【感想・ネタバレ】みちゆくひとのレビュー

あらすじ

亡きあとも綴られる、書かれるはずのない母の日記。
向き合えなかった家族の物語が巻き戻っていく――。
二年前に父が他界し、先月には母もこの世を去った。
不動産会社で働く原田燈子は、天涯孤独になった。
でもずっと前から一人だったのかもしれない。
二十年以上前の不幸な出来事をきっかけに――。
不可思議な死者の日記が繋ぐ「この世」と「あの世」、そして「過ち」と「赦し」。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

思えば、死ぬことについて、あまり考えたことがなかった。
死んだら終わり、ということくらいしか頭になかった。
もちろん死んだ後のことなんて誰にもわからないのだけど、例えば私の肉体に宿る魂は、死後どんな色をしているのだろう。

物語では、死者は夜行という巡礼の旅を経て、静かに消えていったが、夜行に寄れない人もいれば、惑乱を繰り返し成仏できない人もいた。

死んだら私は成仏できるのだろうか。
未練はないことはない。あの時こうしておけばよかった、とか、あの時伝えておけばよかったかな、なんて思うことがそこそこある。
それがもやもやし続けながら消えきれずに、苦しみながら世界を漂っているなんて嫌だなぁ。

でもそれでもラストシーンにもあるように、死者も生者も誰かが隣にいてくれることがどれだけ力になるのか、それさえしっかり理解をしていれば、どれだけ辛くなっても、大丈夫な気がする。

信じる神は、私たちの営みに宿るなら、
寄り添って生きることを忘れてはいけない。

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2025年10月29日

Posted by ブクログ

最近は彩瀬まるの新刊が出ると同時に購入して、現在読んでいる本を中断して、読むスピードを落としてじっくり読むのが私の読書のスタンダードとなっている。最初から彩瀬ワールド全開の語り口で始まるので、今回も期待できる内容と確信した。話が進んで行くにつれ、今回はちょっと重めの内容と構えてしまう面が垣間見られた。一気に読んでしまいそうなところを抑えつつ、1日何ページと決めて読むこととした。

彩瀬作品を全て読んでいる訳ではないので何とも言えないが、今回の作品はやや宗教的・ややSFのテイストが感じられた。ただ、読んでいくうちに「あれ、これと内容・雰囲気が似ている小説を読んだかもしれない」と気づく・・・そうだ!中村文則の「列」とコンセプトが似ている。彩瀬「列」と中村「列」には細かい違いがあるものの、目的も判らず並ぶ、列から離れていく人がいれば列に加わる人もいる等々共通点がある。どちらも果たして浄化できるのだろうか、生まれ変われるのだろうか、見守っていくしかない。母のノートが2つの世界の橋渡しをするのはSFの常套手段で、このやり取りは実に楽しい。次はどんなメッセージが送られてくるのか?

中盤以降は徐々に彩瀬「列」は中村「列」の概念から離れていく。SFの様な設定は徐々に薄まり、「この世」の世界と「あの世」の世界は単なる並列する2つの世界へと変化する。「この世」では社会に流されて生きるものの、「あの世」に行くと一種の気づきを得た人は浄化されて次の世界へと旅立つ。ただ、次の世界が「この世」なのか、それとも浄化に見合った素晴らしい世界なのかは読み取れなかった。ここで、浄化の程度が可視化されているのは非常に面白いアイディアだった。結末は曖昧となるが、希望としては娘の子供、つまり孫に生まれ変わればいいけど、実際はそううまくはいかないだろう。そもそもそれができたら正に陳腐なSF小説となる。

今回の設定は今までとはかなり隔たりがあったが、作者が言いたかった内容はこれまでとはあまり変わっておらず、人間の内面・心の動きを完璧に描き切っていた。

直木賞の候補に選ばれたのはこれまで2回。そろそろ3度目の正直、この作品で直木賞取れないかな?その際に高いハードルとなるのはやはり中村文則の「列」だろう。私がそう思うのだから情報量が多い海千山千の文学評論家はこの痛い所を突いてくるだろう。直木賞に限定せず、どんどんノミネートされることを期待する。

