あらすじ
「遠くへ行きませんか」「行くー!行きましょうぞ!」スポーツ用品販売会社に勤める素子は、同じく保育園に通う子供を持つ珠理を誘って、日帰り温泉旅行に出かけることに。ずらりと食卓に並ぶのは、薬味をたっぷり添えた鰹のたたき、きのこと鮭の茶椀蒸し、栗のポタージュスープ。季節の味を堪能するうち、素子は家族を優先して「自分が食べたいもの」を忘れていたこと、母親の好物を知らないまま亡くしてしまったことに思いを巡らせ……(「ポタージュスープの海を越えて」)彼女が大好きな枝豆パンは、“初恋の彼”との思い出の品。病に倒れた父の友人が、かつて作ってくれた鶏とカブのシチュー。――“あのひと口”の記憶が紡ぐ6つの物語。
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彩瀬まるさんの小説を読むのは3作品目。今まで言葉にこそしてこなかったけどずっと渦巻いてた思いや、黒でも白でもない複雑な感情を、リアルに、でも冷たく無く物語に言語化することで優しく核心を突いて消化してくれる…そんな印象の作家さんです。
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「シュークリームタワーで待ち合わせ」
子供を事故で亡くした旧友を食事で寄り添っていく主人公の夜子。そんな支え方もあるのかと考えさせられました。
「大きな鍋の歌」
登場人物の描写が秀逸。読み終わった後ほんのり気持ちが暖かくなりました。
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食事、料理にまつわる短編集。
生きるって難しい。
苦しかったり、悩んだり、時にはもがくように生きたり。
でも食べる事は生きる事。
食べて美味しいという感情は人を救う。
また前を向いて生きようと思える。
各話色々考えさせられた。
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食べることは生きること。自分や大切な人のために美味しいと感じられる料理を作りたい、美味しいものを誰かと楽しくいただきたい、そんな時間を大切にしたいと改めて思わせてもらえる本でした。
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食をキーにした短編集。著者は、女性の心の揺らぎ、シスターフット系の作品に長けている。
ふと道を外しジャンクなピザの味に恍惚としたことで、逆にメンタルを病んだ夫を理解し包摂できるようになる「ミックスミックスピザ」子を亡くした友人を引き取って食を与え続け自らの喜びを知る「シュークリームタワーで待ち合わせ」がんで味覚を失い死にゆく優しい友人が残してくれた鍋「大きな鍋」がよかった。
P172「家庭は、異世界だよ。社会とは違う。ちょっとずついろんなものがずれる。愛情で、何らかの磁場が狂う。」
P182それは奇妙に甘美な体験だった。一つの命にずっと触って、それが太くしたたかになるのを待っているのだった。【中略】私はたぶん今後も、満ち足りた人を祝福するヒトサラは作らないのだろう。そういう食卓を、心の底では信じていない。それよりも幸のような人に食べてほしい。苦しい時間を耐えていく人の食卓に豊かさを作りたい。
鶏とセリのさっぱり煮:鶏とセリに細切りにしたゴボウ。薄味に仕上げてお酢とごま油で風味をつける。
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私とよく似た人がたくさん出てきた気がする。てことはどの人も普通の平凡な人たちなんだろう。どっか満たされない部分とか、どうしても埋められない隙間を、なんとかしようとする食事。食べることは生きることだってことなんだろうな。ポタージュスープの話は「夢オチかよ!」なんて全く思わなかったばかりか、なんだこの話すごいって読み終えてしばらくゾワゾワしてた。不思議で温かくて、この人の作品好きかも。
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タイトルが本の内容をぎゅっと凝縮していて秀逸。
どんなに難しい状況にいても、食べずには生きていけない。
どの話にも苦い現実があり、けれどそれを包むようなひたむきさや、優しさがあり、じんわりあたたまった。
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P35
「嫌われることが一番こわかったけど、今は、自分の事を自分で決められなくなることの方がずっと怖い。本当にそう、思います。」
P81
「それでも俺は、これを、かなしい食べ物だって思う。だからいつか灯がどん底だけを信じるんでなく、他の、もっと幸せなものに確かさを感じて、このパンを食わずにやっていける日がくればいいって願うよ。」
透くん、ナイスやん。
P124
「夜泣きした下の子を抱っこで寝かせてたら、ヤキモチ焼いた上の子がぐずって起きて、それから二人とも全然寝ないんだけどなんだろうこの地獄」
クスッと笑ってしまった。あるある!そんな地獄。
P176
「正しいとか、誤解とか、そういうのに関係なく、私は幸の安心と納得を優先したいんです。」
夜子の行動がかっこいい。
P217
万田が残した鍋の音だ
あぁ。帯の通り、〝極上の食べものがたり〟だった。
以前にも読んだ気がするがあまり深い感情移入はなく、さらっと読んでしまった気がする。これは読む年代で違うかも。
40代になった今、沁みて沁みてじんわり泣けてくる。自分の人生をを振り返り自分の今の立ち位置を確かめる。いいタイミングで読んだと思う。
