太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ大庭葉蔵、改め太宰治の半生を元にした手記。
物心ついたときから、自分は他の人と良くない方向で何か違うと感じる。
だけどそんな自分を悟られないように道化を演じることで、世間の流れに迎合する。
世間が何者なのか理解できずに恐れている。殻を破って理解しようともしない。
ただ、道化となって何とか合わせているだけ。
道化と言っても、
P69「はじめて自分が、恋したひとの声だけに、痛かったのです」
とあるように感情はあるもので、人としての痛みを知っている。
ただそんな相手を前にして恥をかき、入水自殺を決行する。
隠している弱い部分を見られると自尊心が消え去り、一気に死んでしまいたくなるのかもしれない。
結局葉蔵は死ねず、一緒に自殺した女だけ死んだ。
↓この部分が葉蔵がどんな人間なのかをよく表している。
P85「自分は、皆にあいそがいいかわりに、「友情」というものを、いちども実感した事が無く、堀木のような遊び友達は別として、いっさいの付き合いは、ただ苦痛を覚えるばかりで、その苦痛をもみほぐそうとして、懸命に道化を演じて、かえって、へとへとになり、わずかに知合ってる人の顔を、それに似た顔をさえ、往来などで見掛けても、ぎょっとして、一瞬、めまいするほどの不快な戦慄に襲われる有様で、人に好かれる事は知っていても、人を愛する能力に於いては欠けているところがあるようでした」
⇒私からすれば友達と呼べる人なんて数人であり、それが普通だと思っているが、葉蔵はそれが異常だと思っていたのかもしれない。世間の人たちは自分が思っている以上に、交友関係は広くも厚くもなく、冷たい。そうは思えてないということは、葉蔵は以外にも純粋な人間だったのかもしれない。
↓ここも葉蔵の八方美人な姿が伝わる。誰にでも良い顔をするから、誰からも好かれない。
P141「すすめられて拒否すると、相手の心にも自分の心にも、永遠に修繕し得ない白々しいひび割れが出来るような恐怖におびやかされる」
自分以上に純真無垢な人と出会い、幸せな人生を歩むもうとしたところで姦通事件に遭う。女との関係に亀裂が入る。ある日、女が自殺を図るために用意していた薬を見つけてしまい、葉蔵はその薬を飲んで再び自殺を図るが、また生還。
狂人となった葉蔵は脳病院に入院し「人間、失格」と悟る。
ただ最後に、自分の中での人間らしい部分に触れるのであった。
葉蔵は生涯道化を演じ続けてきて、数多の女性に好意を向けられてきた。
羨ましくも思う反面、猫を被った状態を好かれても、自分の何を知って好きになったのか、問うてしまう気持ちも分かる。
世間の人が何を目標にして生きているのか、何が楽しくて生きているのか、生きる理由とは何なのか、自分のアイデンティティとは何なのか、そんなことを考えていた時期がある。そんなことばかり考えていると、当然の如く気を病む。引きこもる。
”普通”の人はそんなことを考えもせず、淡々と生きているのかもしれない。それを羨ましくも思いながらも、普通の人とは違う生き方をしている自分に誇らしさも感じていたり。
自分の人生に没頭できない苦悩、その部分については葉蔵に同情してしまう。 -
Posted by ブクログ
1950年。再読。高校生くらいの時に。確か読書感想文を書いたような、この内容で高校生に感想文書かせないような。
「姉さん。僕は、貴族です」にシビれた覚えがある。ズッキュンだったな。
昭和20年代だ。斜陽族という流行語を生んだらしいが、その頃に生きてないので知らん。
年譜を読んだ。自殺(心中)→失敗を繰り返しているイメージあったけど、結婚して子もできて、執筆頑張った時期もあったのね、と思った。そりゃ書かなきゃ後世に残らないもんね。
明るい気持ちになる小説ではないけど、堕ちていく美学みたいな? 思うに明治生まれの作家の実家は金持ちだ。五男だから大変だ、長男だから大変だ、と言い分はいろいろあるだろうが、小学校出て丁稚奉公であるなら小説は書かないと思う。小説書くのって大変だ。