彩瀬まるのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
密室にまつわる5編の作品が載っている。
第一話は「このトリックの問題点」。密室事件にまつわる白玖の推理と俺(真中)の、麦ちゃんをめぐる突飛な行動が面白い。
第二話は「大叔母のこと」。すでに亡くなっている天才ケーキ職人だった大叔母が残したもの(遺産)を主人公である女性とその彼氏の二人で、密室での盗難事件を解いていく。
第三話は「神秘の彼女」。突然枕元に現れた盧遮那仏像の話。現実と夢が交錯する。同室の玄馬先輩の仮想の彼女と工学部の美人女子大生鴻巣の意外な関わりが面白い。
第四話は「薄着の女」。女優として少しずつ仕事が増えていく中で、過去の繫がりが引き起こした殺人事件。どう逃げ切るか。
第五話は「世 -
Posted by ブクログ
心にすうっと入ってくる彩瀬まるさんが紡ぐ言葉。
やさしいだけじゃなくて、苦しさや弱さも、すべてがスパイスになって人生の味に深みを与えてくれる。
「きらわれることが一番怖かったけど、今は、自分のことを自分で決められなくなることの方がずっと怖い。本当にそう、思います」
「食べるってすごい」
「すごくて、こわいね」
「生きたくなっちゃう」
ストレスを感じても、辛くてしんどくても、
誰かの作ってくれたごはんの温かさに救われたり、ホッとしたり。
誰かと一緒に食べる温かいごはんがいちばん美味しいし、誰かのために作る時間も楽しい。
ひとときだけでも、温かいごはんは自分を救ってくれる。和らげてくれ -
Posted by ブクログ
ネタバレ六つの短編集。この世ならざるものとこの世を生きるものの不安や苦悩や執着や愛情が彼我の境界を溶かすような形で不思議に描かれていて、幻想的でちょっと怖いような。いや、この世ならざるものというよりは、主人公の意識とか思いがそういう形で立ち現れている、ということなのかもしれない。
突如亡くなった新妻が、火葬した後も家にいて毎日料理を食べさせてくる「ゆびのいと」や、交通事故で亡くなった母親が、幼い弟に何かを食べさせている「よるのふち」で、死者から愛する聖者に食べさせている腥い肉片は何なのだろう。古事記に出てくるよもつへぐいを思い出した。その肉片も、あるいはそれを嘔吐した時の墨のような吐瀉物も黒い。または