【感想・ネタバレ】不在のレビュー

あらすじ

長らく疎遠だった父が、死んだ。
遺言状には「明日香を除く親族は屋敷に立ち入らないこと」という不可解な言葉。
娘の明日香は戸惑いを覚えたが、医師であった父が最期まで守っていた洋館を、兄に代わり受け継ぐことを決める。
25年ぶりに足を踏み入れた生家には、自分の知らない父の痕跡がそこかしこに残っていた。
年下の恋人・冬馬と共に家財道具の処分を始めた明日香だったが、整理が進むにつれ、漫画家の仕事がぎくしゃくし始め、さらに俳優である冬馬との間にもすれ違いが生じるようになる。
次々に現れる奇妙な遺物に翻弄される明日香の目の前に、父と自分の娘と暮らしていたという女・妃美子が現れて……。

「家族」「男女」――安心できるけれど窮屈な、名付けられた関係性の中で、人はどう生きるのか。
家族をうしない、恋人をうしない、依るべきものをなくした世界で、人はどう生きるのか。
いま、最も注目されている作家・彩瀬まるが、愛による呪縛と、愛に囚われない生き方とを探る、野心的長篇小説。

解説:村山由佳

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

良い本だった。愛を手放すことについて、悲しい以外の感情に辿り着きたい(261)という言葉に救われた。私はこの言葉を生涯大切にして生きていきたい。

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2025年04月21日

Posted by ブクログ

短編と思いながら読み進めて、これは長い話になると。サイン会の出だしの言葉がどういう意味なのか、お父さんだったのか。お父さんの死から始まり、あんなに嫌いな実家を譲り受けて、同時進行で作家業が続く。冬馬がめちゃくちゃまともな人間で、2人の愛という名の束縛に、拒否して終わりが来る。情緒不安定と表現したけど元々がそういう人間なんだ。自分の養ってあげてるのを、帰るのも貰うのも全て明日香。施したお礼がかえる時のお腹の中のものが解けるとか、これからもそうやって生きていくんだね。

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2023年11月14日

Posted by ブクログ

私への愛は在ったのだろうか__父親の遺品整理をきっかけに閉ざした過去と向き合っていく。
愛は求めるほどに遠ざかり、与えすぎると苦しめてしまう。不幸にしていたのは自分自身なのかもしれない。捉われ続けた人生が息を吹き返す瞬間を垣間見た。

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2025年09月14日

Posted by ブクログ

彩瀬まる3作目

好きになれない主人公だけど、祖父に、父に愛されたかった感情と向き合うようになり感情的になってしまうのが読んでいて少し辛かった。

作中で、それ以上言ってはいけない、、それだけはやってはいけない、、と思いつつもそれらの行為で他人だけでなく自分を一番打ちのめしてしまう描写が印象的。

とうの昔だけれども、かつて欲しくて欲しくてたまらなかった父からの愛の不在に苦しめられる主人公を通して、
きっと誰にもある欠けた部分を無視できないもどかしさを思い出す作品。

この作者を書く他の作品でも感じた、明るいものではないけれど、心がほぐれていく救いなようなものを感じてよかった。

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2025年09月12日

Posted by ブクログ

主人公があまり良い奴じゃないんだけど、だからこそ、彼女と関わる人達の人の良さに苦しくなったり、上手に彼らの手をとれない所がすごくよく分かるから。彼女の中で膨れ上がっていく感情を同じように醜いと思った。
自分の間違えを子どもに、ごっこ遊びに置き換えて話している描写が的を得ていてグッときた。
冒頭のセリフも彼が言ったんだと思う。そこを明らかにしないのも良かった。
表紙も好き。

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2024年01月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「本当は優しい人が、こんな風にあなたや私を傷つけるかな。優しいって、こんなどうしようもないことでは人を傷つけないってことなんじゃないのかな。」


父親の遺品整理をするうちに、段々と父親に似ていって、狂っていく主人公から目を背けられませんでした。
読んでいくほどに辛くなった本は初めてです。

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2023年05月09日

Posted by ブクログ

父を亡くした主人公は、実家を相続し遺品を片付けるうちに家族への想いと兄を選んだ父への消化できない気持ちに気付かされる。
愛、家族、恋、重めのテーマやけど最後は希望を持てる終わりでよかった。

