太宰治のレビュー一覧

  • 太宰治全集(9)

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    無糖のホットチョコレートみたいな1冊。苦さに苦さを重ねる中にほろりと甘く感じる一瞬があり、すっと溶けていく文体の滑らかさになぜだかほっとする。

    マイチェホフの狂気を「斜陽」で思い出し、真の革命の意義を「おさん」で学び、「眉山」でやるせなさに涙して、待望の「人間失格」に取り掛かる。

    人を針金入りのモールだとする。人を取り巻く社会(世間?)は常に渦を巻いていて、モールの体をうまく曲げれば、別のモールとひっかかることを繰り返し、渦の中心でずっと回り続ける事ができる。だけど自分が曲がらない、もしくは曲げる方向を間違ってしまえば、渦の外側へと容易に弾き飛ばされてしまう、そんなもんだと思う。

    葉蔵は

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    2018年11月28日
  • 太宰治全集(7)

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    「津軽」はけんちん汁みたいな一冊。地の物満載、郷土愛に溢れ、田舎出身のわたしにはどこか懐かしい味がする。

    自分が生まれ育った故郷への愛情を幾千万人に伝えることのできる幸せを、太宰は果たして感じていたのだろうか。顔向けのできない愛する郷土の為に、太宰は情熱をもって仕事をしていたのだろうと推測する。

    「人は、あてにならない、という発見は、青年の大人に移行する第一課である(40項)」

    「『や!富士。いいなあ。』と私は叫んだ。富士ではなかった(132項)」

    「親孝行は自然の情だ。倫理ではなかった(179項)」

    登場人物の会話がなかなかにシュールでとても面白い。高尚な道化を交えるからこそ至言格

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    2018年11月28日
  • 栞子さんの本棚2 ビブリア古書堂セレクトブック

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    江戸川乱歩、他『栞子さんの本棚2 ビブリア古書堂セレクトブック』角川文庫。

    三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖』に登場した古今東西の名作集、第2弾。残念ながら今回も抜粋作品が多い。

    江戸川乱歩の『孤島の鬼』『黄金仮面』『江川蘭子』は抜粋。全文掲載は『押絵と旅する男』と『二銭銅貨』の2編。中でも『二銭銅貨』は傑作中の傑作。この時代にこれだけのレベルの暗号ミステリが創られたとは信じられない。何度読んでも面白い。

    小林信彦の『冬の神話』、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』『ハムレット』も当然の如く抜粋。

    小沼丹の『黒いハンカチ』は江戸川乱歩と同じような系統の小気味良いミステリー。時代を感じつ

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    2018年10月30日
  • 太宰治全集(5)

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    旬の秋刀魚みたいな一冊。肝の滋味あり、脂の旨味あり、食感の楽しさあり、太宰らしさが一番出ている文集では?と浅はかながら思った。

    各文集にテーマがあるなら、ここでは「苦難」かな。「水仙」「正義と微笑」「花火」と、あたりまえの人生をあたりまえに送れない人達のほろ苦さがまざまざと描かれているけど、それはきっと太宰の心中を幾分は投影しているんだと思うし、滋味深いなと感じた。思えば、正義と微笑にある兄弟の絆は、太宰がとっても欲しかったものなのかもしれない。そんな軽い機構じゃないだろうけど、正義と微笑は太宰の理想を形にしたものにも思えてくる。

    「これがあの、十六歳の春から苦しみに苦しみ抜いた揚句の果に

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    2018年10月22日
  • ヴィヨンの妻

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    『パンドラの匣』がすごく面白かったです。病床の物語ということで暗いものを想像していましたが、全然そんなことはなく読みやすかったです。
    『グッド・バイ』は名前と未完であることは知っていましたが、まさかこんな唐突に終わってしまうとは……。

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    2018年10月21日
  • ろまん燈籠(新潮文庫)

