彩瀬まるのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
彩瀬まる『森があふれる』を読んで、印象に残ったのは、物語全体ににじみ出る、まだ消えないジェンダーの鎖に縛られた登場人物たちの姿だ。
特に貴夫は、男性としての呪いに気づきつつも逃れられないやるせなさを抱え、多くの男性が同じように縛られているのではないかと考えてしまう。
ジェンダーの縛りが家族という境目のあいまいな共同体で濃厚になり、個人を息苦しくさせる様子も印象的だ。文章はみずみずしく美しく、独特で伝わる比喩表現が多く、人物の心情や物語の空気を深く感じさせる。
女性は男性から常に丸くあれと求められる描写は、自身の経験とも重なり胸に響く。
ジェンダーの呪いが解消されない状況で男と女が家族になる息苦 -
Posted by ブクログ
彩瀬まる3作目
好きになれない主人公だけど、祖父に、父に愛されたかった感情と向き合うようになり感情的になってしまうのが読んでいて少し辛かった。
作中で、それ以上言ってはいけない、、それだけはやってはいけない、、と思いつつもそれらの行為で他人だけでなく自分を一番打ちのめしてしまう描写が印象的。
とうの昔だけれども、かつて欲しくて欲しくてたまらなかった父からの愛の不在に苦しめられる主人公を通して、
きっと誰にもある欠けた部分を無視できないもどかしさを思い出す作品。
この作者を書く他の作品でも感じた、明るいものではないけれど、心がほぐれていく救いなようなものを感じてよかった。 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ
正直、5月の自分は、何もしたくないという気持ちが溢れていたせいか、最初の方はあまり進まず、時間がかかってしまいました。そんな無気力な気持ち読んでいましたが、読み終えた後は「難しいな、色々」という気持ちです。
他者には起こっていない自分の出来事を分かってもらうことは酷いのではないか。
だから、他者と違う部分はお互い触れず、うまく加減して付き合っていくことが利口であること。
結局は、自分が変わるしかないこと。
他者の気持ちを完璧に理解しようとするのは難しいと言う現実を分かっていながら、それでも他者と分かり合いたいと思ってしまうって大変なことすぎませんか。