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2023年02月19日

Posted by ブクログ

人の死って思いがけないところで眠っていたものを揺り起こすよなぁ。
主人公に全然気持ちが寄り添えないんだけど、側から見ていてこのバランスの崩し方は誰にでも起こりうるな、と思ったので、その点で感じるものがあったんだろうな、わたし

2022.11.12
182

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2022年11月13日

Posted by ブクログ

愛された実感が無いために、別のもので補おうとする明日香。
その気持ちが想像できるからこそ見ていられない。
愛を理由に誰かを支配するなんて愚かだ、と端から見ていれば分かる。
だけど「自分はそんなことしない」と言い切ることもできないから戸惑う。
智の〈愛っていうのは、気持ちの悪い言葉だよ。〉という台詞が耳から離れない。

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2022年09月10日

Posted by ブクログ

「無理に愛さなくていいし、愛されなくていいんだ。自分とは違うってそれだけを思って、憎むより先に遠ざかろう。」

文章は読みやすく、すっと入ってくる。
色々考えながら思いながら読み進めた。自分の中に愛を見つけた人間は強い。
不在というタイトルだが至る所に私は愛を感じた。

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2022年04月07日

Posted by ブクログ

愛は花だ。運がなければすぐに枯れるし、腐ってなくなってしまう。だけど咲いていたことまで否定しなくたっていい。なくなったからって、偽物だったわけではない。昔、きれいな花が咲いていた。それでいいんだ。

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2021年08月31日

Posted by ブクログ

段々苦しくなっていくけれど最後には希望が持てる終わり方でホッとした。
智さんの言葉は頭から離れられない言葉がたくさん。キツい(笑)
明日香さん 少しは楽になれたかな?明日香さんありのままの自分を愛して幸せに生きていって欲しいなぁと思いました。

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2024年04月27日

Posted by ブクログ

幼い頃に別れた父親が亡くなり、実家の屋敷を相続した主人公の女性。
漫画家として成功しており、今は5歳年下の役者志望の恋人を結婚前提という形で養っている。

途中からものすごくしんどくなった。

幼い頃に別れたきりの父親の影にいまだに囚われる主人公。

無意識下で愛に飢え、愛されることを求め、愛することを熱望する。
愛しているから、と面倒を見ていた年下の恋人のことはいつしか支配下に置こうとしてしまう。
愛ではなく、忠誠。

大切にしていたはずのものを取り返しのつかない形で失ってしまうシーンが辛くてどうしようかなと思ったけど、寂しくない終わりかたで、よかった。



「家族愛に飢える」感覚がいまいちよくわからないのは、私がよしよしと愛されて育ったからかね。



無理に愛さなくてもいい。

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2024年04月21日

Posted by ブクログ

両親の離婚後、疎遠だった父親が亡くなり、実家であった洋館を相続することになった漫画家の女性“
明日香”。彼女は遺品整理をしながら、家族だった人達の記憶を辿っていく。懐かしくも忌まわしさもある記憶は、彼女の実生活へ影響を与える。
漫画家として自立していた彼女は、歳下の下積演劇男子を養っていた。円満だった彼との関係は崩れ、自身の作品も翳りを見せる。
不在は、父親の不在の表現なのか、もっと漠然と愛する者愛してくれる者の不在なのか、少し中途半端かな。お話は面白く読みましたが、父親が彼女に相続させた意味が読み取れないのは残念。幼児期の父親らしい男の子の存在が(幻覚?)その理由なのかもしれないけれど、その存在が、他の部分は現実的なのでちょっと浮いちゃうかな。
彩瀬さんの他の作品を読んでみたいと思います。

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2022年07月22日

Posted by ブクログ

"不在"とは、本来ならばいるべき場所にいないことを意味する言葉である。すなわち、はなから存在しないものに対しては使わない言葉だということができる。

お父さんは、お兄ちゃんを一番に愛してた
私は一番になれなかった
選ばれなかった
必要とされなかった
愛されなかった
そんな想いを胸に抱えたままの明日香。

だけど、明日香は気づく。
「愛は花だ。運がなければすぐに枯れるし、腐ってなくなってしまう。だけど咲いていたことまで否定しなくたっていい。なくなったからって、偽物だったわけではない。昔、きれいな花が咲いていた。それでいいんだ。」
明日香と父の間には、一時美しい花が咲いていた。今は"不在"だけど、たしかにそこにはあったのだ。