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    5人兄弟のリレー小説という形式の表題作「ろまん燈籠」を始めとした短篇集。
    「ろまん燈籠」はとある5人兄弟がリレー形式で小説を執筆するのですが、物語の序盤で其々の性格や好みの文学について等の前情報があるので、その知識を踏まえて読むと「こういう風に繋げるのか、何となくわかる」「性格出てるなあ」など感じながら読み進めることが出来て面白かったです。5人其々に個性があるので、小説自体がどのような結末へ向かうのかという楽しみもありました。
    其々異なった文体でロマンチックであったり怪奇的であったりと、ひとつの物語で様々な表現を試みた太宰の手腕にも驚きました。
    「みみずく通信」では私の地元の新潟市を訪れた際の

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    2018年10月14日
  • 太宰治全集(4)

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    ラズベリータルトみたいな一冊。溢れ出る激情の果汁が、さっくりした文体に乗っかって至極の風味を醸し出している。言い過ぎか。

    激情ってのはなんだろう。上手く言えないけど嫉妬、憎悪、恋慕、人への憧れかな。共感できるテーマが多く編纂されていて、新ハムレットもあるし初めて太宰治を読むなら全集4がオススメかも。

    きりぎりす
    ろまん燈籠
    みみずく通信(特にラストの一文)
    清貧譚
    千代女
    新ハムレット
    風の便り


    面白いのが本当に多かった。

    なかでも新ハムレットは、まさに激情型。憎悪と愛情の交差。ここまで人を罵倒できる表現があるのかってぐらいに誰もが誰もを憎み、愛し、敬い、妬む。本作実は読んだことな

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    2018年10月11日
  • 太宰治全集(3)

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    お中元でもらう高級お茶漬けセットみたいな1冊。食べ応えのあるもの、懐かしい味のするもの、新しい味のするもの、20篇以上の特色あるバラエティがアソートされてるので、すすすっと読めるうえ、どれも本当に風味が豊か。読みやすさ、親しみやすさにホッとする、そんな1冊だった。

    全集2よりも気に入った短編が多かった。
    全集2では人の優しさや温かさに触れる主人公の心情変化に主眼が置かれたものが多かったけれど、女性にフォーカスしたものと、太宰自身が生活を省みる自伝のような作品が収録されている。別にそんな他意なく編纂されてるんだろうけど。

    畜犬談
    皮膚と心
    女人訓戒
    駆込み訴え
    老ハイデルベルヒ
    善蔵を思う

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    2018年09月26日
  • 津軽

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    限定カバーが素敵だったので数年ぶりに再読しました。
    宿命の地である津軽の紀行文でありながら随所に太宰節も織り交ぜつつ、幼少を過ごした地でかつての友や女中などと出会い語り合うことで、津島修治としての内面も垣間見ることのできる貴重な作品でした。
    風景描写も秀逸でまるで故郷に帰ったような気分になり、
    育ての親であるたけとの再会で〆られていて、読後の穏やかな余韻は気持ちが良かったです。

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    2018年08月04日
  • 新ハムレット(新潮文庫)

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    大学生の頃太宰好きで新潮文庫でどんどん読んでったんだけど、その最初に読んだのがコレだった。太宰はやっぱり単純に文章が大好きだ〜!
    なんて優しいのだろうか。
    久しぶりに読み返したら、ハムレットが今職場で手を焼いている若い男の子に重なって仕方なかった( ・∀・;)

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    2018年07月21日
  • 人間失格 2

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    ネタバレ

    結婚して春になったら二人で自転車で青葉の滝を見に行こう、という場面。
    構図の妙。男女の笑顔。
    これが美しければ美しいほどのちの悲劇は強調される。
    この漫画においては「凧」が効果的に再登場する。
    また「父来訪」も漫画のアレンジ。
    さらには「青木」という男のビジュアルもまた、鮮烈。
    たぶん3巻で完結。

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    2018年04月06日
  • 乙女の本棚3 葉桜と魔笛

