彩瀬まるのレビュー一覧

  • 森があふれる

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    彩瀬まる『森があふれる』を読んで、印象に残ったのは、物語全体ににじみ出る、まだ消えないジェンダーの鎖に縛られた登場人物たちの姿だ。
    特に貴夫は、男性としての呪いに気づきつつも逃れられないやるせなさを抱え、多くの男性が同じように縛られているのではないかと考えてしまう。
    ジェンダーの縛りが家族という境目のあいまいな共同体で濃厚になり、個人を息苦しくさせる様子も印象的だ。文章はみずみずしく美しく、独特で伝わる比喩表現が多く、人物の心情や物語の空気を深く感じさせる。
    女性は男性から常に丸くあれと求められる描写は、自身の経験とも重なり胸に響く。
    ジェンダーの呪いが解消されない状況で男と女が家族になる息苦

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    2025年09月13日
  • 不在

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    彩瀬まる3作目

    好きになれない主人公だけど、祖父に、父に愛されたかった感情と向き合うようになり感情的になってしまうのが読んでいて少し辛かった。

    作中で、それ以上言ってはいけない、、それだけはやってはいけない、、と思いつつもそれらの行為で他人だけでなく自分を一番打ちのめしてしまう描写が印象的。

    とうの昔だけれども、かつて欲しくて欲しくてたまらなかった父からの愛の不在に苦しめられる主人公を通して、
    きっと誰にもある欠けた部分を無視できないもどかしさを思い出す作品。

    この作者を書く他の作品でも感じた、明るいものではないけれど、心がほぐれていく救いなようなものを感じてよかった。

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    2025年09月12日
  • なんどでも生まれる

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    最後の想像させるところが好きだと思った。
    生きていくことは大変だ
    病気も、仕事も
    職場も家族も。
    それでもまた産み出していく

    具体的な感想はうまく書けない
    特別好きなキャラクターまではいかないけれど、おじいさんとおばあさんかな

    いなくなったら嫌だなとドキドキしていた。

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    2025年08月24日
  • なんどでも生まれる

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    仕事や人間関係で生きづらさを感じている茂さんと、茂さんに飼われているチャボの桜さんの再生の物語。物語は終始チャボの桜さん視点で紡がれており、茂さんに対する感情や行動がとても愛らしい。
    物語を通して茂さんは祖父母の暮らす商店街で手伝いをすることにより、徐々に希薄になっていた人間関係を再生していき、その過程で桜さんが一役買う。一人と一羽のとてもいいコンビである。

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    2025年08月21日
  • 眠れない夜は体を脱いで

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    「マリアを愛する」と「鮮やかな熱病」が特に好みだった。
    どちらもミニシアターの映画を観たような不思議な満足感があり、大号泣ではなくじんわりと泣ける感じが良かった。

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    2025年08月09日
  • 嵐をこえて会いに行く

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    東北が舞台の短編集
    夫婦の問題や、親子、友人、ウミネコの生まれ変わりなんてシチュエーションもあり、多種多様で楽しかった。
    舞台になった場所へ行ってみたいと思わせてくれる作品でした。「三ツ石神社の鬼の手形」は特に
    初めて読む作家さんでしたが割と好きです。

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    2025年08月07日
  • 鍵のかかった部屋 5つの密室(新潮文庫nex)

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    推理小説によく出てくる密室トリックを使う縛りのアンソロジーというのが面白いなと思って読みました。
    友井羊さんと島田庄司さんのものが私は好きでした。島田庄司さんのものは長編小説の1部と書いてあったのでその長編小説の方も読んでみたいなと思いました。

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    2025年08月03日
  • くちなし

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    7つの短篇。現実離れした設定がチラホラ。
    とにかく美しい、儚い、残酷、どの話も仄かに歪んでて大変好物。
    「愛のスカート」の関係性が心地良い。

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    2025年07月15日
  • 明日町こんぺいとう商店街 招きうさぎと七軒の物語【電子限定特典付】

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    ずっと読んでいたシリーズの『あずかり屋』さんがアンソロジーに入っている!
    と、読み始めました。
    商店街の店についてのアンソロジーなので、作家さんが違うのに統一感があるように思えました。
    まるで連作短編みたい。
    このシリーズ、積読にあと3冊控えているので楽しみに読みます!

