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昭和十六年二月、混迷の度を深める大戦前夜、懸案の書下ろし長編「新ハムレット」の執筆にとりかかる。「三百枚くらいの予定です。当分、他の仕事は断って、没頭」(山岸外史宛書簡)した最初の長編小説は、五月末に完成。その直後、長女が誕生する。きりぎりす ろまん燈籠 東京八景 みみずく通信 佐渡清貧譚 服装に就いて 令嬢アユ 千代女 新ハムレット 風の便り 誰 恥
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Posted by ブクログ
「きりぎりす」 「ろまん燈篭」 「東京八景」 「みみずく通信」 「佐渡」 「清貧譚」 「服装に就いて」 「令嬢アユ」 「千代女」 「新ハムレット」 「風の便り」 「誰」 「恥」 久しぶりに太宰の作品を読んだ。この全集に収められている作品は初めて読むものばかり。どの作品も、時々クスっと笑えるものや、...続きを読むハラハラする内容もあり面白く読めた。 特に「きりぎりす」は秀逸。画家の妻の告白の形式。夫である画家が売れない時代に嫁ぎ、貧しくとも張り合いのある暮らしをしていたが、夫が成功しお金持ちになるにつれ、夫が変貌してしまったことを嘆く。 「お金を持っていることが偉い」という拝金主義に毒されてしまった現代にこそ、読み直されるべき作品と言える。 「この世では、きっと、あなたが正しくて、私こそ間違っているのだろうと思いますが、私には、どこが、そんなに間違っているのか、どうしても、わかりません」という締めくくり。 「ろまん燈篭」は個性的な五人の兄弟のちょっとした遊び(連歌のように物語を作る)を中心とした話。面白い。 「新ハムレット」。これなら本物のハムレットも読んでみようかな、と思わせる作品。登場人物がそれぞれどこかユーモラス。ハムレットのいじけっぷりは、なかなかのもの。太宰はこの作品の中のクロージャスについて、「善人に見えて実は悪人」という「近代悪」を描きたかったらしいが、そこまでは読めなかった。
これはもうぶっちぎりで「きりぎりす」じゃないかなあ。これ、太宰の最高傑作と謳ってもいいのでは。まあそれを抜かしても甲乙つけがたい作品ばかりだね。やはり混とんとした時代の方が太宰らしさがでるのでしょうか。太宰らしさ。俗な言い方ですね。
きりぎりす、ろまん燈籠、東京八景、みみずく通信、佐渡、清貧譚、服装に就いて、令嬢アユ、千代女、新ハムレット、風の便り、誰、恥
きりぎりす、ろまん燈籠、東京八景、みみずく通信、佐渡、清貧譚、服装に就いて、令嬢アユ、千代女、新ハムレット、風の便り、誰、恥収録。 やっぱりろまん燈籠好きやな〜。 清貧譚、恥には何だか親近感を抱きました。 太宰の描く、女子の独白もの好きやなあ。愛らしい。
★4.0 佐渡 ★3.5 きりぎりす、ろまん燈籠、服装について、令嬢アユ、新ハムレット、誰 「新ハムレット」のハムレットの最後のセリフについて考えている。
ラズベリータルトみたいな一冊。溢れ出る激情の果汁が、さっくりした文体に乗っかって至極の風味を醸し出している。言い過ぎか。 激情ってのはなんだろう。上手く言えないけど嫉妬、憎悪、恋慕、人への憧れかな。共感できるテーマが多く編纂されていて、新ハムレットもあるし初めて太宰治を読むなら全集4がオススメかも...続きを読む。 きりぎりす ろまん燈籠 みみずく通信(特にラストの一文) 清貧譚 千代女 新ハムレット 風の便り 恥 面白いのが本当に多かった。 なかでも新ハムレットは、まさに激情型。憎悪と愛情の交差。ここまで人を罵倒できる表現があるのかってぐらいに誰もが誰もを憎み、愛し、敬い、妬む。本作実は読んだことないので読んでみたい。てかあのラストは何?笑 この全集においても「女というものは◯◯◯だから」と「小説家というものは◯◯◯だから」がよく見られた。風の便りの一節「作家は例外なく、小さい悪魔を1匹ずつ持っているものです。いまさら善人づらをしようたって追いつかぬ(377項)」など。太宰は結局、女性にもてたのかもてなかったのか、人の愛を求めていたのかいなかったのか。いずれにせよ社会的に魅力的な人間ではなかったんだろうな。 各篇の書き出しは毎回素晴らしいなと思うけど、ラストが素晴らしいものもあってよかった。 「私には、どこが、どんなに間違っているのか、どうしても、わかりません」(きりぎりす) 「みみずくの、ひとり笑いや秋の暮。其角だったと思います。十一月十六日夜半。」(みみずく通信) などなど。
4巻目にして、だんだん面白くなってきた、肩ひじ張らず、娯楽として読むようにしているのだが、それでいい気がする。
きりぎりす きーんとするくらいの純を求めて、純なるもの意外は全て偽物とした、徹底した無垢。妻から夫への手紙という形をとる事で、本人が希求する理想を説くのではなく、最も近い他人が弾劾する、厳しい眼差しで語られる。 最も無垢は希求するのではなく、あるがままにそこにある、というだけで、希求している時点で無...続きを読む垢ではない。(ドストエフスキーみたい。)ここでの無垢を、太宰は白痴と言ったりしますが。 私も、こんなきーんとした、穢れのない、白痴のような無垢に、ずっと憧れているのです。自意識、という、自分を保護し進歩させ、そして汚すものにずっと苦しめられてきた。 太宰の正直と徹底した理想主義であるが故の激しい自己嫌悪、自己嫌悪を通じた自己愛。こんな不器用な人間だから愛されるのだなぁと思います。 風の便り 2人の書簡を通して、木戸の欺瞞と井原の純を描いています。きりぎりすと同様に、生まれ持った無垢、無垢故の正しさを体現する井原に打ちのめされ、彼らしく前進に向かった欺瞞に満ちた自己愛の権化である木戸。最初から最後まで自己愛と欺瞞で埋め尽くされ、自己愛・欺瞞故のヒステリーが読者を苛立ちとそして甘い共感へ誘います。この甘い共感という欺瞞に多くの読者は苦しめられ、故に太宰を皆が愛す要因なのではないでしょうか。 1人の作家の全集を読み通すということはこんなにも面白いものかと感動しています。読み通すことで、作品誕生の文脈を理解し、作品自体への見方が変わります。人間失格は、私の人生の節目に読み返して、都度異なった目線や感情が生まれてきたものですが、この全集を読み通した先で人間失格を再度読んだ時、どんな感覚が生まれるのか、今からとても楽しみです。
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