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2025年10月26日

Posted by ブクログ

私は死後の世界を知らない。
けれど、この小説で描かれている世界がどこかに存在すると思いたい。
死んでもなお、自分の生きてきた道を振り返り、心の奥底に固く閉ざしたものと向き合い、誰かのために、そして自分のために、心のあり方を変え続ける時間が訪れる世界。
しがらみや悔いや妬みや戸惑いやその他にもある様々な感情。
生きてる間はそれらが複雑に絡み合い、けれど向き合うと日常生活をうまく過ごせないから、すぐにその存在に蓋をしてしまう。
それを納得した上で昇華させる事が出来るなら、その時間は尊いと思う。
そして、昇華するには何かが必要で、それは誰か他者との関わりなんだろう。
よくご縁があって、というけれど、偶然か必然か分からないけれど、人は一人じゃなくて、誰かと関わる事の繰り返しで出来上がっているのだろうな。
先の世界をのぞかせてもらったような、予行演習したような不思議な気持ちになった。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

不思議な小説だった。続きが気になるけど、面白くてとも違って、このあとどうなるのか知りたいような知りたくないような。世界観を信じたいような信じたくないような。ずーっと不思議だったな。

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2025年11月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

こういう作品が出版されて私たちが読める機会を貰えてるのは、とてもありがたいなーと思った。

登場人物がそれぞれの考えがあって、とても楽しめた。
タイミングがいろいろ悪かったり、辛いなーと思う部分が多々あった。

身近な人の死はやっぱり何かが、崩れたり変わったりするけどその中でもまだ生きてる娘さんが彼氏さんと出会えたのは、ほんと良かったなと思った。

印象に残ったこと。
死んだら、笑うたびに光るってこと?
蛍みたいですねぇ。
弁当をちゃんともってこられた遠足と、玄関に忘れてしまった遠足ぐらい驚きに差があると思いますよ。
俺たちはもしかしたら、自分を救いうる他者の営むを、漠然と、神様と呼んでいるだけかもしれない。
道ができた、と唐突にわかった。
方法を2人で考えよう。
ない道を2人で作っていく。



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2025年11月14日

Posted by ブクログ

死んだらどうなるのか、生きている間は決して知ることができない。生きて背負ってきたものを見つめて少しずつその荷物を下ろしていくような旅が用意されているとしたら、とても不思議だけど人は死んでも人として在るんだなぁと思ってしまった。私の心に引っかかって、ふとした瞬間に思い出す小説になりそう。

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2025年11月07日

Posted by ブクログ

彩瀬まるの家族の話…!彩瀬まるは女性同士や夫婦の話も多けれど、同時に家族の話も多い
今回の話もそうだけど、明確に問題がある親子関係の話(虐待やネグレクトなど)は少なくて、ある程度家族としての活動は滞りなく進んでいるのだけど、でもどこかしらに屈託があったり、ぎこちなさがあったりして、それとの向き合いやままならなさを細やかに描いている
別に家族を構成する誰かが、誰かのことを明確に憎んでいるわけでもない。むしろ家族のために、家族を構成する一員として果たさなければいけない役割に身を浸しすぎた結果として、微妙に家族のなかでズレが生じて、そのズレが居心地の悪さにつながる。
じゃあ、あのときどうするのが一番よかったんだよ!と言いたくなるんだけど、かといってやり直すことはできない。そのもうどうにもできない、けれど自分のなかずっとわだかまっているこの気持ちを無視することはできない。どうしていこうか、どう向き合えばいいのか。悩みながらもがきながら、痛みを伴うけれど誠実に自分を通して家族を見つめ直す作品だった。それでいて読後感に爽やかさやあたたかさが残っており、その読後感の炭酸水を飲んだあとのような心地が彩瀬まるの作品の良さだと思う

