彩瀬まるのレビュー一覧
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綾瀨まる先生らしい,雰囲気のある5編からなる短編集.すべてハッピーエンドとはならないモヤっとした終わり方だけど,そこがいい.
はねつき:結局.ずるい男だったというお話.
ゆすらうめ:後日談を想像してしまう.清吾はどう感じたのだろう.
ひかり:そんな便利な能力があればいいのだろうけど,すべては老女の勘違い・思い込みだったのだろうか.
ままごと:朔ちゃんはまだ大学生なのだから,悲観することはない.これからだんだん見分けられるようになっていくよ.
かざあな:「背中で~泣いてる~,お~とこの~美~学」なんてものを勘違いしていると病気になるという話(ちょっとちがうか?).
「ゆすらうめ」と「かざあな -
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同じ雑居ビルで働く人たちのそれぞれの人間模様を描いた5編の短編集。
シングルマザーのマッサージ師や、イタリアンカフェバーの店長や、IT企業に勤めるOLなど、ままならない人生に疲れ果て、恋に仕事にもがき苦しむ人たちが新たな一歩を踏み出す様子を、心の内側をとても細やかに表現されていて、その苦しみが痛いほど伝わってくる。
重苦しいのになぜかどんどん読み進められて、彼らの立ち直り方が潔くてかっこいい。
それぞれの短編の締めくくり方もよかったけれど、最終章で、タイトルにある「神様のケーキ」という言葉の意味がちゃんと込められていたし、何かを失っても忘れられても、また新しく生まれ変われる、そんな希望を持 -
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ネタバレこの世とあの世を繋ぐ六つの短編集。この本全体に死の匂いが深く巣食っている。
特に好みだったのは「よるのふち」。
母親を失って混乱する家庭がリアルすぎるほどリアルで胸が痛んだ。そして蝕まれていくのが子どもだけだったことが、またある意味では切ない。母親を求めているのが子どもで、子どもを求めているのも母親なのだ。
女の白い手が撫でているシーンが印象的。恐ろしいけれど、死してもなお強く消えない想いが、現実との境界線をゆらりと曖昧にしていくようだった。一緒にいたいあまりに、心配するあまりに、生者を引き摺り込んでしまうこともあるのかもしれない。
「かいぶつの名前」もひどく切なかった。浮遊霊と地縛霊目線 -
Posted by ブクログ
最初の「泥雪」を読んでありがちな大人の成長もの?と思ったけど、2話目以降からどんどん印象が変わった。
生きて働いて食べて寝て…と毎日懸命に生きている登場人物たち。抱えてる苦しみがあって、ジタバタしながら最終的には新しい道へ進もうとする訳だけど、彩瀬さんの描き方に寄るものなのか、みんな小説の中の他人というより身近な人みたいで、彼らの人生の話を聞かせてもらえたような気がした。
それだからかみんなの葛藤一つ一つに不思議と共感できて、彼らに投げられた言葉が心に響いたりもした。
「どうでもいい奴にどう思われようと、関係ないだろう」
「ケンカ別れした人とも、もう一度新しく出会えるんだよ」
時間を置