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〈兄妹五人あって、みんなロマンスが好きだった〉。退屈になると家族が集まり、“物語”の連作を始めるのが習わしという風変わりな一家、入江家。兄妹の個性的なキャラクターと、順々に語られる物語世界とが重層的に響きあうユニークな家族小説「愛と美について」ほか、「ろまん燈籠」「秋風記」など、バラエティに富んだ秀作七編を収録。
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Posted by ブクログ
秋風記は私が人生で1番好きな小説。 私の解釈の仕方が正しいかはわからないが、なんとなく、近くにいる人間の心に触れるのが怖いのだと思った。それでもKは太宰に生きていて欲しいし、太宰はKと一緒に死んで苦労しないで欲しい。太宰はKを愛しているが、Kにはずっと思っている、10歳になる前に見てしまった、この世...続きを読むで最も美しいものをまだ忘れられていない。この短い小説の中にいくつも考察の余地があり、そして本当に愛している人の心に、身近な人の心に触れられない焦ったさみたいなのが、読んでいて自分と重なって胸が苦しくなる。この小説、本当に大好きです。
人間の演じる、本音と建て前、エロス(生)とタナトス(死)、悲劇と喜劇を真面目に笑いながら皮肉る太宰作品は好物で、年に一度は読み返してしまう。5人兄弟姉妹が小説の連作に興じる「ろまん燈籠」。「ただ、好きなのです。それでいいではありませんか。純粋な愛情とはそんなものです。」と好意の弁解を嫌悪するところ、...続きを読む最後一番できの良かったのは母親のみよに決めるところ、が面白い。 その他、「秋風記」「思い出に生きるか、いまのこの刹那に身をゆだねるか、それとも、将来の希望とやらに生きるか、案外、そんなところから人間の馬鹿と利巧のちがいが、できてくるかもしれない」、「女の決闘」「芸術家には、人でない部分が在る、芸術家の本性はサタンである」など昭和14-16年の魅力的な作品が並ぶ。
大好きな「愛と美について」がちょっと長くなって再登場だ嬉しいなという短編集。やっぱり次男が好きです。病弱で生意気なんて可愛らしいにも程があります。家族全員愛しくて、羨ましいくらい。令嬢アユ、恥、新郎、十二月八日、佳日、散華、どれも特に何か重大な事件が起こった訳じゃないのに、心がぐらぐら揺さぶられる感...続きを読むじのする良い話ばかりでした。誰かが誰かを思ってる話が多かったので、そういう愛の恋だのが大好きな子供のわたしはそれが嬉しかったのかもしれません。とにかくいい短編集でした。短くても長くても、きっちりまとめてくる太宰は天才だと思いました。
ろまん灯籠、前々から友達にオススメされていて気になっていたから読んでみた。自分ならこう書くなぁなんて想像しながら読んでたら凄く楽しかった。太宰治って言うと人間失格とか暗〜いイメージしかなかったから新鮮だった。
太宰治はいい。 自虐的に暗かったり、無性に力強かったり。 この短編集もその間を作品ごとにぐらっぐらしてる。 それでも裏のあらすじを読むと比較的安定してる生活の中かかれたらしいし、一体安定ってなんなのさと。 とはいえ楽しんで書いてるかのような試み。 おもしろかった。
今まで、敬遠していたことに激しく後悔。 なんだろう、この何回も読みたくなる感じ。すてき。太宰すてき。 名言を浴びせまくられ。 誰にでもある、かよわい感情を、物惜しみせずに見せびらかしてくる。 それにたまらなく共感する。さみしい。かまってってかんじ。 自分はどうしようもない人間だと思う反面、他の人...続きを読む間とは違うことを信じている。そんなところがおろかで、恥ずかしくなる。 収録作品は 『秋風記』 『新樹の言葉』 『愛と美について』 『ろまん燈籠』 『女の決闘』 『古典風』 『清貧譚』 好きだったのは『新樹の言葉』 太宰が山梨とゆかりが深いことを知る。嬉しくなる。
2010/05/04 太宰が作品で遊んでる感じがおもしろい。 「古典風」がいかにも太宰な作品だけど、「愛と美について」、「ろまん燈篭」も新鮮で好き。兄弟それぞれの個性を書き分けてるのもすごい。
5人の兄弟姉妹が順に物語を繋いでいく体裁になっているが、5人それぞれの性格や性別で「なにをハッピーエンドと捉えるか」が異なる表現をされており(特に男女で真逆になっている)面白いなと思った。
頑強なのかひ弱なのか、 出鱈目なのか几帳面なのか、 チャラいんだか地に足が付いているんだか、 同時代に生きていないせいもあって、 そこのところはよくわからない作家・太宰治の短編集。 太宰の熱烈なファンがいたり、毛嫌いする人もいたり。 いまでいえば、タイプは違うけれども、 村上春樹さんの立場(それも...続きを読む流行作家としての)なのかな? 本書はやはり太宰らしくよみやすく、 そしてうまい文章ながらもどこか甘ったるさがあって、 そこらへんに好き嫌いがわかれるのだろうなあと思いました。 表題作の「ろまん燈籠」はなんと、あのラプンツェルの話。 どこまで太宰の創作で、どこまでが原作のままなのかはわかりません、 なにしろ、ラプンツェルの話はディズニーのアニメでしか知らないからです。 でも、太宰バージョンの、それも登場人物たちが物語を紡いでいくという 方式でのラプンツェルはなかなか面白かったです。 そのなかで、「どうも長兄は、真面目すぎて、 それゆえ空想力も甚だ貧弱のようである。物語の才能というものは、 出鱈目の狡猾な人間ほど豊富にもっているようだ。」 という文句がありました。 ぼくももうすこし、出鱈目になろうかなと思いもしました。 太宰治は出鱈目でありながらも、 要所要所でものごとの本質をあぶりだしてくるのがすごいところかもしれない。 出鱈目で狡猾な人間を自認していて、 良心というか本質を見る厳しい目ももっていたから、自死してしまったのかなあ。 そう分析してみましたが、岩井俊二さんの解説によると、 死ぬことに対するミーハー的な気質だったんじゃないかということで、 そういうやっぱり軽い面のある作家だったのかなあという印象を持ちました。 まあ、作家っていうのは誰しもがそうい軽さってあるとぼくは思っていますが。 もしも太宰ばかり連続して読んでみたら、 彼なりの文章の美しさや語彙が読み手にもある程度は身に付きそうですけれども、 やっぱりその甘ったるさみたいなのに辟易としてしまう可能性が高い。 ぼくにとっては、たまに楽しみで読むのがいいように思いました。 間隔を開けずに二度読みなんかすると、興ざめな文章のときもあるよね。 と、そんなことを言いつつも、おもしろく読みました。
「太宰というのは、死にたいという思いと、やっぱり生きてみようと思わせる出来事との葛藤で作品を作っている人で、この背反する二つの要素の比率によってそれぞれの作風が異なって見えるのである。」という解説になるほどーと思った。 この本の中の作品では、「死にたい」方に傾いているものとして、「秋風記」が、「...続きを読む生きてみるか」の方に傾いているものとして「新樹の言葉」「愛と美について」「ろまん燈籠」「女の決闘」「古典風」「清貧譚」として分けることができるという。 「死にたくなった?」 「うん」 という会話がさらっと交わされる「秋風記」が好き。 ぐだぐだと自分を曲げることができない主人公の「清貧譚」も好きだ。 どの作品を読んでも、太宰は人のよろしくない部分を描写するのが上手い気がする。特にダメ男にかけて。
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