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    ネタバレ

    めちゃくちゃおもしろかった!と太宰さんに伝えたい。
    最初の二行、絵本だからできることかなと思った。
    完全に女性に憑依している文体。すごい。
    文と背景の配色が瑞々しい葉桜で好き。
    これお姉ちゃんだったのか。三つ編みの子が主人公だと思ってたわ。口紅してるし女性だよなぁ。そうだよなぁ。
    何故檸檬の描写なのだろう。

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    2018年04月06日
  • 太宰治全集(6)

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    まだどこか、この国のしていることを信じているけれど、うるさいぎらぎらした「言葉」が鬱陶しかったのかな…という印象の「散華」が好き。
    その反動が戦直後の作品に現われていて、かわいそうなほど。

    この時期が転換点になっていそうな気がした。
    勉強したことがないから、太宰については全然詳しくないのだけれど。

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    2018年04月03日
  • 男性作家が選ぶ太宰治

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    女性作家が選んだものとはまた違う感覚の作品も多く、未読作品が多かったのでとても楽しめた。餐応夫人がすき。この作家さんはこういう作品を選ぶんだなぁ…って部分でも楽しめてなんだかお得。

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    2018年03月16日
  • 人間失格 1

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    ネタバレ

    伊藤潤二による『人間失格』の漫画化作品。全体の筋は概ね原作どおりだけど、オリジナルのエピソードが追加され、悲惨さや滑稽さが誇張されている。
    葉蔵が「道化」として振る舞うときに見せる、不安と緊張に満ちた笑顔が、伊藤潤二のタッチにぴったりはまっている。

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    2018年03月11日
  • ろまん燈籠(新潮文庫)

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    ネタバレ

    太宰の中期の作品。
    時代的に戦争中の話が多かった。
    また意外と庶民的な面を垣間見れた短編集。
    講演をした際に地元の学生から「案外、常識家ですね」と言われたり、日々の生活の中で、少し神経質で気の弱い面が多々見られた。

    表題の『ろまん燈籠』は五人の兄妹の短編連作でユーモアに満ちた作品。
    『散華』は知り合いの若い大学生から太宰に宛てた手紙の入った辛い作品。
    「大いなる文学のために、死んで下さい。自分も死にます、この戦争のために。」はなんとも切なく遣りきれない想いを感じた。

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    2018年02月12日
  • 女性作家が選ぶ太宰治

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    未読既読入り交じっていたけれど、男性作家が選ぶ作品とはやはり色が違って面白い。くすっと笑ってしまえるあたり、やはり太宰の魅力。

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    2018年02月11日
  • 人間失格 1

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    廓通いを経たあとの主人公の退廃的な姿を描いた1枚絵が素晴らしい。しかしこれ読んで思ったけど太宰はやっぱり女嫌いだな。

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    2018年02月10日
  • 人間失格 1

    ネタバレ

    驚愕

    知ってはいましたが読んだ事はなかった、太宰治の人間失格。こんな話なの!!と驚きましたが。伊藤潤二さんの絵で読むと、ホラーじゃないのにホラーに見えてくる。小説も読んでみたいと思いました。凄い衝撃的を受けます。

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    2017年11月30日
  • 太宰治全集(10)

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    太宰治全集の最終巻で、太宰治の名前で発表されたあらゆる随想が収録されている。

    年代順に並べられているため、一人の作家がいかにして生きてきたかがとてもよくわかる。

    太宰治は、自分の生きづらさ、格好悪さ、ダサさと向き合い、ひたすら見つめ続けた作家だと思う。そして、そうすることで生を肯定しようとしたのではないか。太宰を読んでいて時々居た堪れない気持ちになるのは、あまりにも率直に彼自身の弱さが描かれているからだ。

    随筆の中でたびたび「実直」という言葉が出てくる。弱さに対して正直であり続けること。その先に真実があると信じていたのではないかと思う。

    このような彼の信念は、戦前から戦時中に確立されて

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    2017年11月02日