彩瀬まるのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「手が大好きなので、いま起きてる人の手の画像ください!」というスレでつながっていた連作短編集。
タイトルが印象的だなと手に取りましたが、どの話もこのタイトルがしっくりくるものでした。
性や時代、生と死など様々なもので悩んだり苦しんだりする人はこれらの登場人物たちと同じように現実にもたくさんいて、物語を通して救われる部分も数多くあると思いました。
印象に残ったのは『ままならない』という言葉。
ままならないから時にもがき苦しむこともあるけど、その中でどう生きていくかってことが現実に生きる私たちに大切なことなのかも。
個人的には1話の男子高校生が好きです。がんばれ。
きっとどの話も誰かのまま -
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これも大阪で買ってきた一冊。
以前から読みたいと思っていた本です。
スカイツリーを見上げる下町のかたすみに、
ひっそりと息づく商店街がありました。
それがー『明日町こんぺいとう商店街』。
明日町こんぺいとう商店街を舞台にした7つの物語。
七人の作家さんのアンソロジー。
大島真寿美 『カフェスルス』
大山敦子 『あずかりやさん』
彩瀬まる 『伊藤米店』
千早茜 『チンドン屋』
松村栄子 『三波呉服店ー2005-』
吉川トリコ 『キッチン田中』
中島京子 『砂糖屋綿貫』
読んだことのある作家さんは、彩瀬まるさん、中島京子さんの二人だけ。
どの物語も心がほんわかします。 -
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Posted by ブクログ
スカイツリーを見上げる下町の片隅にある、架空の商店街の物語、第3弾。
知らない作家さんの名前も増えてきたが、今回もまた一段と、箱庭世界が充実していった。
自分のコレクションが増えていくような気持ち。
自営業と後継ぎという定番の物語、古くなってしまった業種、逆に商店街にはそぐわないようなおしゃれな店舗のことなど、品ぞろえ多数。
その中、シリーズで一番最初のお話だったカフェ・スルスのその後の様子を知ることができてよかった。
また、店の内情は一つもうかがわせず、舞台として使われている「アイスバイン」は、ちょっと異色で、文学的にして官能的である。
『明日の湯』が一番好きかも。
そして、お店をやってい -
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ネタバレ大好きな明日町シリーズ、第三弾
一軒目「カフェ スルス~一年後~」大島真寿美
平均年齢60歳。老後の楽しみに開いたお店に咲く恋の花。
二軒目「ブティックかずさ」 越谷オサム
三十近いひきこもりがちのバンドマンの一人息子VS昭和の香りプンプンな「ブティックかずさ」を守り続けている父。
三軒目「エステ・イン・アズサ」青谷真未
お互いを思いやるお嫁さんと姑さん、なんて素敵なんだ。
四軒目「明日の湯」秋山浩司
銭湯の壁の絵にまつわるおばあちゃんの恋心に、心がぽかぽか♪。
がんばれ三太郎!
五軒目「ドイツ料理屋・アイスバイン」島本理生
ずっと好きでいたいからと、他の男性と結婚した主人公。
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スカイツリーを見上げる下町の片隅にある、架空の商店街。
大山淳子氏の「あずかりやさん」がとても良かったので、"出身地"である、こんぺいとう商店街のことをもっと知りたくなりました。
個人商店が立ち並ぶ商店街は、現代では衰退の傾向にあるけれど、こんぺいとう商店街は、たたむ店あり、新しくできる店ありで細々と続いている。
家業を継いだ若者や、出て行ってまた戻ってきた者、新しい商売の形、幼なじみと小さな恋の話など、懐かしい雰囲気の中で語られる。
後に行くにしたがって、他の商店の名前が登場するようになって、箱庭世界が充実していくのが面白い。
一軒目『カフェ スルス』 大島真寿美
ほ -
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この前に読んだ本の感想に、松田くんの家庭について身につまされると書いたけど、これはまたそれ以上に身につまされるお話ね。
幼い弟の死をきっかけに両親が分かれ、母の手で育てられた主人公。
ことある度に「ちゃんとした生き方」を求められ「みっともないことをするな」と教えられてきた彼女は、母に反発しながらも「かわいそうな母」を捨てておけない。
母の教えを疎ましく思いながら、そこから出られない彼女。
妻の出産で兄が家に帰ってきたことを機に、前後して勤務先のバイトの子に好かれて付き合いだしたこともあり、家を飛び出し一人暮らしを始める。
その部屋をこれまでとは違ったテイストで飾り、その中でこれまでと違ったテイ -
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ネタバレ私が彩瀬まるという作家と出会ったのは、『神様のケーキを頬ばるまで』だった。錦糸町の雑居ビルを舞台にした五つの物語は、大きな事件こそ起こらないものの、登場人物たちの小さな痛みや希望が胸に残った。完全なハッピーエンドではないのに、誰もが自分の道を見つけて歩き出す。その姿に、孤独や日々の重さがそっと癒やされるように感じた。
続けて読んだ『やがて海へと届く』では、喪失と向き合う女性の姿が静かに描かれていた。友人を突然失った主人公が、残された映像や記憶を手がかりに痛みと向き合い、再生へと向かう物語である。
なぜ彩瀬まるは「喪失」を繰り返し描くのか──
ノンフィクション『暗い夜、星を数えて』が答えの一つだ -