彩瀬まるのレビュー一覧
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食をキーにした短編集。著者は、女性の心の揺らぎ、シスターフット系の作品に長けている。
ふと道を外しジャンクなピザの味に恍惚としたことで、逆にメンタルを病んだ夫を理解し包摂できるようになる「ミックスミックスピザ」子を亡くした友人を引き取って食を与え続け自らの喜びを知る「シュークリームタワーで待ち合わせ」がんで味覚を失い死にゆく優しい友人が残してくれた鍋「大きな鍋」がよかった。
P172「家庭は、異世界だよ。社会とは違う。ちょっとずついろんなものがずれる。愛情で、何らかの磁場が狂う。」
P182それは奇妙に甘美な体験だった。一つの命にずっと触って、それが太くしたたかになるのを待っているのだった -
Posted by ブクログ
【2024年8冊目】
めちゃくちゃ好みの作品でした。
最初は毒親から逃れる話かと思ったんですよ。全然そうじゃなかった。主人公が一人の人間として、生きる話でした。
28歳で実家暮らしであることに引け目を感じていたものの、兄から子が生まれることをきっかけに、実家に戻ろうと思っている連絡を受け、一人暮らしを決意する主人公。ずっと片親であった母親の呪縛みたいなものがあったのですが、そこから解き放たれたわけです。
途中までは母親のことを毒親として認識してましたが、母親も母親で子どもに「かわいそう」と認識される存在であることに気づき、互いにめちゃくちゃ辛いじゃんと思って心臓握りつぶされるかと思いまし -
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ネタバレP35
「嫌われることが一番こわかったけど、今は、自分の事を自分で決められなくなることの方がずっと怖い。本当にそう、思います。」
P81
「それでも俺は、これを、かなしい食べ物だって思う。だからいつか灯がどん底だけを信じるんでなく、他の、もっと幸せなものに確かさを感じて、このパンを食わずにやっていける日がくればいいって願うよ。」
透くん、ナイスやん。
P124
「夜泣きした下の子を抱っこで寝かせてたら、ヤキモチ焼いた上の子がぐずって起きて、それから二人とも全然寝ないんだけどなんだろうこの地獄」
クスッと笑ってしまった。あるある!そんな地獄。
P176
「正しいとか、誤解とか、そういう -
Posted by ブクログ
人に薦められて、彩瀬さん初読み。
第158回と第166回の2回直木賞候補になったというが、この短編集に関しては独特の世界観があって、どちらかというと芥川賞っぽいな、と。
「ベストアルバム的短編集」ってあまりピンとこない表現だけど、素晴らしい作品をとり揃えた短編集ということなんだろう。
確かに、収録された6編は全編捨て駒なし。息つく間もないほど濃密だ。
最初の2編はジャブ。でもパンチが思いの外重くて焦っていたところ、3編目「マイ・マイマイ」で目にも止まらぬ速さのストレートが飛んできていきなりダウンさせられた。
そのあとは4連続ダウンでもう立てません。
なす術もなくノックアウトです。
とくに