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昭和十六年十二月、日本は大きな戦争に突入した。「しかし、私は小説を書く事はやめなかった。もうこうなったら、最後までねばって小説を書いて行かなければ、ウソだと思った……」(「十五年間」)。大戦の進行につれて文化統制が強化されるなかで、太宰ほど質の高い文学活動をした作家は、ほかにない。戦時下に成った作品群を収める。新郎 十二月八日 律子と貞子 待つ 水仙 正義と微笑 小さいアルバム 花火 帰去来 故郷 禁酒の心 黄村先生言行録 花吹雪 不審庵
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Posted by ブクログ
太宰の他の作品を読んでいれば実感しますが、『正義と微笑』の持つ意味合いは、作家としての彼を考えるに必要不可欠なものであると思います。
あまり有名なものは掲載されていないが、どうして戦時中にこのような作品を残せるのか。新郎が好きだなあ。一日一日をちゃんと生きて行きたいです。語彙力が無いなあ。
新郎、十二月八日、律子と貞子、待つ、水仙、正義と微笑、小さいアルバム、花火、帰去来、故郷、禁酒の心、黄村先生言行録、花吹雪、不審庵
新郎、十二月八日、律子と貞子、待つ、水仙、正義と微笑、小さいアルバム、花火、帰去来、故郷、禁酒の心、黄村先生言行録、花吹雪、不審庵収録。 待つ、水仙、正義と微笑、禁酒の心、黄村先生言行録が好きです。 「待つ」はいつか朗読したいな。黄村先生がおもろい。
ちくま文庫 太宰治 全集 昭和17年〜18年の短編集。登場人物=著者と考えるなら 様々な太宰治が読める。明るい太宰、放蕩息子の太宰、何か待っている太宰、苦しいのに平気な顔してる太宰。 中でも 印象に残ったのは *「待つ」何かを毎日 待っている主人公。何かは 神?赦し? *「禁酒の心」「黄村先生」...続きを読む明るい太宰治は 苦しさの現れか? *「水仙」は 天才の不幸を語っている 新郎=終わりの始まり。終わりの予感の中の生 *一日一日をたっぷりと生きていくより他はない。明日のことを思い煩うな *このごろ私は毎日、新郎の心で生きている(昭和16年12月8日之を記せり。英米と戦端ひらく) 十二月八日=戦争の中の日常 *主婦の目線で綴った 太平洋戦争開戦の日の日記〜園子をお湯に入れるのが 私の生活で一番一番楽しい時だ *僕には信仰があるから 夜道もなお白昼の如し 律子と貞子=姉と妹=マルタとマリア*三浦は 姉 律子を選んだ〜私は義憤に似たものを感じた 待つ*大戦争がはじまってからは 毎日、毎日〜待っている〜なごやかな、ぱっと明るい、素晴らしいもの 水仙*天才の不幸〜天才は 自分の力を信じられない〜凡才から与えられた不安 正義と微笑→微笑もて正義を為せ=苦しくても平気な顔してろ *知恵の実を食べると 人間は笑いを失う *これからは単純に、正直に行動しよう〜思わせぶりを捨てたなら、人生は意外にも平坦なところ 小さなアルバム*幸福そうな風景ですね。いつまで続くことか 花火*放蕩の兄→兄さんが死んだので 私たちは幸福になりました 帰去来、故郷=放蕩息子の帰郷 *人の世話にばかりなって来た〜のほほん顔 で生きてきた *私一人が〜悪評高く、その日暮らしの〜ために〜気まずくなる
旬の秋刀魚みたいな一冊。肝の滋味あり、脂の旨味あり、食感の楽しさあり、太宰らしさが一番出ている文集では?と浅はかながら思った。 各文集にテーマがあるなら、ここでは「苦難」かな。「水仙」「正義と微笑」「花火」と、あたりまえの人生をあたりまえに送れない人達のほろ苦さがまざまざと描かれているけど、それは...続きを読むきっと太宰の心中を幾分は投影しているんだと思うし、滋味深いなと感じた。思えば、正義と微笑にある兄弟の絆は、太宰がとっても欲しかったものなのかもしれない。そんな軽い機構じゃないだろうけど、正義と微笑は太宰の理想を形にしたものにも思えてくる。 「これがあの、十六歳の春から苦しみに苦しみ抜いた揚句の果に、ぽとりと一粒結晶して落ちた真珠の姿か。あの永い苦脳の、総決算がこの小さい、寒そうな姿一つだ。(247項)」 ……うーん苦い!滋味深い! そして「帰去来」「故郷」で太宰文学の旨味のベースになっている、故郷青森とのつながりを書いている。何かにつけ厭世的で不器用な太宰さんの世界観は、青森で過ごした青年期に形作られているけど、いったい青森で何をやらかしたんすか。ほんと。とても気になるわ。敢えて調べないけど。 最後に「黄村先生言行録」「花吹雪」「不審庵」とコメディ3部作で〆。インコース速球2つからの外角スローカーブだな。体と脳全部持ってかれてルノアールで爆笑してしまった。 『突然、先生はけたたましい叫び声をあげた。「やあ!君、山椒魚だ!山椒魚。たしかに山椒魚だ。生きているじゃないか、君、おそるべきものだねえ」(中略)「これは、なんといったものかな?水族、つまり、おっとせいの類だね、おっとせいーーーー」全然だめになった。(341項)』 「あなた、こなた、夢に夢みるような思いにてさまよい歩き、ほとんど俗世間に在るを忘却いたし(親子どんぶり、親子どんぶり)(343項)」 「これは、私も最近ようやく気付いた事で、この大発見を諸君に易々と打ち明けるのは惜しいのであるが、(そうおっしゃらずに、へへ、と言いし学生あり。師を軽んずるは古来、文科学生の通弊とす)(364項)」 「腕に覚えの無い男は、どこやら落ち着かず、いやらしい眼つきをして、人に不快の念を生じさせ、蔑視せられてしまうものです。文学の場合だって同じ事だ(ぎょろりと速記者を、にらむのである)(365項)」 『二、三年前、本郷三丁目の角で、酔っ払った大学生に喧嘩を売られて(中略)…「わからんか。僕はこんなに震えているのだ。高下駄がこんなにカタカタと鳴っているのが、君にはわからんか」(368項)』 こんなのずるい。ツイッターに載せても40000000万リツイートぐらいもらえるはず。でもあユーモアがあるということは、それだけ作者に響くものを作る力があるってことなんだよな。感服です。ご馳走さまでした。
日記形式の小説・・・「何も書くことがない」・・・それで済む・・・・ まぁ最後は面白くなってきたので良しとしよう。 コントのような物もあったりで・・・・ ふと思う?太宰と石川啄木の議論をさせると面白かろうナッ
「帰去来」「故郷」の2篇が、特に良かった。太宰の本心の底に近い部分が 滲み出ている気がした。太宰のアイデンティティが確かに流れていた。 「正義と微笑」に共感するところあり、また黄村先生の3篇も愉快痛快。 MVP:黄村先生
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