愛ってなんだろう。独占欲庇護欲忠誠心。何をどうすれば互いに愛し合っていることの証明になるのだろう。
自分と相手は他人だ。だから"愛"の形だってそれぞれだ。同義として捉え、相手が自分と同じように愛を与えてくれないと嘆くのは間違っている。
結局私たちは、たった一人とたった一人で生きていく。だけどそれはけっして悲しいことではない。

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2022年04月22日

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ネタバレ

「どれだけ1人になったって、周りにあなたを理解してくれる人がいなくたって、必ずこの世にはあなたと近い気持ちを持ったクリエイターがいて、漫画とか、音楽とか演劇とか、小説とか作ってるの。だから、なにを拒んでも大丈夫。絶対に1人にならないよ。」この言葉がすごく突き刺さりました、気持ちが楽になれました。私にとって彩瀬まるさんの小説は私を1人にさせない作者であって偉大です。

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2022年01月28日

Posted by ブクログ

父の死をきっかけに実家の洋館を相続した明日香。遺品を整理しながら家族の思い出、愛されていなかったというトラウマ、過去に囚われ、恋人ともすれ違っていく。愛、家族をテーマにした話。

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2021年10月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の父の死をきっかけけに遺品整理を行う。幼い頃両親が離婚して、父と疎遠になっていた明日香。家族への複雑な思いが、仕事や恋人との関係にも支障をきたす。
正直、遺品整理は、たとえどんなに親しい家族であっても、その人物が何を思い、生きてきたのか、故人との関係性や思いによって、すごく意味合いが、かわってくると思った。自分のルーツだけでなく家族のルーツや思いまで背負ってしまう。
故人に思いをぶつけたくても、もはやことばをかわせない相手。主人公はだんだん、満たされなくなり、自分で関係を壊してしまう。
家族だからこそ、恋人だからこそ。愛を求めてしまう。
「いや、家族を体の結合した一つの生き物として捉えるのでだ。主導権を握るのは、一番強い頭だけ。他の家族を自分の正しさで飲み込みにかかる人だ。」
この文の主人公の行動に、私自身が家族にもつ傲慢さを指摘されたような気がした。
本文で気になった言葉
「普通じゃないって思う人生は、困ったり、寂しかったり、大変だけど、それ以外の人生ではわからないことがたくさんわかるよ。わかったものは、あなただけのものだよ。辛いことを生き延びた先で、すごくきれいな景色を見られるよ。」
「無理に愛さなくていいし、愛されなくていいんだ。自分とは違うってそれだけを思憎むより先に遠ざかろう。私はそう、思う。」
「愛は花だ。運がなければすぐに枯れるし、腐ってなくなってしまう。だけど咲いていたことまで否定しなくたっていい。なくなったからって、偽物だったわけではない。昔、きれいな花が咲いていた。それでいいんだ。私と父との間には、ある時期、とても美しい花が咲いていた。
いつかそう思える日が来るのだろうか。タイトル「不在」。今はこのとき「いない」のであり、決して「ない」わけではない。いつかどこかに「在る」として、心が欲するものを探し求めて、道しるべとして、足掻き続けたい。そう思った。

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2021年07月23日

Posted by ブクログ

難しい内容に挑んだな…というのが読後の感想です。
愛とは何か…なんて考える事がそもそもおかしいのではないのか? その問いに答えはあるの?
そんな事考えながら生きていく方が疲れるし楽しく生きられないでしょう。
じゃあ幸せってなーに?
禅問答して深みにハマり、ストレスが溜まり何かの引き金で近い人を気づつけるくらいなら禅しない方がいいのでは…
人間は感情の生き物だよ、考えるより感じろ的なスタンスの方がいいし、常にニュートラルな体制が一番じゃないかなぁ、勿論考える事は大事、言葉も多少なり選ぶモノだよね、けどなんでもそーだけど過ぎるのは良くない、つい過ぎちゃうんだろうね、そこをコントロール出来るか否かは個人差や環境や性格なんだろう。コントロールが上手く出来ないから人間とも取れるけど、ある程度コントロール出来ればいいのでは?
絶対とか完全なんてモノは地球上には無いしむしろ不完全ぐらいがいいよ、きっと。
でもその不完全が許せない部分があるんだろうネ!
という具合に堂々巡りなので、不在も存在も両方が真実で過去は置き去りにし、今現在を生き、昔を確認したり掘り返すことはする必要ないかな、そう思う。

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2021年05月24日

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