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

厳しい作品だった

作中にあったように、ゆるやかな死は、自身においても周りの人たちにおいても、いろいろなことやものを整理する時間があるが、突然の死には、なにもない
死んだ人も生きている人も、おなじように大きな傷を負って、たぶん生きてる側はずっとそれを抱えて生きてゆく
いつか時が、、、というけれど、たとえ心の平穏は訪れても、決して消えることはない悲しみはずっとそばに寄り添うだろう

死への畏怖があるからこそ生への尊厳があり、作中を通じて投げかけられていることに対峙することが難しい自分はまだまだだなあって、まあ、いくつになってもまだまだで、それがわかるのはいつか死を受け入れたときかもしれないし、それでもまだわからないかもしれない

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2025年10月28日

Posted by ブクログ

〈在ることはつらい〉けれど、だからこそそれに堪えて、いて(存在して)くれる他者が光になるというこちら側の理が死後の世界でも続いていてくれる物語に私は救われる思いがした。拍動の停止がすべての苦しみから解放してくれる世界はきっと呼吸がしやすい。でも彩瀬さんはそんな理想論の逃げではなく、苦しみの起点から一緒に道を作りあげていく人間たちを誠実に示してくれている。幻想的な描写でのアプローチの仕方も含めて、らしさの溢れた作品でした。

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2025年10月17日

Posted by ブクログ

日記帳で繋がる現世とあの世。
近しい人が現世を離れても繋がりが持てるというのは素敵な話だと思う。
自分が死んだらどうなるかなんて、誰も分からない。
もしかすると作品のような世界が待っているのかもしれない。
それは数十年後の楽しみとして取っておくとして、今は生きていることを存分に楽しみ、後悔のない人生を送りたいと思う。

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2025年10月12日

Posted by ブクログ

息子を事故で無くした母が「苦しむことだけが私に残された正しさなんじゃないだろうか」と振り返るところは辛かった。死後の世界を描いた不思議なお話。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

弟が幼くして亡くなり、自分と両親が生者と死者に分かれた後に再生していく。死後の世界、死んでから本当に成仏していくまでの有り様が、リアルに感じられた

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

亡くなった両親の話より、現実の娘の話の方をもっと知りたかったな。あの世で母が記す日記の続きが気になる。

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2025年11月16日

Posted by ブクログ

人は何かしら意味のある行動をして自分を生きている。

現世と死後の世界を交互に楽しめる不思議な小説でした。
家族を失うことで各自が感じる命の考え方を知れた気がします。

子を失うことで自分に与える影響や周りに対する対応など色々なことが変わってしまう。とても興味深い内容であり面白かったです。
また、死後の世界はとても不思議でお化け?妖怪?など疑問に思う部分はありました。けど、意外にも死後の世界はそうなのかもしれないと考えるようになりました。

今までにない不思議な感覚に浸りたい人にはおすすめの小説です。

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2025年11月14日

Posted by ブクログ

ちょっと夢あるな…死後の世界で夫に会えること、亡き母から手紙のような日記が綴られる。
てもなんだか少し中途半端だったような気も。特に現世での、残ったものの扱いが。なんとなく消化不良

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

小学1年生のときに3歳の弟を亡くし、2年前に父を、今度は母を亡くした燈子は天涯孤独となった。遺品として持ち帰った母の日記に書かれるはずのない新しい記述が現れ……という導入部は完全にホラーである。
物語は燈子の生きる“こちら”と、死者のいる“あちら”を交互に描きながら進む。人は死ぬとどうなるのかというテーマを根底にしながら、どのように生きるべきかにまで踏み込んでいく。ちょっと宗教っぽさも感じた。
ぼくは死んだらそれで終わり、輪廻転生もないと思っているが、こればかりは死んでみないとわからない。でもまあ、こんな死後は御免被りたい。

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

死の世界をみちゆくひとと、生の世界をみちゆくひと。どちらも前に進むために心の整理が必要なんだな、と。

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2025年10月14日

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