彩瀬まるのレビュー一覧
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ネタバレこの世とあの世を繋ぐ六つの短編集。この本全体に死の匂いが深く巣食っている。
特に好みだったのは「よるのふち」。
母親を失って混乱する家庭がリアルすぎるほどリアルで胸が痛んだ。そして蝕まれていくのが子どもだけだったことが、またある意味では切ない。母親を求めているのが子どもで、子どもを求めているのも母親なのだ。
女の白い手が撫でているシーンが印象的。恐ろしいけれど、死してもなお強く消えない想いが、現実との境界線をゆらりと曖昧にしていくようだった。一緒にいたいあまりに、心配するあまりに、生者を引き摺り込んでしまうこともあるのかもしれない。
「かいぶつの名前」もひどく切なかった。浮遊霊と地縛霊目線 -
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最初の「泥雪」を読んでありがちな大人の成長もの?と思ったけど、2話目以降からどんどん印象が変わった。
生きて働いて食べて寝て…と毎日懸命に生きている登場人物たち。抱えてる苦しみがあって、ジタバタしながら最終的には新しい道へ進もうとする訳だけど、彩瀬さんの描き方に寄るものなのか、みんな小説の中の他人というより身近な人みたいで、彼らの人生の話を聞かせてもらえたような気がした。
それだからかみんなの葛藤一つ一つに不思議と共感できて、彼らに投げられた言葉が心に響いたりもした。
「どうでもいい奴にどう思われようと、関係ないだろう」
「ケンカ別れした人とも、もう一度新しく出会えるんだよ」
時間を置 -
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東日本の震災時に関東から出かけていた著者が体験したルポ。
被災地の人間ではないよそ者であり、避難所にいても辛い立場であっただろう
出会った人たちが思いやりのあるいいひとばかりであったことが救われる
いただいた「タマネギ」を食べずに差し上げてしまった著者の心の揺れが痛いほどわかる
災害時というのは人によって考え方の違いが露呈する 窓を開ける、開けない、水を飲まない、野菜を食べない…
必要以上に心配する人、デマも信じてしまう人。あまり気にしない人。気にしていても諦める人。
すっと暮らしてきたその街に暮らせないことも辛いか、暮らせたとしても庭になった果物や畑で獲れた野菜が食べられないことの辛さを -
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あなたは、『引っ越すことにしたんだ』と友人から言われて、そこに何を思うでしょうか?
散らかった部屋を片付けよう、綺麗にしようと日頃思っていてもなかなかにそれを実行する機会は持てないものです。今は忙しいから、と理由をつけて、ついつい先延ばしにしてしまいがちです。もちろん綺麗好き、整理整頓好きという方には、そんなことない、と否定もされると思いますが、一般論として、当たり前に続いていく日常生活の中においては、後回しにしがちなことの一つであるとは言えると思います。
そもそも『引っ越す』こと自体が、自身のそれまでの人生を一旦リセットする、『引っ越し』とは、そんな一つの機会でもあるのだと思います。だか -
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ネタバレ帯は、
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自分でいることに
窮屈さを覚えた人々が
夜な夜な掲示板に集う。
”私”とうまくつきあえない――
悩める人々を解放する物語
いつになったら、
私は私と仲良くなれるの?
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『小鳥の爪先』
高校生の和海は、顔が良い。
そのせいで、周りの友達や恋人との関係がうまくいかず、
孤独を感じている。
『あざが薄れるころ』
結婚も出産もしないまま、おばさんという年齢になった。
「女」を押し付けられるようなことには違和感を感じていた。それはおかしいこと?
『マリアを愛する』
私には大好きな彼がいる -
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わたしがたまに思い起こすイメージがある。
わたしの前には道が続いている。
でも見えるのは数メートル程度で後は真っ白い光のようなものに覆われていてよく見えない。
でも私がひとり歩ける程度の1本道だから、進む先はわかっていて、早足になったり、ゆっくりになったりしながら私は進み続ける。
辿り着く先は私自身の消滅ということはわかっていて、でも立ち止まっていても時間は流れて私は老いていくから、歩き続ける。
たまに私は後ろを振り返る。
後ろの景色はある程度しっかり見ることができる。
そこには私が出会った人たちや出会ってきたものが見える。生活圏で見た景色や、好きな漫画や映画で観た景色も混ざって、私の記憶 -
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オムニバス形式の短編集。
もやもやが残らずスッキリする終わり方です。
「マリアを愛する」と「真夜中のストーリー」が特にお気に入りでした。
魅せたい自分、見せたくない自分。
年齢、性別、その他諸々全てが煩わしくて、”自分じゃない誰かになりたい”と思っていた青い記憶が呼び覚まされました。
懐かしいような、切ないような。
彩瀬まるさんの本は読み終えると、自分の心の中の空っぽな部分になみなみと感情が満たされてくような感じがします。
その感情が切なさなのか幸せなのかは作品により全く違いますが、ぎゅうっと本を胸に抱き締めたくなるような。そんなお話を書く方だなと思いました。