙地になっていた夫が突然気が変わるシーンがある。
現実はそんなものかもしれないけれど、
そこはフィクションらしく、一縷の望みを持てる虚構を用意してほしかった。 -
Posted by ブクログ
あの世とこの世が交錯する物語。
この世から形を失くしたあとは、こんな感じでさまよいつつ、かかえていたものを落としてしまってから成仏するのかもしれないと思いました。不思議な世界を体感した感じがしました。こういう感覚を表現出来る彩瀬まるさん、すごいなと思いました。そして染谷悠子さんの「はじまらないしおわらない」が、この小説の装画に本当にあっていると思いました。原画を見てみたいです。
小説ではまず主人公の燈子が、亡くなったあとも綴られる母親の日記から、母親がまだどこかを歩いていることを知ります。そして自分に関心がなかった母親の言葉が気になります。三人で生活していた頃、幼い頃事故死した弟、輝之のことが家族の一人一人に重くのしかかったままでした。本心を話さずにいた家族三人それぞれの現在と過去が語られていきます。
「夜行」と呼ばれる杖を先頭とした行進から外れ、息子(輝之)を探す母親。既に亡くなっている父親はそんな母親を見つけ、ある出来事から2人は息子への思いを消化します。母親から興味を持たれずに育った(と思っている)娘(燈子)は、母親の日記から思いを知り、やっと過去の思いから救われる······。簡単に説明するとこんな感じの小説でした。その中で燈子のありのままを優しく受け止めてくれる泰良の存在が、この小説では安らぎでした。
読後、お互いの気持ちを少しだけでも伝えていたらという後悔をしないように、生きているうちに少しの勇気を持ちたいと思いました。
彩瀬まるさんの他の作品も読んでいきたいです。
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私は結婚も子供がいる生活も経験したことがないけど、世の中の夫婦達の関係性や悩み、子育問題等の描写がリアル過ぎて想像できてしまう。
読みながら登場人物の夫婦関係が危うくなる度に胸が苦しくなりハラハラしたり、かと思えばお互い寄り添って軌道修正しほっとする。これこそが夫婦なんだなと、色んな感情になりながらもそう感じることができた。
と同時に、付き合った当初の初々しい関係や数年経った後のギスギスした関係もしっかり刻んであり凄く素敵な作品だなと思った。
私もいつか家庭を持つ事ができたら、この作品を思い出し読み返したりしながら、大事にしていきたいと思った。 -
Posted by ブクログ
『くちなし』や『森があふれる』を思い出すような彩瀬さんワールド全開のお話だった。とにかく言葉一つ一つがきれいで、じっくりと咀嚼しながら読み進めていく時間がとても幸福だった。
亡くなった母の日記を見つけた燈子は、母亡き後も文章が綴られていくのに気付く。物語は亡くなった母の死後の世界と、燈子が暮らす現実世界の双方を行き来する少しスピリチュアルな内容となっている。死者は「夜行」という行列に参加することでいずれ成仏する仕組みがあり、燈子の母の晶枝も最初はこの夜行に参加するのだが、彼女は過去に交通事故で亡くした息子の照之の死に対してずっと罪悪感を抱えており、死後の世界においてもその罪悪感に苛まれてなかなか出口を見つけられない。そんな彼女が道中で様々な死者と触れ合い、先に亡くなった夫の啓和と再会して、やがて自分を赦すことができるようになる姿を読者は見届けることとなる。
死してなお抱える罪悪感。そんな重くどうしようもない罪悪感に対し、彩瀬さんは自分を赦してもいいのだと優しく語り掛ける物語となっている。たとえ完璧な解決策がなくても、自分の辛い気持ちや憶測を語ってもよいのだと、それも意味があるのだと教えてくれる。自責の念に潰されている人にとって、心を包み込んでくれる優しいお守りのような一冊だと思う。 -
Posted by ブクログ
私この本好きかも。そう思えた1冊。
彩瀬まるさんの書く小説は、読んでいて苦しいんだけど、ページをめくる手が止められない。
出てくる登場人物たちに、ふと自分を重ねてしまうことがあり、深く共感したり苦しくなったり、いつもしている気がする。大きな出来事が起きる訳ではなく、日常を皆生きている。この本ではそれが描かれているから、共感するんだと思う。大きな出来事がある訳じゃない、でも日々は続いていく。
でも人間だから思うことはたくさんあって、それは私だけじゃないよねって思える。
忘れられても、忘れても日々は続いていく。でもきっとそれは当たり前のことで仕方ないこと。ありふれた行動の積み重ねで日々ができていくのだと思う。
忘れるのも、忘れられるのも、そんな悪いことじゃないよ。だから自分に負けないで。 -
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ネタバレタイトルの「嵐」っていうのは新型コロナウィルスのことだったんですね。
新型コロナウィルスの影響を受けてから2,3年後の5話の短編を集めた短編集です。
はじめは、「表紙に東北新幹線のイラストが描かれてあって、遠距離恋愛の短編5話を集めた本なのかなぁ」と思っていました。
①ひとひらの羽→40年以上函館と青森を行き来している男女の話
②遠まわり→函館で恋愛関係になった彼氏彼女のパワースポットや仕事上の転勤の話
③あたたかな地層→作家デビューした主人公が尊敬してた作家の死ばかり気にして、スランプ状態になった。その時盛岡で元編集担当がアドバイスして、立ち直る話
④花をつらねて→小さい子供のいる家庭の育児の難しさに直面し、移動制限がかかっている中でなかなか仙台の親戚にも会えず、緊急事態宣言が解除されてようやく会いに行ってこれからのことを改めて考えていく話
⑤風になる→政治活動に忙しい妻が夫から離婚の話を切り出され、落ち込んでいた時に秘書の言葉で「今の私のままがいいよね」と立ち直る話
新型コロナウィルスの感染者数がピークに達し、「外出自粛」「移動制限」「ステイホーム」「ソーシャルディスタンス」が叫ばれていたあの時、いつもなら普段通りに会えていたのが会えなくなる、人間関係も壊れていく、人生設計がおかしくなるといった今までにない経験を改めてこの小説を読んで勉強になりました。
素晴らしい小説でした。特に第4話で目頭が熱くなりました。正直言って思った以上の感動作でした。星4つという評価をしましたが、星4.5にしてもいいくらいでした。まさか大晦日にこういう素晴らしい本を読み終えるとは… -
Posted by ブクログ
思った以上に読みやすかったけど感想が難しくて、考えているうちに寝てしまっていた。
不在とは、今このいっとき「いない」ことであって、「ない」のとは違う。きっとどこかに「在る」と思うからこそ、人はそれを希求する。「不在」とはつまり、心が欲するものを探すための旅立ちのきっかけであり、道しるべでもある。
明日香はお父さんに愛されたかった。
でもお兄ちゃんには勝てなかった。
愛されたかった、1番になりたかったという思いを抱えたままそのまま大人になり、こじらせてしまった感があった。
でも不在なだけであって、今いないだけであって、明日香も愛されていたはずなんだよ。
元々愛されてないならまだしも、愛されていた記憶?があるから不在なことに対して悲しくなるのかな。
他者から承認されることだけが愛ではない。
それは愛に見せかけて、愛ではない。
たらればを言い出したらキリがないし、私の心が不在なこともある。楽しかったのに喪失感に襲われることがある。それはまさに不在なんだと思う。
でもそれは仕方がないことで、それも含めて私で。
普通じゃない人生だって、あなただけのもので、私だけのものだ。