誰かを失った時、心がぽっかり空いたとき、また読み返したい本だった。
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食べ物にまつわる物語6つ
人付き合いに悩む人、
忘れられない男性の作ったパンを食べ続ける人、
ラブホテルのピザの味を忘れられない人、
子を亡くした女性
辛い時に救ってくれた病床の優しい友達
食事には寂しさ、優しさ、喜び、いろんな意味が込められていることがある
そう思わせられた
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私のお腹はストレスにとても弱いの。
ストレスのかかることがあると、すぐにお腹が痛くなるし、食欲もなくなる。
だから酷いと5キロ10キロすこーんと痩せてしまう。
体重が落ちるのは一瞬なのに元の体重に戻すのは何年もかかる。
だから、食欲がなくても頑張って食べる。
無理にでも食べる。
正直大変。
そんな時に美味しく食べられるものって誰かが作ってくれた温かいものなんだよね。
やっぱり温かいご飯は心も身体も癒してくれる。
なんか、そんな話が詰まってた。
そんなに気楽な話ではないけど、ほんのり温かい読後感だった。
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心にすうっと入ってくる彩瀬まるさんが紡ぐ言葉。
やさしいだけじゃなくて、苦しさや弱さも、すべてがスパイスになって人生の味に深みを与えてくれる。
「きらわれることが一番怖かったけど、今は、自分のことを自分で決められなくなることの方がずっと怖い。本当にそう、思います」
「食べるってすごい」
「すごくて、こわいね」
「生きたくなっちゃう」
ストレスを感じても、辛くてしんどくても、
誰かの作ってくれたごはんの温かさに救われたり、ホッとしたり。
誰かと一緒に食べる温かいごはんがいちばん美味しいし、誰かのために作る時間も楽しい。
ひとときだけでも、温かいごはんは自分を救ってくれる。和らげてくれる。
どんなときだってごはんは寄り添ってくれる。
食べることは生きることでもあるんだと思った。
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なんとなく手に取った本なのですが、良かったです。おいしいものが出てくる本が好きなので、最初のワインと煮込みの話からたまらなくて、こんならお店が近くにほしい!食べることが、生きることとつながっている、当たり前だけれど人を前に進めてくれる本だと思いました。
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食べることは生きるための行為でもあるし、苦しみを軽減する手段でもあるかもしれないと思った。「かなしい食べもの」が印象的だった。灯が枝豆チーズパンを作って欲しいと彼氏にお願いした時はなんて可愛らしいお願いなんだろうと微笑ましかったが、その背景を知ったら切なくなった。しかし、最後はそれを食べなくても大丈夫になり、良かったと安心した。
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心にじんわり来る、ほっこり短編集。結婚観、家族観を考えさせられるストーリーばかりで、冬に食べる鍋とか湯豆腐みたいに心が温まります。食べることは、殺すことだし、生かされているからこそ力が湧いて、心を癒してくれる。素敵な1冊だった…
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食に関する短編集。食べ物で人に寄り添い、そして食べることで元気になる。
特に最後の「大きな鍋の歌」が良かった。万田は松ちゃんや娘の野栄の身の上に大変なことがあった時には、思いやりの料理で励ましてくれる。そして、小さかった野栄にもその気持ちはしっかり通じていた。独身で通した万田だが、優しい人生を過ごした人なんだろうなと思った。
私も今受験に向けて頑張る息子のために料理を頑張っている。今朝、息子から「お母さんは毎日料理を頑張っている」との言葉をもらい嬉しかった。会話しながらの家族のご飯は楽しい。来年には家を出る息子との限られた月日、大事に過ごしていきたいと思う。
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食事をキーにした6つの短編集。特に「シュークリームタワーで待ち合わせ」と「大きな鍋の歌」がよかった。夜子が何となく自分に似てる(笑)夜子が幸のために食事をふるまっていくのはすごく良かった。
特に後半の2編に食と生のつながりを強く感じて心に響いた。
普段自分は別に料理が好きでもないし、人にふるまうよりふるまわれる方が好き。でもスキルのない人でも容易に、あたたかく優しさを伝える事ができるものに料理や食があるんだなと温かい気持ちになった。
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食事を通じて変わっていく人間関係を描いた6つの物語。
現代に生きる私たちが抱える不安や悩みが、それぞれの食事を通して解消されていく。どの物語も読み始めはザラザラとした感覚が心の中に生まれるけど、登場人物が咀嚼するほどに滑らかになっていく感覚。
子育て中の女性が主人公ということもあって、「ミックスミックスピザ」「ポタージュスープの海を越えて」「シュークリームタワーで待ち合わせ」は頷く部分が多かった。3つとも「完璧でなくていい」「母親になっても自分は自分でいい」というメッセージが伝わる。大切なものを大切にしながら自分の人生を生きていくという、覚悟を決めた主人公たち。登場人物から勇気と力強さをもらった。
