太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【斜陽】
この世には、美しいものと醜いものとが混在していて、もちろんそれは明確に線引きされてこっちは美でこっちは醜だという風にはなっていません。むしろ、美醜は同一のモノやコトに同居していて、見るとき、見る者によってどちらの面も発現しうるものであるのだ、ということを徹底的に謳った物語のように感じました。
話の大筋だけを捉えると、旧貴族の凋落を描いたどうしようもなく暗い話です。暴力はありませんが、全体が死の気配で満ちています。
嫌悪、疾病、泥酔、困惑、貧乏、没落。そういうネガティブなものが充満する中にあって、可愛らしさや純粋さがところどころで突然に顔を出します。小さく容易に壊れてしまいそうなもので -
Posted by ブクログ
一区切りずつ、丁寧に読むのが味わい深い短編集。太宰治の、緊張しきった鋭利な文章が目を覚まさせる。
『古典風』散文調が現代ではツイートと呼ばれる、様に思われた。てると十郎については少々思い当たる節がある。
『女の決闘』作中の作品とされるものの空気はまるで映画のよう。澄み切った文体で時は冬に違いないと感じた。ただ、舞台はロシアで水溜りは凍ってはいないが。ドキッとしたところを抜き出しておきたい。「真実は、家庭の敵」「念念と動く心の像のすべてを真実と見做してはいけません」「薄情なのは、世間の涙もろい人たちの間にかえって多いのであります」「『女は、恋をすれば、それっきりです。ただ、見ているより他はあ -
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戦時の文章
これはもう見事に、時局に迎合した文章である。余りに見事なので、太宰が心底から皇室に敬意を表している、とても単純素朴な人という印象を受ける。が、拙者のイメージの中の太宰は、もっと皮肉な人の筈なので、その齟齬がとても気持ち悪い。太宰は見事に素朴な人を演じきったのか、それとも拙者のイメージが間違っているのか?
「皇太子誕生で、兄の怒りから一時逃れられたぜ、ラッキー!」と読めてしまうのは、拙者の心が汚れているからであろうか? -
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物語風エッセイ
実際に起こった出来事のようだが、普通に小説としても読める。温泉で見かけた少女を、床屋でも見た。それだけのことを、これだけストーリーとして語れるというのは、やはり太宰は、骨の髄まで作家なのである。
ただの日常に対しても、自然と物語性を見出す。そういう風に生きられたら、なかなか楽しみが多いかも知れない。が、苦しみも多いのだろうな…… -
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原作もののファンタジーだが
よく書けていると言えるでしょう。どこまでが太宰の手柄か、となると難しいですが。
『聊斎志異』はどれも面白いから、リライトとは言え外れる筈もない。
強いていえば、自意識と美意識が過剰な主人公像が、太宰好みかも、というところでしょうか。 -
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吾輩は……
途中までは「気の利いた書きっぷり」が少し鼻につくかなと思ったけど、落とし所は善し。戦後直ぐの読み物としては、それなりに読者の心を癒やしたろうと思われる。