あらすじ
「遠くへ行きませんか」「行くー!行きましょうぞ!」スポーツ用品販売会社に勤める素子は、同じく保育園に通う子供を持つ珠理を誘って、日帰り温泉旅行に出かけることに。ずらりと食卓に並ぶのは、薬味をたっぷり添えた鰹のたたき、きのこと鮭の茶椀蒸し、栗のポタージュスープ。季節の味を堪能するうち、素子は家族を優先して「自分が食べたいもの」を忘れていたこと、母親の好物を知らないまま亡くしてしまったことに思いを巡らせ……(「ポタージュスープの海を越えて」)彼女が大好きな枝豆パンは、“初恋の彼”との思い出の品。病に倒れた父の友人が、かつて作ってくれた鶏とカブのシチュー。――“あのひと口”の記憶が紡ぐ6つの物語。
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Posted by ブクログ
6編の短編集
「食べること」は、体を作り、エネルギーを得ること。
「食べること」は、家族や社会での人間関係を円滑にすること。
「食べること」は、生きること。
しかし、それぞれの話に出てくる「食べること」はそれだけではない事に気付かされた。
いや〜 たぶん、私はそのことをぼんやり感じてはいたんだけれど、それぞれの短編の中の会話で明確にされて、ドキッとしたんだと思う。
それは、納得するような、安心するような感じだった。
どの話も少しさみしいような、でも、前に進んで行く強さを感じた。
明日のために、温かいものを美味しく食べたくなった。そして、大切な人に温かいものを食べてほしいし、食べさせてあげたくなった。
『ミックスミックスピザ』
いっそ官能的なくらい不健康で、頭が悪くなりそうな美味しさだった。
気がつけばいつだって、次の仕事の問題点や夫の体調のこと、子どもの教育のこと、食事のこと、ややこしくて意味のあることばかり考えてきた。
あの木漏れ日が差す山を歩いていたときに比べて、私たちの足はなんて重くなったんだろう。決して落とせない宝物を背負い、疲れ、病を得て、無数の問題を引きずり、死ぬまで口にできない弱みまで抱えた。荷は増え続けるだろう。それでも、二人で行く。冒険は続いている。
『ポタージュスープの海を越えて』
この、誰が喜んだわけでもない漠然とした夕飯はなんだったんだ
家族の味の好みとか、栄養とか、生野菜を食べる練習をさせなきゃとか、そういうことばかりジグソーパズルみたいに考えてたら、自分がなにを食べたいかぜんぜん分からなくなってた
この人はきっと、自分が好きでないものは、もう一口も食べていないに違いない。そんな潔さと喜びのにじむ、清らかな食卓だった。
『シュークリームタワーで待ち合わせ』
毎日毎日、生きたいと消えたいの境界をさまよいながら箸を使う友人の口を、食の誘惑でこじ開ける。さくさくと噛み砕かれ、ごくんと嚥下された温かいかたまりは、否応なしに彼女の血肉を潤す。これであなたは、明日も死ねない。
Posted by ブクログ
食事をキーにした6つの短編集。特に「シュークリームタワーで待ち合わせ」と「大きな鍋の歌」がよかった。夜子が何となく自分に似てる(笑)夜子が幸のために食事をふるまっていくのはすごく良かった。
特に後半の2編に食と生のつながりを強く感じて心に響いた。
普段自分は別に料理が好きでもないし、人にふるまうよりふるまわれる方が好き。でもスキルのない人でも容易に、あたたかく優しさを伝える事ができるものに料理や食があるんだなと温かい気持ちになった。
Posted by ブクログ
とにかく、あったかい気持ちになった。
心に響いた文章が多かったです。
ずっと頼ってきたものを捨てるのは怖いでしょう。仕方ないですよ。たぶんそんな日のためにお酒とかおいしい食べものとか、こういうお店はあるんです
ぜんぶ、望んだものをなにもかも、ってわけにはいかないだろうけど、きっとなにかいいことがある。それを信じてもいいと思う
二人で歩き続けよう。迷っても、怖くなっても、ずっと一緒にいたい
Posted by ブクログ
それぞれの登場人物の、食べ物に関しての思いが書かれているお話だけど、全体的にふわっとしててよく分からなかった。「鳥」はあまりにも空想的だし、枝豆パンは家庭で何が起きたのか、どうして従兄弟に恋愛感情をもったのか(彼氏の目線で初恋の男と断定されただけで、真実が本人から明かされるわけでもなく)、もう少し解説がほしい。4話目と5話目は、少し重めの話ではあるけれど、好きかも。生きること=食べることで死とは反対の行為で、別の立場に置かれているけどそれぞれ死と向き合っている人たちから、生きることは何かと考えさせられた
Posted by ブクログ
懐かしい思い出、ほろ苦い思い出。
色々な思いが詰まった食べ物にまつわる短編。
不思議な雰囲気のお客さんは鳥料理を食べない。
波風立てずに全てをやり過ごす彼女に抱いた感情。
つらいときに好きだった人が作ってくれたパン。
複雑な思いでそれを作る彼と、もうそれを食べなくても大丈夫になるまでの彼女。
病気の夫を支えることへの不安から、会社の年下の人と不倫してしまったけれど、そのとき食べた罪悪感たっぷりのミックスピザに勇気をもらうまで。
子育ての息抜きに友達と小旅行で、誰かが作った食べ物を食べて温泉に入って、また日常に戻っていくまで。
幼い息子を亡くして気力を失った友達に、毎日食事を作って食べさせて、なんとか生きる気力を繋いだ日々。
病気で入院中の父の友人が、かつて作ってくれたシチューの思い出。
最初のひと匙のはばたきだけ妙にファンタジーだったような?
かなしい食べ物、好きだった人が作ってくれていた食べ物を今の恋人に作らせるって、なんだか薄気味悪いなと思ってしまった。。。ごめん。
毎日食事を作る身としては、誰かが作ってくれた料理を食べる喜び、とても共感。