太宰治のレビュー一覧
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5人兄弟のリレー小説という形式の表題作「ろまん燈籠」を始めとした短篇集。
「ろまん燈籠」はとある5人兄弟がリレー形式で小説を執筆するのですが、物語の序盤で其々の性格や好みの文学について等の前情報があるので、その知識を踏まえて読むと「こういう風に繋げるのか、何となくわかる」「性格出てるなあ」など感じながら読み進めることが出来て面白かったです。5人其々に個性があるので、小説自体がどのような結末へ向かうのかという楽しみもありました。
其々異なった文体でロマンチックであったり怪奇的であったりと、ひとつの物語で様々な表現を試みた太宰の手腕にも驚きました。
「みみずく通信」では私の地元の新潟市を訪れた際の -
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ラズベリータルトみたいな一冊。溢れ出る激情の果汁が、さっくりした文体に乗っかって至極の風味を醸し出している。言い過ぎか。
激情ってのはなんだろう。上手く言えないけど嫉妬、憎悪、恋慕、人への憧れかな。共感できるテーマが多く編纂されていて、新ハムレットもあるし初めて太宰治を読むなら全集4がオススメかも。
きりぎりす
ろまん燈籠
みみずく通信(特にラストの一文)
清貧譚
千代女
新ハムレット
風の便り
恥
面白いのが本当に多かった。
なかでも新ハムレットは、まさに激情型。憎悪と愛情の交差。ここまで人を罵倒できる表現があるのかってぐらいに誰もが誰もを憎み、愛し、敬い、妬む。本作実は読んだことな -
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お中元でもらう高級お茶漬けセットみたいな1冊。食べ応えのあるもの、懐かしい味のするもの、新しい味のするもの、20篇以上の特色あるバラエティがアソートされてるので、すすすっと読めるうえ、どれも本当に風味が豊か。読みやすさ、親しみやすさにホッとする、そんな1冊だった。
全集2よりも気に入った短編が多かった。
全集2では人の優しさや温かさに触れる主人公の心情変化に主眼が置かれたものが多かったけれど、女性にフォーカスしたものと、太宰自身が生活を省みる自伝のような作品が収録されている。別にそんな他意なく編纂されてるんだろうけど。
畜犬談
皮膚と心
女人訓戒
駆込み訴え
老ハイデルベルヒ
善蔵を思う
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ネタバレ
驚愕
知ってはいましたが読んだ事はなかった、太宰治の人間失格。こんな話なの!!と驚きましたが。伊藤潤二さんの絵で読むと、ホラーじゃないのにホラーに見えてくる。小説も読んでみたいと思いました。凄い衝撃的を受けます。
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太宰治全集の最終巻で、太宰治の名前で発表されたあらゆる随想が収録されている。
年代順に並べられているため、一人の作家がいかにして生きてきたかがとてもよくわかる。
太宰治は、自分の生きづらさ、格好悪さ、ダサさと向き合い、ひたすら見つめ続けた作家だと思う。そして、そうすることで生を肯定しようとしたのではないか。太宰を読んでいて時々居た堪れない気持ちになるのは、あまりにも率直に彼自身の弱さが描かれているからだ。
随筆の中でたびたび「実直」という言葉が出てくる。弱さに対して正直であり続けること。その先に真実があると信じていたのではないかと思う。
このような彼の信念は、戦前から戦時中に確立されて -
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前期に書かれた表題作「もの思う葦」から晩年の「如是我聞」まで、太宰の言葉が集められた1冊。
太宰はどこまでも一生懸命で、全力で文を書いている。(そのことは、何かの短編で語っていた。)不器用な懸命さというかなんというか、自己犠牲的なもの。命懸け。でも命懸けで書きたかったのは、小説であって、創作だった。だから随筆とか自分のことについては、おざなりでやっつけ感満載。お金のための、お酒のための仕事といった感じ。
「如是我聞」は、今まで溜め込んで来たものを一気に書き散らした、自己破壊的な印象を持った。世間に対する恨みのようなものもあったかもしれない。そしてうわあああっと喚いて、あっけなく死んでしま -
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以前、映画化されたオムニバス作品の原作。玉石混交の短編集。
『BUNGO 文豪短編傑作選』角川文庫
鈴木梅太郎が脚気の原因がビタミンB1の不足だと特定し、年間死者数万人と言われた国民病を劇的に改善したのに、陸軍軍医総監の森鴎外はエリート根性から百姓学者が何を言うかと馬鹿にしてそれを取り入れなかったため、陸軍兵士はバタバタ死んだ。というエピソードをかつて知ったばかりに鴎外は読まず嫌いだったので、この中に所収の『高瀬舟』が初鴎外だった。生き方は共感できないが、作品は実に面白かった。
弟殺しの罪で島流しになる罪人を護送中の同心は、どうしてもその男が肉親を手にかけるような罪人に見えなかった。男