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    2025年07月11日
  • 嵐をこえて会いに行く

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    どの編も弁当が良い味をだしている。再び電車に乗る頃には、どことなく暗いトンネルを抜けた後心に明かりが灯される、そんな結び方だった。
    2編目の「遠まわり」は、前世はウミドリだったという設定。生きにくかったウミドリ時代、自分を見守ってくれていた存在に対する信頼が自己肯定につながったことを呼び覚ましていく。不思議なできごとは、架空の世界においてではなく、現実に存在する場所で呼び起こされる。現実世界とそうでない世界は、つながり溶け合っているものなのかもしれない。

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    2025年06月26日
  • 新しい星

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    内容は、人生の終わりとか辛い現実について書かれているんだけど、とにかく優しいのがこの作品の凄いところ。

    大人になっても、「そこのコンビニ、ポテト半額だよ!」みたいなやり取りできる関係の人がいたら、きっと豊かだろうなぁ。なんて思ったりした。

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    2025年06月24日
  • まだ温かい鍋を抱いておやすみ

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    食べ物にまつわる物語6つ
    人付き合いに悩む人、
    忘れられない男性の作ったパンを食べ続ける人、
    ラブホテルのピザの味を忘れられない人、
    子を亡くした女性
    辛い時に救ってくれた病床の優しい友達

    食事には寂しさ、優しさ、喜び、いろんな意味が込められていることがある
    そう思わせられた

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    2025年06月21日
  • 眠れない夜は体を脱いで

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    連作短編集。
    どの話も…というか、どの主人公もなんだかとても愛おしくなってしまった。

    最後の章の仕掛けに思わず声を出してしまったけれど、それもまたさらに愛しい結果に。

    素敵な一冊。

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    2025年06月20日
  • 神様のケーキを頬ばるまで

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    この方の書かれる、どこかで交差する繋がりのお話大好き。一つのフレーズが素敵だなぁーと思って刻んでる。

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    2025年06月14日
  • 眠れない夜は体を脱いで

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     その時しかリアルタイムで参加できないスレッドで、それぞれの主人公が繋がっているのが素敵だしかけがいのないことだなぁと思う。
     普通はスルーしてしまいそうなのに、気分やふとしたきっかけで参加し、ある人は勇気をもらい、ある人は鬱憤を晴らす場に。
    どの話も素敵だったが、やはり最後の章が良かったなぁと思う。

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    2025年06月04日
  • 骨を彩る

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    ネタバレ


    正直、5月の自分は、何もしたくないという気持ちが溢れていたせいか、最初の方はあまり進まず、時間がかかってしまいました。そんな無気力な気持ち読んでいましたが、読み終えた後は「難しいな、色々」という気持ちです。

    他者には起こっていない自分の出来事を分かってもらうことは酷いのではないか。
    だから、他者と違う部分はお互い触れず、うまく加減して付き合っていくことが利口であること。
    結局は、自分が変わるしかないこと。

    他者の気持ちを完璧に理解しようとするのは難しいと言う現実を分かっていながら、それでも他者と分かり合いたいと思ってしまうって大変なことすぎませんか。

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    2025年06月01日
  • 新しい星

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    時々ふっと出てくる優しくて悲しい表現に胸が詰まり、思わず涙が出た。
    読み終えると新しい星というタイトルと意味が、すごくしっくりくる。漠然として、良いも悪いも含めた未知な感じで、なるほどな、と思った。

    4人の関係が素敵だなと思う。羨ましいとすら思うけど、ないものねだりよりも今私がいる星で、そこから見える範囲で出来ることやしたいことを見つけたいと思った。

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    2025年05月30日
  • あのひとは蜘蛛を潰せない

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    親と共依存の、28歳女性。
    年齢に見合わない未熟さ。またそれも個性として面白いのかもしれない。人間の性格は誰1人同じなんてないし、正解もないのだろう。そんなあいまいさ、
    「ちゃんとしてない」ことを愛おしく思える。
    温かさだけでなく、人の無情さ世の中の移ろいやすさを描いていた。

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    2025年05月19日
  • 草原のサーカス(新潮文庫)

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    主人公2人の人間臭いところが良かった。

    人生は綺麗事じゃないので、大なり小なり傷ついたり絶望する経験は必ず訪れる。
    大切なのはそこからどう生きていくかなんだと改めて感じられた作品。


    情景描写がわかりやすく、綺麗な小説だなぁと思いながら読んだ。

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    2025年05月12日
  • 嵐をこえて会いに行く

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    物語の色は違うけれどどれにも覚悟を感じた。
    どう生きるのが自分らしいのかに気付き、目の前が開けていく清々しさが良かった。
    特に最後の「風になる」は自分の弱さを受け入れ理想を現実にするべく腹をくくる主人公が格好良くて痺れた。

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    2025年05月02日