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長らく疎遠だった父が、死んだ。
遺言状には「明日香を除く親族は屋敷に立ち入らないこと」という不可解な言葉。
娘の明日香は戸惑いを覚えたが、医師であった父が最期まで守っていた洋館を、兄に代わり受け継ぐことを決める。
25年ぶりに足を踏み入れた生家には、自分の知らない父の痕跡がそこかしこに残っていた。
年下の恋人・冬馬と共に家財道具の処分を始めた明日香だったが、整理が進むにつれ、漫画家の仕事がぎくしゃくし始め、さらに俳優である冬馬との間にもすれ違いが生じるようになる。
次々に現れる奇妙な遺物に翻弄される明日香の目の前に、父と自分の娘と暮らしていたという女・妃美子が現れて……。
「家族」「男女」――安心できるけれど窮屈な、名付けられた関係性の中で、人はどう生きるのか。
家族をうしない、恋人をうしない、依るべきものをなくした世界で、人はどう生きるのか。
いま、最も注目されている作家・彩瀬まるが、愛による呪縛と、愛に囚われない生き方とを探る、野心的長篇小説。
解説:村山由佳
Posted by ブクログ 2023年11月14日
短編と思いながら読み進めて、これは長い話になると。サイン会の出だしの言葉がどういう意味なのか、お父さんだったのか。お父さんの死から始まり、あんなに嫌いな実家を譲り受けて、同時進行で作家業が続く。冬馬がめちゃくちゃまともな人間で、2人の愛という名の束縛に、拒否して終わりが来る。情緒不安定と表現したけど...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年01月11日
主人公があまり良い奴じゃないんだけど、だからこそ、彼女と関わる人達の人の良さに苦しくなったり、上手に彼らの手をとれない所がすごくよく分かるから。彼女の中で膨れ上がっていく感情を同じように醜いと思った。
自分の間違えを子どもに、ごっこ遊びに置き換えて話している描写が的を得ていてグッときた。
冒頭のセリ...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年09月10日
愛された実感が無いために、別のもので補おうとする明日香。
その気持ちが想像できるからこそ見ていられない。
愛を理由に誰かを支配するなんて愚かだ、と端から見ていれば分かる。
だけど「自分はそんなことしない」と言い切ることもできないから戸惑う。
智の〈愛っていうのは、気持ちの悪い言葉だよ。〉という台詞が...続きを読む
Posted by ブクログ 2024年04月21日
幼い頃に別れた父親が亡くなり、実家の屋敷を相続した主人公の女性。
漫画家として成功しており、今は5歳年下の役者志望の恋人を結婚前提という形で養っている。
途中からものすごくしんどくなった。
幼い頃に別れたきりの父親の影にいまだに囚われる主人公。
無意識下で愛に飢え、愛されることを求め、愛するこ...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年07月22日
両親の離婚後、疎遠だった父親が亡くなり、実家であった洋館を相続することになった漫画家の女性“
明日香”。彼女は遺品整理をしながら、家族だった人達の記憶を辿っていく。懐かしくも忌まわしさもある記憶は、彼女の実生活へ影響を与える。
漫画家として自立していた彼女は、歳下の下積演劇男子を養っていた。円満だっ...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年04月22日
"不在"とは、本来ならばいるべき場所にいないことを意味する言葉である。すなわち、はなから存在しないものに対しては使わない言葉だということができる。
お父さんは、お兄ちゃんを一番に愛してた
私は一番になれなかった
選ばれなかった
必要とされなかった
愛されなかった
そんな想いを胸...続きを読む
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