彩瀬まるのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
自分自身との折り合いがうまくいかない、自分でいることに窮屈さを感じる。こんなに苦しいことってあるか。だけど、共感すること多く読み進めました。
相手との関係性、距離感にもよるが、おそらく人は大なり小なり自分を演じている部分もあるのではないか。
コンプレックス、性別、年齢、こうあるべきという価値観、一般的な役割をうち破りながら自分を見つめ、認め直してゆく。
無意識に解放されたいという思いが繋がったのか、各章の主人公は、あるネット掲示板に辿り着く。この一風変わったスレッドへの応答に様々な捉え方がきっかけとなり現実と向き合う。
体を脱ぐ、役割の枠に押し込められず、素のままのなりたい自分になる、これが出 -
Posted by ブクログ
今年三月まで、東日本大震災で行方不明者は2523人となっています。
行方不明となったすみれの不在をどのように受け止めればいいんでしょうか。真奈は、すみれの死亡を認めずにいて、「形見分け」をする遠野も、仏壇に向かい記憶の「改竄」をするすみれの母も許せない。自分が苦しければ苦しいほど、すみれが近い。一人で暗闇のなかを彷徨うすみれを手放してはいけない。
一方、遠野は暗闇から去ると決め、「すみれはきっと歩き続けるだろう」と、自分も勇気を出して進まなければと考えている。
どちらにしても、現実の時間は生者の悲痛をものともせずに流れていく。真奈は時の移ろいの中で忘れていくことを怖がり、「本当にいいのか -
Posted by ブクログ
ネタバレ現代チックで寄り添いやすいお話達でした。
短編全てに一本筋の通った共通項があって読み進めやすい。
短編というとお話の厚みに物足りなさを感じるこど多いのですが今回それは無し!
「これからどんどん楽になるよ。息抜きしたり、自分を作り変えたり、そういう力をあんただけじゃなくて周りも手に入れて、優しくなるから。あと少しだけがんばって」
大人だからってこんな素敵なこと言えるとは限らないわよ!!!!和海くんの恋は本物ですと声を大にして言いたい。もう言ってる。
「いい子のふりじゃないよ。お父さんとお母さんが好きなの。だから、今はなるべくあの人たちの生き方を肯定して、一緒に生きていたい」
月ちゃん良い子 -
Posted by ブクログ
ネタバレ苦しくて。苦しくて。苦しくて。胸がつまる時間だった。〈普段考えないことは心細い。なので、突風にあおられるようにすみれに会いたくなった。〉湖谷真奈とすみれと、遠野くんの物語。フカクフカク。私も物語に引き込まれていった。戻ることも進むこともできない思いに塞がれてページをめくった。〈頭ではわかっても、私のてのひらや、耳や、指先がわからないとぐずり続ける。〉あの日の震災から三年。すみれが居なくなって、三年。〈会いたいねえ〉真奈はすみれが感じたであろう痛みを、恐怖を手離さないことで、すみれとの繋がりを保ち続けようとしていた。もう帰り道もわからなくなってしまった魂のすみれ。〈たくさんの約束も、大事にする方
-
Posted by ブクログ
5編どれもとても良かった。体のコンプレックス・・・というか、自分のありようと客観との間にあるギャップに、戸惑う気持ちがいろいろな方向から繊細に描かれている。どのお話を読んでも少しずつ、あ、なんだか分かるな、と思ったり、戸惑う人がいたら、こんなふうに接すればいいのかな、と思ったり。
ふだん生きる社会と、自分の内面とがなんだか噛み合わないと思う人は多いのかな。程度の差はあれ。その感覚に対して、どう向き合うのかも人それぞれ。「認めていいんだ」と思えるようになる高校生の和海。すでに飲み下して、「変わってる」と言われることに何かを感じることもなく日々の楽しみを見つけている50代の真知子。私が一番気持ちを -
Posted by ブクログ
彩瀬まるさんのご本を読むのは初めて。
3.11が近づいて来たので、ずっと気になってたこちらを読んでみた。
三章からなる構成。
福島の一人旅中に常磐線であの地震に遭遇。
たまたま隣に座っていた女性と津波が迫る中逃げるところから始まる。
一章では、あの震災に遭いながらも励まし合い助け合う人々に救われる様子が描かれていて、自然と涙が出て来てしまった。
みんな優しい。
本当に優しい。
自然災害と今の世界を揺るがす疫病とは話が違うかもだけど、今買い占めとか転売とかで揉めてるのが本当に馬鹿らしくなってしまう。
でも、二章からはやっぱり人間のどうしようもない面も描かれていて…。
愚かだし、悲しいな -
Posted by ブクログ
一言でこの小説を表すとすれば、哀しいホラー短編集だと、私は思う。
全6編のうち3編は死というものが前提にあって、残りの3編にもどことなく死の匂いのようなものが漂っている。
怖い中にも湿り気や情緒があって、とても日本人好みの内容だと思う。死者の念や想いの強さが、鬼や奇鳥や地縛霊に姿を変えてこの世に取り憑く。そこには人の哀しみが溢れている。
ホラー要素はほとんどない一編「眼が開くとき」がとてもエロティックで良かった。いらやしい要素や直接的な表現は全くないのだけど、とてもエロティック。だけどある意味でとても恐ろしい物語でもある。
憧れや恋心は片目瞑って相手を見ているくらいがちょうど良く長続きもする