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6つの短編。心の機微の描写が細かくて、自分の身近な人の物語みたいに近しく親しく感じます。あたたかい誰かの手作りの食事を食べたくなりました。どれも素敵ですがコーンポタージュの海が1番好みかなあ。
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食べ物にまつわる短編集。
「食べることは生きること、つくることは生かすこと」って感じ。
誰かのために自分を大切にするだけじゃなくて、自分のために自分を大切にできるようになりたいなぁと読み終わってぼんやりと思っていた。
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食は人が生きていく上で欠かせないもの。食べられることができるのなら人は死なない。食への祈りと希望みたいなものを感じました。料理がどれもおいしそうで食欲がそそられる。「ひと匙のはばたき」「大きな鍋の歌」が好きでした。
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生きていくために食べ物を食べる。
暮らしの中で食事する。
食べ物をただ食べることと、食事をするということは私にとってニュアンスが違う。母親の闘病中は心配させないように私が倒れないようにと食べ物を食べ、亡くなった後は私何で生きてるんだっけと思う日々の中、惰性で食べ物を口に入れる。
あぁ、美味しいと感じる幸せ。それを共有できる友人・仲間がいる幸せ。
気持ちを引き上げてくれる食事。サポートしてくれる友人・仲間。
読んで、そういうことを考えた。
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日常の代名詞、あるいは生きることのテーゼとして食べ物が出てくる短編集。ある程度年齢が行っていたり、本を多く読んでいると、日常の範囲に入るような話で、新しさは全く感じない。生死を含むその日常を静かに受け入れるお話かな。
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食にまつわる六編からなる短編集。
その中から『シュークリームタワーで待ち合わせ』を。食べる事は生きる事。どんなに悲しくても食べれば少しずつ回復する。一歩を踏み出すことができる。
そう信じて、元気になれる食事を摂りたい。
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それぞれの登場人物の、食べ物に関しての思いが書かれているお話だけど、全体的にふわっとしててよく分からなかった。「鳥」はあまりにも空想的だし、枝豆パンは家庭で何が起きたのか、どうして従兄弟に恋愛感情をもったのか(彼氏の目線で初恋の男と断定されただけで、真実が本人から明かされるわけでもなく)、もう少し解説がほしい。4話目と5話目は、少し重めの話ではあるけれど、好きかも。生きること=食べることで死とは反対の行為で、別の立場に置かれているけどそれぞれ死と向き合っている人たちから、生きることは何かと考えさせられた
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人との関わり方に少し癖のある人たちと、心安らぐ料理の話。
価値観ってなかなか難しいなと思いました。
家庭、家族になると磁場が歪むという表現に納得しました。
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それぞれの話が独立していて、それぞれの世界に連れて行ってくれました。
登場人物たちが不器用ながらも素直に悩みと向き合い、完全解決とまではいかなくとも一歩明るい方へ踏み出せた感じが、じんわり良い余韻を残してくれます。
食べるは生きることだなと再実感。
私のご飯を食べる人が強くしなやかに生きる力をつけるよう、念を送りながら食べさせよう、と思いました。
Posted by ブクログ
懐かしい思い出、ほろ苦い思い出。
色々な思いが詰まった食べ物にまつわる短編。
不思議な雰囲気のお客さんは鳥料理を食べない。
波風立てずに全てをやり過ごす彼女に抱いた感情。
つらいときに好きだった人が作ってくれたパン。
複雑な思いでそれを作る彼と、もうそれを食べなくても大丈夫になるまでの彼女。
病気の夫を支えることへの不安から、会社の年下の人と不倫してしまったけれど、そのとき食べた罪悪感たっぷりのミックスピザに勇気をもらうまで。
子育ての息抜きに友達と小旅行で、誰かが作った食べ物を食べて温泉に入って、また日常に戻っていくまで。
幼い息子を亡くして気力を失った友達に、毎日食事を作って食べさせて、なんとか生きる気力を繋いだ日々。
病気で入院中の父の友人が、かつて作ってくれたシチューの思い出。
最初のひと匙のはばたきだけ妙にファンタジーだったような?
かなしい食べ物、好きだった人が作ってくれていた食べ物を今の恋人に作らせるって、なんだか薄気味悪いなと思ってしまった。。。ごめん。
毎日食事を作る身としては、誰かが作ってくれた料理を食べる喜び、とても共感。
Posted by ブクログ
食べ物にまつわる短編集。
私はこの中ではかなしい食べものが印象に残った。
思い出の食べ物があった時に、それにまつわることが悲しかった時に、食べられなくなったり、見たくなくなるものかと思ったけれど、その思い出を思い出にできるようにするために、食べる行為が必要なこともあるのかと感じた。