彩瀬まるのレビュー一覧

  • やがて海へと届く

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    読後に込み上げるこの想いはなんだろう。
    ありふれた言葉では形容できない。
    生者は喪くした人を日常に探してしまう。
    どうしようもなく、その人の痕跡を探してしまう。
    それが苦しく、胸をかき立ててゆく。
    やがてもう訪れることはないと人は知り、人はそれぞれのやり方で明日への一歩を踏み出す。
    それは残された者の抗いの記憶。
    その過程を真正面に見据え、丁寧な筆致で描かれた本作は何度も読みたくなる一作。

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    2022年11月06日
  • 暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出―(新潮文庫)

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    東日本の震災時に関東から出かけていた著者が体験したルポ。
    被災地の人間ではないよそ者であり、避難所にいても辛い立場であっただろう
    出会った人たちが思いやりのあるいいひとばかりであったことが救われる
    いただいた「タマネギ」を食べずに差し上げてしまった著者の心の揺れが痛いほどわかる

    災害時というのは人によって考え方の違いが露呈する 窓を開ける、開けない、水を飲まない、野菜を食べない…
    必要以上に心配する人、デマも信じてしまう人。あまり気にしない人。気にしていても諦める人。

    すっと暮らしてきたその街に暮らせないことも辛いか、暮らせたとしても庭になった果物や畑で獲れた野菜が食べられないことの辛さを

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    2022年10月29日
  • やがて海へと届く

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    『死者への誠実を保てない』このフレーズに改めてドキッとした。
    正解なんてない。それに万人に当てはまる方法なんてない。それぞれがそれぞれに消化していかなければならないことだ。
    この作品で、それを見守る事で何か少しきっかけや勇気をもらえる気がする。すくんでいる足を動かす気持ちを。
    優しく背中に手を当ててくれるような作品だ。

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    2022年10月20日
  • 不在

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    愛された実感が無いために、別のもので補おうとする明日香。
    その気持ちが想像できるからこそ見ていられない。
    愛を理由に誰かを支配するなんて愚かだ、と端から見ていれば分かる。
    だけど「自分はそんなことしない」と言い切ることもできないから戸惑う。
    智の〈愛っていうのは、気持ちの悪い言葉だよ。〉という台詞が耳から離れない。

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    2022年09月10日
  • やがて海へと届く

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    とても考えさせられる作品でした。残された人たち
    の想いが沸々と胸に染みて、現実でも、こういった
    境遇の方々がおられる事を改めて実感しました。
    悲しい過去を風化させることは良くないが、あまり
    にも過去に囚われると上手く生きていけないが、過去について少し考えるだけでも、その先自分の新たな財産になると思うし、戒めにもなると思います。
    ノスタルジックな気持ちになりました。

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    2022年09月08日
  • やがて海へと届く

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    あなたは、『引っ越すことにしたんだ』と友人から言われて、そこに何を思うでしょうか?

    散らかった部屋を片付けよう、綺麗にしようと日頃思っていてもなかなかにそれを実行する機会は持てないものです。今は忙しいから、と理由をつけて、ついつい先延ばしにしてしまいがちです。もちろん綺麗好き、整理整頓好きという方には、そんなことない、と否定もされると思いますが、一般論として、当たり前に続いていく日常生活の中においては、後回しにしがちなことの一つであるとは言えると思います。

    そもそも『引っ越す』こと自体が、自身のそれまでの人生を一旦リセットする、『引っ越し』とは、そんな一つの機会でもあるのだと思います。だか

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    2022年09月05日
  • 眠れない夜は体を脱いで

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    ネタバレ

    帯は、
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    自分でいることに
    窮屈さを覚えた人々が
    夜な夜な掲示板に集う。

    ”私”とうまくつきあえない――
    悩める人々を解放する物語

    いつになったら、
    私は私と仲良くなれるの?
    -------------------------
    『小鳥の爪先』
    高校生の和海は、顔が良い。
    そのせいで、周りの友達や恋人との関係がうまくいかず、
    孤独を感じている。

    『あざが薄れるころ』
    結婚も出産もしないまま、おばさんという年齢になった。
    「女」を押し付けられるようなことには違和感を感じていた。それはおかしいこと?

    『マリアを愛する』
    私には大好きな彼がいる

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    2022年07月19日
  • 眠れない夜は体を脱いで

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    五つの短編からなる連作。
    五人の人間のままならなさを描き、あるインターネットのスレッドで少しだけ交わる。
    全編違う面白さ、メッセージ性を感じつつ、読み終わった後に本としての言葉がある。
    私は特に、鮮やかな熱病が好きでした。
    大きく変わるもの、小さく変わるもの、変わらずとも気づくもの。

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    2022年07月01日
  • 眠れない夜は体を脱いで

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    最後の話が一番好き

    体を脱いだら心だけが残る。体という属性を排除して心だけになれたら、自分は何を考えどう振る舞うだろう。今の自分とは変わるだろうか。

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    2022年05月28日
  • やがて海へと届く

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    わたしがたまに思い起こすイメージがある。

    わたしの前には道が続いている。
    でも見えるのは数メートル程度で後は真っ白い光のようなものに覆われていてよく見えない。
    でも私がひとり歩ける程度の1本道だから、進む先はわかっていて、早足になったり、ゆっくりになったりしながら私は進み続ける。
    辿り着く先は私自身の消滅ということはわかっていて、でも立ち止まっていても時間は流れて私は老いていくから、歩き続ける。

    たまに私は後ろを振り返る。
    後ろの景色はある程度しっかり見ることができる。
    そこには私が出会った人たちや出会ってきたものが見える。生活圏で見た景色や、好きな漫画や映画で観た景色も混ざって、私の記憶

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    2022年05月20日
  • 妖し

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    ネタバレ

    「喪中の客」終始いやな予感にドキドキさせられ、身構えていたのにやはり最後にゾクリ。やられた。

    「細川相模守清氏討死ノ事」時代物は苦手だが我慢して読み続けただけの価値はあった。読後爽快!ニンマリ

    「フクライ駅から」なーんだネット系の都市伝説かぁ…期待せず読み進めたら意外な展開になり引き込まれた。フェスタのその後を知りたくなる。

    「真珠星スピカ」なんて素敵な家族。泣けた。

    「わたしキャベンディッシュ」バナナに対する認識が変わった。シゲルの味が気になって仕方ない。

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    2022年05月19日
  • 眠れない夜は体を脱いで

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    オムニバス形式の短編集。
    もやもやが残らずスッキリする終わり方です。

    「マリアを愛する」と「真夜中のストーリー」が特にお気に入りでした。
    魅せたい自分、見せたくない自分。
    年齢、性別、その他諸々全てが煩わしくて、”自分じゃない誰かになりたい”と思っていた青い記憶が呼び覚まされました。
    懐かしいような、切ないような。

    彩瀬まるさんの本は読み終えると、自分の心の中の空っぽな部分になみなみと感情が満たされてくような感じがします。

    その感情が切なさなのか幸せなのかは作品により全く違いますが、ぎゅうっと本を胸に抱き締めたくなるような。そんなお話を書く方だなと思いました。

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    2022年05月16日
  • 眠れない夜は体を脱いで

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    書店で見かけて帯が気になったので購入した作品
    5話収録されていて、区切りがつけやすかった

    そして「マリアを愛する」というお話の女の子2人が良かったです…!実像と虚像のお話が好きなので

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    2022年04月11日
  • 不在

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    「無理に愛さなくていいし、愛されなくていいんだ。自分とは違うってそれだけを思って、憎むより先に遠ざかろう。」

    文章は読みやすく、すっと入ってくる。
    色々考えながら思いながら読み進めた。自分の中に愛を見つけた人間は強い。
    不在というタイトルだが至る所に私は愛を感じた。

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    2022年04月07日
  • 暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出―(新潮文庫)

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    苦しい。苦しい。

    震災の本は何冊か読んだ事があるがこちらは又別目線での話だった。

    一章は旅行先で震災に見舞われた話。
    二章は数ヶ月後ボランティアに行く話。
    三章は震災の時助けてくれた人達に会いに行く話。

    中でも取り上げられているのが放射線。

    作者は物凄く気にしている人。
    震災中もボランティア中もとても気にしていた。
    私はもう子供も産んでこれから産む事もないからか分からないけど全然気にしない人。だから作者の気持ちが分からない。野菜も魚も東北だろうが何だろうが気にしない。海外の物よりもむしろ国内の方がいいとすら思ってる。

    でも気にする人はするんだね。
    東北に住んでる人ですら分かれるらしい

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    2022年03月25日
  • 鍵のかかった部屋 5つの密室(新潮文庫nex)

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    密室トリックを解決していくのではなく、トリックの方法を考えて行く…ちょっと斬新…
    結果密室トリックだけど、それぞれ違う話で面白かったです。

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    2022年03月05日
  • 明日町こんぺいとう商店街 心においしい七つの物語【電子限定特典付】

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    スカイツリーを見上げる下町の片隅にある商店街の物語、第4弾。
    戦後の焼跡に24軒集まって始まった商店街ということだったけれど、今では80軒近くの店があるという。
    毎回、冒頭に地図が載っているけれど、その本に載っている短編のタイトルのお店だけなので、これは・・・あの物語のお店の場所なのだが・・・と迷ってしまう。
    今回の桜さんのように、お店を出て歩きながら紹介してくれると、ふむふむ、川平金物店は、水沢文具店の向かって左隣なのだな?とわかって嬉しい。
    今までに登場した、全部のお店が載った大きな地図が見たいなあ〜

    老朽化した二階建てで、一階がお店で二階が住居という作りが多い。
    看板も古い言葉で、若い

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    2022年03月02日
  • やがて海へと届く

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    私と同じ東北人、震災に想いを寄せる人にグッとくる作品だと思います。

    あっちの彼女も
    こっちの彼女も
    それでいいんだ、よかった
    と思えました。

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    2022年02月04日
  • やがて海へと届く

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    親愛なる友の影を追いかけてまぼろしを捕まえようとするお話。
    表現がやさしくて美しいのと、苦しむ人が無理をしないで喪失感とか罪悪感みたいのをなじませていくみたいなのがよかった。

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    2022年01月23日
  • やがて海へと届く

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    ネタバレ

    まなとすみれ、それぞれに共感できる考えや気持ちが多くあった。私は関東で東日本大震災を経験したけれども、あの時東北にいた人たちはもっとすごい経験をしたと思う。私は、この本を通して少しでもその人たちに寄り添うことができるのではないかと思って、この本を手に取った。

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    2022年01月18日